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樹里ちゃん、ベロトカゲと対決する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 更に最近では、居酒屋の料理人としても復帰を果たしています。


 久しぶりの「樹里ちゃんスペシャル」を食べようと、マニアが列を成し、デモと勘違いされて通報されたそうです。


 皆さん、通報には注意してください。逆恨みで通報される事もあるようです。


 樹里の復帰で、近所の居酒屋が危機感を抱き、通報したらしいです。


 証拠はないので、店長とその妻である樹里の母親の由里はどうする事もできないようです。


 


 そして今日も、五反田邸での仕事を終え、樹里は居酒屋に向かいます。


「また明日よろしくお願いします、樹里さん」


 出番が少ない赤城はるなが涙ぐんで樹里を見送りました。


「お疲れ様でした、キャビーさん」


 最後に爆弾を投下して去る樹里です。はるなは項垂れました。


 でも最近、それが快感のはるなです。


「違うわよ!」


 はるなは地の文に切れました。


 


 樹里がベビースリングで眠っている瑠里と共に居酒屋を目指していると、


「ホーホッホ」


 夜なのに鳩が鳴きました。宇宙鳩でしょうか?


「誰が鳩山由紀夫だ!」


 声が切れます。


「私よ、私」


 牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけたショートカットの黒尽くめの変な女性が現れました。


「誰がメーテルよ!」


 どんだけポジティブなんですか、貴女は?


「六本木厚子さんですね?」


 樹里が笑顔全開で言いました。厚子はフッと笑って、


「そう。またの名をベロトカゲ。ドロントに代わって夜の世界を席巻するわ」


と妙なポーズをとって言います。


「牛乳石鹸ですか?」


 樹里が尋ねました。


「その石鹸じゃないわよ!」


 厚子は切れました。牛乳瓶の底のような眼鏡がギラッと光ります。


「今度は優秀な部下の亀ちゃんがいるから、貧乳のドロントには負けないわよ」


 厚子の後ろに黒のつなぎを着た亀島が現れました。


「樹里さん、杉下さんに伝えてください。貴方の探偵事務所は私達が潰しますと」


 亀島はニヤリとして言いました。


(樹里さんは杉下さんと子供まで作ってしまった。もう私は失うものは何もない)


 亀島は「杉下左京憎し」で凝り固まっているのです。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「じゃあね!」


 厚子がまたすぐに消えてしまう煙幕を出し、亀島と逃走しました。


 


 樹里は、居酒屋で姉の璃里と交代する時に厚子達の事を話しました。


「そうなの。亀島さん、反省していないのね。というか、そこまで左京さんが憎いのかな」


 璃里は亀島を警察に引き渡した時、今度こそ更生してくれると思っていただけに悲しそうです。


「直接対決して、左京さんが亀島さんを説得するしかないわね」


 璃里が言いました。


「そうなんですか」


 樹里はアパートに帰ると、左京に話をしました。


「そうか。あのバカ、そんなに俺が憎いのか」


 左京は怒りよりも寂しさを感じました。


(確かにあいつの事は大嫌いだが、あいつに恨まれる覚えはないぞ)


 左京は、亀島が未だに樹里の事を忘れられないのを知りません。


 恋の恨みはそう簡単には晴れないのです。


「しかも、向かいのビルには貧乳らしき探偵が入って、あのバカ女が転職しやがったしな」


 左京はまだ整理がついていない元グウタラ所員の宮部ありさの机を見ました。


「ありささんはスパイとして潜入したと言っていましたよ」


 樹里が笑顔全開で言います。


「ええ?」


 衝撃の事実を知る左京です。


(いや、あいつに限ってそんな殊勝な考えは持たない。樹里は騙されているんだ)


 疑い深い左京です。主人公に相応しくないので、降板させましょう。


「何だと!?」


 地の文に狼狽える左京です。


 


 そして、そのありさは、水無月探偵事務所の歓迎会で居酒屋にいました。


 樹里が働いている居酒屋ではありません。「○民」です。


 ちなみに○の中には「自」は入りません。


 すでにありさは酔い潰れており、ドロントとヌートの二人で対ベロトカゲ会議中です。


「あっちゃんたら、亀ちゃんを拾ったらしいわね」


 ドロントは呆れ顔です。ヌートも首を傾げながら、


「六本木さんもよくわかりませんが、亀島さんもよくわかりません」


「抜けた者同士が知恵を出し合ったところで、私達には敵わないわよ」


 ドロントはフッと笑いました。


「そうかしら?」


 そこに突然現れる厚子です。何故か○民の制服を着ています。


「わわ!」


 ドロントとヌートは仰天しました。


「どうして貴女がここにいるの!?」


 相手が樹里ではないので安心して訊くドロントです。


「貴女達をずっと監視していたのよ」


 厚子はドヤ顔で言いますが、眼鏡が邪魔でよくわかりません。


 本当はたまたまバイト先にドロントが現れただけですが、それは内緒です。


「今度は私が貴女達を追い詰めてあげるわ。楽しみにしていて」


 そう言いながら、


「ご注文の生中と鶏のから揚げですう」


としっかり仕事もして行く厚子です。


「何しに来たのよ、全く。やっぱりアホだわ」


 ドロントは去って行く厚子を見て呟きました。


 


「六本木さん、また皿を割りましたね。今日も時給から相殺です」


 厨房で店長にお説教されている厚子です。

 

 


 めでたし、めでたし。

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