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樹里ちゃん、様々な人と再会する

 御徒町樹里は、日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日も愛娘の瑠里を抱いて、五反田邸に出勤します。


「おはようございます、樹里さん、私は赤城はるなです」


 見習いメイドから専属メイド二人目になった赤城はるなが、樹里のボケを封じようと先手を打った挨拶をします。


「おはようございます、キャビーさん」


 先手は無駄でした。樹里は暴投して来ました。項垂れるはるなです。


「庭掃除は私がしました。お部屋の掃除をこれからするところです」


 それでもはるなは笑顔全開で言いました。


「はるなさん」


 樹里は庭に落ちていた紙くずを拾い上げてはるなに見せます。


「い!」


 まさか樹里にそんなしゅうとめのいびりのような事をされると思わなかったはるなは蒼ざめました。


「折角掃除してもらったのに、瑠里が汚してすみません」


 樹里は申し訳なさそうに言いました。


 瑠里が持っていた紙が落ちたようです。


「……」


 魂が抜けてしまいそうになるはるなです。




 瑠里に授乳をしてベビーベッドに寝かせると、樹里は掃除に取りかかりました。


(何度見ても樹里ちゃんのおっぱいは大きいなあ)


 自分のと比べてショックが隠し切れないはるなです。


 それはそうです。見るたびに大きさが変わったらホラーです。




 樹里とはるなは午前中に邸の半分の掃除を終えました。


「二人だと仕事が捗りますね」


 はるなは額の汗を拭って言いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「ところで、ドロントさんは探偵さんになったそうですね」


 樹里がいきなり核心に触れたので、はるなは顔を引きつらせました。


「あ、はい。首領は私を更生させる為にここに残らせるって言っといて、自分達はちゃっかり違う仕事を始めて……」


 はるなは話しながら涙ぐみました。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。


「でも、私ははるなさんが残ってくれて、嬉しいですよ」


 樹里にそう言われて、はるなは遂に泣き出してしまいます。


「樹里さああん!」


 はるなは樹里に抱きつきました。


「はるなさん」


 樹里はちょっとだけ驚いたようですが、優しくはるなを抱きしめました。


 


 さて、そのドロント達はと言いますと。


「勢いでここに事務所を開きましたけど、これから先どうするつもりですか、首領?」


 黒のスカートスーツがやけに似合う黒川真里沙ことヌートが尋ねました。


「ほとぼりを冷まして、また仕事を始めるわ。ここにいれば、あのヘボ探偵の動きも、警視庁の特捜班の動きもわかるしね」


 アイボリーホワイトのスカートスーツを着た水無月葵ことドロントは言いました。


「なるほど」


 ヌートは窓の向こうに見える「杉下探偵事務所」のカッティングシートの文字を見ます。


 するとその動きに気づいたのか、杉下左京が窓を開けてこちらを見ました。


「おはようございます」


 ヌートはニコッとして挨拶します。何故か左京は顔を赤らめて、


「お、おはようございます」


と言うと、慌てて窓を閉じて離れました。


「どうしたのかしら?」


 ヌートは、左京がヌートがあまりに美人なので恥ずかしくなったのを知りません。


「貴女とあのヘボ探偵、顔を合わせた事がなかったっけ?」


 ドロントがヌートの隣に来て言いました。


「そう言えば、そうかも知れませんね」


 するとそこへ、宮部ありさが現れました。


「おっはようございます!」


 左京の事務所には、ラフな格好で来ていたありさも、水無月探偵事務所では、グレーのスカートスーツです。


「おはようございます」


 ドロントとヌートが挨拶します。


「こいつも使えるから、うまく利用してね」


 ドロントはヌートに耳打ちしました。


「はい」


 ヌートはありさに微笑んだままで応じました。


 


 左京は、ヌートと目が合ってしまったので、慌てて窓から離れました。


(結構美人だなあ。あの子も泥棒なんだろうか?)


 つい鼻の下を伸ばす左京です。


「おっといかん、仕事だ」


 今日は珍しく仕事があります。ビルのオーナーの飼い猫がいなくなったのです。


 左京は捜索を一日一万円で引き受けました。


(なるべく見つからない方がいいな)


 そんな姑息な事を考える左京です。(姑息の使い方が誤用なのは承知しています 作者)


 


 やがて夕方です。


「お疲れ様でした」


 樹里は瑠里を抱いて邸を出ました。


「また明日ね、瑠里ちゃん」


 はるなはスヤスヤ眠る瑠里に小声で話しかけます。


「お疲れ様でした」


 樹里ははるなに挨拶し、警備員さん達にも挨拶して帰りました。


「いいなあ、赤ちゃん。私も欲しいなあ」


 はるなは言いました。


「私で良ければ、協力は惜しみませんよ、キャビーさん」


 どこからか声が聞こえます。


「誰?」


 はるなはキッとして周囲を見渡します。


「私ですよ、キャビーさん」


 すると門の外にあの亀島馨が立っていました。


「亀ちゃん! もう出て来られたの?」


 はるなは懐かしくなって近づいて尋ねました。すると亀島は、


「刑務所には行ってません。不起訴ですよ。ある人が助けてくれましてね」


と後ろを見ます。そこには、あの六本木厚子が立っていました。


「ああ! アホのあっちゃん!」


 思わず指差して叫んでしまうはるなです。


「失礼ね! 私は六本木厚子よ。有名な空間クリエーターよ」


 ない胸を張る厚子です。


「貴女だって、この前特捜班に逮捕されたはずでしょ?」


 はるなが指摘すると、厚子はニヤリとして、


「不起訴よ、不起訴。何の証拠もないんだもん」


と言ってから、


「でも、あのイケメンさんの取り調べ、もっと受けたかったなあ、厚子は」


 クネクネして恥じらってみせたので、思わず吐き気を催すはるなです。


「ドロントに伝えて。貴女が潜伏している間に私が天下を獲るってね」


 厚子はまたすぐに消えてしまう煙幕を張り、亀島と共に逃走しました。


「何なのよ、あの人達?」


 首を傾げるはるなです。


 


「こんばんは、亀島さん」


 樹里は逃走する厚子と亀島を見かけて声をかけました。


「うわっと、樹里さん!」


 亀島は名残惜しそうに駆け去りました。


「忙しそうですね、亀島さん」


 樹里は笑顔全開で言いました。


 


 左京は、結局猫を見つけられず、誰からも猫を見つけたという情報も入らず、嬉しそうに事務所に戻りました。


「あれ?」


 誰もいないはずの事務所に明かりが点いています。


(もしかして、ありさが何かを盗みに来たのか?)


 そんな事を思う左京もどうかと思いますが、そんな風に思われてしまうありさもどうかと思います。


 そっとドアを開くと、樹里が瑠里を抱いてソファに座っていました。


「樹里!」


 左京は嬉しくなって声をかけました。


 すると、その声に驚いた瑠里が目を覚まし、泣き出しました。


「わわっと!」


 焦る左京ですが、樹里は、


「お腹が空いたのですよ、左京さん」


と言うと、ひょいと「マシュマロ」を出して授乳を始めます。


「……」


 角度的に完全に樹里の「マシュマロ」を見てしまった左京は鼻血を止めるため、机の上のティッシュを詰めました。


 奥さんの「マシュマロ」を見て鼻血を出す夫って、変態ですね。


「うるせえ!」


 左京は地の文に切れました。


「それより、今日はどうしたんだ、樹里? 何かあったのか?」


 左京は鼻ティッシュのままで樹里に尋ねました。


「今日、亀島さんを見ました」


 樹里は瑠里を寝かしつけながら言いました。


「亀島?」


 左京はまた瑠里が起きると困るので、小声で尋ねます。


「はい。確か、六本木厚子さんという方と一緒でしたよ」


 樹里の言葉に左京は仰天しました。


(あのバカ、今度はベロトカゲの所に行ったのか……)


 左京は項垂れてソファに座りました。


 


 ドロントが探偵になって、アホのあっちゃんが亀島と組み、左京は猫を探す。


 いよいよ見逃せない展開です。(違います  作者)

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