表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/839

樹里ちゃん、左京と瑠里と三人で出かける

 御徒町樹里は、愛する夫杉下左京との間に生まれた可愛い女の子、瑠里るりと実家に里帰りしていました。


 夫の杉下左京のアパートは環境が劣悪なので、赤ん坊の瑠里を育てるのに適していないからです。


 樹里の母親の由里も、再来月の十一月には出産です。


 そのため、今から樹里を実家に居着かせる作戦を決行中らしいです。


「でも、たまにはお父さんに会いたいかな、瑠里も?」


 由里はベビーベッドで眠る瑠里を見ながら樹里に尋ねます。


「左京さんと出かけていいですか、お母さん?」


 樹里は笑顔全開で尋ねました。


「行っておいで、樹里。左京ちゃんも、瑠里に会いたがっていると思うよ」


 由里も笑顔全開で答えました。


 


 こうして、樹里は瑠里をベビースリングを使って身体の前に抱え、由里の家を出ました。


 どう見ても母親には見えない樹里は、駅のホームで注目の的です。


「偉いわね、お嬢ちゃん。妹さんのお守り?」


 年配の女性が微笑んで尋ねました。


「いえ、私の娘です」


 皆がとても驚きます。


「お嬢ちゃん、父親はわかっているの? 養育費は大丈夫なの?」


 皆に心配される樹里です。


「大丈夫ですよ」


 樹里は笑顔全開で応じます。でも、養育費は不安かも知れません。


 そのせいではないのでしょうが、瑠里が目を覚まし、泣き出します。


「お腹が空いたのですね」


 樹里は姉の璃里が使っていた授乳用の服を着ているので、素早く授乳を始めます。


 それを見て、周囲の人達は本当に樹里が母親なのだと知り、また驚きます。


 やがて瑠里は満腹になったのか、スヤスヤと眠り始めます。


 樹里は授乳をやめ、眠っている瑠里を優しい微笑みで見つめます。


 その姿を見て、手を合わせて拝み始めるお婆さんがいました。


 


 樹里は電車を降り、左京のアパートに向かって歩き出しました。


「樹里!」


 そこへ左京が走って来ます。


「言ってくれれば、迎えに行ったのに」


 左京はゼイゼイ息をしながら言いました。


「そうなんですか」


 樹里はそんな左京を笑顔全開で見て、


「汗が凄いですよ、パパ」


とハンドタオルで左京の顔を拭います。


「ああ、ありがとう、樹里」


 左京はタオルを受け取り、顔を自分で拭きながら、


「え?」


と思い返します。


「さっき、パパって言った?」


 左京は樹里に尋ねます。


「はい。ママではありませんから」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「それはそうなんだけど……」


 しばらくぶりに樹里にイラッとしそうになる左京です。


 


 二人はそのまま公園まで歩きました。


「重くないか? 俺が抱こうか?」


 左京は樹里を気遣って言いました。


「大丈夫ですよ、パパ」


 また樹里が言ったので、ニヘラッとする左京です。


「あのベンチで休もうか」


 左京は樹里を支えながら、ベンチに座らせます。


「まだそんなに経っていないはずなのに、大きくなった気がするなあ」


 左京は眠っている瑠里を見て呟きます。


「二百グラム体重が増えましたよ」


 樹里が言います。左京は、


「それくらいでわかるものなのかなあ」


「わかりますよ。左京さんは瑠里のパパですから」


 樹里が笑顔全開で左京を見ます。何故かその樹里の顔にキュンとなる左京です。


(可愛いな、樹里は……)


 相変わらずエロい左京です。今にも押し倒しそうです。


「誰がそんな事するか!」


 左京は地の文に切れました。


 そんな左京の邪な考えを感じたのか、瑠里が目を覚まします。


「おお!」


 泣き出した瑠里を見て、璃里の娘の実里みりに泣かれた事を思い出し、ビビる左京です。


「もうお腹が空いたのですか」


 樹里が泣いている瑠里に話しかけます。


「はい」


 左京は瑠里の顔を覗き込んでいたので、樹里が授乳するために服の脇を開いたのをふと見ました。


「ぶ!」


 左京は仰天しました。目の前に樹里の「マシュマロ」がニュッと見えたからです。


「おおお!」


 慌てて身体を起こし、樹里から離れます。


 そこからは樹里の「マシュマロ」は見えません。ドキドキしている左京です。


 左京は周囲に覗きがいないか見渡します。


「どうしたんですか、パパ?」


 樹里が不思議そうな顔で左京を見上げます。


「いや、何でもない」


 空を見上げるフリをして、間近に見た樹里の「マシュマロ」のせいで出そうになった鼻血を誤魔化す左京です。


(俺は何を考えているんだ? 樹里は授乳という神聖な行為をしているのに……)


 自分の邪さ加減に項垂れる左京です。すると鼻血が出そうになったので、また空を見上げます。


「パパは面白いですね、瑠里」


 授乳を終えた樹里が、下を向いたり上を向いたりしている左京を瑠里と一緒に見ていました。


 二人の笑顔はまさしくそっくりです。


 


めでたし、めでたし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ