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樹里ちゃん、なぎさとお茶するPART2

 御徒町樹里は日本の大企業グループを担う五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 最近は、庭掃除や部屋の掃除は、見習いメイドの赤城はるながこなしてくれるので、助かっています。


「樹里さん、庭掃除終わりました」


 樹里がキッチンで洗い物をしていると、はるながやって来て報告しました。


「ありがとうございます、キャ……」


 樹里が笑顔全開でそこまで言うと、


「私ははるなです、樹里さん」


 はるなが涙目で訴えます。しかし樹里は、


「キャベツの千切りを手伝ってください」


 ずっこけるはるなです。


 その時、壁に備え付けられたインターフォンが鳴りました。


「はい」


 近くにいたはるなが素早く受話器をとります。


「船越なぎさです。樹里さんはいますか?」


と声がします。


(船越なぎさって、あのおバカな子ね)


 実はドロントの部下のはるなことキャビーは、なぎさが「危険人物」である事を思い出しました。


(ベロトカゲの六本木厚子さんの次に関わってはいけない子だわ)


「はい。お待ちください」


 はるなは樹里に受話器を差し出し、


「樹里さん、船越なぎさ様です」


と言いました。


「久しぶり、樹里!」


 それよりも早く、なぎさはキッチンに来ていました。


 一回転して転ぶはるなです。


(どこから入って来たのよ、この子は?)


「いらっしゃいませ、なぎささん」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「ああ、樹里、太ったね。運動不足?」


 なぎさの相変わらずな意味不明発言に、はるなはまたこけそうになります。


「再来月出産ですから」


 樹里はそれでも笑顔全開で応じています。


(さすが樹里ちゃん。根性が座ってる……)


 思わず尊敬の眼差しになるはるなです。


「ああ、そうなんだ。じゃあ、出産祝い用意しないとね」


 なぎさが言うと、


「ありがとうございます」

 

 樹里はまたしても笑顔全開で応じました。


「あれ、この人は?」


 何と、なぎさはようやくはるなに気づいたようです。


「同僚の赤城はるなさんです」


 樹里が紹介してくれます。


「ああ、そうなんだ」


 なぎさはニコッとしてはるなを見ました。


「よろしくお願いします」


 はるなは深々と頭を下げました。


「よろしく、キャビーさん」


 なぎさが言いました。はるなはまたこけそうになります。


 決して股にコケが生えたのではありません。


「赤城はるなです、船越様」


 はるなは涙ぐんで言いました。


「ああ、そうなんだ」


 なぎさはケラケラ笑っています。


(どうして、キャビーっていう名前が出るのよ!? そんな事、一言も言ってないのに!)


 はるなは、どこかに隠しカメラがあって、自分が騙されているのではないかと思いそうです。


「本日空輸で届いた紅茶です。どうぞ」


 樹里がなぎさに高級紅茶を淹れます。


「ありがとう、樹里」


 なぎさはキッチンのテーブルに着き、紅茶を楽しみます。樹里が、


「私達もお茶をいただきましょう、キャ……」


と言いかけると、はるなは、


「はるなです、樹里さん」


と言いますが、


「キャラメルもありますから」


と言われ、シンクに突っ込みそうになります。


「何だか愉快な子ね」


 なぎさが小声で樹里に言うのが聞こえ、はるなは心が折れそうです。


(違うのよー!)


 心で叫ぶはるなです。


 


 しばらくなぎさは樹里と話をしてから、立ち上がりました。


「また来るね、樹里」


 なぎさが言います。


「はい」


 樹里が笑顔で応じます。


(もう二度と来ないで)


 はるなが心の中で叫びます。


「あ、そうだ」


 キッチンから出て行きかけて、思いついたように振り返るなぎさです。


(刑事コロンボか!)


 心の中で突っ込むはるなです。


「叔母様の推理小説、この前返したわよね?」


「はい、返していただきました」


 樹里が笑顔で返事をします。


「だったら、はるなさんに貸してあげて。きっと仕事の参考になるから」


 なぎさの言葉にギクッとするはるなですが、


「そうですね。メイドの仕事が細かく書かれていて、勉強になりますね」


 樹里の言葉にホッとします。


「犯人はね、庭師の池上晃さんだよ」


 なぎさがはるなに言いました。


「そうなんですか」


 一番大事な事を教えられ、はるなはその小説を読むのをやめようと思いました。


「叔母様の小説はね、登場人物一覧の四番目が犯人なんだよ」


 なぎさは得意そうに言います。


(大村美紗の推理小説、全部読めなくなった……)


 はるなは項垂れました。


「じゃあね、キャビーさん」


 なぎさは樹里と共にキッチンを出て行きました。


「私は赤城はるなです、船越様!」


 はるなは血の涙を流しながら、なぎさを追いかけて叫びました。


 


 めでたし、めでたし。

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