樹里ちゃん、猫になる?
日頃お世話になっているりきてっくす先生に捧げます。
御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。
でも、決してCDデビューはしません。
CDは出しませんが、時々おかしな現象に巻き込まれます。
樹里はいつものように狭苦しい杉下左京のアパートの部屋で目覚めます。
不甲斐ない夫の左京は、まだ惰眠を貪っています。
樹里はそんな左京を起こしたりせず、顔を洗うためにお風呂場に行きました。
シリーズ始まって以来です。
左京の部屋には風呂場があるのがわかりました。
樹里は鏡に映る自分の姿を見て驚いてしまいました。
何と、猫の耳が頭に生えていたのです。
「どうしたのでしょう?」
樹里は不思議に思いましたが、そのまま顔を洗って部屋に戻ります。
そして、パジャマを脱ごうとしてまた驚きます。
お尻から尻尾が生えているのです。
「どうしたのでしょう?」
一瞬、ビックリする樹里ですが、朝食の支度があるのであまり驚いていられません。
服を着替えるのに困ると思いましたが、何故か尻尾は全然支障なく、着替えができました。
それも非常に不思議です。
樹里は着替え終わると、料理を始めます。
「ふああ」
不甲斐ない夫が目を覚まします。
非貢献度から言えば、左京は樹里の十分の一の睡眠しかとってはいけない計算になります。
「朝から悪口言われてる気がする」
左京は頭をボリボリ掻きむしりながら、風呂場に行こうとします。
「うん?」
その時彼は、樹里のお尻から尻尾が生えているのに気づきました。
(朝からコスプレかよ)
樹里がふざけていると思った左京は、何も言わずに顔を洗いに行き、戻って来ました。
「ブッ!」
そして、樹里の頭に猫耳が生えているのに気づき、吹き出します。
「おい、樹里、どうしたんだ、朝からコスプレして?」
左京は言いました。
「そうにゃんですか」
すると樹里が猫語のような言葉を発します。
「わかったよ。もういいから。普通に話してくれ」
左京はコスプレに付き合う気はないようです。
「左京さん、朝食の支度ができましたにゃん」
樹里は笑顔全開で言いました。
「だから、もういいって。ほら、耳も尻尾も取れって」
左京は尻尾を掴んで引っ張りました。
「痛いですにゃん、左京さん」
樹里が涙ぐんで言ったので、左京は唖然としました。
「えええ!?」
左京はパニックになりそうです。
(落ち着け、俺。これは多分夢だ。もう一度寝よう)
そのリアクションは以前使ったので、止めて欲しいと思う作者です。
「朝起きたら、耳と尻尾が生えていましたにゃん」
樹里が嬉しそうに言ったので、左京は項垂れました。
「いや、樹里、夢だよ、これは。二人でもう一度寝よう」
左京は無理矢理樹里を布団に引きずり込もうとします。
「ちょっと待て! その描写の仕方、俺が変質者みたいだぞ!」
地の文に文句を言う左京です。
「夢じゃないですにゃん、左京さん。本当に耳と尻尾が生えたのですにゃん」
樹里が左京に言います。左京は改めて樹里を見ます。
(か、可愛い……)
只でさえ相当可愛い樹里に猫耳とは、「鬼に金棒」以来の無敵マ○オ状態です。
「あ」
左京は鼻血を垂らしました。
「大丈夫ですかにゃん?」
樹里が小首を傾げて尋ねます。それを見て、左京は気絶してしまいました。
「か、可愛過ぎる……」
「左京さん、しっかりしてくださいにゃん」
猫耳をピクピクさせて左京を揺り動かす樹里です。尻尾もヒラヒラ動いています。
「げ」
樹里に揺り動かされて意識を取り戻した左京ですが、ピクピクする猫耳とヒラヒラ動く尻尾を見て、また気を失ってしまいました。
エンドレスになりそうです。
たまにはこんな話もいいものです。
めでたし、めでたし。
ありがとうございました。