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エッセイ・随筆集

お盆のお精進

 お盆だからお精進だと家人が言う。

 はて、そういうものだっただろうか?

 お盆にはすべからく肉食にくじき停止ちょうじすべきものだったか? はて、本当にそんなことが?

 そう思って家人の顔を見遣ったところ、向うは向うで何やらそっと目を逸らすので、あちらにしても確たる自信は無いのだろうということが判然となった。ただ、この場合、くだんのいきさつをそう追及してはなるまい。

 まあ、いではないか。お盆なのでお精進。

 少なくとも今年はそういうことにしよう。

 そう決心したところで、お昼近く、何だか腹が減って来たので、二人して近所のスーパーに向かった。

 夏の休暇の盛りとて、魚も肉も、色々と美味しそうな品ぞろえがあるものの、今年の吾が家はお精進ということになっているので、惑わされてはならない。

 とりあえず、今日の中食ちゅうじきとして、赤飯のおにぎり、稲荷寿司、太巻きに、かっぱ巻き、干瓢巻きを詰め合わせた、三百円足らずのパックを手に取ったのだが、家人がご先祖様にもと言うものだから、成程、それもそうかと、それぞれのお寿司が二つずつ入った三九八円の、少し大きめのパックを購うことにした。

 家人の言に従って、ここからいくらかはご先祖様のお供えにおすそ分けという寸法。

 おすそ分けというのは、ご先祖様にはいささか不遜であるようにも思われるから、そうだ、発想を逆にして、僕がおすそ分けにあずかるという方便にすればよかろう。

 ということで、お昼はそういうことにしておいて、さて、晩ごはんは、いかんとしよう?

 里芋やら、椎茸やら、蒟蒻やら、牛蒡やら、雁擬がんぎもどきやらの煮〆と、ワゴンにあった見切れ品の枝豆を茹でたものと、瓜の浅漬けに素麺ということにして、あとは、御酒と第三のビールと焼酎なんぞで。

 アルコールが入れば、お精進であったとしても、それなりの楽しみはある。


 まあ、今日明日はこうして真面目に過ごしておいて、さて、精進明けには?


 そこはあれこれと、今から腥三昧なまぐさざんまいの算段を巡らしているところではある。ずいぶんと不真面目なるお精進もあったものだ。



                         <了>





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