勇者パーティーに紛れ込んでいた魔王を追放しようとする話
「賢者……いや、魔王」
「……何、言ってるんだ? 俺は勇者パーティーの一員、賢者だぞ」
「いやいや、誤魔化せないから。今、魔王軍の幹部と連絡してたの聞こえてたから」
「………………」
「………………」
「ふははっ……だったらどうする勇者よ! 我を倒すか!」
「いや。パーティーから追放する」
魔王討伐パーティのリーダー勇者が、パーティー内に潜んでいた魔王に大して追放を宣言する。
「追放……だと!? この腰抜けが! 仇敵同士、決戦じゃないのか!?」
「いや、おまえ分かって言ってるだろ。勇者パーティーは女神の加護でパーティー内で傷付け合うことが出来ない」
「ぎくっ……」
「同士討ちを気にせず大規模な魔法を使えたり便利な加護だけど……こうしてパーティー内に紛れ込んだ敵を倒すことも出来ない」
「そうだ……だからこそ思い切って我はおまえらのパーティーに潜入して情報を探っていたのだ! どうだ、この完璧な作戦――」
「だからパーティーから追放して加護の範囲外にする」
「お願いします、追放しないでください」
魔王は土下座する。
「……魔王としてのプライドは無いのか?」
「命より大事なプライドなど無かろう。というかこのタイミングでバレると思ってなかったのだ!!」
「事あるごとにコソコソと一人になって何かしてたら怪しまれて当然だろ。というかおまえの反応からして……」
「そうだ、我に戦闘力は無い! 影から暗躍する系の魔王だ!」
「まあ人間の王様だって戦闘力は無いけど……」
「脳筋が組織の長になって良いことなんて無かろう」
「そうだな人をまとめるのが仕事……って話逸れてるな」
「気付かれたか」
「意外とセコいな。まあいい。スキル『超爆裂剣』!」
「え、いや、あの勇者さん……? 突然剣を構えだして何を……あ、まさか追放すると同時に我を殺そうとしている!?」
「その通りだ。魔王、おまえをパーティーから……追放する!!」
追放宣言と同時に剣を振り下ろす勇者。
巨大な衝撃と爆発が魔王に叩き込まれて煙が舞う。そしてそれが晴れて――。
「わ、我、死、死んで……あれ?」
「無傷だと!?」
魔王は五体満足だった。
「い、一体何が起きた?」
「魔王が咄嗟に防御した訳じゃない……? だが俺も手を抜いていない……だとすると、まさか追放出来ていないのか!?」
「追放……そういえば聞いたことがあるぞ。追放するためには理不尽だとしても理由が必要だと」
「いや、魔王だったって時点で十分な理由だろうが!!」
「人には誰しも隠している秘密がある。その程度では理由にならないと女神が判断したのだろう」
「融通効かないな!?」
「我はパーティーの回復役を健気に務め、雑事も手伝い、コミュニケーションも怠らなかった。追放に足る理由は無い!!」
「だから、魔王だろうが!!」
勇者はツッコミながら『雷神剣』を魔王に叩き込むがやはり全く傷が付かない。
「いや、さっきから殺意ヤバくない?」
「仇敵だろうが」
「ふん、だがこれではっきりとなった。勇者、おまえは我を追放できない。さあ、どうする!」
「……今はまだ、追放できないってだけだ。だが諦めるつもりは無い。絶対に追放して見せるからな!!」
勇者と魔王、壮絶な追放バトルはここからだ――!!