神の独白
更新が遅くなり、申し訳ございません。
今、ラブコメのプロットを練ってるので来年くらいには出そうと思います。残りの勇者との対談と最後ちょこっと書いて終わりにしたいと思います。
ブックマークやいいねありがとうございます。ほんとに涙がちょちょぎれるくらい嬉しいです。手慰みで書き始めたものですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
神side
「何をしているんだこの人」
勇者が真実にたどり着く2週間ほど前、僕は勇者となった男を水鏡を通して見ながら呟いた。
『おう!マーシャとアゼリアじゃないか。』
『あっ。勇者様』
『こんなとこで何してるんだ?』
『アゼリアが遠くまで強化魔法を飛ばせるように私がアシストして練習してるの!』
『ごめんねマーシャちゃん……あたしが不甲斐ないばっかりに……』
『そんな事ないってば!それに私も練習になるから気にしないで!』
『マーシャちゃん……!』
アゼリアの後ろから勇者が近づき、肩と腰に軽く触れる。
『というか……アゼリア。肩に力が入りすぎ』
「うげええええええええ!!!!!」
吐いた。耳に呟いてからの、肩と腰へのボディタッチがキモすぎて神は吐きました。
全身に鳥肌を立てながら、無意識に水鏡から1歩距離を取る。
『それに、魔法を打つ時の目線だってマーシャと全然違うじゃないか。』
『そりゃ、私は弓使いの遠距離型だから……!』
『真似して得るものだってあるんだから工夫していけばいいんじゃないか??アゼリアもそのくらいは出来るだろうからもっと自分で考えた方がいいぞ』
『…っ!!頑張ります!!』
しかも上から目線のアドバイス!!!!
お前は修行もろくにしていないのに何を知ったようなことを言っているんだ!お前も!自分の修行について考えろ!戦略を練ってろ!
心の中で毒を吐きながら自分が勇者だった頃に想いを馳せる。
「僕の方がまだマシだったよ……勇気がなかっただけで。」
僕は勇者だった頃、何も出来なかった。
いざ、魔王と対峙した瞬間わかってしまったんだ。
こいつは人間しか食べるものが無い元人間だと。
僕の能力は相手の本当の姿、力が見えることだったから魔王を見た時、僕と一緒にいた仲間達は僕の能力で敵が人間だと一目でわかった。
それに気づいた時、気づけば剣を置いてしまってたんだ。人殺しとして生きたくない僕らのエゴだった。
だから、勇者を選ぶ時。なるべく自分の意思だけを信じてどこまでも進むことが出来る男を選んだ。
実際は、思い込みと自信過剰で出来た怠惰な男だったがそれでも僕は君を誰よりも信じていたんだよ。
「残念だ…。」
時は今に至り。
勇者はついに真相に気づいたようだ。ベッドで涙を流し、呆然とする男を水鏡を通して見ることが出来た。
周りには何も無く、自分もただその水鏡を見るだけの仕事に従事している。
「選んだ時はこうなるはずじゃなかったんだけどなあ」
そういえば初めから違和感はあった。すんなりと受け入れる勇者という役職。喜びで溢れるあの顔。
幼い子供が憧れの戦士になったかのような感情だった。
そういえば、彼は生前オーディションに何度も落ちた役者だと言っていた。
おそらく、選ばれることに対しての喜びと達成感のみで生きてきた結果があの様子だったのだろう。
納得はしていてもフツフツと怒りは込み上げる。
だが、それなら何故もっと修行に真剣に取り組まなかった!
選ばれてからが勝負だろ!まさか、物語のように何もせずともレベルアップが叶うとでも??
ひとしきり考えた後、どかっと床に倒れ込みふぅっと息を吐いた。
「何か疲れちゃった……ドリンクでも飲もっかな」
パチッと指を鳴らすとどこからかエナジードリンクが現れ、自分の手のひらの内側にスッポリと収まる。
この感覚にも随分慣れたものだ。初めの方は意味がわからなかった。手元に無かったものが当たり前のように現れる感覚。体が反応出来ず、何度もビクッと驚かされたものだ。
大きくため息をつき、脳内を占めている男と会うため、1つ呟いた。
「勇者が眠りについた際に、話をさせてくれ。」