6 大森林破壊ドッキリ
-翌日- 大森林中央本拠点
それは作戦と言うにはあまりにも雑すぎた。
「第一回!ギリギリ!大森林破壊してみたドッキリー!サンバ!」
「わー」パチパチ
「あのそれはどう言う作戦なのでしょうか…」
ファーストが半ば呆れ顔で尋ねる。
「これどう言うドッキリかと言うと!森に火をつけて魔物を皆殺しにします!ハッハー!」
「森に隠れた魔物を一網打尽にしてしまうのですね。
極めてシンプルですが効果は絶大…
森が燃えても数百年も放置されてたような場所なら誰も困らないと
さすがご主人様です!」
頭脳派メガネにしてメイド部隊のサブリーダー、セカンドが心底感心したように頷いている。
「さてとふざけるのはこれくらいにして作戦はこうだ。
爆装コンテナを装備した爆撃隊が上空3000mからナパームを投下し続ける。その間に後方の爆撃隊が対地爆弾を投下して追撃。それを繰り返すだけだ。
例のドラゴンが現れたら俺が引きつける。ビーコンによると今あいつはここよりも東に7kmいった場所にいるらしい。
お前達は爆撃に集中してくれ。補給は本拠点にて行う。
サブ拠点や道路は避けてくれ。
陣頭指揮は各隊から選抜したリーダーに任せる分かったな?」
「「「了解!」」」
その頃、大森林では…
「ギャギャッ!」
「キュイキュイ!」
ロマチックな木陰で可愛らしいうさぎのような魔物が愛の言葉を囁き合っていた。
「キューン…」
「キュイ!」
「キュ?キューン!」
カップル成立したのだろうか片方がノソノソと背中に乗り始める。
乗られているのはメスだろうか。少し恥ずかしそうにモジモジしたその瞬間。
ドォォォォン!
「キュ…」
爆炎に飲まれて跡形もなく消え去った。
リア獣爆破した。
「ギャーギャー!」
「グォォォォ!」
「キィ!キィ!」
森は突然の爆発と燃え上がる爆炎によって大混乱を起こしていた。
衝撃波で木々は粉々になり、落下してくる太い幹が下にいた魔物を押しつぶし、
逃げ惑う狼型の魔物の群れは落ちてきたナパームに焼かれて火だるまになる。
森は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
「ハハハ!見ろ!森がゴミのようだ!ハハハ!
おっと」
逃げ惑うサイクロプスの目の前にアストレイの姿でヒーロー着地を決めた。
「グ…グガァァァァ!」
あまりの殺気にサイクロプスは怯み、必死で逃げようと背中を向けて走り出す。
「ハハハ!どこへ行こうと言うのかね?ハハハ!」
ブォンッとサーベルを抜くと
一気に距離を詰めて両脚の腱切り付ける。
「グガァァァァ!ガァァァ!」
前のめりに倒れ込んだサイクロプスは突然襲った激痛に身悶えしている。
「散々手間を焼かせてくれたな貴様ら…そんなお前達に地獄を用意してやったぞ。楽しんでくれたまえよ」
「グッ…グヒィ…」
大きな瞳に涙を浮かべて恐怖に震えている。
「さよならだ」
とどめを刺そうとしたその瞬間
背後から凄まじい威力の熱線が放たれた。
「ウェーブシェード!」
即座に左腕を背後に伸ばすと熱線が軌道を逸らしサイクロプスを直撃した。
「ガッ……」
サイクロプスがいた場所は大きく抉れ跡形もなくなっていた。
「おぉおぉお前酷いやつだな〜お仲間に当てるなんてよ。遅かったじゃねぇかクソトカゲ」
「ゴガァァァァ!!」
全身から金色の閃光を放ちながらその漆黒のドラゴンは怒り狂った咆哮を放つ。
「お怒りだろうが、俺もお前には頭に来てんだよ。ここで決着をつけるぞクソトカゲ!かかってこいや!」
「ガァァァ!」
ドラゴンは挑発に応えるかのように一気に地上に向かって急降下してきた。
「ひるまねぇよバーカ!」
アームに装填された2門のランチャーと2門のミニガンでドラゴンを打ちつつ後方に飛び上がる。
ドラゴンは地上スレスレで浮き上がり、そのままバリアーで弾幕を弾きながら一直線に勢いを殺さず追ってくる。
「ほらほらどうした!お得意のブレスもっと寄越せよ!!」
キィィィン…ビィィィィ!
収束された熱線が高速で飛ぶアクセレイを追うように放たれる。
「ハハハ!そんなもんか?しっかり狙えよ!クソエイムが!」
ブレスを曲芸のように回避しながら避け続ける。
「今度はこっちの番だ!」
前方に干渉光線を放つと地面が盛り上がり、石壁を形成し、形成の隙間を縫うようにすり抜けて壁を完成させた。
ズドォォォン!
しかし、ドラゴンは突然現れた障壁に怯むことなく石壁に体当たりして粉砕し追撃してくる。
「ゴガァァァ!」
「おぉ!さすが!でも一回だけじゃないんだな〜これが!」
アクセレイの飛ぶ進路上に次々と高い石壁が形成される。
「グガァ!」
ドゴォンドゴォンと石壁を避けることなく体当たりを続けて突破してくるが
その勢いにも陰りが見えてきた。
バリアに弾かれた粉塵や破片が一部、鱗に当たってきているのを見逃さなかった。
「そこぉ!!」
すかさず手持ちのブラスターをその隙間に撃ち込むと
今まで弾かれていた弾が吸い込まれるようにドラゴンに直撃した。
「そこでこう!」
ドボォォンと爆音を上げて着弾した部位が大爆発を起こした。
「ギャアアアア!」
ブラスターの弾はベクター粒子の塊。着弾と同時に粒子干渉を起こし、干渉域をコントロール下に変える。
今回は爆薬に変え爆破させたのだ。
流石のドラゴンも衝撃波と痛みで体勢を崩して、勢いのまま地面を勢い良く転がった。
バリアは完全に消失していた。
「畳み掛ける!」
俺はそのまま反転しドラゴンに向かって高速飛行しながら
サーベルで力一杯両翼を切り付けた。
「グガァァァァ!ギャオオオオ!」
自慢の翼を真っ二つにされたドラゴンは怨嗟の叫び声を上げ、尻尾を大きく振りかぶった。
「グハッ…!」
尻尾は目にも留まらぬ速さで俺を直撃し、地面に叩きつけられた。
「クソ…クソトカゲがぁぁぁ!くたばれぇ!!」
左手で抑えつつ右手を突き出すと空間が歪みながら空気を切り裂くような甲高い音と共に
青白い粒子が収束を始める。
同時に下段のアームが地面に固定され、ブーツが地面にスクリューで固定される。
「喰らえ!収束干渉粒子砲!」
凄まじい閃光と衝撃波を撒き散らしながら、白く光る熱線はドラゴンを飲み込んだ。
「ゴ…ガ……」
ゴゴゴゴゴ…
着弾と同時に核爆発を起こしたかのような衝撃波と爆煙が立ち上り、ドラゴンのみならず周囲で燃え盛る木々を蒸発させてしまった。
衝撃波と閃光が止んだ頃
俺の周り以外は全てガラス化して焼きただれ、地形が変わっていた。
収束干渉粒子砲の衝撃をウェーブシェードで受け流していたのだ。
「終わったな…」
ドラゴンがいた場所に近寄ると土の中からキラリと光るものがあった。
「魔石か…これを受けても蒸発しないとは…一体何で出来てんだこいつは…」
黄色く輝くサッカーボール大の魔石はズッシリと重かった。
それを次元コンテナに収納すると上空へ飛び上がった。
「あーあ、こりゃナパームを使うまでもなかったな。」
上空から見た森は爆心地から綺麗に放射状に巨大なクレーターができており、端から端までかつての大森林は跡形もなく消し飛ばされていた。
「ご主人様!ご無事ですか!?」
拠点付近で待機していたメイド部隊が飛び上がってくる。
「あぁこの通りだ!ドラゴンは倒した。お前達は大丈夫だったか?」
「え…えぇなんとか…ハハハ…親衛隊も無傷とのことです。」
フィールドのお陰で衝撃波と熱を受け流せたようだ。
「セントラル。森林内の生体反応は?」
『地中に約150、地上ならびに上空にはありません。』
「その地中の魔物の脅威度は?」
『分析中…いえ生体反応はほぼ微弱、脅威とはなり得ません。親衛隊に残党狩りを指示します。』
「頼んだぞ」
その後、親衛隊の活躍で大森林の魔物は駆逐された。
俺たちはそのままその足でセファダンジョンへと向かったが
ダンジョンの上部構造は跡形もなく吹き飛んでおり
瓦礫の山ができていた。
「ハァ…やりすぎた…仕方ない縦穴を開けて入るか…」
干渉光線で例の遺物がある部屋に直通の縦穴を開けつつ降りていった。
部屋に到達すると違和感があった。
「あれ?なんか光が弱まってないか?」
明らかに最初見た時よりも光が弱くなっている。
「爆発の影響でしょうか?」
ファーストが首を傾げた
「それもありそうだが…今までの経験からいくと、こいつが生み出したらしい魔物を殲滅したせいじゃないか?
加えてあの爆発のダメージで弱くなったのかもな
まぁいいや!いずれにしても今やどうでもいいことだ!」
俺は居合わせたメイド部隊と親衛隊に向き合った。
「さて、いよいよ俺たちは大森林をでる!色々あったがそんなことは今はどうでもいい!
憎き魔獣どもも鬱陶しかった森も全て灰にしてやった!
今ここから俺たちの物語は始まるんだ!」
「「「おー!」」」
「よろしい!では…」
俺は光り輝く遺物の前に立つと両手で遺物を掴む。
ゆっくりとそれを台座から退けると、急激に光が落ち着いた。
ブゥゥゥゥゥン………
この場に満ちていた謎のエネルギーは遺物と共に弱まりやがて消え去った。
「これが…遺物か…全ての元凶にして、俺を苦しめてきた根本…」
艶やかに怪しく光る水晶のような質感、そして何と言っても目を引くのがまるでその形状が恐竜の頭蓋骨のような形状なのだ。
「これは…頭蓋骨でしょうか?」
「綺麗ですね〜」
メイド達がマジマジと遺物を観察している。
「セントラル、これをどう思う」
『不明ですが、内部から件のエネルギーの対流が見られます。またバリアは解かれたようです。』
「そうかお前でも分からないならお手上げだな、よし一度拠点に戻って後片付けしたら外に出るか!」
俺たちはダンジョンを後にすると本拠点に戻ってきた。
拠点の入り口には焦げた倒木や瓦礫が引っかかっていたので周りを軽く掃除した。
中に入ると、案の定衝撃のせいかものが落ちたり割れていたので
それも片付けた。
数時間後、片付けが終わった頃にはもう辺りが暗くなってきていたので今日は寝て明日旅立つことにした。
寝床に着くと、天井を見つめた。
「やっとか…ここも長かったな…そう思うとなんか無性に寂しくなるようなならないような…」
「眠れませんか?」
ベッドの横で座っているメイドのフォースが顔を覗いてきた。
茶髪の癒し系巨乳お姉さんだ。
「いや、やっと出られると思ったらなんか無性に寂しくなってな」
「そうでしたか。ならご心配なく…いつまでも私たちがご主人様のお側にいます。」
そう言うと横に座って手を包み込むように握ってくれた。
「あり…がとう…」
そのまま吸い込まれるように眠りについた…