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4 修行するぞ修行するぞ修行するぞ


ドラゴンとの遭遇から約1年半、俺はひたすら森に潜ってモンスターを討伐していた。


「「ブモォぉぉぉ!!」」


ドドドドドと地面を揺らしながら木々の間から猪のような動物が大量に押し寄せてくる。


『猪型の大群です。数51』


「おぉーいるね!お仲間をステーキにされて怒ってやんの 今日は剣術の特訓だから干渉攻撃も銃も要らないからな」


『了解致しました』


俺は何度もこのデカい猪を狩ってきたので性質をよく知ってる。

猪のくせにコイツらは肉食で集団意識が強く、いつも群れで動いて獲物を探しているのだ。


さっき見つけたコイツらのはぐれ個体を捕まえてステーキにしてやったら案の定臭いを嗅ぎつけた個体が群れを引き連れて襲ってきたのだ。


怒り狂って突進してくる先頭の巨大な猪の真正面から大きく跳躍し首筋を切り付けた。


「ブモァ!」


猪は鮮血を噴き上げながら前方に転がって行った。


「まず1つ」


続けて後続の3頭も大きく横に跳躍してから突撃し、胴を足場代わりに蹴り付け掠めるように首を切り付けていく。


「2つ、3つ、4つ」


4頭目を切り付けた後、後ろの5頭目に向かって大きく跳躍し 

背中の真上に着地、そのままサーベルを頸椎に突き刺して離脱した。


「ブモァァァァ!」


急所を突かれ悲痛な叫びを上げて体勢を崩して勢いのまま転がっていく。


その調子でサーベル一本で一撃も食らわずにキッチリ51頭の巨大猪を仕留めた。



「こんなもんかな よししまっちゃおうね〜」


次元コンテナに猪をしまい終わると拠点に帰還した。


解体部屋に入ると次元コンテナから仕留めた猪をどさっと解体台に乗せた。


「今日は大量だったな〜いい加減狩り過ぎて肉屋開けるレベルだぞこれ…」


あれから1年とちょっと

最初に建てた拠点を本拠点にして、各地にハブ拠点を作っては探索を続けていた。


ここは最初の拠点から5km東に進んだ所にある地下拠点だ。


近くに川があり、魚も獲れる。

それにこの森にしてはそこそこ眺めがいいのだ。


最初の拠点は森のほぼど真ん中にあるのでそこから放射状にハブ拠点を建てている。


この森の生態系は奇妙で、ほとんどの生物が獰猛で攻撃性が高く、オマケに強い。


半径10kmの巨大なドームの中に押し込められているかのように生物がひしめき合っているせいか生存競争が激しいらしい。


半径10kmは分かりやすく言えば東京都心の主要な地域が大体収まるくらいの範囲である。


一々拠点に帰るのも面倒なのと、たまに見かける例のドラゴンからの襲撃を回避するために、地下にハブ拠点を作ってそこに寝泊まりしているのだ。


ベクターの適合率も当初より遥かに向上し、それをコントロールする訓練のために森を切り開いて道路も建設していた。


最初は木を切り倒すだけの粗末な道だったのが、今や舗装路が敷かれている。


それと同時に森の開拓も行って見通しを良くしていた。

森をきちんと手入れすることで、視界を確保し行動しやすくするためだ。


まだ始めたばかりで全体の20%程度しか終わっていないがこれを進めれば修行もしやすくなる。


この1年半の間、ベクターをコントロールするための訓練、実践的な戦闘訓練などをひたすらやって腕を磨いていた。


「あれから1年半…結構強くなったと思わないか?」


『はい、マスターは今や私がサポートせずとも大型の個体も一撃で倒せるほどまで成長致しました。とても逞しくなられたと思います。』


そう、なるべくセントラルの力に頼らずに訓練をすることで

本当の自分の実力を鍛えてもいたのだ。


「だよなー お、あったあった」


猪の胸の辺りから赤いルビーのような尖ったキラキラとした鉱石を引き抜いた。


この鉱石は森のモンスターの体内に共通して存在することが分かり、砕けていない限りなるべく集めておくようにしてあるのだ。


「多分俺の予想だとこれは魔石、ファンタジーだとあるあるの設定だな。この世界ではなんて言うか知らんが、この森を出たら多分高値で売れるはず…なんだが果たして外の世界に文明はあるのかね…俺あんま期待してないんだけど」


確かにファンタジーだと魔石は高く売れたり、武器の強化に使えるみたいな設定はよくあるが、俺の場合まず人っ子一人いない森の中に閉じ込められているため

外の世界がどうなっているのかを知る余地はない。


そもそもこんなモンスターしかいない世界だったら最悪だ。


この森の各地には確かに文明の名残が残っていたので知的生命体がいることは確かだが

いかんせん名残程度のものでしか無いので期待できない。

年代測定の結果、どれも数百年前のものだった。

その中でも最初の拠点近くに遺跡らしきものが気になっていた。


ただでさえ見通しが悪く、表面も苔やツタで覆われていたので最近まで気が付かなかったのだが、それは確かに巨大な人工物だった。


数ヶ月前に中に入ろうとスキャニングを行った結果

内部に生体反応が多数あり、今のままだと危険と判断したため今まで保留にしていた。


「あの遺跡はなんなんだろうな?そろそろ確かめに行ってもいい頃合いだと思うんだけどセントラルはどう思う?」


『はい、今のマスターであれば可能かと。まず親衛隊を派遣してはいかがでしょうか?』


親衛隊とは、ベクターを使って生み出したボディーガードである。 

人間ではなく俺の体をベースにした戦闘アンドロイドで、制限付きながらも高度な意思決定ができ、人間に近い感情もある。

戦闘だけでなく、雑用もこなせるため非常に便利な存在だ。


いかなる環境でも休息なく活動できるため、この森の調査、作業、拠点の警護任務に就かせている。


戦闘能力は俺に勝らずとも劣らないが干渉攻撃はできない上、アクセレイと違って装備は全体的に黒をベースにしており所々違うフォルムになっている。

もちろんマスクを脱げば人間の顔が出てくるが全員同じ中性的な顔立ちだ。


人間のように会話が可能だが、絶対に命令に背くことはできないように調整してある。


ただいくら高度な意思決定ができると言っても認識の違いで大惨事を招いたり、人を不快にさせてしまう恐れもあるため俺をベースに作ったのだ。


例えば、敵だと思っていた相手が実は勘違いで敵対していただけで、実は味方寄りな人物で重要な存在だったと言うシュチュエーションがあったとして


単純な意思決定しかできないロボットなら迷わず撃ち殺してしまうかもしれない。

しかし、ここに人間さながらの思考回路と感情を加えることにより

俺が不在でも相手とよく対話して情報を聞き出したり、和解出来たりする可能性を増やすことができる。


ただし、あまりにも感情豊かだと任務に対する不信感を持ったり、敵に騙されたり、勝手に意図しない判断を下すなどの不都合が生じるので

そこら辺の感情や思考パターンはよくよく検証した上削ぎ落としてある。

彼らはまるで狂信者のように俺に対してなんの疑いも持たずに服従し、かつ常に死ぬ気で休まず働くちょっと表情が乏しいだけのかけがえのない存在だ。




「そうだなとりあえず親衛隊に小隊を編成させるか。そうと決まれば明日起きたら派遣しよう。今日はもう飯食って寝るわ サード、ご飯の用意お願いね〜」


「かしこまりましたご主人様!」


待機していたサードと呼ばれたメイドは解体部屋からささっと出て行った。


サードはメイド服姿の栗色の瞳とボブカットの女の子の姿をしており、主に俺のお世話係で護衛としても働いている。


彼女は5人いるお世話係り兼護衛のアンドロイドの1人で

彼女たちのリーダーであるファーストを中心に組織されているメイド達だ。


それぞれ個性的な見た目と性格をしており、親衛隊よりもはるかに人間に寄せて作ってあるのでほぼ人間と言って差し支えない。

その代わり戦闘力は親衛隊と同等で、最も俺に近い護衛として機能している。

親衛隊とは別組織だが、ポジション的には彼らの上位に位置している。


装備はメイド服っぽいデザインを取り入れているため変身しても親衛隊と見分けがつきやすい。


と言うのも、ただでさえ忙しい俺の1人では生活が回らなかったのでお世話係が欲しかったからだ。

しかもこの森には人間が存在しないため外部から雇うと言ったことも不可能だし

話し相手がいないのも精神衛生的に悪いので限りなく人間に近い存在が必要だと思ったのだ。


彼女たちは俺の身の回りの世話をしながら、雑用をこなしたり狩りについて行ったりして貰っている。


親衛隊にしろメイド達にしろ、これを実現できたのもベクターとの適合率がかなり高くなってきたおかげだ。


最初の頃はステーキすらろくに作れなかったのが、今やアンドロイドのような複雑なものを作れてしまうようになった。

完全に適合したらどうなるのか結構楽しみでもある。



俺はメイド達が用意してくれた夕食を食べ、床についたのだった…



翌朝、完全武装の30名の小隊を編成させて遺跡に派遣させた。



『マスター、なぜアクセレイになっているのですか?』


「そりゃもちろん、不足の事態に大将が居ないのはマズイだろ?」


俺は着いていく気マンマンだった。


だって未知の遺跡踏み込むんだよ?しかも森のど真ん中の。

何も無いわけないでしょうが!


『ですが、ここは指揮のためにも後ろで控えているべきではないでしょうか?』


確かに指揮を取る人間が前線に出るのはいささか危険だ。

戦闘に気を取られて大局を見誤るかもしれないし、討ち死にするリスクもあるからだ。


「だからといってあんなドラゴンが出てくる森だぞ?最高戦力の俺がいなかったら全滅する可能性だってあるんだ。そう考えると妥当な判断だと思うけどね。」


本音を言えば結構心配なのだ。

と言うのも彼女たちを作る上で


『…了解致しました。万が一のことがあれば護衛に即座にマスターを連れて撤退するよう命令しておきます。』


「よろしい!諸君参ろうか!」


小隊が空高く飛び上がると、俺も護衛のメイド達と共にその後に続いた。


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