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2 男のロマン

-異世界遭難5日目-


あれから1日かけて俺のちゃんとした服と住居が完成した。


森のゴミで作ったシェルターは、ちょっと小洒落たログハウス風の家に変わっていた。


間取りは1LDK。


憧れの一人暮らしがここにあった。


服は地球にいた頃によく着ていた水色と白の裏起毛フーディーと紺のワイドパンツ、歩きやすいエアマックス、それに白のキャップだった。


こんな危険な森でそんなカッコで大丈夫かって?ノンノン…


俺にはコレがあるのだ…


「よし、初のお披露目だ!試運転も兼ねて盛大にやるぞ!!変身!!」


全身を青白いベクター粒子が這うようなラインを描き、白い光が増幅した。


螺旋を取り入れた流線型の身体に全身を走る青白いライン。

鋭角なラインの楕円を三つに水平に輪切りにしたような頭部が光を反射して鋭く輝いている。


『アクセレイの起動完了…干渉率120%を維持…粒子循環問題ありません。動作テストを開始』


「各関節動作確認…ん?ちょっと指と膝の関節がキツいなもう少し当たりを修正してくれ」


『了解致しました。』


「視界も良好、拡大率異常なし…ほっ」


その場で何度かジャンプしたり、身体をブラブラさせて異常がないか確認する。


「よし、基礎動作はクリアだ 次は本命…飛行動作確認だ」


『了解致しました。バイタル異常なし 大気、空間、重力への干渉率良好、いつでも飛べます。』


「アクセレイ行きまーす!!」


真上に大きく跳躍すると飛び上がった。


外装が空気抵抗の少ない飛行モードへと変わり、引き締まった見た目になる。


弾丸のように空気を切り裂きながら時速は500km/hに到達した。


『高度2000…2500…3000に達しました』


「この辺でいいか…おお、外気温が0℃か寒さは感じないな 外装に異常ないか?」


『異常ありません しかし現時点の最高高度である10kmに達する頃は外気温が-45℃前後へと達します。』


「分かった!データ収集込みでどのくらい行けるかやってみよう!」


再び飛行モードになり、より空の高みへと飛び去った…




『マスターお疲れ様でした。いいデータ収集ができました。』


「お疲れセントラル いや〜このスーツ凄いな〜気圧も気温もへっちゃらだ それに飛行モードだと空気抵抗も少ないから音速以上でも難なく飛べる、自壊もしない

言うことなしだ。うぅ…」



『ありがとうございます。お役に立てて光栄ですマスター。』


飛行能力を手に入れた俺は大満足で感極まって泣いていた。


『ですがマスター、戦闘評価も必要ですので早速テストを開始しましょう。』


「あ、そうだったな…感極まってたわ…じゃあまずVサーベルからテストするか」


内側の手首から白い剣の柄が射出され手に収まると、青く光るビームが伸び光刃を形成した。

ベクター粒子圧縮収束サーベル略してVサーベル。

我ながら名前ダサいな…まぁヒーローものって大体名前ダサいからまぁいいか


ブォンブォンと振り回しながらラグがどのくらいか確認する。


「おお…すげぇ…男の夢だ…ラグもほとんどないなまるで真剣を振ってるみたいだ」


ビームと言っても柄の延長上に高密度で固定されているため、ブレたり空気抵抗で減衰したりせずしっかりとした重さと実体、手応えがある。


練習用の木に振ってみると木は一瞬で真っ二つになった。


「いいねぇ!次はこれだ!」


その場でVサーベルを振ると光る斬撃が放たれ、今度は100m先の木を真っ二つにした。


「これこれ!コレがやりたかったんだよ!」


『Vサーベルは了解のようですね。次は銃器のテストをしましょう。』


背部に銃のパーツが出現し勝手に組み上がっていく

まるでアクション映画でプロのスパイが滑らかな手つきでライフルを組み立てるシーンみたいだ。


数秒で組み上がった銃は背中のアームに固定され、肩越しに渡される。


同時に組み上がったマガジンが腰に装着された。


『マスター一つ質問なのですが、なぜわざわざ整備済みの銃をそのまま出現させないのですか?』


「何言ってんだ、男のロマンだぞ?いいか?ただのライフルがウィーンて出てくるより、組み上がりながら完成するシーンがあった方がカッコいいだろ?」


『しかしマスター そんなことでは敵の強襲にあった際に隙を与えることになります。』


AIっぽい奴に「変身シーンや必殺技のタメで待ってくれる敵なんていない」古典的なロマンぶち壊し理論を諭されてしまいちょっとイラッと来た


「知ってますー!もちろん急な戦闘の時はそんなことしませんー!ふんっ!これだからロマンを知らない奴は…

いいか!男はな!無駄にデカい兵器とかな!カッコいいけど無駄な動きにロマンを感じるものなんだよ!分かったか!」


『理解しかねます』


そう男の子は幾つになってもそう言うものが大好きなのだ。

時代遅れの大艦巨砲主義とか、馬鹿みたいにデカくて強い巨大ロボットが大好きなのだ。


それから数時間後

武装のチェックはあらかた終了した。


これでいつ敵が来ても安心だ。余裕を持って対処できる。


ちなみにこの武装は別に変身しなくても生身で出せるし使える。

あくまでもスーツは環境耐性や防御力を向上させるための箱なのだ。


最後にやるのは名付けてオーバークロックの実験だ。


これは某ヒーローから拝借した能力だ。


能力は至極単純。

光に近い超高速度で活動できる能力だ。

自身の干渉率を高めスーツ内の肉体を完全に粒子化したゆらぎ状態にしたのち

大気に干渉して真空のバリアを張り空気抵抗を無くすと同時に時間に干渉し自身の周囲の時間の流れを一時的に変える仕組みだ。


コントロールが難しいため長時間の使用は厳しいがこれを使えればかなり戦闘に有利になる。


この能力の恐ろしいところは、仮に敵に干渉した場合

潜在干渉率が閾値に達すると敵の時間までも操作できるところだ。


アンダークロックと名付けたこの能力は

戦闘中に相手の動きを超スローにでき、一方的に叩けるのだ。


しかし使うエネルギーは相応なので、周りに十分な物質が必要である。


ただし、いずれにしても時間を完全に止めることはできない。


「オーバークロック…」


アクセレイの身体が瞬時に消え別の場所に現れた。


シューと言う音と共に真空状態とゆらぎの状態が解除される。


アクセレイが通った道は深く抉られておりエネルギーとして使用されたようだ。


「成功だ!」


『おめでとうございますマスター』


「うん確かに消耗が激しいな…質量が足りない…これじゃあ一回使うごとに周りの物質が無くなっちまうから、危険だし居場所もバレやすくなる…

セントラル何か良い解決策はあるか?」


『提案があります。時空に干渉し、亜空間にある程度の土砂や岩石を溜めておくのはいかがでしょうか?そうすればこの空間内の質量を消費するリスクが減ります。』


「そんなことできるの?それ良いね!本来なら小惑星みたいな密度が高い物質の方がいいんだけどな…バリアーあって出られないし土砂で我慢するか…」


『では次元コンテナと呼称します。収納物を管理するため、亜空間にセルを形成します。マスターが欲しいものを考えればいつでもセルから必要なものが取り出せるように致しました。』


「おぉ!ありがとう!そうだよな同じ空間に入れてたら混ざっちまうからな そうだ!その中は時間の流れがあるのか?」


『いえ、ありません。あえてそのための亜空間をこちらで選択いたしました。この空間に収納された物体の時間は止まります。』


「それは結構 これで肉を腐らせたりする心配はないな」


次元コンテナ…なんて便利なんだろう

しかも大質量の物体をいくらでも入れられる。

おまけにセル毎に分けられてゴチャゴチャ混ざる心配もない。

ベクター粒子ヤベェな…


「それにスキャニングと言い、レーダーやら、ウェーブシェード…ワープ、転移…なんでもありだな

ほんとスゲェわ…物質どころか空間や時間にすら干渉できてコントロールできるのか…

もしかして死人を生き返らせることも…?」


『理論上、可能です。』


「マジかよ!神じゃん!もはや神の御業だろそれ どう言う理屈なんだ?」


『死者を復活させるためには手順を踏まねばなりません。

まず一つ、対象が生命活動している際に精密なスキャニングを行い生体データや記憶データを保存します。

次に、肉体を再構成します。

最後に高度に言語化し翻訳すれば次元の狭間、もしくはガンマ次元…いわゆる冥界の精神エネルギーを捜索し干渉

再構成された肉体に定着させれば完了です。

成功確率は極めて低いですが…理論上は可能です。』



「なるほど…つまり相手のデータさえあれば出来ることは出来ると…改めてセントラル

お前はスゲェよ…」


『お褒めに預かり光栄ですマスター』


その時、レーダーに感があった。


『マスター。11時の方向から高速で接近する物体あり。数は1。警戒してください。』


「…!分かった、離れて様子を見よう」


5時方向に飛び上がるとスキャニングを開始した。


「なんだこれ…これはまるで…」


スキャニング結果を見た俺は目を見張った。

真正面から高速で突っ込んでくる物体は見覚えがあるフォルムをしていた。


「ドラゴンだ…しかも超デカい…」


この世界に来て初のドラゴンとの対峙だった。

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