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雑魚寝の魔女

あれから家に帰った俺は適当に食っちゃ寝して過ごしていた。


結局ギルドで依頼もこなせずに変な女に絡まれて散々な一日だった。


まぁ良いのだ。この寝心地のいいソファーで適当にだらけられるのは最高だ。


森にいた頃は拠点なんて簡素な作りだったが、この屋敷には一流の品が揃っている。

家具にせよ装飾にせよ何もかもが上等だ。

ルームサービスも完璧。

言うことなしなんだが…



なんかさっきから外がやかましい…

嫌な予感するな…


カーテンの隙間からそっと門の方を覗くと…


「出てこい!変態!居るのは分かってるのよ!!」

「困ります!お引き取り下さい。ここは女王陛下の私有地です。」

「くっ…変態!聞こえてんの?…アンタが出て来るまでここに居座り続けてやるわ!」


やっぱお前かよ…


さっさと帰れ


案の定、レリアがいた。

しかも俺を出せと門番と揉めている。

実はさっきメイド部隊には連絡してあったので、今はいつでもアイツを撃退できるように待機させている。


ここは放置だ。

流石に王女の屋敷には入って来れないだろうし、明日には居なくなってるだろう。


………


それから1日経って朝起き庭を散歩していた。


ちらりと門の方を見ると誰も居ない。


「よかった〜帰ったんだ……な………?」


違和感を覚えた俺は角度を変えてよく見てみると…


「スヤスヤ…」


【いるゥ!】【いるゥ!】

【うそだろぉー?】【キモすぎぃ】【だる】

脳内でだるスタンプが連打された。


マジでまだ居やがった。しかも路上に雑魚寝って…

乙女云々言ってたやつがやる事じゃない。


なんか目腫れてるし…もしかして泣いてたのか?


まぁ無視でいいか…

回れ右して帰ろうとすると後ろから殺気を感じた。


「ようやく出てきたわね…」

ズゴゴゴと殺気のオーラを纏ったレリアがゾンビめいてユラユラと立ち上がった。


「あ、おはようございます。雑魚寝の魔女さん」


何かがプッツンと切れた音が聞こえた気がした。


「ん誰が雑魚寝じゃあぁぁぁぁ!!よくもこの私を寒空の下無視したわねぇぇぇ!!」


いやお前が勝手に座り込みしてただけだろ。

ほら見ろ門番さんも困ってるだろ。


「まぁまぁ落ち着けって黒下着の魔女さん。俺を試そうと迷惑かけた罰だ。これに懲りたら二度と関わってくんな。」


「くっ…私のこと馬鹿にしてぇ…辱めて……うっ…うぅ…」


なんか泣き始めてしまった。

マジでダルいってコイツ…


「はいはい、今日は忙しいからさっさと帰れ」

「ちょっ…なっ…キャア!」


レリアの足元の空間が裂け吸い込まれていった。


送り先はルベールのギルドだった。

ここから馬車で4日かかる距離だから当分帰ってこないだろう。

それに今日は大事な来客が来るのだ。

変な女に邪魔させるわけにもいかない。


レリアをルベール送りにした後しばらくすると一台の馬車が門から入ってきた。


「お、来たみたいだな」


馬車が止まると中からは軍服のような制服を着た真面目そうな若い小柄な女性が降りてきた。

耳がとんがってる。エルフか。


「こんにちは。私はサリル・アスタール。王国保安局、組織犯罪対策部のものです。陛下のご命令で赴きました。」

サリルは敬礼した。


「(王国保安局…この国の警察みたいなもんか)これはサリル殿、ようこそお越し下さいました。私はレイ・キサラギ、ここの主人です。では中へどうぞ」


屋敷の前には礼服を着た親衛隊が整列しており、物々しい雰囲気だった。

これはちょっとした力のアピールでもある。


いくら女王の関係者とはいえ、あまり弱そうだと舐められるだろう。


執務室に案内すると護衛を外に出してドアを閉めた。


「さて、改めましてようこそお越し下さいました。お茶菓子はご自由に」


「では、遠慮なく」

サクッとクッキーを食べると一瞬顔が綻んだのを見逃さなかった。


「お気に召されましたか?帰りにお土産をご用意しましょう。」


「…遠慮なく。ではこちらの資料をお渡しします。」

サリルは何事もなかったかのように取り繕った。


俺は渡された資料をすぐにスキャンし、セントラルに解析させる。


なるほど、通信で聞いた通りだな…

だがこれは…


「サリル殿、この地図はもしや…」


紅茶を啜っていたサリルはソーサーを置き、口を開いた。


「はい、奴隷商が関係していると見られる賊に襲撃されたポイントです。」


やけに点が田舎に集中している。

それも隣の亜人の居住地区の中で…


「なるほどな、今のお目当ては王国内の亜人ですか…」


「その通りです。近年亜人の奴隷の流通量が急激に増えています。

ご存知かもしれませんがこの王国は今まで奴隷を労働力として使うのが当たり前でした。

奴隷の入手ルートは今までは主に占領した敵国の兵や民間人です。


しかし現在の王政では前王のような領土の拡張をやめ、領土の保全に務めています。

そのため奴隷が手に入らなくなった奴隷商たちは入手ルートの模索を始めました。


そこで目がつけらたのは亜人達です。

彼らの一部は人間と共生関係にあり、文化、社会に溶け込んでいますが

一部の亜人達は人間とは距離をとり、独自の自治区で生活しております。

これは王国の権威が及ばない完全に独立した自治区なので我々では手がつけられません。


なのでその自治区周辺で罠を張り、その亜人達を襲撃、拉致しているものだと思われます。」


「そうですか…では奴隷商を片っ端から摘発して捕らえては?」


「それが難しいのです。最近では摘発を免れた奴隷商たちが連合を組み、組織を地下で拡大しています。」


「まぁそうなるだろうな。ああ言う奴らは規制を強めれば強めるほど地下に潜伏してより検挙しにくくなる。」


「その通りです。ですが先日、数年に渡る潜入捜査の結果リーダー格の存在が浮かび上がりました。」


サリルはスッと資料を出した。


「セルシオ・エビド、元Sランク冒険者の男です。二つ名は暗黒のセルシオ。闇魔法のエキスパートでありながら武術にも長けた凄腕の冒険者でしたが、要人を多数殺害した罪で投獄されギルドからも永久追放されました。しかし、数年前に脱獄し行方をくらませていました。」


「脱獄犯か…それで?なんでこの男だと分かったんですか?」


「地下組織に潜伏していたこちらの捜査員が、奇跡的にリーダーと接触する機会があったそうなのです。接触はほんの数分だったそうですが、間違いないようです。」


「なるほど、それでその地下組織の数と規模と分布は?」


「それはこちらを…」

また違う資料を出してきた。


「えーと、組織は3つ…血の盟友、漆黒の牙、鎖と首輪…構成員540、600、400…中々の規模だな…分布は…結構広いな…王都にもそりゃいるよな」


先日接触したばっかだし…


「分かった。取り敢えずやる事はより正確な情報を集める為の内部調査だな。力を貸そう。」


「ありがとうございます。私共ができるのは情報提供くらいですから…」

そう言うとサリルは少し俯いた。


「いえ、情報こそ武器です。とても心強いですよ!」


「え?そ、そうですね…ハハハ」

サリルの頬が少し赤くなったのは褒められたせいだろう。


俺はクッキーの詰め合わせをお土産にサリルを見送った後、本格的に作戦を考えていた。



「こう言う奴らを叩くときは同じタイミングで同時に奇襲をかけるのが一番だな…

俺の世界の麻薬組織もそうだったように奴らはマジで耳が早い。民間人も巻き込んで情報収集するから少しでも情報が漏れればあっという間に逃げられる。なるべく気がつかれずに奴らの情報を探るには……アレしかないな」


空間が裂け中から大量の羽虫や鳥が出現し窓の外へ一斉に王都の空へ羽ばたいていくのであった…


「俺の目から逃れられると思うなゴミ共…」



-某所地下-


薄暗い地下には血の匂いが満ちていた。

両腕を縛られ吊るされた青年だったものには生気はなく、顔には涙の跡が残っていた。


もう1人の女は無表情でその青年を見つめた。


「…違うわ…またやったのね。それはあなたが探すべきものではないわ。契約を忘れたのかしら?」


女は腕を組みながら目の前に転がる男を見下していた。


「貴様と俺の契約…契約…契約…」


薄暗い地下道で金の装飾があしらわれた黒装束を着た大男が突出した血走った目をギョロギョロさせながら無様に地を這っていた。


「それに誰も殺せなんて命令はしてない。契約も守れないような駄犬は…いらないかしら?」

「グファッ…!」


大男は苦しみの声を上げると何か見えない力で押されているかのように地面にめり込んだ。


「契約は…守る…ぐっ…俺にチャンスを…くれ…」


「これは躾。フフフちゃんと契約、守ってよね。」


女はそう言うと忽然と暗闇に消えていった。


「ハァ…ハァ……リリア…ヒヒッ…必ず…俺の…」


地を這う男はその不気味な瞳で闇を見つめるのであった。


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