11 駆逐の魔女
翌朝俺は王都のギルドに向かった。
エデンフリルから馬車で30分行った隣町のローグには王国の強者が集まる冒険者ギルドがある。
馬車を降りて中に入ると作り自体はルベールのものと大差なかった。
だが明らかに冒険者の質や装備が違う。
そして何よりも皆それぞれ強者のオーラがあった。
やはり王都のギルドは一味違う。
そして俺に刺さる視線の鋭さも一味違った。
なんかめっちゃ見られてる。
「ねぇあの人…」
「例の丘の上の冒険者じゃない?…」
遠くからヒソヒソとどう考えても俺のことを言ってる声が聞こえる。
まぁいい、事実だしな。
依頼が貼られた掲示板を確認していると横にいた女性から声をかけられた。
「あ、すみません。もしかしてあなたは噂の冒険者さんですか?」
見ると、赤紫のローブに、とんがり帽子を被った魔女っぽいルックスのプライド高そうなお姉さんだった。
めっちゃスタイルが良い。
「え、えーと噂とは?」
「ほらあのエデンフリルの丘の上の屋敷に引っ越してきたって言う冒険者さん!あなたでしょ?」
なんでこんなに噂が早いんだか…
「あーそうですね。俺です…」
近い!顔が近い!かわいい!
「やっぱり〜!あの噂本当だったんだ〜!」
ん?
「えーと、あの噂とは?」
「惚けないでよ〜王女様の間男って噂!」
「あーハハハ、間男………間男!?」
何でそうなるんだ!!間男だと!?
待てよ…確かに無名の冒険者がいきなり女王の別邸を与えられるのは不自然だ…
いやしかし間男って!!
俺はただ王女をヒモにしてるだけだぞ!
ちょっと待て…これってかなりヤバいんじゃ……
「あの清楚な王女様がねぇ〜まさか禁断の恋をしていたなんて〜キャー!」
なんかグネングネンしてキャーキャー言ってる。
「違いますよ!俺と陛下はそんな関係じゃありません!!」
「否定するのぉ〜余計にソレっぽいわよ〜」
ぐっ…この!小学生のイジリか!
「マセガキが…死ね!」
「ぶっ殺してやる…」
「クソが…俺たちの王女様を汚しやがって…」
「2度と勃たなくなる呪いをかけてやる…」
男どもの殺気が刺さる刺さる…
最後のはマジでやめろ
「ふふふ!紹介が遅れたわね私はAランク冒険者のレリア!見ての通り魔術師よ!」
「楽しかったって……ゴホン…俺はEランク冒険者のレイだ。よろしく」
「えぇ!?Eランク?ププッ…王女様のお気に入りがEランクって……ブフォ…」
かなりイラっときた。
「えぇそうですけど?最近登録したばっかなんでね!こう見えても元ランクAをボコボコにした実力はありますけど何か!?」
我ながらクッソダサい…イキリ不良中学生みたいだ……
「Eランクだと?じゃあ俺でもボコれるよなぁ…」
「ヒヒヒ…罰を受けさせてやる…」
「おい、お前!面貸せやぁ…」
周りのイカツイ男たちがゾロゾロと俺を取り囲んできた。
「私はこれで失礼するわね〜頑張って〜」
レリアはニヤけながらささっと男たちの間を縫って逃げた。
あの女……初めからこのつもりで…
「テメェEランクなんだってなぁ…ちょーとボコらせろやぁ…」
イカツイ男たちが顔を近づけてメンチを切ってくる。
他の冒険者もヤジを飛ばして完全に俺はアウェーだった。
「良いけど俺に喧嘩売ってきたってことはそう言うことで良いんだよな?」
「あ?ハハハ!そう言うことってまさか俺たちをブッコロチテヤル!って言いテェのか?」
「「ヒャハハハ」」
「そう言うことだ。」
「は?うぉっ!」
グンッと指を上げると突然男たちの身体が宙に浮いた。
そこから握るような動作をすると男たちの首がギリギリと閉まっていく。
「ガ…グ…」 「ゲ…」「グヒ…」
5人の男達はジタバタしながら首を必死に掻いているが、段々と顔に紫の斑点が浮かび上がり男達は泡を吹いてガクンと気絶した。
ドサドサッと折り重なるように倒れてビクンビクンと痙攣している。
「さてと…まだやりたい奴はいるか?」
周りを見渡すと今までヤジを飛ばしてた奴らが視線を合わせないようにしている。
が、逃がさない。
「そこの前列のやつ、こっち来な」
「うわ!!やめろ!!」
「くそ!!」
「ヒィ…!」
特に煽りが目立った前列の奴も全員把握していたためそいつらを引き摺り出して逆さずりにしてシェイクしてやった。
「アババババ…」「グホッゲェェ!」「ややややめめめめてててて…」
シェイクが終わると床はキラキラ塗れになり、またもや気絶してしまった。
「さてと、そこのお前!ソレ片付けとけ」
「うぷ…は、はいぃ!」
1人だけ目が覚めた男を掃除係に任命した。
すると奥からまたもやレリアがやってきた。
「あなた凄いのね〜見直しちゃった!」
「ソレはどうも。で、まだ何か?」
レリアは悪戯っぽく笑うと言い放った。
「あなたと模擬戦がしたいわ!いいでしょ?」
「は?」
何言ってんだこいつ…
「あなたに興味あるのよ〜!だってあなたが今締め上げたバカ男達はどれもランクC以上!そこで伸びてる奴なんてランクBよ?
ソレを一捻りなんて只者じゃないわ!」
「まぁ…うっす…」
ちょっと照れくさかった
「じゃあやるわよ!タミさーん!模擬戦場借りるわよ〜」
タミさんと呼ばれた受付嬢が困惑した様子でいた。
「えぇ!?今ですか!?えーと…ちょっと待ってください…あー空いてますけど…」
「じゃあ決まりね!今すぐ使わせてね!はいこれ代金!」
ジャラッと机に使用料を乗せると俺の手を引っ張ってヅカヅカと模擬戦場に入って行った。
「おい、あのレリア様があのEランクと模擬戦だってよ!行こうぜ!」
「久々に面白そうだ!!俺はレリア様に賭けるね!」
「バカだな。こういう時は負けそうな方に賭けた方が美味しいんだよ!」
次々とギルド内の冒険者達が模擬戦場の観客席へと駆け込んで行った。
どうしてこう面倒な奴に絡まれるんだ…
-模擬戦場-
観客はルベールの時と比べ物にならないほど多く、皆が何かしら飲み食いしながら盛り上がっていた。
「これより!駆逐の魔女レリアと無名のルーキーレイとの模擬戦を開始する!!
両者!礼!!」
全くやる気のない俺とやる気満々のレリアは軽く一礼した。
「では始め!!」
始めじゃねぇよ!!
「こっちから行くわよ!!ハァ!!」
いきなりレリアは腰のレイピアを抜くと先から特大の火炎を放ってきた。
「うお!危ねぇ!」
まだ変身してねぇんだぞ!!熱いだろ!!
俺はギリギリ火炎をかわした。
「アレを避けるなんて!ならコレは!」
今度はめちゃくちゃな突風が砂埃を巻き上げながら空気と地面を切り裂きつつ放たれた。
「あぁクソ!変身!!」
身体に青いラインが入り白く発光すると同時に突風を直で受けた。
「あら?当たっちゃった…ん?何!?」
砂埃が晴れるとそこには青く光るアクセレイの姿があった。
「大層なご挨拶ありがとな!今度はこっちの番だ!」
指先から干渉光線を放つとレイピアに当たり
レイピアは青く光る煙と化して霧散した。
「え!?なんで!?剣が…」
あからさまに狼狽えているが俺はこの試合を一瞬で終わらせるつもりだった。
「終わりだ、オーバークロック」
周りの景色が止まっているかのようにスローモーションになると
俺は距離を詰めてレリアの鳩尾に1発当てついでに干渉光線を放った。
「アンダークロック」
「がは…」
オーバークロックが解除されると同時にレリアの身体が吹っ飛び壁に叩きつけられた。
レリアはピクピクと痙攣しながらガクンと項垂れた。
あれだけ盛り上がっていた会場が静まり返る。
「は?な、何が起こったんだ?」
「み、見えなかったぞ…」
「はぁ!?何でレリアちゃんが壁に?」
ザワザワと困惑が会場中に広がると気を取られていた審判が試合終了の号令をした。
「し、試合終了!!勝者!レイ!!」
観客から歓声が響き渡る…はずもなく罵声が浴びせられていた
「ふざけんな!!俺の金返せ!!」
「ズルしただろ!ずーる!ずーる!」
「レリアちゃん大丈夫か!?……は!?」
観客は気が付いてしまった。
レリアの服とローブが消え、セクシーな黒い下着が露わになっていることに…
「う、うぉぉぉぉ!!」
「よくやった!ルーキー!!」
「ありがたや…ありがたや…」
「ちょっと!!審判!!服着せなさい服!!」
「見んな!男共!」
当のレリアはまだ目を覚さないのだが、罵声から一点
俺への賛美と女性達の悲鳴が響き渡った。
気絶しているレリアの元に行くとそそくさと担いで会場を後にしたのだった。
-数分後-
俺はギルドの控室でボロボロになったレリアと2人きりで睨み合っていた。
「ぐぬぬ……!」
顔を真っ赤にしながら身体を隠すように体育座りをしたレリアが悔しそうに拳を握っている。
「俺の勝ちだね〜レリアさん?」
「あんたねぇ!」
ヒュッと平手打ちをしようとした手が頬を掠める。
「当たらないね〜ねぇ今どんな気持ち?悔しい?恥ずかしいの?駆逐の魔女さ・ま?」
「グギギギ……こんなことしてタダで済むと思ってんの!?」
レリアが鬼の形相になってとんでもないオーラを放ち始めた。
「おっと〜怖い怖い。じゃ!そう言うことで!寒そうだから服と装備は返してやるよ。対あり〜」
空間が裂けるとさっさと退場した。
「なっ…!空間魔法?…あんの野郎……殺す殺す殺す殺す…殺してやるわぁぁぁ!!」
「ひっ!…」
レリアは速攻で服を着るとバァン!と控室のドアを蹴り飛ばすと
周りの冒険者達が蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「乙女を汚した罪…ぜっ…たいに探し出して償わさせてやる…変態仮面がぁ!!」
レリアは鬼の形相のままギルドを飛び出ていった。
「な、何だったんだ…?」
冒険者達が顔を見合わせて破壊されたドアを呆然と見ていた。
それが俺と駆逐の魔女ことレリアとの最悪な出会い。
俺はこの先この面倒な女に付き纏われることになるのだった。




