量産
まっすぐと前を見据えながら運ばれる。
そうする事自体に意味は無い。ただ、そうしなければベルトコンベアから落とされるのだ。
前後に並ぶ彼らや左右のレーンに居る彼らと同じ真っ白な衣服で同じ姿勢を維持したまま立っている。
やがて明るみに運ばれ、工場の外へと至った。空を覆う雲はどんよりと重々しく日の光をにわかにしか通してこなかった。
この時には自分と似たり寄ったりの周りの連中との違いが最早分からなくなっていた。
仕方ないので周囲に合わせて同じ方向に歩を進めた。どこに向かうのかは私の知る由ではないのだが。
その人の波をかき分ける人物が視界に映った。まっすぐと歩くその人物とやがてすれ違う。自分の『色』と自身をもった彼は堂々と反対へと歩いて行った。