神と夏休みを送らされるので、誰か助けてください。
この学園生活を続けて、もう一ヶ月も過ぎた。8月、普段は家でゴロゴロしているところだが、今は学校に閉じ込められている。特に何もすることなく、授業を受ける日々が続いている。その後、中三の神崎さんの提案により、脱走できるか調べたところ、抜け道はなく、門もなぜか倍以上に高くなっており、助けを呼んでも誰も来なかった。
「なあ、何で俺たちまだ授業を受けてるんだ。もう8月だぞ、そろそろ夏休みに入らせてくれ」
「それはあなたの信仰心しだいです」
またこれだ。いい加減この答えも飽きた。
「神様~。聖書にも求めなさい、そうすれば与えられるって書いてありますよ?」
「そうですね、ですがあなたには信仰心が見られません、信仰心がない方はこの学園から出すわけには行きません」
まるでロボットだ。何度も何度も求めても同じ答え、本当にこいつ神様か?
「ですが確かにそうですね。少しくらい休みを与えましょう」
お?マジか!
「ですが条件があります」
「...?」
はあ、久しぶりの外。8月なので非常に暑いが、それでも外にでれたと思うと涼しく感じる。
「お前がいなければなあ」
「久しぶりの外是非楽しんで」
勘弁してくれ。
神が持ち出した条件とは、神の分身を俺と同行させること。これなら無理やり9月に学園に戻せる。
「ひどい夏になりそうだ」
手始めに、ファストフード店にやってきた。
「一応聞くけど、他のみんなには神の姿は見えないんだよな」
「もちろん」
聞いたことにしか答えない。本当にロボットだ。
「知らないメニューだ」
「?お客様どうかされましたか?」
「ああ、いえ、何でもありません」
つい、口に出してしまった。
「じゃあ、ハンバーガーを一つセットで、飲み物はアイスコーヒーで」
「かしこまりました」
よかった。世界は何も変わっていない。
「おい神様、俺の目の前でマンガ読むのやめろ」
この神本当に神なのか。ラノベ書くし、マンガ読むし、授業はへたくそだし、ウザイし。
「さあ、気にしないで食べなさい」
神風に喋ってもマンガ読んでたのバレバレだからな。
「まあいいや。いただきます」
いつもの味だ。美味い、マックってこんなに美味かったっけ。
「これ、お前が出す料理より美味いぞ」
「マジで!?」
「マジだよ」
やっぱり神は嫌いだ。こういう所を見ているとさらにむかつく。
ファストフード店を後にした俺は、まず家に帰った。
「ただいま」
母と父もいない俺は、アパートで一人暮らしをしていた。久しぶりに帰った家はなぜか心地よく感じた。
もう、今日は寝よう。
時刻はすでに8時になっていた。この部屋では、ゆっくり休みたい。
布団を出し、寝ようとした。
「待ちなさい。まだ、お祈りをしていませんよ」
「ええ、ここでもやんなきゃだめ?」
「ええ」
くそ、ゆっくり休みたいときに、このクソ神は。
「えーと、天にいらっしゃいます父なる神様」
いまは俺の前にいるが。
「今日一日あなたがそばにいてくださり、私を守っててくださったころを感謝します」
いや、もう本当にそばにいなくていいから。やめてくれ、うざい。
「これからもどうぞよろしくお願いします」
「この祈りを主イエスキリストの名によっておささげ致しますアーメン」
「アーメン」
どうか君の分身が明日には消えてますように。
電気を消し、寝た。睡眠は、数少ない俺の好きなものの一つだ。神を見なくてすむ、そして何より、体が落ち着く。すばらしい時間だ。ずっとこの時間が続いてほしい...いやさすがにそれは死んだも同然だ。やめてほしい。
朝。
来てしまった、最悪な朝が。
「...いない」
あたりを見渡すが、やはりいない。
「まじで...神、いないな」
静かな朝だが、その日の朝は最高の朝になった。
「よっしゃああああ!!!」
神は消えた。