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神の最初の授業を受けさせられるので、助けてください。

 礼拝から、帰ってくると、教室にはベッド、本棚、そして普段使っている机とは別に、もう一つ机がありその上には弁当と紙が置いてあった。弁当の中身はパン、ハンバーグ、スクランブルエッグ、サラダ、洋食だ。飲み物も置いてあった。中身はブドウジュースだ。弁当の横には手紙があった。「これは神からの賜物、神に感謝していただきなさい」そう書いてあった。

 「神からの賜物ならさすがに毒は無いよなあ・・・いただきます」

 俺はまずスクランブルエッグにケチャップをかけ、口に入れた。普通だ。普通に美味いスクランブルエッグだ。毒は無い。

 「俺は和食派だから、米くらいはほしかったんだけどなあ」

 朝食は普通に美味かった。ブドウジュースを飲んで普段使っている席に座った。

 黒板を見ると紙が貼ってあった。時間割とこの学園生活の注意事項だった。

 「1時間目から4時間目まで聖書かよ、だるいな」

 しかもそれが毎日だ。4時間目が終わったら五十分の昼休みがあり、そこで弁当がまた支給されるらしい。その後の二時間で五教科の授業をする、そういった内容の時間割だった。今日は月曜日なので国語と英語だ。

 もうすぐ9時だ。そして1時間目も九時に始まる。注意事項を読むのを忘れていたが無視をして席に座った。

 キーン、コーン、カーン、コーン、

 予鈴が鳴ったと同時にあの神が入ってきた。

 「それでは授業を始めます。田宮君、号令を」

 「起立」

 まあ号令なんかしなくても、一人しかいないしあまり意味は無いんだけどね。

 「気をつけ。礼。よろしくお願いします」

 そう言って俺は頭を下げた、授業が始まった。この学園生活最初の授業だ。

 「では田宮君、突然だがあなたに問います。たとえば目の前にとても貧しい人がいるとします。その人にたくさんのお金をあげました。では、幸いなのは金を与えられた人間ですか、それとも与えた人間ですか」

 そんなものは簡単だ、金をもらった側・・・ではなくて。

 「金を与えた側の人間です」

 「ほう、ではなぜですか」

 聖書に書いてあるから。だがそれは聖書の意見であって俺の意見じゃない。

 「金は、使えばすぐになくなる、どんなに長く金を保管で来ていても、生き残るにはいつかその金を使わざるを得なくなる。貧しい人ならばすぐに使わなければならなくなる。対して与えた人間は違う、自分が行った行為は消えない。その人間がいいことをした事実は消えない。その人は幸せだ、だっていいことをしたのだから。その人は満足だろう、俺はそう思う」

 「いい答えだ。あなたの言うとおり、この場合与えた人間は幸いです。あなたに言っておく・・」

 「受けるよりも与えるほうが幸いである、だろ、それくらい中学で習った」

 母だ、この聖書箇所を教えてくれたのは母だった。母はキリスト教の信者だった。俺はあの人の話を毎日聞かされていた。この箇所は中学のときに教わった。母は今頃何をしているのだろう。

 「では、あなたに一つ聞きます。その聖書箇所を反例をあげて、否定しなさい」

 「なに?」

 まさか、この神は何を言っているのだ。聖書の箇所を否定しろというのは、自分を否定しろと言うのと同じだ。こいつは俺に否定されてほしいのか。そんなはずは無い、たとえ神だろうと自分の考えは否定されたくないはず。だがまあそれを言わないと始まらないしやってみるか。

 「たとえば、ある貧しい人間がいました、その人は仕事も無く、金も無く、飢え死にするか盗人になるかを選ばざるを得なくなりました。そんな時ある人がやってきてこういいました『仕事を与えてやろう、どうせ飢え死にするくらいなら、私と一緒に来なさい』と言いました。貧しい人は喜んで彼について行きました。この場合貧しい人間は盗人や飢え死に以外の選択肢を選ぶことができ、さらに自分が仕えるべき人間に出会ったんだからその人は、幸いと言える。こういう反例がある、これでどうですか」

 「すばらしい回答です。確かに仕事を与えられたら嬉しいし幸いだと考えることもできますね」

 何だこいつ。自分の考えを否定されて嬉しいのか。そうしたらただのMだ。いったい何がしたいんだ。こいつは。

 「おや、もうこんな時間ですか、時が進むのは速いですね」

 時計を見たら、もう九時四十九分、もうすぐ五十分の授業が終わる。

 「次の時間、この話の続きをしましょう。時間はたっぷりあります」

 キーン、コーン、カーン、コーン、

 予鈴が鳴った、一時間目が終わった。俺は礼をして。十分の休みを取った。そして次の時間。彼が、イエスがその話をすることは無かった。いったい何がしたかったのだろう。なにか足りなかったのだろうか。そんな疑問を抱えながら、四時間目が終わってしまった。

 誰か、助けてください。

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