第六章
真斗と共通の友人は僕を悪として見ている。誰もが、喧嘩のことを知っていて、喧嘩の原因を知っている。喧嘩の原因を知らないのは僕だけだ。
真斗には何度も謝罪の言葉を述べた。けれど真斗は「怒っていない」の一点張りで、許しなど得られなかった。否、僕は何を甘えているのだろうか。
許しを請うなど自己満足だ。僕は真斗との仲を戻すことなどできない。そして、真斗は僕がしたことと同じことをしているのだ。
愚痴を吐き出すことは誰だってすることだ。それが、誰も見ていない筈のSNSのタイムラインか、周りの友人にかは問わない。けれど確実に誰かを傷付けるのだ。僕はそれを知っている。身をもって、どちらの気持ちも理解した。
友人の視線が怖くなって、誰かと話すことが怖くなった。いつの間にか、真斗と共通の友人とは会わなくなり、大学にもいかなくなった。
謝罪を繰り返すだけの自己満足も諦めて、毎日、吐き出せなかった言葉が喉の奥で腐っていくのが分かる。腐った言葉が僕を蝕んで、僕の首を絞める。けれど僕は死ねない。どこにも逃げられない。緩く首を絞められたままで、生きづらいままで死んでいくのだ。
誰にも関わらない。誰が真斗と繋がっていて、誰を傷付けるか分からないのだ。
僕は無自覚に他人を傷付けて、他人を殺してしまう。それならば、最初から関わるのはやめよう。きっと、また真斗のように傷付けてしまうのだ。
器が小さく醜い僕は制御できない。感情をどこかにぶつけて、傷付けてけてしまう。
それならば僕は世界に嫌われたままでいい。
僕自身を嫌いなままで、怯えながら暮らしていく方が似合っているのだ。それが、どんなに虚しくて悲しいことでも。けれど、染まり切ることはできないのだ。
誰かを求めてしまう。だから、最低なのだ。
「本日未明、都内に住む20歳の男性が電車に衝突するという事件が起こりました。男性は一カ月前に大学を辞め、進路に迷っていたために自殺をしたのではないかと考えられています。また京浜東北線は三時間の運転見合わせを行いましたが、現在は通常に運航している模様です。次のニュースです 」




