妹物は最高だ!
いや、待て良く考えろ、本気なわけ無い……そんならのべ的展開なんてあり得ない。
妹は僕を見つめている、うるうるとした目で見つめている。
これが……演技? う、嘘だろ……どう見ても本気の顔だ……いやいやいやいや待てさっきも言ってただろ、小説のキャラなりきっているって……そうかそうなんだ、今妹はあの小説のキャラに、栞になりきっているんだ。
もう一度思い出せ、あの小説を、あの拙い文章を思い出すんだ。
畜生あの作家、もっと感情とか情景とか場面とか書けよ! 入り込め無いじゃないか、だからパッとしないんだよ!
僕は何であのキャラを好きになったんだ? 黒髪だからか? 綺麗な顔立ちだからか? いや違う、容姿じゃない容姿だったら他にも好きなキャラは一杯いる。
そもそもその辺もいい加減に書いてるじゃないか!
だったらなんだ? なぜ好きになったんだ? それは…………気持ちだ、あの一途な気持ち、お兄ちゃんを愛するあの気持ちだ。
今空はそれを真似している、演じている、そうだこれは演技なんだ。
じゃあ僕はどうすれば……それは、あの兄だ、あの兄の真似をすればいいんだ。
妹を愛している、とことん愛している、しかしそれは兄妹愛、でもあの兄は恐らく妹を一人の女性として、女の子として愛している。
でも……わかっていない、いや……わかっているのかも知れない……
だったら、あの兄ならどうする? こういう時にどうしていた?
「お兄ちゃん……」
妹は僕を見て目を閉じた……怯えてもいない、震えてもいない、ただ自然に目を閉じた。
僕はゆっくりと顔を近づける、妹の顔がどんどん近づいて来る。
そして、左手を妹の頬に、右手を肩にそっと添えた。
ここまでやっても妹は目を瞑ったまま……本気だ、妹は本気を出している。
僕に身を委ね、なすがままの状態になっている。
僕も覚悟を決めた……これは小説だ、僕と妹の妹物らのべ小説なんだ。
僕は主人公になる! らのべ主人公に!!
「ごめん、無理!!」
「はあ?」
妹が目を開き僕を睨み付ける。僕はその瞬間妹から少し距離を置きベンチの上で土下座する。
「すみませんでした!」
そう、僕はらのべ主人公に、ヘタレらのべ主人公になった。
「もう兄ちゃん!」
「いやそんな事言われても、本当にしちゃったらどうするんだ?」
「それはそれで……」
「え?」
「いや、ほんと、らのべ主人公かよ兄ちゃん……もういいよ」
「ご、ごめん」
「ううん、じゃあもうやめる?」
「いや、結構面白かったし、それに」
「それに?」
「お前と空と仲良くなれたのは凄く嬉しいし楽しかった、だからもう少し続けよう、俺達の兄妹の物語を」
「お兄ちゃん……」
「でも、もう少し抑えてくれ、あれじゃさ」
「あれじゃ?」
「本気でお前の事好きになっちゃうだろ?」
マジでやばかった……本気でキスをする所だった。
「私は……兄ちゃんの事……前から……だし」
「え?」
「な、何でもない! 帰ろお兄ちゃん」
「あ、ああ」
「帰ったらじっくり教えるからね! あの小説のお兄ちゃんの考えを、私の理想のお兄ちゃんをね!」
「そ、そんなの、作家にしかわからないんじゃ」
「あの程度の作家の考えなんてどうせ単純だよ、人ってもっと複雑なんだから!」
「そ、そうなのか?」
「そうだよ! ソースは私!」
「はあ? 空ってそんな複雑な事考えてたのか?」
「うるさい、私だって年頃の女の子なの! ほら帰るよ!」
こうしてとりあえず俺達兄妹での妹物の物語り作りは一旦終了にした。
でも終わったわけじゃない、これじゃ僕が一方的に負けた事に……
次は勝つ、妹に土下座させる! よし今日からもっと読むぞ! 妹物を!
妹物は最高だ! だって妹とこんなに仲良くなれるんだから。
とりあえず終了です。
勢いで書いた作品はこんなもんですね……
また頑張ります(・ω・`*)