デートとかしちゃう?
「お兄ちゃん……ねえお兄ちゃんってば」
「ん」
「おーーきーーてーー、起きないと……ちゅう……しちゃうぞ!」
「ちゅう……え、ええええええ!」
「あははは、やっと起きた」
「あ、ああ、おはよう」
朝起きたら妹が目の前に、しかも近い、こんな近くで妹の顔を見るなんて……初めてかも……
「ごはん作ったから食べて」
「え? ええええええええ!」
「な、なによ……変?」
「い、いや……可愛い……」
「ば、バカ……早く起きてよね、下でまってりゅから」
顔を赤らめて照れる妹、しかも甘噛み……これ空だよね? 僕の妹だよね?
「今噛んだ」
「うるさい!」
そう言って僕の部屋を出ていく妹、昨日あれから二人で小説をもう一度最初から読み直し、それぞれの感想をいいあった。
前は僕は妹の事を、妹は兄の事を褒め、それぞれを貶していた。
でも今回は違う、だって理想に近づけてくれるんだもん。こうあって欲しいって言えばそうしてくれるんだもん。
というわけで、真剣に読む、そして真剣に議論する。
どういう妹であって欲しいか、どういう兄であって欲しいか?
幸いな事にモデルはいる。今読んで居る小説の兄妹二人だ。
兄が好きで好きで堪らない妹、妹が大好きで、とことん優しく怒ったことがない兄。
お互い大好きなキャラ、そしてそれを演じてくれる。ロールプレイしてくれる。
こんな楽しい事はない、現実で小説の真似ができる。僕たちのオリジナル兄妹小説が作れる。
早速妹が朝から実行してくれた。
毎朝起こしてくれて、朝食なんて作ってくれたらな~~? なんて言ったらいきなり朝から実行してくれた。
やばい、超可愛いじゃん、なんかちょっとツンデレ入ってる所なんて逆にいい。
でも、妹ばかりにさせたら駄目だ、僕もやらないと。
言っておくけどこれは遊びだ、お互い好きなキャラを演じるという遊びだ。
でも、遊びだからこそ真剣にやらないと、遊びだからこそきちんとやらないと、面白くない。
僕は着替えて身だしなみを整える。まあ、僕はたいした顔じゃないけど、そんなキャラは一杯いる。でも寝起きで髪ぼさぼさ、寝間着で朝食なんて、妹物では中々いない。そんなズボラな兄に惚れる妹なんて……たまにいるけど、母性をくすぐるキャラは居るけど、でも妹はそんなキャラは好きじゃない。
とりあえず綺麗な部屋着に着替え、顔を洗い、歯を磨き、髪を整えてからキッチンに行く。
キッチンのテーブルには、パンとベーコンに目玉焼き、そして二人分のコーヒーまで……
「お兄ちゃん遅いよ~~冷めちゃうでしょ~~」
膨れっ面で少し怒り気味でそう言う。ここでうるせえ、お前がきちんとした格好で居ろって言ったからだろ!
なんて事はもちろん言わない。そんな兄キャラはダメだ。
「ごめん、ごめん、空が作ったんだからおいしく食べたいもんな、お!美味しそう!」
とにかく笑顔で謝る。喧嘩はしない、そして褒める。
「えへへへへ、ちょっと焦げちゃった」
「そうか? 全然わかんない、美味しそうだよ、さあ食べよう」
確かに焦げてる。でもせっかく作ってくれたのに、妹の手作り料理に文句なんて言えない。
朝はごはん派なんだけどね、それも言わない。
でも一緒に食べるのは久しぶり、特に休みの朝なんてまず一緒に食べるなんてない。
基本勝手に起きて勝手に食べる。
一緒に朝食、妹の手料理を一緒に……うわ……なんか本当に妹物のワンシーンだよこれ。
感動に打ち震えながら朝食を食べる。 よし! 次は僕の番だ、優しい兄が兄の事を大好きな妹にしてやれる事……それは……
「空、今日は何か予定ある?」
「ううん、特にないよ?」
「そうか……じゃ、じゃあ……デートしよっか……」
「……え?」
はい、聞こえてない振り~~ラノベ主人公か!お前はヒロインだろ!
だけどそんな突っ込みはしない、もう一度今度は優しくはっきりと……
「えっと、その……嫌じゃなければ、一緒にどこかに……」
あれ? なんか反応が、やりすぎた? ロールプレイは家の中だけとか思ってた? やばい引いてる?
「ど、どこにかな?」
いや、違う、照れてるんだ、そうか妹は完全になりきっている。やるな空、じゃあ僕はもっともっと優しく。
「あ、えーーっと、空の行きたい所に」
「ほんと!」
「ああ、うん」
「じゃあ……公園に……」
「公園?」
「うん、引っ越す前、小学生の時に二人で遊んだ公園に……一緒に行きたい」
はい!来ました~~~~思い出の公園来ました~~~~!!
うわ、今の萌えた……やばいドキドキしてる。
「じゃ、じゃあ食べたら行こうか……」
「うん!」
思い出の公園デート……やばい、妹がどんどん可愛くなってきた。
本日は終了、また明日更新します。