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久遠の刻  作者: 犬崎 エイジ
1章 Will To Live
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ウサギ(2)

少し間が空いてしまいました。

 レッドウィングを後ろをついていくと歩くと清涼感のある香りが鼻をつく。

 リンナは衝動的に彼の背中へ抱き着いてしまった。


「はッ、くぅぅぅ」


 この毛ざわりと途端に幸せな感触がリンナの体を駆け巡り、身を溶かしていく。

 柔軟剤でも使った毛布のように良い手触りに思わず喘ぎ声が出てしまう。


――いやぁ、気持ち良すぎるぅ……このまま流されちゃったら私どうなるの?こんなの耐えられるわけがないわ。


 毛皮の海に飲み込まれて徐々に身動きが取れなくなり、最後には彼の毛の感触に包まれながら潤んだ目で彼を見上げていた。

 レッドウィングにやれやれとため息をついた。

 半ば引きずられるようにして中庭へと移動していった。


「さぁ、離れて。今からB-NETへの入り方を教えるよ」


 無理やり引き()がされ、ようやく理性を取り戻す。


――この毛玉危ないわ。うかつに近づかないようにしないと……


「僕の可愛さの虜になってしまったようね。まったく僕も罪づくりなウサギだよ、うん!」


 小憎らしいが否定しきれないところがある。

 愛そう笑いを浮かべることしかできない自分が悔しい。


「さあ、いまからリンナちゃんにはB-NETへもぐってもらうよ」


「えっと、でも危ないんじゃないの? だって操術師って仕事が成り立つのはB-NETが……」


「今回に限っては危険はないよ! B-NETが危険なのはね、合わない操術を身につけてしまった時だけなんだ。前回のリンナちゃんの操術を使うだけなら大丈夫!」


ウサギは身振り手振りをしながらコミカルに話す。っといっても顔は着ぐるみのソレなため表情に変化はないのだが……。


「まずは頭の中で扉をイメージするんだ。形は何でもいいよとにかく扉であればね。イメージができたら次は鍵、その扉が開く鍵……ね」


 目を開けたままでは無理そうだったのでリンナは目を閉じた。

 言われたとおりに扉をイメージする。自分の身長の十倍はあるような扉をイメージしてその扉が開く鍵をイメージした。


「じゃあその扉に鍵を指して…………開けて!」


 レッドウィングが開けてと叫んだ瞬間に扉から真っ白な光が噴き出してきた。

 それはリンナを瞬く間に包み込んでいった。


☆☆


「リンナちゃん起きて」


 目を覚ますと、三十センチほどにまで縮まったウサギがふわふわと宙を浮いていた。


「無事B-NETに入ることができたね」


 今いる場所は真っ黒な空間で、中心に銀色の球体が置かれていた。

 ここが扉の奥? B-NET?

 現実世界ではありえないことがこのWill To Liveでは起こせるようだ。


「この球に触ってみて」


 いわれるがまま触ると、青くて透明感のあるウィンドウが開く

 そこには文字が浮かび上がった。


・機能検索

・操術師名検索

・--------


 B-NET内での検索機能のようだ。一番下のメニューは灰色になって選べないようだった。


「操術師名検索でリンナと打ち込むんだ」


 言われるがままにすると目の前がゆがんでいき、気が付くと建物の前に居た。


「ここがリンナのエリアだよ」


 目の前の家は先ほどまで居たクオンの家に酷似していた。表札を見るとリンナと書かれていた。

 そこにも先ほど銀色の球があった。触ると先ほどと同じようにメニューが表示される。


・リンナの操術(17851)

機能検索


 機能検索とはリンナの操術を絞り込む機能のようだ。()は数字? 多すぎて同しょうもない数だ。


「そっか、リンナちゃんは記憶がないんだったね。わかった僕が決めてあげる。 えっと何が欲しいんだっけ?」


 そういって、ふわふわと球体の前まで来て、両腕を動かしだした。


「塔に向けてなんだって必要なのは戦闘用だとおもう」


 少し待つと世話しなく動いていた腕が止まる。


「これなんかどうかな?」


・フルインパクト

・アルファバンカー


 名前だけ見てもよくわからないけど、レッドウィングの事を信用することにした。


「じゃあ、この名前を強く押してみて」


 リンナが二つの単語を強く押すと文字が凹んだ後灰色になった。


「うん、それでいいよ。じゃあB-NETを出て試してみようか。 戻るときは来た時と同じように扉を開けるイメージをすればいいよ」


 来た時よりも早くイメージできたと思う。扉の中から溢れだした光を浴びていたら元居たクオンの家の中庭に戻っていた。

 いまいち実感がない。こんなことで本当に操術を習得できたのだろうか。


「戻ってこれたね。 じゃあ、フルインパクトを試してみようか、操術を使うのに呪文や道具はいらない。そうだな……思いっきり地面を叩いてみなよ。手が潰れちゃいそうなくらい思いっきりだよ?」


「え、そんなことしたら私の腕が折れちゃう……」


「大丈夫! この僕が保証するって……ね?」


 そんなことしたら、私の腕が折れちゃうと思ったけど、だまされたと思って殴った。

 ドゴーン

 一瞬の痛みと共に、すさまじい音で地面が破裂した。

 土煙が舞い、続く若干の浮遊感、大地が残る振動

 それらが落ち着いた手回りを見渡すと自分を中心に半径10メートル、深さ1.5メートルほどの中心に立っていることに気づいた。

 これを私が?

 砂埃に塗れてもなお美しさを保った顔が驚愕に歪んでいた。

 ふと嫌な予感がして殴った腕を見ると……腕は粉々に……なっていなかった。

 無傷というか、これは再生している? ゴキゴキという異音と共に骨は修復され、真っ赤に変色していた皮膚も見る見るうちに再生している。十秒も経ったら壊れた腕が元通りになっていた。


「これが前回の君が好んで使っていた攻性操術、フルインパクト 簡単に言ってしまえば拳が粉々になるほどものすごい威力で殴るパンチってところかな、それも再生機能のおまけつき、単純にして明快、うん! リンナちゃんらしい操術だね」


 こんなもので人を殴ったら、ミンチになってしまうんじゃないだろうか。

 これはだいぶ手加減しないと危ないかもしれない。


「あとアルファバンカーは防衛操術で攻撃に対する耐久力が上がる、まあ強い衝撃を受けたときに発動する……うん! やっぱりリンナちゃんは最強だね」


 なんだか化け物にでもなった気分だった。ウサギの太鼓判に複雑な心境のリンナであった。


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