表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレインムーブ  作者: トミー③
第零章 ?
1/99

プロローグ

追加で投稿します。

「……ふぅ」


 目覚めると、私の目の前には白い天井が広がっていた。それは懐かしくも見慣れた景色だった。

 あれからどれくらい経っただろう。

 時間の概念のない天界では、時の流れが曖昧だ。

 体の傷も癒え、力の源である信仰力も回復している。と思う。

 私は天界に連れ戻されると治療を受け、すぐにここに放り込まれた。

 この部屋は、禁を犯した者を放り込むために作られた、いわゆる独房というやつだ。しかも、放り込んだ者の力を封じる術式が組まれた特別製だ。

 しかし、天界に独房があると言うのもおかしな話だ。禁を犯した者は天界から逃亡するか、処罰を受け消滅するのが常だ。もしくはコキュートスに落とされ、罪が償われるまで氷漬けにされる。

 その為、ほとんど使用される事のない施設と言える。

 私のように抵抗を諦める者がいない限り、使うことはなかっただろう。


「皆は無事だろうか」


 皆を護るためとはいえ、力を振るってしまった。その所為で見つかり連れ戻された。

 私は間違ったことをしたとは思っていない。後悔もない。

 しかし、気掛かりなことがある。

 残してきたあの娘の事……。

 私の所為で、天罰を下されないかと不安で押し潰されそうだ。

 そうさせない為、私は抵抗せず戻ったのだが……。


コンコン


 扉がノックされた。


「面会だ」


 面会? 一体誰だ?

 独房に入って来たのは、ウエーブのかかった薄ラベンダー色の長髪、程よく筋肉を纏ったすらっとした体躯、一際目を引くのは6(つい)12枚の翼を背負った男だった。

 その男は、私を捕えるために部隊を率いていた男だ。


「お前か。皆は、あの娘は無事なのか!?」

「心配は無用だ。神は慈悲深きお方。無為に命を奪ったりはしない。無論、娘の心配も無用だ」

「そうか、よかった……」


 私は心の底から安堵した。


「私は、どうなるのだ?」

「厳しい処罰は免れないだろう。あの娘と再会することは二度とないかもしれない」

「そんな!?」

「当然だろう。お前は堕天したのだ。本来なら存在の消滅もあり得る」

「くっ……」

「とはいえ、お前は貴重な存在だ。消滅という事はないだろう」

「……俺の能力故、ということか?」

「そうだ」


 我々はお互いの能力を知っている。そして、その優位性も。だからこそ、この男の言葉が真実なのだとわかる。


「しかし、お前をそのままにしておくことも出来ない。記憶を消され、浄化されることも考えられる」

「記憶を!?」

「あくまでも私の推測だ。審判は神が下される」

「そう、だな……」

「……覚悟だけはしておくことだ」


 男はそれだけ言うと、独房を出て行った。

 あの男が言うのならそうなのだろう。あの男は私に最後通告をしに来たのだろうか。

 どんな審判が下ろうと、神の意思に逆らうことはできない。もし逆らえば……。

 私の命運もここまでか。


「しかし、私は……」




◇◇◇


 ―――神の間

 床は白一色で壁はなく、頭上には青空が広がっている。

 目の前には太陽を背に神が立っている。陽の光で表情を見ることはできない。

 その両脇には5人の天使が立ち並んでいる。

 神は私に言い放つ。


「お前は記憶を消され、新たに生まれ変わる。異論がなければ沈黙をもって答えよ」

「……」

「うむ」


 神は私の額に触れた。


「同じ未来を辿らぬようにな、ラミエル」


 私は神の慈悲の光に包まれ、肉体は光に融け込んで行った。



 神は……私に罰を下した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ