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朱染戦姫の大剣  作者: クロル・N・ロイズ
少女期
11/19

お願い

 町に着くまでの道は酷かった。日本の道路が恋しい、揺れの少ない乗り物が恋しい。

 いくら恋しくても過ぎた前世(過去)は仕方がない。私は今を生きているんだから、と格好つけても揺れはどうしようもないから気分は最悪だった。

 でも初めて見た町は思っていた以上に驚いた。もうちょっと汚いかと思っていたし……。

 それから冒険者組合に向かい約束をしていた人たちを見つけた。

 私が見つけたのと同時に相手も見つけたのか私より先に声をかけてきた。


「本当大きくなったな嬢ちゃん。俺たちが来れなかった間に背が伸びたんじゃないか?」

「育ち盛りですから伸びますよ。それより約束を守ってくれてありがとうございます。今まで色々教えてくれてありがとうございます」

「ちゃんと報酬は貰ったから気にすんな。それに王都まで一緒に行くことや、案内もまだだ」


 私がガインツさんたちにしたお願いは、時々村に来て世間の常識を教えてほしいということと、王都までの道案内と王都の案内だ。王都まで着けたとしても学校までの道がわからなければ試験を受けにいけないからね。

 前もって受けることを申請しなくていいから、当日までには着かないといけないのだ。

 ガインツさんたちがいれば少しは安心ができる。


「案内お願いします。ケイネスさんも、クラリスさんもお願いします」

「僕が案内できる場所は微妙だと思うけど頑張るよ」

「任せておいてアリシアちゃん。絶対にいい場所案内するから」

「凄く楽しみにしてるね。あと薬草とか売れる場所とか知らない?」


 お姉ちゃんから売って生活費の足しにして、と渡されたものを売りたいしね。

 でも、これって薬草の種類だって知らなかった。お姉ちゃんはケイネスさんに教えてもらって知ったとか言ってたし、どういうものなんだろ?


「薬草なら冒険者組合で買い取ってもらえるが、冒険者じゃないと使えないしな。この町を出る前にここで冒険者登録して売るか、王都で登録して売るかだが、どうする?」

「私はどっちでもいいけど、何か違いがあったりするの?」

「登録がどこでしたか程度の違いしかないよ。それで薬草って何を売るんだい」

「レメリナの花ってお姉ちゃんが言ってたのだけど」


 え? なんでそんなに驚いた顔をしてるの?

 やっぱりこれって凄い高価なものだったのかな。じゃなきゃ生活費の足しにならないし。

 でも、こんな雰囲気になられるとちょっと怖いんだけど、どうすればいいの?


「……ちょっとだけ見せてもらってもいいかな?」


 恐る恐るケイネスさんがお願いしてくるから凄い怖いんだけど。レメリナの花ってどういうものなの、私知らないんだけど。滅多に見つからないレアな薬草とかだよね。

 色々と気になるし心配だけど、見せるぐらいならいいだろうし、情報をくれたお礼。


「いいけど、乱暴に扱わないでくださいね」

「それはわかってるよ」


 一応、お姉ちゃんからのプレゼントだから乱暴に扱われるのは悲しい。そんな心配は必要なかったようだけどね。氷付けのレメリナの花を箱から取り出す。

 魔法で凍らせたけど、イメージとしては時間が止まっているイメージだから、魔法を解除したら氷は解けるし中のレメリナの花は無事だ。それにいい練習になった。

 私の想像魔法は色々と試した結果、生きているものの内側にたいして使えないことがわかった。

 止血したりできるから表面にたいして何かできても、回復とかはできないだろう。

 レメリナの花は摘まれたことで死んだことになってたのか、時間を停止させれたから大丈夫。


「……確かにレメリナの花だ。でも、これだと」

「売る時には氷から出すから大丈夫ですよ。それで登録したら――」

「レメリナの花は冒険者組合じゃ買い取れないよ。高価なものだから、王族とか貴族ぐらいじゃなきゃ買い取れないと思う」

「これってそんな花なのか。じゃあ、今は持ってる」


 それならば仕方がないね。売れない以上、売れるところを見つけて売ろう。

 せっかくお姉ちゃんにもらったものだしって、売るのを最初は悩んでいたから丁度いい。でもちょっと気になるからレメリナの花について教えてもらおう。

 じゃないとこれを売る時とか凄い困るかもしれないし、ちょっと気になる。


「でも、冒険者登録はしておくよ」


 冒険者登録は思った以上に簡単に終わった。もうちょっと長いかと思ってたんだけどね。短い分には色々と余裕ができるしいいかな。

 冒険者のクラスの種類は教えてもらっていたし十分だけどね。6級、5級と上がるにつれて上位になっていき1級が今まで聞く最高らしい。昔一人の冒険者は1級の上である特級がいたらしい。

 昔はって言うし、今は死んでしまったのか止めたかのどちらかだろう。

 どっちでもいいし今は王都に行くために宿にいかないと。今日はこの町に一泊する気だから。もちろん冒険者であり女性でもあるクラリスさんも一緒だけどね。

 宿の見た目はよかったけど、久しぶりに湯船に浸かってのんびりしたい。

 濡らした布で体を拭くのは気温が下がる時期はきつい。

 花の月、日の月、実の月、雪の月がこの世界の季節の呼び方だ。十二月分あるけど毎月三十日らしい。一時間が何秒か数えるしかなかったから数えていない。


「どう? 昨日はよく眠れた?」

「よく眠れたけど馬車に乗ると酔うから、気分はちょっと微妙……」

「それは仕方がないからアリシアちゃん頑張ってね」


 励まされたところで馬車に揺られるのは変わらない。気分は下がってるけど、馬車に乗らないといけない以上は諦めるしかない。気持ちが悪くなるのは今更だ。

 それから私たちと違って安い宿に泊まった男たちと合流して乗合所に向かった。私たちと男たちで宿が違ったのは、一応であるが私は依頼人ということもあったから宿を別けたのだ。

 私としてはどちらの宿でもよかったけどね。

 乗合馬車(のりあいばしゃ)は思った以上に利用者がいて驚いた。

 まあ、乗合馬車にちゃんと皆が乗れたし問題ないけど、揺れを思うと気分が……。



   ★   ☆   ★



「…………気持ち悪い」

「アリシアちゃん、吐いたりしたら駄目だからね。お願い、我慢して」


 クラリスさん、お願いされても気持ち悪いものは気持ち悪いんですよ。町に着くまでの道のりに比べると、踏み固められた街道は揺れが少しマシだ。日本と比べれないけど。

 それでもマシだというのは助かる。あの時と同じぐらい気持ち悪くはないからね。


「まあ、仕方がないだろ。慣れない時は気持ち悪いんだ。俺だって何回か吐いた」

「本当にガインツさんは下品ですね。そんなことを言わないでください」

「ガインツさんはもう少し気を使った方がいいですよ。色んな人にそう言われているの、僕は聞いてますから」

「これでも気を使っているつもりなんだけど、お前たち酷いな」

「――っ!」


 ガインツさんたちが楽しそうに話をしていると、急に馬車が止まってクラリスさんの胸に倒れた。思った以上に柔らかく、そして凄くいいにおいがした。でもお姉ちゃんのにおいの方が落ち着く……って、そんなことを考えるより外の状況を見ないと。

 私が周囲の状況を確認しようとする前にのれんから御者が顔を出す。

 なんか焦ってるっぽいな……。


「冒険者の方、お願いします! ゴブリンがこちらに向かってきているんです!」

「ゴブリンか、わかった。……嬢ちゃんも参加しないか?」


 御者が客に頼んだことに最初は驚いたけど、そんなものゴブリン退治に誘われて吹っ飛んだ。

 一応は依頼人だから、と言ってたのに誘うの? 別にいいんだけど、ゴブリン退治に誘うというのはビックリした。

 でも、魔法の練習の成果ってあんまり見てないしいいかも。

 それにゴブリン退治って冒険者っぽい。


「いいけど。……もしかして、魔法が見たいだけ?」

「嬢ちゃんの魔法は凄いと、嬢ちゃんの姉ちゃんに聞いたから気になってるのと……武器を直したりする可能性を減らしたいってのもある。もしかして駄目か?」

「別にいいよ。生物に魔法を当てることはあまりなかったし」

「それなら助かる」


 私の魔法、四年間の成果を見せる時だ。

 もちろん全力でやったりはしない。だって全力は必要ないだろうし。

 なによりこれから使う魔法は、思いつきによる実験だ。

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