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ザーザーと降る雨、僕は一人古本屋で会計を済ませて帰ろうとしていた。
「せめて、雨が止んでくれればなぁ」
傘を忘れた訳ではない。両手にぶら下げた本が心配だった。
袋のなかには、ドイツ語辞典や純文学、宇宙構造についての本など多様な種類の本が入っていた。
僕は魚沼 月
高校で二年に進級して2ヶ月ちょと過ぎたぐらいだ。
名前と生まれつきの中性的な顔立ちということもあってクラスメイトからはつきちゃんとか呼ばれてた。
そんな僕だが、正直言って自分は相当の変人だと思う。
僕は、あらゆる『知』に貪欲だ。
クラスではよく勉強なんかしないで遊びたいとか言う声がきこえるが、僕にとっては勉強自体が遊びだ。
遊びというと聞こえは悪いからこういいかえよう、知識を集めることが一番の趣味だ。
知識を集めるなかで、『知』が宝なら『本』は間違いなく宝箱だろう。そして、その本が安くたくさん売っている古本屋はなんといい表せば良いのだろうか。
外国人作家のハードカバーの本。今後の日本についての政治本。三國志なんかの歴史物。そんな本が半額以下や108円と言う格安の値段でかえる。内容は変わりはしないのに値段は大きく変わる。少し前に流行った端っこグルメのようだ。金銭的にあまりゆとりのない学生にはまさに宝庫だろう。
自慢ではないが、知識量ならなみの大学生を遥かに凌駕している自信がある。
最近はまり出した漫画やライトノベルは昔は敬遠しがちだったが、思いきって読んだら面白かった。多数の人が好んで読むのも頷ける。
今日、買った本のことで浮かれ傘で視界不良になっていたことで瞬間まで気づかなかった。ワンボックスカーが物凄い音を立てながらこちらへと突っ込んで来ることに。
「え?まだ、買って読んでない本あるのに」
意識は暗転した。