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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
第三章・煌~対なる扉、想いの狭間で君を待つ~
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起.護衛

 ある日の事、全員が一つの部屋に集まり、真剣な表情で話し合いを行っていた。


「朧の件だが、おそらく槐を送り込んでくるのは時間の問題だ。相手が何のために、ヒナタを傍に置こうとするのか分からない以上、常に誰かヒナタに付き添ってほしい」


 昴が皆を見ながら話始めると、朔が頷く。


「館内は誰かしら居ますし、ヒナタさんの部屋は睡蓮が結界を張ってくれます。問題は、外出ですね……」

「ずっと館内に居ればいいじゃん」

「煌君、酷い」


 ヒナタを一切見ず、煌は首の後ろで両手を組み、椅子ごとぷらぷらと体を揺らしている。

 しかし、その言葉に朔の眼鏡がキラリと光り、真顔で煌を見据えた。


「では、貴方も付き合って差し上げるんですね? 外出禁止令出しますよ?」

「げっ! 冗談だっての……」


 煌は気まずげに顔を逸らす。

 しかし、昴は意地悪そうに“ニヤリ”と笑うと、立ち上がる。


「決まりだな。ヒナタの護衛はお前だ、煌」

「えっ?」


 昴の発言に煌の動きはピタリと止まり、目は点状になったかのように見開いている。


「俺は常に館で待機する。本拠地が占拠されたら話しにならないからな」

「私は、戦闘が出来ません。外はかなり危険が伴いますから、ここは身体能力と戦闘力が高い貴方が良いかと」


 昴と朔の説明を聞き終わり、煌は先程から黙っている蛍をチラリと見る。


「蛍……」

「…………」


 何も言わず視線をさ迷わせる蛍に、昴はゆっくり口を開いた。


「蛍、お前は朧を知っているな? しかも、ただの知り合いじゃないだろう」

「…………」

「言える所まででいい」

「昴様……」


 昴の言葉に朔は微笑むと、感謝をするかのように軽く頭を下げた。

 その二人をじっと見ていた蛍は、何かを悟ったような“はっ”とした表情の後、意を決して昴を見る。


「朧は……僕の、幼馴染なんだ」

『!』


 蛍の言葉に、朔以外が息をのんだ。

 煌にいたっては、口をパクパクして、言葉が出ない程のショックを受けていた。


 煌君、金魚みたいになってる。

 奈落の民の人達を嫌いな煌君にとって、蛍と朧さんが幼馴染とか理解出来ないんだろうな……私もビックリしたし。


「――――っ! あいつは人間じゃねぇぞ!? 幼馴染ってどういう事だよ!?」

「……人間じゃないとか関係ない。記憶を取り戻してから、昔と今を比べてみても、何も変わってないよ。朧は何か考えがある気がする……無意味にヒナタを連れて行ったりしない」


 煌と蛍の視線が交差する中、昴の冷静な声が響く。


「根拠は?」

「……僕が記憶を無くして、自分を忘れられても、朧は何年も僕に接触して来なかった。一人で封印を守ってくれてた……今回も破滅の神から守ろうとしてくれてると、僕は思う」


 昴は少し目を閉じ悩んだ末、顔を上げた。


「判断を下すには早い。今回は様子を見る……煌、お前が適任だ。これから外出時、二人は一緒に行動しろ。遭遇した際、槐と朧の動向を探れ」

「はぁ!?」

「それでいいな、蛍。状況を悪くしたくないなら、へたに動くな」

「……うん、分かった。ありがとう、昴」


 蛍は微笑んで頷くと、“何で俺が……”と呟く煌を心配そうに見つめる。

 それだけではなく、朔までもがじっと視線を注ぎ、ぶつぶつ言っていた煌がそんな二人に気付いた。


「……」

「……」

「蛍も朔も、んな目で俺を見るな! 文句は昴に言え!」

「……」

「……」

「だあ――――――――――――っ!」


 “ガターン!”と勢いよく椅子から立ち上がる煌。


「分かったよ! やればいいんだろ!? 上等だよ、しっかり守ってやるさ! おいヒナタ、しっかり付いてこいよ!」

「……え? 私?」

「!?」


 あれ、私が煌君に付いて行くんだっけ?


 ヒナタは首を傾げながら昴の方を見ると、昴は目を細めて溜め息をついている。


「付いて行くのはお前だ――――バカ」

「……」

「……えーと、お願いします」


 ヒナタは煌に向かってペコリと頭を下げた。

 しかし、煌からの返答はなく、ただ黙って立っているだけである。


「……」


 煌君固まってる……。


「前途多難ですね……大丈夫でしょうか」


 朔が心配そうにしていると、昴は固まっている煌をじっと見た後に、ヒナタへと視線を移す。


「相変わらず得意だな。ここに居る全員、こいつの固め技の洗礼を受ければいい」

「!」


 あ、すっかり忘れてたけど、“紅葉”の件があった。

 昴さん、今度は――――――。


「……す、昴様――――根に持ってらっしゃるんですね」

「あぁ」


 否定する事なく言い切った昴に、場の空気は微妙な雰囲気に包まれ、それは“俺を放置すんな!”という煌の叫びが響くまで続いた。



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