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泣きたくなるのを堪えて、処刑しますか?と聞いてくるロッテンマイヤーさんを慰め何とか泣いているノアを泣き止ませた時は大仕事を終えた後の充実感に包まれてた。

一息ついていると。


「ところで姫様、先程は何をやっていらしたのですか?」


ロッテンマイヤーさんがメガネを上げながら聞いてきます。


座っていた椅子が壊れて、転げ落ち、起き上がれなくなりました~。

なんて言った日には椅子職人の人生終わっちゃうよね。

私も少し学んだんだから。


「えっと、ちょっと貧血気味っていうか・・・」

「まぁ!姫様。朝もあまり召し上げっていませんでしたものね。すぐに食事の支度をさせますので少々お待ちくださいませ」


ロッテンマイヤーさんは私にニッコリと微笑んだあと、涙は止まったもののまだ震えているノエルを見下ろした。


「何をやってるの。ノア早く用意をしなさい。姫様にひもじい思いをさせるなんて姫様が許してもわたくしが許しませんよ」

「は、はい。只今」


慌ただしく駆け出したノアに顔をしかめたロッテンマイヤーさんは、私を隣室に案内してくれた。


部屋に入ると直ぐにノアと他のメイドが入ってきてあれよあれよという間にテーブルの上には乗り切らないほどの食事が用意されていく。


「気が付かずに大変失礼をいたしました」


申し訳なさそうに頭を下げるロッテンマイヤーさんよりも私は目の前の料理に目を奪われています。

美味しそうだからではありません。

色々とツッコミどころ満載です。

たった今注文されたばかりなのに、この料理湯気出てます。暖かい料理は作りおきでは有り得ない。どういう事だろう。

私は答えを求めるためにロッテンマイヤーさんを見上げる。


「いかがしました?」

「この料理温かいんだけど・・・」

「当然です。姫様に冷たい料理など出せません」

「そうじゃなくて、用意できるの早くない?」

「何時でも姫様のご要望に答えるために24時間料理を作り続けております。ご安心下さい」


ご安心下さいじゃないよ。安心できないよ。私の不安ははね上がるばかりです。

24時間ずっと私食べ続けた訳じゃないよね。残った料理はどうなるの?


「食べなかった食事って・・・」

「棄てます」


ひ〜!!簡潔にありがとうございます。想像通りだよ。

勿体ない!勿体ないお化け出ちゃうよ。

私は頭を抱えます。


「メイドが食べるとか?」

「姫様と同じ物をメイドが食べるなどあり得ません」


ロッテンマイヤーさんの台詞に呆然と目の前の料理を眺める。

軽く三人前は越える量の料理です。

そしてコテコテの肉料理がところ狭しと並んでいます。

残さず食えと?無理でーす。

それに今お昼だよね。

室内には暖かな光が差し込んで来てるし。

昼間っからボリューミー過ぎるだろう。

ギャル〇根ちゃんだったらいけるかもね。

でも、私は普通の胃袋の持ち主です。満腹中枢壊れてるないから。


そういえば朝食もおかしかった。

朝から生クリームたっぷりのケーキとかないわ。

っていうか、それしかなかった。

ケーキが朝食だった。

衝撃です。

食事を前に魂を飛ばしていると


「料理人を始末しますか?」


OH~NO~~~!

私が内心天を仰いでいると、ガチャンと傍で何かが割れる音が響きました。


「もっ、申し訳ありません」


割れたカップの傍でカタカタと震えているノアが土下座をしております。


「始末しますか?」

「いやいやいやいや」


淡々というロッテンマイヤーさんの言葉を全力で否定します。

たかがカップ一個、命より重いわけがない。


「しないのですか?」

「しません!絶対にしません」

「そうですか、では料理人を始末しますか?」

「何故そうなった!?」

「あまり食が進まないようようですし、朝食もあまりお召し上がりになってなかったしお口に合わなかったのではないですか?」


まだ一口も食べてないのに味なんて分からないよ。

だけど、私が食べないと料理人が死ぬ。

恐る恐る肉の塊に手を伸ばす。

一切れ口入れて手が止まった。


あ、脂っこい。


アラフォーの味覚には重いよ。

味付けが濃すぎるし肉は脂身が多いし。

正直不味い。

不味いがそれを正直に言えば料理人の首が飛ぶ。


「いっ、いつもの味です」

「さようでございますか。料理人も喜んでいるでしょう」

「ほほほ」


乾いた笑いを顔に貼り付けて、顔を顰めないように注意しながら肉を胃袋へと流し込む。

いつもこんなコッテコテなもの食べてたら樽にもなるわ!

先ずは、料理人を殺さずに食事の改変から始めなければ。

今後の予定を考えながら、味を意識しないように、肉を次々口に運ぶ。そして先ほどのカップを割ってしまったノアが震える手で入れてくれた水で肉を流し込みます。


「ぐふ」


一口飲んだら鼻から吹いた。


「どうなされました?」

「なっ・・・なんでもないです」


ロッテンマイヤーさんの慌てた様子に私はニッコリと微笑んで返す。

例え唇が引きつっていても、きっとデブだから埋もれて見えない。大丈夫のはずだ。

頑張らねばノアが死ぬ。


私は忘れていた。

出される水は激甘だということを。

水で流し込む方法も使えない。

何故食事をするだけでこれだけ疲れなければならない。

このクソデブ私。

前の私の意識出てきやがれ。

ボコボコにしてやんよ!

内心の憤りを隠しなるべく優雅に昼食を取る努力をした。


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