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先ずは、この国の現状を知るところから始めなければいけない。
自分が嬲り殺されないためにも、目指せ生き残りだ!
そしてせめて自分で起きれるようにダイエット!
ダイエットは一人でコツコツできるけど、この国の現状は一人では限界がある。
私の知っている知識ではこの国の名前とダメダメなアホ家族の情報しか持っていない。
誰かに聞くのが一番早い気がする。
起き上がれないため仰向けになりながら腕を組みながら天井を見上げる。
「あの・・・姫様、そんな所で寝ていますと風邪をひいてしまいますよ?」
おぉ~救世主の登場です。
恐る恐る顔を出したのは見覚えのあるメイドだ。
どこであったんだろう?
思い出すためにじっと見つめていると、メイドが泣きそうな顔で土下座してきた。
何故!?
「お許しください」
え~。私まだ何も言ってないよ。何もしてないよ。
突然謝ってきた理由は後で聞くとして今は・・・。
「起こしてください」
短い両手を精一杯伸ばしてメイドに助けを求めます。
「は、はい」
慌てて起き上がり近寄ってきて私が差し出した手を握ってくれた。
メイドの体が震えているのだろう私の手まで震えてくる。
「も、申し訳ありません」
震えながらもメイドが頑張っているのは分かる。必死になっているのか顔が真っ赤になっている。
だが、メイドは私の体重の半分にも満たない。
細腕じゃ、私の体を起こせない。
それに引っ張られている腕がもげそうに痛い。
そうだ!
「とりあえず私を転がして」
「こ、転がすですか?」
「そう。うつ伏せにして欲しいの」
「はい」
手を離したメイドは恐る恐る私をうつ伏せにしてくれた。
うつ伏せになればなんとか起き上がれる・・・はず。
よっこいしょと両手両足に力を入れるが案の定お腹が邪魔をする。
メイドも頑張って協力してくれようとするが、私の足が滑ってメイドの上に倒れ込んでしまった。
「ぐっ」
私の下から苦しそうな声が聞こえる。
ちょっと、このままじゃメイド圧死しちゃうよ。
私の体重でメイドが死んじゃう。
慌てて起き上がろうともがけばもがくほどメイドの顔色が青ざめていく。
「何をなさっているのです?」
天の助け~!
私たちの様子に眉をしかめた力持ちロッテンマイヤーさんの登場です。
「姫様自ら処刑ですか?」
違うから。圧死刑とかじゃないから。
そんな処刑方法嫌だから。
そんなところで姿勢正しく立って私たちを観察してないで。
「早く起こして~~!!」
私の叫びにロッテンマイヤーさんがスタスタ歩いてきて軽々と持ち上げて起こしてくれました。
下になっていたメイドは激しく咳き込んでおります。
良かった~。生きてた。
殺人事件起こしちゃうところだった。
生きてた事に感謝しつつきちんとお礼を言わなければ。
「ロッテンマイヤーさんありがとう。あと、メイドさんごめんなさい。大丈夫?」
心を込めて謝罪すると咳き込んでいたメイドは驚きの表情で顔を上げ、次の瞬間。
「申し訳ありません」
お決まりの土下座がきた。
まぁ、予想はできてたからもう驚かないけどね。
それに、思い出した。
事故の時一緒だったメイドだ。
あの時は自分もパニック起こしていて余り見てなかったけど、こうやってじっくり見てみると可愛い。
若草色の髪を左右二つに結んで、円らな琥珀色の瞳のまだ小さな唇。震えている姿なんて一時期流行った小型犬に似てる。
「姫様、処け」
「しないから」
ロッテンマイヤーさんの声を遮り、震えているメイドを見下ろす。
「ねぇ、あなたのあの時の子でしょう?」
「・・・・・・申し訳ありません」
大理石の床が砕けるんじゃないかと思うくらい床に頭をぶつけながら謝ってくる。
にっこり笑いながら優しい口調で言ったつもりなのに、何故謝るのだろう?
もしかして何か企んでいるように聞こえたのかしら?
優しい振りして相手が気を許した瞬間に惨殺とか?
前の私ならやりかねない。メイドが疑うのも分かる。
なんといっても極悪非道な私だ。
前の私の非道な振る舞いにため息を付くと、自分の事と勘違いしたのかメイドがビクリと震えた。
「あなたのことじゃないの。ところで」
「は・・・はい」
「名前教えて」
「な、名前ですか?」
「そう、あなたの名前」
「も、もうし」
「謝らなくていいから、教えてもらえるかしら」
「・・・ノっ、ノアと申します」
「そう。ノアね。覚えたわ。これからよろしくね」
「ひっ!」
息を飲んだノアは真っ青な顔になってガタガタ震えだした。
歯の根が合ってないよ。
「姫様。ノアに何をさせるつもりですか?」
「何って」
「暗殺などは専用の部隊がおりますが」
「ふは!」
そんなつもりないよ。
ただ、今後も仲良くしてねって意味だったんだよ。
私って何を言っても悪く取られちゃうの?
ノアじゃなくて私が泣きたい。
泣いてもいいですか?
年内は毎週金曜日に投稿します^^