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ブフォーブフォー、ブゴッ、ブフォー。
通りすがる使用人が音の発生場所を探してキョロキョロしています。
「おや、嫌だな。豚がお屋敷に入ってきちゃっ・・・」
最後まで言えませんでした。
何故なら音の発生場所を探している内に私と目があったから。
そうです。ブフォーブフォーは私の荒い息です。
「ヒッ、姫さま!」
ジリジリと後ずさって行きます。汗をかいてますね〜。冷や汗ですか?
「ひ、姫様の事を言ったのではなく、その、あの・・・」
ダラダラ冷や汗が出まくってますね。
大丈夫です。
私は何も言いません。むしろ言えません。
苦しいんです。
もう、百メートルどころか四百メートルダッシュした感じです。
なので何を言われても話せません。
まぁ、私も豚みたいだな〜とは思ってたけど。
にっこり笑った後一つ頷いて行っていいよ、と手で示しました。
だが、使用人は真っ青な顔でガタガタ震えだしてしまいました。ガックリと項垂れながら涙を溢してます。
何故に!?
そして、私の前にゆっくりと膝をおり、頭を床につけました。
最近こんな光景見た気がする。
思わず遠くを見つめてしまう。
「どうか、どうかこの咎めは私一人でお願い致します。私には身重の妻が。どうか、妻と子の命ばかりはお助け下さい」
くっ、私が何か言わなければこの使用人は殺されてしまう。
だが、まだ息苦しいんだよ。
「ブフォー、だ、大丈夫、ブゴッ、な、何も、ブゴッ、聞かなかった、ブフォー、事にします」
何故よ。口から吸えばブフォーになり、鼻から息を吸えばブゴッと鳴る。
本当に豚だよ。
見てみなさい使用人を。
目を見開いて、瞬きもせずに私を見ているじゃない。
ん?瞬き全然してないよ。
重い体を何とか動かして使用人に近づき、目の前で手を振る。
うっそ〜ん。
気絶してる。
丁度通りかかったメイドに気絶している使用人を運んでもらいました。
勿論お咎めなしです。
きつく言い聞かせたから大丈夫だとは思いますが。
アクシデントはあったものの何とか廊下の端に触れました。
何をしてるかって?
勿論ダイエットです。
ただ歩くだけの行為がこんなに辛いなんて初めてです。
200メールも歩いてないんですよ〜。それも牛歩で。こんなに息切れするなんて、太ってる方は凄いです。尊敬しちゃいます。
だが、私は痩せる。
余り高過ぎる設定だと上手くいかないから今の目標はぽっちゃり目指します。
最終的にはスリムな私になる。
痩せればきっと可愛くなる。
ぐっと拳に力を込めました。