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「はい。当然の事ながら二人は打ち首で、その家族は三等親まで領地没収の上追放。親兄弟は処刑ですね」
おいおいおいおい。
どこぞの裁判だよ。
ありえない。
っていうか、当然の事ながら、とか、今まで通りとか。
私が今までそんな事やってたの?
人の命を簡単に奪っていたの?
バクバクと早い鼓動で脈打つ心臓の音が鼓膜に響く。
チラリと土下座した二人を見ると、全てを受け入れているかのように諦めた顔をしている。
「えっと、ロッテンマイヤーさんそれはキツくないですか?」
「当然です!頭脳明晰な姫様が使用人の名前も忘れるような事態になったんですよ。一家断絶でも甘いくらいです」
いやいや、当然じゃないから。
私生きてるし。
ちょっと今の人生の記憶はないけど前世の記憶はあるから。
「えっと、ロッテンマイヤーさん」
「あぁ、嘆かわしい、私の名前すら忘れてしまうなんて」
「ご、ごめんなさい。えっとお名前はなんですか?」
「アンでございます姫様。姫様が生まれ落ちた時からお世話をしておりました。アンでございます」
「あっ、そうそう。思い出した。アン。アンさんよね。ちょっとうっかり忘れちゃって」
「思い出してくださったのですね」
「うんうん。バリバリ思い出した。すご~く思い出した。だから二人の処分はなしで」
「「「「えっ!?」」」
「え?」
なんでそんなに驚くの?
思い出してないことバレちゃったの?
「ひ、姫様今なんと?」
「バリバリ思い出した。すご~く思い出した」
「お言葉遣いが可笑しいのはこの際置いておきまして」
あっ、そこは置いておくのね。
「その後でございます」
「その後?・・・二人の処分はなしで?って言葉」
「やっぱり、やっぱり姫様はおかしくなられた」
「はぁ?ロッテンマイヤーさん、じゃなかった、アンさん。私可笑しくなってないわよ」
「いえ!姫様は可笑しくなられました」
っおい!
話聞いてると立場上私の方が上なのに可笑しくなったって断言したな。
「どこが可笑しいのよ」
「全てです。言葉遣いも言動も動作も全てです」
「た、例えば・・・?」
聞いてしまうのが怖い。
そこまで言われる前の私って絶対極悪非道だったに違いない。
だが、聞かない方が後悔しそうだ。
「先ずは、姫様の気に入らないことがあると・・」
「・・・気に入らないことがあると?」
「処罰します」
「しょ、処罰って」
「姫様曰く、「替えの侍女はいくらでもいるわ。消しちゃって」だそうです」
うわ~い。
消しちゃってって、この世からってことだよね。
この体の私?
何言ってるの?何やってるの?
怖いよ、怖すぎるよ。
「気に入らないことって例えば・・・?」
「例えばその日の服が気に入らないですとか」
「とか?」
「紅茶が熱いですとか」
ベットに崩れ落ちます。
たったそれだけの事で人一人殺してるの?
お前が死ねよ。
ってか、そのお前って私じゃん。
私が死ねよって感じだよね。
何人殺してるんだよ。私。
「他には」
「もういい!もう聞きたくない」
「さようでございますか。それで二人の処分は?」
「なしで!処分なし!当たり前でしょう?」
「よろしいのですか?姫様の身を危険な目に合わせたのですよ」
「よろしいのです!私は無事だったし、事故の原因は飛び出してきた子供だったし」
「なら、その子供を・・・」
「処分なし。今回は誰も処分なし!」
「本当によろしいのですか?」
「ほんと~によろしいのです」
疲れた。
何が疲れたって私の過去の行い疲れた。
本当に何やってるの?
頭が痛くなってきた。
「やはり具合が悪く?」
「大丈夫よ、少し寝れば良くなる」
「ですが」
「一人にしてくれる」
「かしこまりました」
涙ながら感謝を告げる二人とともにアンが下がっていくと私はベットに倒れ込んだ。