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「その1様がいらっしゃいますのでお仕度を整えます」

「その1って、仮にも私の婚約者なんだから名前で呼んであげようよ」

「姫樣がおっしゃったのですよ」


アンの冷たい視線が私に刺さる。


「えっ、私が?」

「はい。『五人もいて名前覚えるのが面倒だから番号で呼んでちょうだい』と」


アンは前の私の真似をしているんだろう。

もの凄くムカつく言い回しだわ。

私がこんな上から目線で言われたら確実に友達やめてるよ。

ってか人の名前を番号で呼ぶのってどうなの?囚人でもあるまいし。

非道な人もいるもんだ・・・・


って私だった!!


そうだ非道な人間は私だ。

こんな性格ならその1に対してどんな対応していたのか目に浮かぶわ。


会いたくないな〜

絶対恨まれてるよ。


「お断りしますか?」


してほしい。切実に希望したい。

でも、折角来てくれるのに悪いよね〜

でも、会うの怖いよ〜

冷めた目で見られるよね〜。絶対零度の視線だよね。あれだよね。視線で人殺せたら確実に私即死だよ。

せめて心の準備だけはさせて欲しい。

30分って短いでしょう。

普通先触れってもっと早く来ない?

これが普通なの?

非常識な私には非常識でってことなの?

遠い目をしている私をアンとノアが素早く私を飾り立てていく。

あらかじめ決められているかのような迷いのない仕草。

鏡の中の私の目は死んでいます。

そして無表情で手際の良い二人。

あまりの手際の良さにパンツ一枚にされてるのも気がつかなかったよ。

そのまま気づかなければ良かったね。

裸の私の体に・・・・

ウエストマジどこ?ってかお腹のぜい肉が邪魔でパンツ見えてなかったわ。

ぜい肉ってここまで重力に従って垂れ下がるんだね。すごいよ!

あはははは

って笑えないわ!


「デブ姫様。落ち込むのは結構ですが立ったままに落ち込んでください」


崩れ落ちそうになった瞬間アンの叱責が飛んだ。


「うっ、はい!申し訳ありません」

「よろしい。ではそのまま大地を力の限り踏み攻めてください」

「はい?」

「いいですか?」


え?何が始まるの?

アンとノアの鬼気迫る表情に私は何も言えなくなる。

このふたりの表情に私は何が起こるか分からないが覚悟を決めた。

なんでも来い!

アラフォーおばさんを舐めるなよ!


「ぶごごごごごごごご~~~!!じじじじじじ~~~~んうぬぬぬぬぬぬぬ」

「死にません。今までも死にませんでしたこれくらいで死んだら国中大喜びです!」


あれ?ノア、なにげにに私の扱い酷くないですか?

この前までと違います。

この前はあんなに私に殺される悲壮感漂わせていたのに。


「フッ、不経済?」

「それをいうなら不敬罪です」


同じ読み方でも漢字が違ったね。

流石アンなんでわかったんだろう。


「デブ姫様が今後一切殺さないと申しましたので」

「言った!確かに言った!でも私今殺されそうよ」

「殺しません。これは毎回行われる社交の儀式です」

「毎回?」

「はい」

「これを?」

「私が?」

「所望しました」

「何故に?」


そっと二人の視線が反らされた。

そうか前の私はデブなりに無駄な努力をしてたのか・・・

私はデブなりに頑張っていたであろう、前の私に思いを馳せます。

でも頑張りどころお違うからね!お前のせいで私絞められているからね!

これでもかと親の敵のように二人に締められています。

ノアなんて片足私の腹を蹴っていませんか?


「だだずでげ~~~」

「まだっ、まだです」

「ぎょぼぼぼぼ~~~!中身がでる~~~~~!!!」

「脂肪を出してください」


そんな殺生な。出るとしたら内蔵だよ。


「くっ、アンさん。私もう・・・」

「ノア!負けてはダメよ。ここで私たちが負けてどうするの」

「・・・でも・・・」

「大丈夫あと少しです。先が見えてきました」

「アンさん!」

「さぁノア。もうひと踏ん張り行きますよ」


私を挟んだ額に汗を光らせた二人で何かを分かち合っています。

私もその青春ドラマに混ぜてください!


「姫様ご覚悟を!」


何を覚悟しなくてはいけないの?

そしてアンのその台詞回し。

え~~~私悪役設定!?

いや、うん。設定どころか私現在悪役街道まっしぐらだったわ。


「ぎょえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


一段のウエストの締めつけがきつくなりました。

ってか中世の貴婦人はよく貧血を起こしてたっていってたがこれが原因だよね。

私すでに貧血気味だよ。

後。酸素不足です。

ぶほ~ぶほ~

荒い息をつくいている私を尻目に額に汗を輝かせているアンとノアは綺麗な笑顔でハイタッチを決めています。

二人がこんなに仲良くなったなって、私も絞められた甲斐があったというものだ。

はははは。うれしいよー!棒読みになるけってるけど本当だよ・・・多分。


次はドレス選ぶ番だった。

二人が選んだのはドン引きレベル。田舎臭い一昔流行ったんじゃないの?と聞きたくなるようなドレスだ。

いや、着たことないからドレスの流行りなんてわからないけど芋臭い。

なによ!そうよ!ドレスなんて現代日本において着れるとしたら結婚式くらいよ!

独身女の独女だったのよ!ウェディングドレスに袖通すわけないじゃない。

死に前でに一度は期待と夢見たドレスが最低最悪。絶対無理。断固無理。壊滅的無理。

淡いピンクにレースがこれでもかとセンスなく飾られ、胸元パックリの乳の谷間出しまくり。

デブなんだから胸元隠せよ。確かに胸はデカイが他もでかいだろう。ましてやデブが薄いピンクって膨張しまくるだろう。豚をメガトン級の豚にでもしたいのか?前の私の思考を読ませろ。そして私に殴られろ!


「お気に召しませんか?」

「ぶっちゃけ、デブが二割増しでデブに見えます」

「デブ姫様。お言葉!」

「すみません。私が選んでもよろしいですか?」

「構いませんが?」


アンの許しを得て衣装部屋へ足を向ける。


行かなきゃ良かった。

何百着あるのよドレスの数。

それも似たような色ばかりじゃない!

オレンジ色のドレス?某魚肉ソーセージにしか見えないわよ!

その上全部淡い色ばかり。


「淡い色は流行りなんです」


おずおずとした調子でノアが教えてく入れたが自分の体型を見てみろ!

デブが着ると膨張するんだよ。

流行りは追うな!自分に似合うものを作れ!

怒りの眼差しで何着も見て行くがすべて同じ形だ。

つまらない。

その上管理がいいのか新品みたいだ。


「一度しか着ませんので」

「もったいない!じゃぁこの子達の行く末は?」

「廃棄処分です」

「うが~~~~~!もったいないお化けに殺されてしまえ!」

「デブ姫様が?」


はっ!私だった。

部屋の隅の方にあった茶色いと黒のシンプルなドレスが目に付いた。

黒はきっと法事などできるのだろう。なら茶色だ!渋いが膨張色より1000倍マシ。

よし!これで行こう。

茶色のドレスを手渡したときふたりが怪訝な顔で私を見てきたが無視した。

他の衣装なんて断じて着たくない!

着るくらいなら当日ブッチしてやる!

そのくらいの意気込みを見せた私にため息をつきながらもアンは了承してくれた。

他の服はもったいないので処分せずにリメイクして使おう。

私が痩せれば十分布が余るので余裕でリメイク出来る。

二着くらい作れちゃうんじゃない?

私裁縫得意よ!

なんといっても貴腐人だったからね。

うふふふ。

オタクババアを舐めるな。

金だけはガキよりあるんだから。

キャラと同じ服とか作ったりしてたわ。

懐かしい。あの頃は生死を考えずに生きていたっけ。

まさかこんな事になるなんてね。

今は死亡フラグ折るために生きてます。

とりあえず、メモにでも『ドレスリメイク』と予定書いておこうかしら。

飽きっぽい私は、前の人生の時も紙にかいて目標を立ててたのだ。

そして、トイレの扉に張っていた。

だって、トイレって必ず使用するし、女性は座るでしょ。そうすると目の前に目標が来るわけよ。

絶対に忘れない。

事実このお陰でダイエット成功したし、〆切だって破った事・・・


そうだ〆切!ヤバイ。納入したばかりの原稿が!既に振り込みも終わってるし。

いや〜!家に届いてしまう。大量の自費出版物。


遺書を!誰か遺書を届けて下さい。

届いた段ボール及び本棚の下から三番目の薄い本、パソコンに入ってる大人向けゲーム、いやパソコンそのものを破壊して下さい。屋根裏の本は全て破棄でお願いします。

貯金の一千万はあげるから〜〜!誰かお願いします。


私をこの世界に転生した人〜〜!

デブで最悪女は受け入れるから、何卒何卒、私の思いを日本にいる家族に伝えて下さい。


寧ろ私を夢枕に立たせて下さい!!


滂沱の涙を流している私に対して二人は若干引き気味です。

どうやって夢枕に立ってやろうかと考えている私の指に違和感を感じて現実に戻ってきました。


「おっも」


思わず声が出てしまった。

なんだこのゴテゴテの指輪。

パンパンのウインナーのような指に大きな宝石が付いた指輪が3個。

親指がエメラルド、人差し指がサファイア、薬指がダイヤですか。

大きすぎて品がないよ。

その上ネックレスは真珠ですか。

アンとノアのセンスを疑うしかない。

飾り立てている二人を疑うように見つめると私の視線に気づいたノアが慌てて首を振る。


「違います!違うんです!」

「いきなりなに?」

「これはデブ姫様のおっしゃった通りなんです」

「私?」

「そうです!姫様が高貴な私には高価な物が相応しい・・・と」


自分のセンスを疑われたノアの必死さに私は天を仰いだ。

言いそうだ。

お馬鹿ケイリーンなら。

高価な物で飾っても中身が廉価ならどうやっても高貴な人物になれないのに・・・

っていうか、デブが高価な物を纏っても、まさに・・・

・・・豚に真珠・・・

その上コルセットで締め付けられ茶色のドレスをまとっているからまるでチャーシュー。


うぶふっ。


自分のことながら笑える。

耐え切れず思わず漏れた笑い声にノアとアンが引いているが気にしない。

だって諺通りの人間が目の前・・・といか自分自身なんだから。


ぶひょ~ぶひょ~ぶひひょひょひょっ・・・


笑い過ぎでお腹が痛い。

というかコルセットで締め付けられて息が・・・


ぶっはう!


「「姫様!!!」」


笑いすぎて息が止まりました。



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