16
ぶふぉ~ぶふぉぉ~ぶふぉ~
「豚姫様!まだまだです!なんですかその走りは!ぼてぼて走らないでください。もっと太ももを上げて!その短い脚でも太ももはあります!豚のように見えても豚姫様は人間なんですよ!」
私友達選び失敗しました。
ノアは鬼教官でした。
おどおどしていて、チワワみたいに私をウルウルお目目で見ていたノアはいません。
かわいいノアを返してください。
「そこの豚足!さっさと走れ!」
「ぶふぉ~」
だから走ってるってば。
体が重いの。
ノアも100キロの石を抱えて走ってみればいい。
そうノアに言った日もありました。
そしたらノア、軽々と走っていました。
私を抱えてね。
呆然とした私にノアは勝ち誇った顔を向けてきました。
悔し~!
私の闘志に火が付いた。
が、火が付いたのは闘志だけ。
それでも頑張った。
だって、いま私は走っている。
そう、走っているのよ。
陸亀と同じくらいの速さかもしれないでも進んでるんです。
歩くだけで倒れていた私とは違う。
そう、ゆっくりとはいえ私は走っているのだ。
私は進化しているのよ!
「ノア、そろそろ休憩を入れましょう。あんまり根を詰めすぎるとデブ姫様といえど死にますよ」
「アンさん。そうですね。豚姫様!休憩です」
あ~、アンが神様に見える。
私はドサりとその場に崩れ落ちた。
ぶふぉ~ぶふぉ~ぶふぉ~
荒い息を整えます。
あぁ、太陽がまぶしい。
「デブ姫様、起き上がれますか?」
「ぶふぉふぉ」
無理です。
私まだ一人では起き上がれません。
アンに手を借りて体を起こします。
すかさず目の前に差し出された水を口にする。
あ~、美味しい。
冷たい水が体の隅々まで行き渡る。
なんて美味しい水なんだろう。
私は水をくれたノアに頭を下げた。
ありがとうと口にすればいいって?
無理です。
息が整ってないのでまだブヒブヒしか言えないよ。
人語話せないよ。
「デブ姫様。毎日少しずつ進化してますね。素晴らしいです」
そこは進歩じゃないのかしら?
「見てください。今日はスタート地点があんな遠くに」
アンに言われて見てみると、スタート地点の玄関が500メートル先にある。
たかだか、500なんて言わないでね。
最初は50だったんだからね。
歩いて倒れた私が走って500だよ。
これは進歩と言わずしてなんという!
「ここ数日の努力で少しほっそりとされましたよ。さすがですね。デブ姫様」
元に戻ったノアの微笑みに癒されています。
鬼教官とのギャップがたまらない。
これがギャップ萌えなのだろう。
それに前みたいオドオドと私の顔色を伺う事がなくなった。
そのおかげでノアの鬼教官モードが現れたのだけど・・・。
慣れって素晴らしいね。
オドオドしてるよりビシビシと罵ってくれるノアの生き生きした表情が大好きです。
・・・・私ってMの気質があったのだろうか・・・
断じてマゾではないからね。
「風が吹いてまいりましたので、お屋敷に戻りましょう」
絞れるくらいたっぷりと汗もかいたもんね。
風邪ひいちゃうよ。
今の私の楽しみは運動をした後洋服を絞ることだ。
ものすご~く汗が絞れる。
ジャバ~とバケツ一杯分絞れるんだよ。
それを見て、頑張った達成感を味わうのだ。
体重計に乗ればいい?ないんだよ。その体重計が。