彗星のごとくカムバッック!!
「なぁーなぁー菜種よー。」
「なんですか?美月さん。」
「お茶とってくれない?」
「だから、それくらい自分でとってくださいよ・・・。」
「いいじゃんかよー!」
「はいはい・・・。というか、前から思っていたんですけど・・・。」
「ん?どうしたん。」
「なんで僕の家にしょっちゅう来るんですか?」
「んー、暇つぶし?」
「・・・・・そうですか。」
「そんなことより早くお茶っ!」
今日も『霞屋』店主、霞美月は平常運転のようです。
霞屋はいつもお昼くらいから開店しているため、美月さんは近所にある僕の家によく遊びに来る。
といっても、美月さんが一方的にやってきて、一方的に一人でゲームをして、一方的に帰るというなんとも一方的な内容ではあるが・・・。
そして、僕は授業があるので学校へ向かい、美月さんはお店の準備のためにまた戻る、といった具合になる。
そして、うちのお茶はほとんどが美月さんに吸収されている・・・。
「僕そろそろ行きますねー。」
「おー。気をつけてー。」
まるで同棲中の恋人同士の会話だが、そんな風に考えると変な気を遣ってしまうので、僕は部屋に大きな猫がいる、と思うようにしている。
なんて言い訳をしながら学校へ向かうのだった。
帰宅後。
「おはようございますー。」
「はーいお疲れさん!」
「あ、恵さんじゃないですか!お久しぶりです!」
「ひっさしぶりー!二週間ぶりくらい?」
いつものようにお店へ向かうと、久しぶりの顔があった。
鬼咲恵。僕と同じこのお店のバイトで先輩さんだ。
旅行が趣味で、ここ二週間くらいはイギリスに滞在していた。
「そうですねぇ。イギリス旅行はどうでした?」
「楽しかったよー、ほらこれお土産!」
「わぁ、おいしそうなクッキーですね!」
「おいしいよー!私四箱食べたから!」
「それは、食べすぎでは・・・?」
「大丈夫大丈夫、その分動いたからね!」
「そうですか。ところで美月さんは?」
「ん?上でゲームしてるよー。そうそう、葦風君は着いたらすぐ来いって!」
「またゲームしてるんですか・・・。」
「うん、早くゲームの相手してあげな?私が店番するからさ!」
「え、でも悪いですよ。」
「いやいや、ここ、お客さん来ないし。」
「・・・・・そうですね・・・。」
全く、美月さんもたまにはしっかり仕事してくれないかな・・・。
というか、仕事できるのかなあの人・・・。
今日だってきっとゲームに付き合わされて終わりなんだろうな。
「美月さーん?菜種です。入りますよー。」
「おーう入ってくれー。」
「失礼しまっ!?」
「ん、どうした?」
部屋の中にはレースゲームをする美月さんの姿があった。
下着にワイシャツ一枚の姿で。
「なっ!?なんて格好してるんですか!!」
「いや、こういうの好きかなーと思って。」
「何入ってるんですか!早く服着てください!!」
「なんだよ感想もなしかよー。」
「ほら早く!」
「ちぇ。わかったよ。」
「全く・・・それに、またゲームですか?」
「もっちろん!新しいゲームが出たからな!」
「新しい・・・?今やってるの、だいぶ前に発売したやつですよね?」
「ん?ああこれじゃなくて、こっち!」
「ポータブルタイプの方でしたか。あ、これ今CMでよくやってるやつですね。」
「そうなんだよ、今日発売だったんだ!」
「へぇー。でも、僕このゲームの本体とか持ってませんよ?」
「それなら大丈夫、もう準備してあるから。」
「え?」
「じゃーん!」
美月さんの手にはポータブルゲーム機が2台あった。
そしてその一つを差し出す。
「こっちが菜種のやつな。」
「え、これ、僕のですか?」
「そ!だからさっさと始めるぞー。」
「そんな、悪いですよこんな・・・。」
「いいんだよ。」
「でも・・・。」
「私が菜種とやりたかったんだからいいんだよ。」
「美月さん・・・。」
「ほら、さっさと始めるぞ!私もまだやってないから楽しみだ!」
「え?美月さんなんで先にやってなかったんですか?」
「・・・だから言っただろ?菜種とやりたかったんだって・・・。」
「え・・・・・?」
な、なんだなんだ!?
なんなんだこのラブコメ的展開は!?
ちょっといつもとおかしい気がする!多分勘違いだけど!
「・・・迷惑、だったか・・・?」
「え?あ、いやそんな!!」
「・・・そうか・・・?」
ちょ、ちょっと!
上目遣いでそんな顔されたら・・・っ!
「葦風君!この商品の在庫なんだけど・・・。」
「どぁはいっ!!」
「え?なんて?」
「いえ、なんでもないです!それで、どの商品ですか?」
「あ、うん。これなんだけどさ、どこにあるのかわからなくて。」
「ああ、最近入ったやつですねこれ。それなら案内しますよ。」
「え!?ゲームはー!?」
「美月さんはちょっと待っててください。僕は仕事があるんで。」
「なんだよー!早くしろよー?」
「はいはい。それじゃ行きましょうか惠さん。」
「ええ。それじゃちょっと葦風君借りますねー。」
「ばっ!!な、何言ってんのかちょっとわからないけど・・・。」
「ふふふ・・・。」
「何してるんですか?行きますよ惠さん。」
「はーい!」
「ったく、なんだよなんだよ!」
一人膨れる美月であった。
「・・・というわけで、この商品の補充はここにありますんで。」
「りょーかいしました!隊長!」
「誰が隊長ですか・・・。」
「それにしても、隊長がバイト始めてから美月ちゃんすごく明るくなったよ。」
「だから、誰が隊長ですか!それに、最初からあんな感じだったと思いますけど。」
「いやいや、私が働き始めたときなんてすごかったんだから!」
「そ、そんなにですか?」
「そんなに!もうね、別人かってくらい物静かだったよ。」
「なんか、想像できないですね・・・。」
「物静かっていうか、元気がなかったんだよね。なんていうか、ずっと落ち込んでるって感じ。」
「そうだったんですか・・・。」
美月さんが物静かで、元気がなくて、落ち込んでいる・・・。
全く持って想像できない・・・。
「でも、葦風君が入ったおかげですっかり明るくなったよ。」
「は、はあ。」
「やっぱり、職場は明るくなくっちゃね!」
「ですねぇ。」
「よし、じゃあ場所もわかったし、ありがとうね葦風君!」
「はい、それじゃあ僕は戻りますね。」
「はーい!お二人で楽しんでねぇー?」
「何ですかその言い方は。」
「まぁまぁ。ほら、早く行かないと怒られちゃうよー。」
「遅いわー!!」
「わーすいませんって!物投げないでっ!」
結局怒られた菜種であった。
「それにしても、このゲームすごく凝ってるんですねぇ。」
「そりゃあ最新作だからな!キャラメイクから気合が入ってるな。」
「これだけ細かく作れるなら、自分に似せて作れそうですね。」
「よし、早速作ってみよう!」
---20分経過---
「よし、こんなもんだろ・・・。」
「これほんとにそっくりに作れましたね。」
「ここまで似せることができるとは・・・。私たちの顔は単純なのか・・・?」
「そういうことは言わないでくださいよ!」
「よ、よし!気を取り直して始めよう!」
「そ、そうですね・・・。」
「この敵、ちょっと強すぎませんか!?」
「確かに、ちょっと強いな・・・。」
「どうします?美月さん。」
「よし、私が回り込むから菜種は引き付けておいてくれ!」
「了解です!」
ゲーム画面の中では二人のキャラクターが大型モンスターと戦っている。
菜種のキャラクターは大きな剣を、美月のキャラクターは弓を構えている。
「よーし、ここで・・・。」
「ちょっと美月さん?なんですかそれ・・・。」
「何って爆弾だよ。」
「いや、それは見ればわかるんですけど。」
「ほら、離れないと死ぬぞー。」
「いやこの体勢からだとすぐには無理なんですけど!」
「はいどーん。」
「あっ!」
モンスター討伐完了の表示と共に僕のキャラが運ばれていく。
「あっはっは!ごめんごめん。」
「もー素材取りに行くの大変じゃないですかー。」
「大丈夫大丈夫。足りなくなったらあげるから。」
「全く美月さんは・・・。」
「てへっ。」
「それにしてもなんだろう、この『かしこさの種』って・・・。」
一人考え込む恵であった。




