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第五十三話 理由

 禅蔵side


 …無縁塚…辺りは鬱蒼と生い茂る雑草に覆われ、枯れ果てた木々と剥き出しの岩が点々と顔を覗かせるばかりの、何も無い場所…。

 俺にとっても、特に思い入れもない場所だ…いや、そもそもこの幻想郷に思い入れのある場所など無いがな。

 何故、ここに来たのかと言えば、理由すらない。ただ、ザルバの言う作戦だか余興だかの為らしい。俺自身は、別に何処でも良かったんだ。


【禅蔵】

「何を壊したいわけでも、誰を殺したいわけでもない…ただ、暴れられればそれでいい!」


 近づいてくる気配は感じている…あの時、地底でバカデカい魔力砲をぶっ放して来た小娘だ。

 正直、あの時は驚いた…たかが人間の小娘一匹が、あれほどの攻撃を放てるとはな。柄にもなく感心しちまって…殺し損ねた…。


【禅蔵】

「…今日は手加減無しだ…楽しませてもらうぞ、小娘。」


 だが…その前に、


【禅蔵】

「…前座が用意されてたか。」


 旧い知り合いが、堂々と正面から歩み寄って来ていた…同種族とは思えない身長差の、まさに凸凹コンビ…


【禅蔵】

「久しいな。伊吹…星熊…」


【勇儀】

「アンタに暴れられちゃ、シャレにならないからねぇ。」


【萃香】

「悪いけど、もっぺん地獄で寝ててもらうよ?」


【禅蔵】

「…ガハハハハハ!お前らが、俺を?」


 ナメられたもんだな、俺も…それとも、


【禅蔵】

「平和ボケして忘れたか?俺の力を……なら、思い出させてやる!」


【勇儀】

「ぐっ!なんてバカげた妖気だい…」


【禅蔵】

「いくぞ!」


 俺は二人めがけ突っ込み、拳を振り下ろした!


【萃香】

「くっ!」


 二人とも、すぐにその場から左右へ飛び退いた。だが、


【禅蔵】

「無駄だ!」


 ズガァァァン


【勇儀】

「うぐっ!」


【萃香】

「がはっ!」


 例え拳は避けれても、拳圧が起こす衝撃までは避け切れまい?


【禅蔵】

「はぁっ!」


 地面に叩きつけた拳を、星熊の方へ無造作に振り上げる。それだけでも、


【勇儀】

「ぐっ!うわあああっ!」


 星熊を吹き飛ばすには十分だ。


【萃香】

「勇儀!」


【禅蔵】

「相変わらず『鬼』が良いな?よそ見してる場合か?」


【萃香】

「っ!?」


 星熊に気を取られる伊吹の顔面を掴み、そのまま地面へ叩きつける!


 ドゴォォォン


【禅蔵】

「……」


 伊吹の姿は、跡形もなく消えていた…


【禅蔵】

「霧になって逃れたか…」


【萃香】

「天岩戸!」


 ドガァンッ


 背中に叩きつけられる大岩…だが、


【禅蔵】

「…効かねぇな。」


【萃香】

「っ!」


 振り向きざまに、拳を伊吹に向かって突き出す。拳圧が一直線に、伊吹を捕えた。


【萃香】

「うわああああああっ!」


【禅蔵】

「ガハハハハハ!やっぱり軽いな、伊吹!いい加減、お得意の巨大化でも見せたらどうだ?」


【勇儀】

「かぁぁぁぁっ!」


【禅蔵】

「!」


 バキャッ


 星熊の拳が、俺の頬を打ち抜いた…俺の体は宙を舞い、視界が二転…いや、三転する。

 さすが、星熊の拳は中々だな…などと思いつつ、俺は態勢を整え着地した。


【禅蔵】

「その調子で、もうちょいだけ準備運動させてくれ。」


 こちとら、ザルバと囲碁やら将棋やらばかりで…体が鈍ってて仕方ねぇんだからよ。




 妖夢side


 …何か引っかかる。

 藤堂さんの弾幕を躱しながら、私はみょんな…妙な引っ掛かりを感じていた。

 一見、周囲を取り囲まれた上での、全方位からの弾幕攻撃…大がかりで強力な技に見えるが、弾幕の動きは規則的で、避けるのは難しくない。

 だからこそ、引っかかる…


【藤堂】

「さすが、弾幕ごっこに慣れているだけある。よく避けるじゃないか。」


 この人…何で戦ってるんだ?

 既に私を含めた皆が、この技を見切っている…反撃に転じようと思えば、いつでも出来る。でも、誰も動こうとしないのは、皆も薄々感じているからか?


【藤堂】

「なら、もっと難しくしようじゃないか!」


 弾速が速まり、規則性が変化した…が、やはり躱すのは容易い。

 やっぱり、藤堂さんの目的が分からない…ザルバたちへの同情?そんな理由で動く人か?

 否!そもそも、彼が自ら戦ったのは紫様とのいざこざ関連で、命を狙われていた時と…昨年の夏、ジーク殿が起こしたあの異変の時ぐらい…そう、あの時は確か……


【妖夢】

「…そうか!そういう事ですか…」


 ズバッ


【藤堂】

「っ!?」


 私は一瞬で間合いを詰め、藤堂さんの右腕を肘から斬り落とした。

 案の定、彼の発動したスペルカードは効力を失った。


【藤堂】

「さすがに、早いな。」


【妖夢】

「…藤堂さん、チルノはどうされてます?」


【藤堂】

「っ!!」


 案の定だ…この人が動くのに、それ以外の理由なんかあるわけがない。

 自身の穏やかな暮らし、そこに必要なものを守るため…それ以外の理由で、彼が異変とその解決に関わった事などない。


【妖夢】

「得意の嘘もつけないほど、動揺してますね?」


【藤堂】

「…君たちには関わりない事だ。もういい…遊びは終わりだ!君たち相手に体裁を取り繕う必要もない!見せてやろう…私の醜い本来の姿と、幻術の恐怖を!」


 藤堂さんの体が、黒い…どす黒い霧に包まれた…そして、背後には、幻魔の巨人……


【藤堂】

「今までは、幻術で人らしく見せていただけ…これが本来の、私の姿…醜いだろう?」


 え?

 私には、ただの黒いモヤにしか見えないのですが?


【早苗】

「ひっ!き、気持ち悪い!」


【鈴仙】

「ひぃぃぃっ!」


 え?え?

 皆さん、どうしたんですか?悲鳴を上げるほどの恐怖を感じるような姿では…むしろ、後ろの幻魔の巨人の方が厄介ですよ!


【妖夢】

「…まさか…」


【藤堂】

「身の竦む恐怖に溺れて、闇の底へと沈むがいい…」


【妖夢】

「…藤堂さん、終わりにしましょう。」


【藤堂】

「なっ!?」


 私は目を瞑り、そこへ踏み込んでいた…藤堂さんの本体が隠れている、黒いモヤのその奥へ。


【藤堂】

「バカな!?」


【妖夢】

「未来永劫斬。」


 ズババババババババッ


【妖夢】

「…貴方の幻術は、断ち切らせてもらいました。」


【藤堂】

「…ガハァッ!!」


 ガシャァーンッ


 ガラスが割れるような音と共に、幻魔の巨人の姿も黒いモヤも砕け散った…後には、細切れなった藤堂さんの肉片が、ゆっくりと落下していった。

 私も、それを追ってゆっくり地面に降り立った。


【藤堂】

「……見事だよ…剣士として身に着けた、心眼かね?」


【妖夢】

「…貴方の動揺と迷いを突いただけです。」


 首だけになっても、まだ喋れるんですね…まぁ、確信してましたが。目の当たりにすると、さすがに驚きますね。


【妖夢】

「というか…ようやっと幻術で誤魔化していない、貴方本来の素顔を拝見できました。」


【藤堂】

「マジマジと見ないでくれないか…この醜い顔を…」


【妖夢】

「醜いですか?私にはむしろ…」


 今まで見せていた顔の方が、よほど残念な顔立ちに思えますが?


【藤堂】

「…母の命を食ってまで、生き長らえた…卑しい私の本来の姿、本来の顔だ…」


 あぁ、それで醜いと…


【藤堂】

「…それにしても、随分と念入りに切り刻んでくれたものだ…再生に相当時間がかかるな…」


【妖夢】

「あの紫様ですら、最後まで殺せなかったのですから…貴方を止めるには…」


【藤堂】

「……」


【妖夢】

「チルノは、今どこに?」


【藤堂】

「……地底だ…焦熱地獄跡に、囚われている…」


 氷精であるチルノが、焦熱地獄に!?




 チルノside


 ……パ…パ…。

 いしきが、もうろ…と、する……いっそ、いちど、しょうめつすれb……パパも…こまら…い、かな…?




 ザルバside


【ザルバ】

「我ながら、いい作戦だったよ。藤堂が娘の為なら何でもするってのは、僕たちも知っていたからね。彼の裏切りは、中々に衝撃的だったんじゃないかい?ねぇ…ミネルバくん?」


 無名の丘…春にはスズランが咲くというこの場所で、僕と彼は対峙していた。


【ミネルバ】

「テメェ…顔パン一発で済むと思うなよ?」


【ザルバ】

「勿論さ。もっと楽しませておくれよ?」


【ミネルバ】

「……」


 いいねぇ…その怒りに満ちた目。どれぐらい、楽しめるだろう?傷つくのも、傷つけるのも…僕にとっては楽しいんだ♪


【ミネルバ】

「…すぐにその薄ら笑い、消してやるよ。」


【ザルバ】

「あ、顔に出てた?僕ってどうしてこう、ポーカーフェイス苦手なんだろ?」


 ドゴッ


【ミネルバ】

「聞いてねぇよ。」


【ザルバ】

「がっ!」


 ズドッ バキャッ


【ザルバ】

「ガハァッ!」


 顔面へのパンチ、立て続けに走る腹部への衝撃と、こめかみへの蹴り…これは、効くね…。

 というか、本当に顔パン一発じゃ済まなかったし…。


【ミネルバ】

「立てよ。どうせ効いちゃいねぇだろ?」


 いや、効いたよ?

 あれ、おかしいな…普通のパンチやキックなのに、こんなに重かったっけ?

 …参ったな…さすがに、これは…


【ザルバ】

「僕も、本気でやらなきゃね?」


【ミネルバ】

「……」




 妖夢side


【藤堂】

「私も…娘ほどではないが、暑さには弱くてね…娘を助け出す事も出来ず、このザマというわけだ。」


 ……。


【藤堂】

「…こんな事を頼めた義理ではないが…どうか、頼む…娘を、チルノを助けて欲しい…」


 ……。

 藤堂さんの斬り落とされた手が、その場で土を固く握りしめているのが見えた…。


【妖夢】

「まったく…とんだ親バカですね、貴方は…」


【藤堂】

「よく言われるが、私は至って普通だ…」


【妖夢】

「失礼…ただのバカでしたね。助けて欲しいと?そんな話を聞いて、助けに行かないワケにいかないでしょうっ!」


 いつ、以来でしょう…こんなに、怒りを覚えたのは!

 それは、いつの間にか降りて来ていた皆さんも、同じようですね…。


【妖夢】

「行きましょう。」


【鈴仙】

「でも妖夢、全員で行ったらミネルバさんたちの援護が…」


【妖夢】

「ミネルバさんたちなら大丈夫です。むしろ、チルノが人質にとられている事実の方が脅威…」


【咲夜】

「同感ね。今の三人なら、ある程度は善戦が望めるわ。でも、そこで人質の事実を盾にされたら…」


 つまり、最優先は人質であるチルノの救出…無事の報告、これが急務!


【鈴仙】

「分かったわ。それで、ミネルバさんの役に立てるなら!」


 若干、一人目的がズレている人物がいますが…気にしないでおきましょう…。

 私たちは藤堂さんをその場に残し、地底に続く間欠泉を目指した。




 normal side


 妖夢たちは飛び立っていった…。

 …ひとまず、上手くいったようだ。

 私がザルバに押し付けられた役目…それは、時間稼ぎと、彼女たちを、ミネルバたちと分断させること…。

 全て要求どおりだ…これで、もう文句を言われる筋合いは無いぞ、ザルバ…。


【藤堂】

「後は、好きにさせてもらうぞ?」


 一刻も早く、この体を再生させねば…しかし、妖夢め…


【藤堂】

「本当にご丁寧切り刻んでくれたものだ!」


 肉片と化した私の体のパーツは、あちこちに散らばってしまっている。右手を腕の元まで這わせるだけでも一苦労だ。というか、気を付けなければまた逆につけてしまいそうだ…。


【藤堂】

「…この際、それも已む無し…とにかく今は!」


【慧音】

「まったく、無茶をしますね…」


【藤堂】

「なっ!?」


 け、慧音先生?何故、ここに?


【慧音】

「貴方は、いつもそうやって一人で無茶ばかり…」


【藤堂】

「そんな事は…」


【慧音】

「チルノが嘆いていましたよ?貴方が、たまに思い詰めた顔をした後、自分を遠ざけようとするって。」


【藤堂】

「いや、それは…」


 話しながら、慧音先生は私の体がだった肉片を、嫌な顔一つせず集め始めた。


【慧音】

「満月でなければ、大した戦力にはなりませんが…このくらいの役には立てますよ。」


 …相変わらず、私には眩しすぎる笑顔で、慧音先生はそう言った。暗に、もっと頼ってくれていいんだと…。


【藤堂】

「…とりあえず、手と腕だけは逆に付けないで下さいね?」


【慧音】

「えぇ、気を付けまs…あ。」


【藤堂】

「…慧音先生?」


【慧音】

「……テヘ♪」


【藤堂】

「……」




 水難斗side


 妖怪の山の麓…山の頂を眺め、俺は静かにかつての記憶に思いを馳せていた…。

 この山の、何処かに…居るはずなんだ…


【水難斗】

「何処に、いるんだ?お前は…一体、何処にいる?俺の声は、そこに届いているか?なぁ、答えてくれ…水難子…」


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