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第五十一話 修行を終え、集う戦士たち

 ザルバside


【禅蔵】

「本気で、このまま春まで待つ気か?」


 パチン…


【ザルバ】

「まぁね…だって、このままじゃ…」


 パチン…


【禅蔵】

「っ!?」


【ザルバ】

「つまらない、でしょ?あぁ、こっちは詰んだね。王手♪」


 禅蔵と将棋を打ちながら、僕は今後のプランを考えていた…どうしたら、もっと面白くなるかな?


【禅蔵】

「くそっ!何故こういう勝負になると無駄に強いんだ?」


 君がこういう勝負に弱いだけだよ…とは、口が裂けても言えない。

 禅蔵は性格が災いしてか、攻め手に偏り過ぎなんだよね~。


【ザルバ】

「勝利の為には、気が熟すのを待つ事も必要さ…それに、待つのも楽しいし♪」


【禅蔵】

「フン!待ち惚けのくたびれ損にならなきゃいいがな。」


 禅蔵は今すぐにでも暴れたくて仕方がない、という様子だ。ただ、実際に地上に出向いて、相手の弱さを見て拍子抜けしたらしく、春まで待つ事を渋々ながら承諾してくれた。

 それにしても、


【ザルバ】

「待ち惚けのくたびれ損、か…君らしい言い方だね。」


【禅蔵】

「…退屈は鬼をも殺す…ただ待つという行為が、一番疲れるんだ。」


【ザルバ】

「まぁ、そう言わずに。ちょっと思考を変えれば、この時間もなかなかいいものだよ?」


【禅蔵】

「俺に貴様みたいな柔軟な思考があると思うか?」


 ……。


【ザルバ】

「……ゴメン…」


【禅蔵】

「本気で謝るな!流石に傷つくわ!!」


【ザルバ】

「意外に繊細だよね♪」


【禅蔵】

「一番傷つく返しをしたのはお前だ!」


【ザルバ】

「ゴメン、ゴメン♪つい♪」


 肉体的には、幻想郷随一の強さを誇る禅蔵…でも意外にナイーブな一面があるのが面白くて仕方ないんだよね♪


【禅蔵】

「…あぁ、退屈だな…それに、水難斗も…」


【ザルバ】

「あぁ…」


【水難斗】

「……チッ!」


 水難斗は、正直かなりイラついているみたい…春まで、と言ったけど…実質、水難斗の痺れが切れるのが本当のタイムリミットだね。


【ザルバ】

「まぁ、仕方ないよね…僕たちは同士であって、同志じゃない…だろ?」


【禅蔵】

「まぁ、それもそうだ。」


 …同士であって、同志じゃない…か。


【ザルバ】

「……あぁ、そうだ!面白いこと思い付いた♪」


【禅蔵】

「?」




 鈴仙side


 ミネルバさんが薬を飲み、ケガが回復してから一日…昨日は結局、ミネルバさんが目を覚ます事は無かった。無理もない…そもそも、あの短時間で全身のケガが完治した事の方が異常なのだから。

 けど、一抹の不安はある…もしかしたら薬のダメージで、このまま意識が戻らないなんて事も…。


【鈴仙】

「ミネルバさん…」


 …気づくと、私は病室の前で立ち尽くしていた…。

 考え出すと、不安に押し潰されそうになる…ダメよ、私!ミネルバさんの事を信じて……


 ガラッ


【ミネルバ】

「ん?よぅ、鈴仙…」


【鈴仙】

「あ、お早うございます、ミネルバさn……起きてるしっ!!」


【ミネルバ】

「随分寝ちまったみたいだな…薬打たれてから、どのくらい経った?」


【鈴仙】

「ま、まだ丸一日経ってませんが?」


 そう…丸一日と経っていない…のにどうして、この人は起きて普通に喋ってるの!?


【ミネルバ】

「ってことは…二十時間弱、十五時間ぐらい寝てたのか…寝過ぎで頭がボーっとするわけだ。」


【鈴仙】

「というか、起きて大丈夫なんですか?」


【ミネルバ】

「授業サボるわけにいかねぇしな…修行もしねぇと…」


 この人は、どうして変なところで真面目なんだろう?昨日のあの容態から考えて、昨日の今日ので仕事に出ようと考えるだろうか?


【ミネルバ】

「ただ、その前に…」


 ぐぅぅぅぅぅっ


【ミネルバ】

「…腹、減ったな…」


【鈴仙】

「すぐに用意しますね。」


 …二つ返事で答えてから、通常食か患者食か、はたまたお粥にするべきか、私は本気で迷う事になった。




【ミネルバ】

「いただきます。」


 結局、通常食にした…彼の体なら、もう本当に完治しているだろうから…。

 現に、ミネルバさんは、白米をかき込むような勢いで食べ始めた…


【鈴仙】

「あ、あんまり慌てて食べないで下さい!危ないですよ!」


【ミネルバ】

「むぐむぐ…ゴクン…あぁ、それは分かるんだが…ムシャムシャ…何か…モグモグ…箸が…バクバク…止まらなくて……」


 …確かにそうみたいね。以前、霊夢が入院中に夕食を作りに行ってあげた時は、もっと落ち着いて食べてくれていた。

 話に聞く限り、ミネルバさんは昔、まともな食事も摂れない環境下に置かれていたことがあるらしく、その影響なのか元々の性格なのかは分からないけど、食べれる事に常に感謝し、味わって食事をしているようだった。

 そんな彼が、味わう余裕もない勢いで箸を進めている…恐らくこれは、肉体が無意識にエネルギーを欲しているのだ。薬の効果とはいえ、あんな短時間で傷を完治させたのだ…相当なエネルギーを消耗したはず。点滴は打っていたけど、到底賄い切れるものではなかったということね。

 多めに用意して正解だったわ…いえ、むしろ足りないかしら?


【ミネルバ】

「ふぅー…ご馳走様でした。ありがとな、鈴仙。」


【鈴仙】

「いえ。」


 用意した食事を全て平らげるまで、ミネルバさんの食事の勢いは止まらなかった。


【鈴仙】

「足りましたか?」


【ミネルバ】

「ん?あぁ…まだ食い足りない気もするが、一度に摂れる量はこれが限界だ。」


【鈴仙】

「自身の胃の大きさ、把握してるんですね?」


【ミネルバ】

「胃が満杯だと、いざという時に動けねぇからな…これでも、食い過ぎちまった方だ。」


【鈴仙】

「それでも、まだ消耗したエネルギーを補い切れてないでしょう。せめて、今日一日は点滴を…」


【ミネルバ】

「いや、いい。これ以上、休んでるわけにいかねぇからな。」


 そう言うと、ミネルバさんは立ち上がった。


【ミネルバ】

「俺が寝てる間、霊夢はここに来たか?」


【鈴仙】

「え?いいえ…」


【ミネルバ】

「そうか…約束どおり、ちゃんと修行してるって事だな。だったら、尚のこと俺も、うかうかしてられねぇだろ。」


【鈴仙】

「……あの、ミネルバさん?ミネルバさんは、霊夢のことどう思ってるんですか?」


【ミネルバ】

「あ?何でそんな事?」


【鈴仙】

「だって…」


 自覚が無いのだろうか?

 霊夢のことを考えている時のミネルバさんは、いつも真剣で、でも何処となく嬉しそうな顔をしている…。


【ミネルバ】

「霊夢は…恩人だ。今、俺がここで暮らしていられるのは、アイツのおかげなんだ。今の俺があるのも、アイツがいたからだ。」


【鈴仙】

「特別、なんですね…」


【ミネルバ】

「どうかな?お前や永琳も、命の恩人だと思ってるぜ。」


 …やっぱり、自覚ないみたいね…。


【ミネルバ】

「鈴仙。魔理沙たちのことも頼んだぜ。このまま引き下がる連中じゃねぇだろうからな。」


【鈴仙】

「分かっています。でも、ミネルバさんはこれからどうするんです?」


【ミネルバ】

「授業時間以外は、修行に明け暮れるさ。修行方法も、考えがある。」


 どんな修行を?と、聞くだけ野暮よね…ミネルバさんの事だ…絶対にムチャクチャな事を考えているに違いない…。


【ミネルバ】

「他にも色々と…手を打たねぇとな…」


【鈴仙】

「?」




 霊夢side


 …こんなに修行に没頭した時期が、かつてあったかしら。

 時は流れ、マヨヒガに積もっていた雪は、雪解けを迎え始めている…。


【藍】

「…もうすぐ春、ですね。」


【霊夢】

「そうね…」


 春…ザルバが提示した、タイムリミット…何ともテキトーな時間制限だけど、もういつ、ヤツらが出てきても不思議じゃない。

 やれるだけの事は全てやったわ…全て…。


【霊夢】

「ありがと、紫…それに、ルーミア。」


【紫】

「…zzz…」


 紫は、私の修行が終わると、かなり遅めの冬眠に入った…この調子だと、目を覚ますのは夏だろうか?


【霊夢】

「それじゃ、もう行くわ。」


【藍】

「行ってらっしゃい。頼んだわよ、霊夢。」


【霊夢】

「えぇ。」


 私は飛び立ち、マヨヒガを後にした。

 これも修行のおかげか、前よりも飛行速度がグンと上がっているのが分かる。

 あっという間に、神社に着く事が出来た。


【霊夢】

「……ただいま。」


 境内に降り立ち、そこで待っていてくれた彼に、久し振りに声をかけた。


【ミネルバ】

「…あぁ。おかえり……何か言い慣れねぇな。」


【霊夢】

「そういえばそうね。」


 お互い苦笑した。


【ミネルバ】

「強くなったな、霊夢。」


【霊夢】

「こんなに修行したのは初めてだわ。」


【ミネルバ】

「…他の連中も、かなり腕を上げてきたな。」


【霊夢】

「みたいね。」


 階段を上ってくる気配に、鳥居の方へ目を向けると…よく見知ったシルエットの帽子と金髪が現れた。


【魔理沙】

「…よっ!お二人さん♪」


【霊夢】

「すっかり元気そうね。」


【魔理沙】

「当然!あんなケガ、三日で完治したぜ☆」


【アリス】

「何を偉そうな事を…」


 アリスも一緒に現れた。


【アリス】

「ミネルバと同じ薬を使えって、無茶な事を言って…危うく死にかけたじゃない?」


 どんな恐ろしい薬よ…。


【魔理沙】

「でもピンピンしてるぜ☆」


【アリス】

「はぁ…こっちは気が気じゃなかったわよ…」


【妖夢】

「はっ!」


 ザッ


【妖夢】

「お待たせしました。」


【霊夢】

「妖夢!アンタも無事だったのね。」


【妖夢】

「無論です。」


 勢いよく境内へと跳び込んできた妖夢…彼女も修行を積んできたのだろう、以前にも増して剣士としての貫禄を感じさせた。


【魔理沙】

「で、何となくここに集まったけど、これからどうするんだぜ?」


【霊夢】

「そんなの…」


【咲夜】

「こちらから乗り込むのね。」


【魔理沙】

「うわっ!?咲夜!いつから!?」


 魔理沙は気づいていなかったようだが、咲夜は妖夢が来た後すぐに到着していた。


【ミネルバ】

「…他にも誰か来たな。」


 ミネルバが見上げているのは、山の方だ。そっちの方角から、確かに見知った二人が飛んでくるのが見えた。


【文】

「あややっと!」


【早苗】

「ふぅー…間に合いましたね。」


【霊夢】

「文、早苗…アンタたちも来る気?」


 早苗はまだしも、文が来るのは想定外だった。相手の中には、鬼である禅蔵もいるというのに。


【文】

「前の襲撃で、山の方もかなりの被害を受けましたからね。このまま黙って待っているのも癪です。」


【早苗】

「私たちも参加させて下さい。足手まといにはなりませんから。」


 二人とも、確かに覚悟を決めてきたみたいね…目に迷いや怯えはない…。


【ミネルバ】

「来るのは自由だが、ケガして動けなくなったら捨て置くぞ?」


 …ミネルバの言い方は酷だが、実際問題その通りだ。永遠亭までケガ人を運ぶ余裕がある保証はないのだから。


【鈴仙】

「それなら、私も協力しますよ。」


【ミネルバ】

「鈴仙。」


【鈴仙】

「戦力は皆さんに及びませんが、お役には立てるかと。」


 現れた鈴仙は、他の誰でもなくミネルバに向かって、アツ~い視線を向けながらそう言った。

 コイツ!絶対、ケガしたミネルバにベタベタするつもりだわ!


【魔理沙】

「お、おい、霊夢…顔が怖いぜ?」


【ミネルバ】

「あぁ、助かる。頼んだぞ、鈴仙。」


【鈴仙】

「はい♪」


 ……。


【魔理沙】

「れ、霊夢!落ち着け!何か出てる!黒いの出てるから!」




 ミネルバside


 俺、霊夢、魔理沙、アリス、妖夢、咲夜、早苗、文、鈴仙…以上の9人で、


【上海】

「シャンハーイ!」


 …訂正する…9人と1体で、地底へと先制攻撃をかける事にした。

 正確にいつ仕掛けてくるか分からないザルバたちを待ち構えるより、こちらから奇襲をかけた方が効果があるだろう。

 俺たちは、地底へ繋がる間欠泉を目指し飛び立った。


【ミネルバ】

「ただ、ザルバたちがよっぽどバカじゃない限り、何か罠を仕掛けて待ち構えているハズだ。気を引き締めていくぞ!」


【妖夢】

「ミネルバさん!前方に誰かいます!」


【ミネルバ】

「!?」


 妖夢に言われて慌てて目を凝らすと、そこにはよく見知った人が待ち構えていた。


【ミネルバ】

「藤堂先生!?」


【藤堂】

「ミネルバ先生、こんな大所帯でどちらへ?」


 何でこの人がここに?異変があったって、よっぽどじゃないと動かない人のハズ…


【藤堂】

「奇襲を掛けようと言うのに、こんな目立つ動きをしては意味がないでしょう?」


 そう言うと、藤堂先生は指を鳴らして、何かの結界を張ったようだ。


【藤堂】

「私の周囲に結界を張りました。気配などを完全にシャットアウトする…いわば、ステルス戦闘機のような結界です。これで近づけば、ザルバたちに気取られる事はないでしょう。」


【ミネルバ】

「藤堂先生…」


【アリス】

「珍しいわね。貴方の方から動くなんて。」


【藤堂】

「事態が事態ですからね。皆さんが敗北し、ザルバたちが地上で暴れたりしたら…幻想郷がどうなるか、想像に難くないでしょう。」


 何はともあれ、藤堂先生まで参戦してくれるなんて、嬉しい誤算だぜ!


【藤堂】

「さぁ、行きましょう。」


 藤堂先生の結界のおかげで、ザルバたちに気づかれる事なく地底へ乗り込める!いきなり現れた俺たちを見れば、さすがのザルバだって動揺するに違いない!

 正直、これだけの面子で乗り込んでも、勝負は五分ってとこだったが…これで、勝ちの目が見えて来た!いやむしろ、藤堂先生の幻術によるサポートが得られるなら、より確実に安全に、ヤツらを仕留めるチャンスを作り出せる!

 この戦い、貰ったz…


 ドォンッ


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