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第四十一話 幻想郷冬まつり

今月は、あややの突撃インタビュー、ミネルバ先生の相談窓口はお休みです。

代わりに…

 チルノside


【チルノ】

「じゃあ、レティ。始めちゃって♪」


【レティ】

「はいは~い♪」


 本格的に寒くなってきたので、いよいよお祭り計画も大詰めを迎えようとしていた。

 まずは雪女であるレティに頼んで、幻想郷中に雪を降らせ、積もらせてもらう。かまくら作りには大量の雪が必要だからね。


【ルーミア】

「うぅっ!寒い寒い!」


【チルノ】

「あ、ルーミア!」


 振り向くと、大きい方のルーミアが体を縮こまらせて飛んで来ていた。


【ルーミア】

「おぅ、始まったな…いよいよかぁ。」


【チルノ】

「まぁね。レティも起きてきてくれたし。これで幻想郷冬まつりの準備は万z…」


【レティ】

「…う~ん、もうダメ~…」


【チルノ】

「え?あ?早っ!?れ、レティ!頑張って!」



 見ると、レティはヘロヘロになっていた…地上を見ると、まだ雪は積もるほど降ってもいない。


【レティ】

「まだ起きて間もないんだもの…」


【チルノ】

「う、う~ん…」


 確かに、レティが起きて出てきたのは昨日、一昨日の話…まだ本調子でないのも無理はない。

 でも、計画の中でかまくら作りは何にも増して手間と労力と時間がいる。材料となる大量の雪の準備は急務だ!


【チルノ】

「仕方ない!変身っ!とぅっ!」


 説明しよう!私は変身によって急成長し、ルーミアみたくナイスバデーのお姉さんになれるのだ!いや、じゃなくて!


【チルノ】

「レティ!私も力を貸すわ!せめて、会場になる神社の周りだけでも…」


【レティ】

「くー…スー…」


【チルノ】

「ちょっ!レティィィーーーーっ!」


【ルーミア】

「大丈夫なのかぁ、この計画?はぁ、寒いし早く温泉行こう…」




 ミネルバside


 空が白み始める頃、いつものように庭でトレーニングをしようと思って表に出た俺は唖然とした。


【ミネルバ】

「ちょっ!何これ!?」


 玄関開けたら一面真っ白になっていた。まさか、一晩でこんなに積もるとは…俺の膝丈を優に越えてるじゃねぇか。


【ミネルバ】

「マジかよ…幻想郷ってのは、雪国なのか?」


 いや、それにしては昨夜の霊夢の反応はおかしいな。すると、これは…異変か?


【チルノ】

「あ、おはよう、お兄ちゃん♪」


【ミネルバ】

「ん?チルノじゃねぇか。あぁ、何だ…お前の仕業か、これ。」


 そういや、かまくらも作るとか言ってたな。


【チルノ】

「レティに頼んで、この辺り一帯だけ大雪降らせてもらったの。」


【ミネルバ】

「ウチの周りだけかよ!」


 一気にこの量は不味いだろ…霊夢が起きてきたら何て言われるか。

 仕方ない、霊夢が起きてくる前に、かまくらの材料にする分の雪をある程度まとめておくか。このままじゃ、まともに境内を歩けないからな。


【ミネルバ】

「魔獣変化!」


 俺は変身して、カノンをセイバーやランスを作る要領で、氷のスコップを作り出した。


【ミネルバ】

「霊夢が起きる前に作業を終えるぞ。」


 という事で、俺は早速雪かきに取り掛かった。

 ……。

 …………。


【ミネルバ】

「うん、無理…」


 一時間かけて、玄関前の雪はある程度庭の方に移せたが…この大量の雪を全て移動するなんて、魔獣変化した状態でも無理があるぜ。

 雪国の連中は、毎年こんな生活を?そ、尊敬するぜ…。


【霊夢】

「ちょっと!何なのよ、これぇっ!?」


 あちゃー、霊夢も起きて来ちまったよ…。


【チルノ】

「あ、おはよー、霊夢~♪」


【霊夢】

「チルノ!アンタねぇっ!」


 境内を雪で埋め尽くされちゃロマンもへったくれも無い…そう言わんばかりに、霊夢は昨夜の反応とは打って変わってご立腹だ。


【チルノ】

「ちょうど今、かまくら第一号が完成したとこだよ♪」


【霊夢】

「……あそ。」


 無邪気に笑って言うチルノに、霊夢もすっかり毒気を抜かれてしまったようだ。


【チルノ】

「この調子で、じゃんじゃん作っちゃうから♪」


 そう言って張り切るチルノ…だが、いいのか?こんな朝早くから家を出てきて…藤堂先生、心配してんじゃねぇのか?


【ミネルバ】

「おい、チルノ。藤堂先生にまだ黙ってるつもりか?もういい加減、バラしてもいいだろう?」


【チルノ】

「ダーメ!パパと慧音には、お祭り当日に知らせてビックリさせるんだから!」


 いや、もうバレてるだろ…いくら何でも…


【霊夢】

「何でそこまで拘るかしらねぇ…そもそも、藤堂さんは分かるとして、何で慧音にまで秘密にするのよ?」


【ミネルバ】

「いや、そこは察しろよ。」


【霊夢】

「?」


 こいつ、巫女の直感は鋭いのに、他のカンは鈍いな…。

 まぁそんな霊夢は置いといて、俺は雪かきの作業を、チルノはかまくら作りを急ピッチで続けた。途中、朝食休憩を取りつつ(チルノも一緒に)、仕事に出るまでの間に何とか粗方の雪かきを終える事が出来た。

 あれだけ大量の雪があれば、かまくらも相当作れるんだろうが、足りなかったらまた降らされるのだろうか?勘弁してくれ…。


【ミネルバ】

「おはようごさいます。」


【藤堂】

「あぁ、ミネルバ先生。おはようございます。」


 今は塾長が授業をしているので、職員室には藤堂先生一人だった。


【ミネルバ】

「相変わらず、忙しそうですね。」


 書類の山は、毎日俺が来るたびに机の上に鎮座していた。


【藤堂】

「何しろ、厄介な案件がありますからね。」


【ミネルバ】

「そういや、卒業する生徒の中に、変わった希望を出してる生徒がいるとか…」


 詳しくまだ聞いてなかったんだよな。


【藤堂】

「えぇ…何でも、ウチのお向かいさんにね…」


【ミネルバ】

「……は!?」


 藤堂先生のとこのお向かいさんって…


【ミネルバ】

「ちょっ!誰がそんな希望を?」


【藤堂】

「お銀ちゃんですよ。」


【ミネルバ】

「いや、え?お銀?」


 お銀といえば、新太郎と並ぶ優等生だぞ?何を考えてんだ?


【藤堂】

「私も慧音先生も、何度か面談したんですが、どうにも当人の意志が固くて…近々、先方に交渉に行くつもりです。」


【ミネルバ】

「マジかよ!あそこは吸血鬼の館だろ?何で里の娘っ子が好き好んで行きたがるんだよ?そもそも、両親も納得してんのか?」


【藤堂】

「慧音先生の話では、親御さんも何度も説得したそうなんですが…あの子も、割と頑固なようでして…」


 折れたのか…大丈夫かよ、本当に…。


【藤堂】

「まぁ、この幻想郷では、ここを卒業する年になれば一人前も同然ですから、後は当人の問題としか言えませんね。我々は、最大限の協力と応援をするしかありませんよ。」


【ミネルバ】

「…なら、俺も口出しはしないっすけど…」


【藤堂】

「それはそうと、すいませんね、ミネルバ先生。今朝は娘が色々と迷惑をかけて…」


【ミネルバ】

「…やっぱバレてんじゃん…」


 だろうとは思ってたけどよ…。




 それからも、チルノのやつは急ピッチで作業を進めていた。かまくら作りは、チルノの友達である大妖精や、ルーミア、うなぎ屋の女将をしていたミスティアとかいう夜雀に、リグルっていう蛍の妖怪も加わって、和気藹々と作っているのを見かけた。まぁ、俺や霊夢も、多少手伝ったが、それ以上にチルノの友達が入れ替わり立ち代わりやってきた。橙に、見慣れない妖精三人組、里の寺の近くでたまに見かける、よく分からん妖怪(ぬえって言ったか?)とか…そんなこんなで、十基近いかまくらが、大雪の日から一週間ほどで完成した。


【チルノ】

「後は、溶けないように、崩れないように、コーティングしてと…」


 仕上げに、チルノが冷気でかまくらを保護し、かまくら製作は無事に完了した。

 それが終わると、チルノは次の作業へと取り掛かった。といっても、そっちはどうやら簡単らしい。何でも、作りたいのはアイスキャンドルとかいうやつなんだが、要は中の空洞になった氷のランタンを幾つも用意するだけらしい。

 氷の妖精であるチルノにとって、一つの形の決まった氷を大量に作るなど造作もない事だった。問題は…


【ミネルバ】

「…お前なぁ…どうせなら、設置する場所の近くで作れよ!」


 境内で製作したそれを、参道の脇に一つ一つ設置する作業だった。結構、骨が折れる…。


【チルノ】

「あ、そか。」


 何も考えてなかったらしい…賢くなったようで、どっか抜けてるんだな…。

 まぁ、別にいいけどよ…


【ミネルバ】

「にしても、これ蝋燭とか準備してるのか?結構な数だぞ?」


【チルノ】

「あぁ、それなら…」


【妹紅】

「心配ご無用、だぜ。」


 現れたのは、塾長の親友である妹紅だった。


【チルノ】

「あ、妹紅!アイスキャンドル出来たよ♪」


【妹紅】

「みたいだな。どれ?」


 完成したキャンドルロードを見て、妹紅は何を思ったのか徐に火の玉をアイスキャンドルに放った。


【ミネルバ】

「っておい!何を!?」


 慌てて止めようと思ったが間に合わず、火の玉はアイスキャンドルの中に吸い込まれていった。って、これって…


【妹紅】

「うん、もうちょっと火力を下げて…こんぐらいか?」


 火加減を調節された火の玉は、アイスキャンドルの中でゆらゆらと赤い光を灯した。


【霊夢】

「なるほど!妹紅の炎をキャンドルの代わりに…」


【チルノ】

「そういう事♪妹紅の炎なら、風や雪で簡単に消えたりしないし。私の氷も、そう簡単に溶けないから。」


 そういう事か。確かに、これなら蝋燭みたいに芯が雪で濡れて消えたりもしないな。


【チルノ】

「きっとキレイだよ~♪」


【妹紅】

「おう!任せろ!」


【輝夜】

「あら?そんな味気の無い火の玉ばかりじゃ、彩りに欠けるんじゃなくて?」


【妹紅】

「あ?何でテメェがここに?」


 と、今度は永遠亭の引き籠り姫まで…


【輝夜】

「私だって、面白そうな事があれば出てくるわよ。何やら楽しそうな事をしてるって噂を聞いてね。」


【妹紅】

「ケッ!お呼びじゃねぇよ!」


【輝夜】

「あら、心外ね?私はただ、貧相な貴方の炎だけじゃ、せっかくのアイスキャンドルが侘しいと思って、色を添えに来ただけよ?」


【妹紅】

「喧嘩売ってんなら買うぞ?」


【輝夜】

「蓬莱の玉の枝。」


【妹紅】

「って、いきなりかよ!?ん?」


 輝夜が発動したスペルカードの弾幕は、何故か妹紅ではなくアイスキャンドルの中へと飛んで行った。七色に輝く弾幕が、アイスキャンドルの中でキラキラと、幻想的な輝きを放つ…。


【チルノ】

「わー♪凄い♪」


【妹紅】

「ケッ!」


 特製アイスキャンドルと同じくらい目を輝かせるチルノとは反対に、妹紅は面白くなさそうだ。

 しかし、これはいいアイディアだな…


【ミネルバ】

「おい、チルノ。魔理沙やアリス、あと吸血鬼の館にいたあの魔女にも声を掛けとけ。」


【チルノ】

「うん♪」


【妹紅】

「…どういう風の吹き回しだよ、輝夜?」


【輝夜】

「別に?ただ、あんなに無邪気にお祭りを成功させようと頑張ってるんだもの。少しくらい長年の知恵ってものを貸したげてもいいじゃないの。」


 長年のって…あ、そういえばこいつら不老不死だったか。


【輝夜】

「貴方たちだって同じでしょ?」


【妹紅】

「まぁな。」


 確かに、そうだな。

 頑張っているヤツがいたら、応援したいし力になりたい…そう思うのが人の性だ。


【輝夜】

「素敵なお祭りになるといいわね。」


【妹紅】

「フン、初めてお前と気が合ったな。」


 さてはて、どんな祭りになるのか…楽しみだ。




 そして、ついに…祭りの日……


【チルノ】

「それじゃあ、いっくよ~!」


 夕日が沈むのに合わせ、有志の弾幕使いたちが一斉に、色とりどりの弾幕を放った。それらの弾幕は、打ち合わせした位置のアイスキャンドルの中に納まっていき、神社への参道を幻想的な輝きで照らし出した。


【チルノ】

「第一回、幻想郷冬まつり!スタート♪」


 神社の境内には縁日定番の出店が並んでいるが、冬まつりという事もあって、豚汁や甘酒、お汁粉など、冬まつりならではの店もある。


【霊夢】

「…人、来てくれるかしら?」


 霊夢は客入りを心配しているようだ…出店の売り上げが上がらなければ、神社の収益もあまり見込めないし、当然っちゃ当然だが。


【ミネルバ】

「心配すんな。見てみろよ。」


 俺が促すと、霊夢も参道の方に目を向けた。


【霊夢】

「あ。」


 アイスキャンドルに照らされる参道を、一目散に駆け上がってきているのは、寺子屋の生徒たちだ。その後を、少し遅れるようにして生徒の親たちが歩いてきている。


【ミネルバ】

「藤堂先生たちには内緒にしてたが、生徒たちの間じゃここ数日、この祭りの話題で持ち切りだったからな。」


【霊夢】

「…もしかして、アンタが?」


【ミネルバ】

「さぁな?」


 俺は授業の時に、神社で楽しい催し物があると話しただけだ。


【霊夢】

「フフ…何だかんだ言って、アンタやっぱり優しいわよね。」


【ミネルバ】

「バカ言え、誰が…」


【霊夢】

「でも、本当にキレイね。」


 カラフルな弾幕入りの特製アイスキャンドルが照らす、幻想的なその光景に、霊夢もうっとりしているようだ。

 まったく…俺の横でそんな面してんじゃねぇよ…


【ミネルバ】

「って、おい!」


 何を思ったのか、霊夢はいきなり俺の腕に自分の腕を絡めてきやがった…それこそ、まるで恋人同士が腕を組むみたいに…。


【霊夢】

「子供たちが上がってくるまで、まだ時間あるでしょ?」


【ミネルバ】

「そういう問題じゃねぇよ!」


【霊夢】

「いいじゃない、少しくらい。こんなに…素敵な眺めを見てるんだもの。」


【ミネルバ】

「だから…」


 関係ねぇだろ、んな事…そう言いたかったが、これ以上何を言っても聞く耳を持ちゃしねぇだろ。それに…もう少しくらいこのままでもいいか、と…そう思っちまってる俺も確かにいるわけで…戸惑いは相変わらず拭えないが、少なくとも今は、この感情も悪くないと思っている。本当に、俺もどうかしているな…。




 魔理沙side


【魔理沙】

「うぉぉっ!キレイなんだぜ☆見ろよ、こーりん!」


【霖之助】

「もう見てるよ。」


 チルノが企画したという冬まつり、私はこーりんと一緒に見て回る事にした。普段は必要以上に表に出ようとはしないこーりんだけど、流石に今回は物珍しさもあって来てくれたんだぜ♪

 …これって…もしかしなくても、デート…?


【霖之助】

「どうした、魔理沙?顔が赤いぞ?」


【魔理沙】

「な、何でも無いのぜ!そ、それより早く行こうぜ、こーりん♪早くしないと、良いかまくらが無くなっちまうのぜ!」


 かまくらの中で、こーりんと二人きりで……キャッ☆


【霖之助】

「そんなに慌てなくてもいいだろう。せっかくキレイに彩られた道なんだ。ゆっくり眺めて行けばいいじゃないか。」


【魔理沙】

「それは、まぁ…」


【霖之助】

「ほら。」


【魔理沙】

「!!」


 こーりんはそう言って、私に手を差し出してきた…もしかして、手握ろうって事?


【霖之助】

「人も増えてきたし、はぐれたら面倒だからね。」


【魔理沙】

「う、うん…」


 差し出されたこーりんの手を、おずおずと握る…帽子被ってきて良かった…顔隠せなかったら、こんな人前で堂々と手なんか握れなかっただろうから。

 ど、どうしよう?私、こーりんと手を繋いで歩いてるよぅ…こ、恋人みたいに…あぁ、お願い神様…夢なら一生覚めないで…。




 慧音side


 ここ最近、里の中ではその話題で持ち切りだった。

 今まで博麗神社の祭りと言えば春と秋だけだったが…今年は何と冬にも祭りをやるというのだ。どういう風の吹き回しなのかと思っていたら、発案者は何とチルノだと言うのだ。

 ただ、どういうわけかチルノはこの事を藤堂さんにずっと黙っていた。まぁ、藤堂先生自身はとっくに気づいてはいたのだが…。昨日、やっと…


【チルノ】

『明日、お祭りやるから二人とも一緒に行こう♪』


 と、藤堂先生と私を誘いに来たのだ。

 その為、今日は事務手続きの仕事を早めに切り上げ、私は藤堂先生と共に神社への参道に向かっている。


【藤堂】

「それにしても、すっかり寒くなりましたね。」


【慧音】

「そうですね。」


【藤堂】

「おかげで娘は、どうやら元気が有り余っているようで…お忙しいところ、すいません。」


【慧音】

「い、いえ!ここ最近ずっと忙しかったですし、たまにはこういう時間も必要ですよ。」


 それに…後でチルノとは合流する手筈にはなっているが、少なくとも神社で合流するまでは、藤堂先生と二人きりだ。これは、俗に言うデートというヤツじゃないか。


【藤堂】

「しかし、それなら妹紅さんらと回った方が、慧音先生も楽しかったでしょうに。それに、よりにもよって私なんかと歩いていては慧音先生と、寺子屋そのもののイメージまで…」


 はぁー、また始まった…ミネルバ先生もそうだが、藤堂先生も大概だ。

 自己嫌悪…一言で言うなら正にそれだ。他人の事は思えるのに、優しくなれるのに…どうして、この人は…頑なに自分を嫌うのだろう?

 見ているこっちの方が、胸が痛くなるほどに…


【慧音】

「藤堂先生…どうしてそこまで、自分の事を卑下するんです?」


【藤堂】

「?」


 核心を衝くつもりで言った私の言葉を、藤堂先生はまるで意に介さないという顔で受け止めた。


【慧音】

「…自覚が無いのですか?貴方は今や、里の方たちにも広く受け入れられているはずです。ウチにとってもなくてはならない存在なんです。」


【藤堂】

「買い被りですよ。私なんて…」


 ズキリ、と…また胸が痛んだ。

 届かないのだろうか?私の言葉では…貴方の心に……いやっ!


【慧音】

「っ!私にとっても…貴方の存在は、もはや無くてはならない存在です!」


【藤堂】

「慧音先生?」


【慧音】

「唐変木で朴念仁の貴方には分からないかもしれませんが…」


【藤堂】

「とうへn…!?」


【慧音】

「貴方が自分の事を卑下する度に、私は胸が痛くて仕方ないんです!貴方が好きだから…」


【藤堂】

「っ!?」


 妹紅の言う通りだ…このぐらい、ストレートに思いを伝えなきゃ…藤堂先生には届かない…。


【慧音】

「貴方がウチで働き始めた頃から、ずっと…ずっと、藤堂先生の事が好きでした。」


【藤堂】

「……慧音先生…貴方は、勘違いしている。」


【慧音】

「え?」


【藤堂】

「私は、自分を卑下しているわけではありません。客観的事実を述べているだけです。自己嫌悪も、幻術師の性であって、慧音先生が気に病むような事ではない。」


 …藤堂先生は、普段とは比べ物にならないほど冷徹な声でそう言った。

 自分の感情に、私は関係無いと…明確な拒絶の意図がそこにはあった。


【藤堂】

「そもそも、私には慧音先生に好かれる理由がない。一体、私の何処に惹かれたというのか…甚だ疑問です。私が貴方に見せている全て…声も姿も立ち居振る舞い、言動、一挙手一投足、その全てが偽りやも知れない私の、何処に真実を垣間見たと言えるんです?」


【慧音】

「……」


 藤堂先生の冷たい瞳が、私を真っ直ぐ射貫いて、反論の言葉を悉く潰していく…。


【藤堂】

「こんな…ろくでなしの、人でなしの…朽ちた屍に取り憑き生き長らえているだけの、醜い幻術師である私なんかの、一体何処g…」


 パクッ バシュンッ


【藤堂】

「なっ!?」


 …もきゅ…もきゅ……ゴクン。


【慧音】

「何処が、醜いんですか?」


 演出のつもりだったのだろうか、藤堂先生は自らの姿を腐った死体に見せてきた。それで私は、すぐに藤堂先生が幻術を使っている事に気づけた。


【慧音】

「いくら自分を醜く見せようとしても無駄ですよ。私には効きませんから。」


 自身たっぷりに、私はそう言ってやった。すると…


【藤堂】

「……分かっていますよ。私が一番…そんな事は分かっています。」


 何かを諦めたような、観念したような顔で、藤堂先生は笑ってみせた。


【藤堂】

「…初めて会った時に、一目で心を奪われてしまった…そんな貴方に対し、私が見せる一部の幻術が効かない事くらい…最初会った時から分かっていたんです。」


【慧音】

「……え?」


 い、今、なんて…?


【藤堂】

「聞こえませんでしたか?里で最初に会ったあの時から、貴方に一目惚れしていたと…そう言ってるんです。」


【慧音】

「え?あ、じゃあ…え?えぇっ!?」


【藤堂】

「あぁ、そうそう。さっきの続きですが…私、そこまで唐変木でも、朴念仁でも無いので、慧音先生の気持ちには半ば気づいていましたよ。ただ、何分私には娘もいる上、私も貴方も娘も、揃いも揃って人外の時を生きられる身です。だからもう少し…もう少しだけ、共に時を刻んでから、私の方から思いを告げるべきだと思っていたのに…シナリオが台無しです。」


【慧音】

「な、何ですか!それ!私が悪いみたいじゃないですか!私、もの凄く勇気を出して…」


【藤堂】

「ですから、甚だしい勘違いだと申したんです。」


【慧音】

「っ!こ、この…」


 ガシッ


【藤堂】

「え?ちょっ!待っ…」


【慧音】

「唐変木の、朴念仁!」


 ガツンッ




 ~おまけEX・もしミネルバの妹がヤンデレ妹だったら~


 設定:ミネルバの妹の魅尾ちゃんがヤンデレ妹で、幻想入りして、兄妹で暮らしてる的な

 元ネタ:言わずもがな…ヤンデレ妹に死ぬほど愛されて夜も眠れない…


【魅尾】

「お兄ちゃん、まだ起きてる?」


【ミネルバ】

「ん?どうした、魅尾?」


 スーッ(障子を開ける音)


【魅尾】

「ごめんね、こんな時間に。今日のこと、謝っておこうと思って…」


【ミネルバ】

「今日?何かあったっか?」


【魅尾】

「どうしても外せない用事があったから、お兄ちゃんに美味しいごはん作って上げられなくて…本当にごめんね。」


【ミネルバ】

「あぁ、何だそんな事か。気にするなよ。(むしろ良かった…)」


【魅尾】

「ううん、気にするよ!だってお兄ちゃん、いつも私の晩ごはん楽しみにしてくれてるんだもん。」


【ミネルバ】

「あぁ…まぁな…(スリルこそ最高のスパイス…)」


 設定追記:魅尾ちゃんの料理の腕は壊滅的、まさに兄妹


【魅尾】

「大丈夫、明日からはちゃんと作るからね♪」


【ミネルバ】

「無理しなくていいんだぞ。」


【魅尾】

「別に、お兄ちゃんのこと嫌いになったとかそういうわけじゃないよ。本当だよ!どっちかっていうと…ウフフフフッ♪ううん、何でもない。」


【ミネルバ】

「?」


【魅尾】

「あ、そうだ!お昼のお弁当どうだった?いつもと味付けを変えてみたんだけど…」


【ミネルバ】

「…懐かしい(泥の)味がしたぜ。」


【魅尾】

「そっか…よかった。口に合わなかったらどうしようっと思ってたんだけど、これでひと安心ね♪」


【ミネルバ】

「何時もありがとな。」


【魅尾】

「もうっ!そんなの気にしなくていいよ。家族なんだから…ね?料理とか洗濯とか私の取柄ってそれくらいしかないし。」


【ミネルバ】

「そんな事ない(むしろ壊滅的)さ。」


【魅尾】

「それにお兄ちゃんはいつも私のお料理を美味しそうに食べてくれるんだもの。私だって頑張っちゃうよ。」


【ミネルバ】

「そうか…(職業柄、努力は認めるべきなんだろうな…)」


【魅尾】

「ところでお兄ちゃんさっき洗濯しようとして見つけたんだけど、このハンカチ…お兄ちゃんのじゃないよね?誰の?」


【ミネルバ】

「ん?あぁ、それ…」


【魅尾】

「あー!分かった!霊夢さんのハンカチでしょ。」


【ミネルバ】

「まだ言ってないぞ!」


【魅尾】

「匂いで分かるもん。」


【ミネルバ】

「どんな嗅覚だよ!?」


【魅尾】

「それで、何でお兄ちゃんが持ってるの?」


【ミネルバ】

「いや、この間の異変の時にケガして、その時に借りて、返すの忘れてt…」


【魅尾】

「ええっ!?お兄ちゃん怪我したの?そのときに借りたって―――怪我は大丈夫なの?」


【ミネルバ】

「なぁに、ただの掠り傷だ。(本当はまだ塞がってないんだが…腹の辺りで良かったぜ。)」


【魅尾】

「そっかぁ大したことなくて良かった。そういえばお兄ちゃん、最近帰りが遅いよね。」


【ミネルバ】

「あぁ、図書館で翌日の授業の内容を纏めたりしてるからな。あそこの館長、すげぇ物知りだから、色々と授業に役立つ話なんかも…」


【魅尾】

「図書館…あぁ、知ってる。あの紫色の服の館長さんね?でもあの人、物知りだけど暗いよね。あんな人と話してたらお兄ちゃんまで暗い性格になっちゃうよ?」


【ミネルバ】

「コラ、そんな事を言うもんじゃないぞ。」


【魅尾】

「ブー…お兄ちゃん、昔は私の話ちゃんと聞いてくれてたのに…最近はあまり聞いてくれないよね。」


【ミネルバ】

「そりゃ何年前の話だ?」


【魅尾】

「それはそうと今日の晩ごはんどうしたの?」


【ミネルバ】

「え?そ、そりゃお前…里の飯屋で…」


【魅尾】

「そっか外食したんだ。お金渡しとけば良かったね。それで一人でご飯食べたの?」


【ミネルバ】

「あ、あぁ…まぁ、な…」


【魅尾】

「フーン一人で食べに行ったんだ…クンクン……やっぱり、あの女の匂いがする……お兄ちゃんの嘘つき!!!!」


 バキャッ


【ミネルバ】

「がはっ!そこはケg…」


【魅尾】

「ねー。どうしてそんな嘘をつくの?お兄ちゃん今まで私に嘘ついたこと一度も無かったのに!!!!」


【ミネルバ】

「いつつ…分かった!正直に言うから、腹は止めろ!傷が開く!…その、霊夢の、とこにだな…(うぅ、妹に女のとこに行ってたなんて報告…どんな拷問だよ!)」


【魅尾】

「そっかぁ…やっぱり霊夢さんのところに行ってたんだ。へぇぇぇ~…手料理を食べさせてもらったの?」


【ミネルバ】

「……はい(は、ハズい…いっそ殺してくれ…)」


【魅尾】

「ふ~~ん…それは良かったね!!!!」


 ドガッ


【ミネルバ】

「だから、腹はダメだt…ぐあっ!」


 ブシュッ


【ミネルバ】

「…あ?や、ヤベ……」


【魅尾】

「お兄ちゃんは優しくて、カッコよくて…でもちょっと雰囲気に流れやすいところがあるのは分かってた。でも、お兄ちゃんなら、きっといつか私の気持ちを絶対に分かってくれるって思ってたから、ずっと我慢してたのに!それなのに…私に隠れて浮気って、どういうことっ!?信じらんない!!やっぱりあの女がいけないのね。監視対象だとか言って、お兄ちゃんにすり寄ってくるけど、結局は赤の他人じゃない!あんな奴に、お兄ちゃんを渡さない!渡すもんですか!たとえ幽霊になって出てきても…また始末すればいいんだもね?」


【ミネルバ】

「…あ?何、言って…」


【魅尾】

「……そのままの意味に決まってるじゃない。(笑)お兄ちゃんにすり寄ってくる意地汚い女どもは、みんなもうこの世にいないのよ?(笑)」


【ミネルバ】

「…魅尾…お前……」


【魅尾】

「…お兄ちゃんを守れるのは私だけ…お兄ちゃんは、私だけ見てればいいの。それが、最高の幸せなんだから……ネ?オニイチャン♪」


 ……かくして、兄の闇と狂気は、妹に引き継がれた……BAD END


氷華録BAD ENDシリーズ、今後も思い付いたらやるかもです。

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