第三十八話 箸休め・東方雀闘録2
【ナレーション:A野T氏風】
「紫からの挑戦を受け、麻雀対決をする事になった藤堂。しかし、紫と藍のコンビ打ちと積み込み技術に翻弄され、序盤から大打撃を被ってしまう。一本目の勝負を半ば諦め、二人の打ち筋を見極めようとするのだが、点数状況を持ち直す事もままならず、東四局・紫の親番を迎えてしまうのであった。」
…ダメだ…完全に、流れを持っていかれている…。
この東ラス、警戒していた積み込みは無かったように見える…だが、ほぼヒラの状態で打っているにも関わらず、私も慧音先生の手もまるで伸びない…既に七巡目、このままでは…
【紫】
「ツモ。」
【慧音】
「なっ!?」
【紫】
「タン・ピン・三色・ドラ1…6000オール。」
くっ、親跳か…。
これで、私と慧音先生の点数は8400と5200…このままでは、何も掴めないまま一本目を取られてしまう!それだけは…何としても回避しなければ!
ジャラジャラ…
ん?藍の、あの手つき…
パシ パシ、カチャ…
積み込み!
ここで来たか…何だ?何を狙っている?字一色や大三元、大四喜なら、山を開ければ一目瞭然だが…そんな目立った積み込みはしていない。現に、字牌の半分近くはまだ積み込まれていない。
くそ、こっちも山を積みながらでは、目も思考も追い付かない…何だ?何を積み込んだ?まさか…天和か!?
山を積み終え、サイコロを振った紫…出たのは、6…藍が積んだ山からだ。これは、間違いない…天和を積み込んでいる!
どうする?山を開けさせるか?いや、待て!罠の可能性もある…その場合、二人に8000ずつ払わなければならない。そうなれば、飛び確定だ…。
…ならば……
紫side
終わりよ、藤堂…この局で、一気に勝負をつけてあげるわ。
積み込みは完璧。後は配牌を取り終えれば、私の手は…手は………な、どういう事!?
【藍】
『紫様?どうされたんです?』
【紫】
『どうもこうも無いわ…打ち合わせ通りに積み込んだはずの牌が、一枚も入ってないのよ!』
【藍】
『なっ!?そんなバカな!?』
藍が積み込みをミスするなんてあり得ないし、そもそも私だってちゃんと積んだのよ?私の、私の取るはずだった配牌は…何処に消えたの!?
まさか……藤堂っ!一体、何を!
normal side
……間に合った…私が取る牌と、紫が取る牌…双方の牌の表面を、幻術でそっくり移し替えてやったぞ。ツモる牌も入れ替えた…ただ、どういう事なんだ、これは?
二三七八九①②③⑨⑨ⅠⅢ北…この13枚は紫が取るはずだった牌、そして親の最初のツモ牌である14枚目は、私の第一ツモの牌と入れ替えてある。紫が天和を狙って積んだなら、この時点で私の手はテンパイしていないとならない…が、蓋を開けれてみれば1シャンテン止まりだ。ますます分からない…何を考えているんだ?
ただ…さすがに、二人も動揺しているようだがな。
【紫】
「…くっ!」
やっと親が第一打を打ち、局が始まった。
さて…問題の紫が引くはずだった14枚目の牌は……Ⅱ(2ソー)?
…即テンパイ…しかも、この形……ドラは、一(1ワン)……そうか、そういう事か。私はある確信を持って、黙って北を切った。
そして、そのまま…誰も動きを見せない中、私が次にツモった牌は…本来なら、紫が二巡目にツモるはずだった…
【藤堂】
「ツモ。」
一(1ワン)だった。
【藤堂】
「ピンヅモ・ジュンチャン・三色・ドラ1…一本場で4100、8100。」
…そういう積み込み方、そして打ち方がお好みか、八雲 紫。
恐らく、今の局の紫の狙いは…ダブリー・一発ツモ・ピンフ・ジュンチャン・三色…そして、ドラ1と裏2の数え役満だ。ドラ表示牌の位置が藍の積山に来るよう、賽の目を2ではなく6にしたのはその為だろう。
しかもこれなら…積み込みに気づかれ山を開けられても…大三元爆弾のように目立つ事もないし、配牌部分が完成しているわけではない…一目では気づかれ難い。もし、山を開けさせていたら…逆に私がアヤをつけたと罰符を払わされていただろう。
まぁ、何はともあれ…これで、
【藤堂】
「さぁ、南入だな。」
八雲コンビの積み込みは封じたも同然だ。これで、今度こそ…流れはこっちに来た。この勝負、勝ちにいける!
【藤堂】
『慧音先生、どんな手でもいいのでここは上がって下さい。最悪、私が振り込みます。』
【慧音】
『はい。分かりました。』
今の上がりで、慧音先生の点数は1100まで減ってしまった。このままでは、逆転する前に慧音先生がハコになってしまう。ここは慧音先生の点数を回復させなければ。そして、私の親番で一気に勝負をかける!
……。
…………。
よし、七巡目、慧音先生の手は六ⅡⅣⅦⅧⅨ東東北北北白白に、絶好のⅢ(3ソー)引き。
【慧音】
「リーチ!」
六(6ワン)を切って、リーチをかける慧音先生…索子の染め手はバレているだろうが、南入した今、東は藍以外には客風だ。シャボ待ちとしては悪くない。それに、どちらで上がっても満貫確定だ。
とはいえ、流石に見え透いた索子のホンイツ系テンパイ…紫も藍も、索子と字牌は警戒しているだろう。二人に全て押さえられる前に、私の方でも一枚確保したいところだ。
そう思っていた矢先に、白が私の手に一枚入ってきた。よし、これで流局の心配もない。しばらく回して、出なければ私が振り込むまでだ。
……その後、三巡ほど回したが、紫と藍は完全に下りているようで、二人から東と白が出てくる事はまずないだろう。
仕方ない…ここは、
タンッ
【慧音】
『と、藤堂先生…』
【藤堂】
『上がって下さい。』
【慧音】
「…ロン。リーチ・白・ホンイツ。8000…」
よし、これで次は私の親ばn…
【紫】
「待ちなさい。裏ドラ、忘れてるわよ。」
【慧音】
「あ、そうか…」
確かに忘れていた。表のドラは三(3ワン)だったし、すっかりドラの事を意識してなk…
【慧音】
「え?」
…裏ドラは、Ⅱ(2ソー)だった。
【紫】
「12000ね。ふぅー、怖い怖い。押さえておいて良かったわ。」
【藍】
「役牌で上がるなら、リーチなどかけなくても同じだったものを。ま、おかげで振らずにすみましたがね。」
【慧音】
「ご、ごめんなさい、藤堂先生…」
【藤堂】
『動揺しないで下さい、慧音先生。』
【慧音】
『でも…』
【紫】
「まぁでも、良かったんじゃない?北や白にドラが乗ってたら、パートナーから倍満直だったわよ?」
【藍】
「そうなったら、さっきの上がりの点数ほぼほぼ失ってましたね。」
【慧音】
「っ!」
【藤堂】
『聞いてはダメです!』
【慧音】
『でも…私が下手な手を打ったばかりに…』
【藤堂】
『焦って揺さぶりにかかっているんです。聞き流していればいいんですよ。それに、おかげで逆転に向けての手が広がりました。』
【慧音】
『え?』
【藤堂】
『我々と向こう二人の点差は48400です。対し、慧音先生の点数は1100でした。そのままの状態では、私の親番で逆転を狙う方法は、役満のツモ上がりか、八雲コンビからの三倍満ロン上がりという絶望的条件しかなかったんです。しかし、今の上がりのおかげで、慧音先生の点数は13100…親の三倍満ツモにも耐えられる点数になりました。』
【慧音】
『…じゃ、じゃあ…』
【藤堂】
『おかげで、上がりに縛りが無くなり、とても打ち易くなったという事です。』
【慧音】
『よ、良かったぁ…藤堂先生の足を引っ張ったわけじゃなかったんですね?』
【藤堂】
『えぇ。むしろ、最善の上がりをしてくれましたよ。ありがとうございます。』
口汚い嫌味で、慧音先生を揺さぶったつもりだろうが、そんな事でこの流れを手放してたまるか!
さぁ、覚悟しろよ…反撃開始だ!
反撃の決意を込め振ったサイコロは8の目を出した。取り終えた配牌は、二三七七④⑤⑥⑨ⅢⅣⅤ西發中だった。頭と二面子、両面の塔子が一つ…焦らずじっくり進めれば、三色に伸びる可能性もある…行ける!この勝負、勝ちに行ける!タンピン三色を目指し、私は中を切った。
【藍】
「ポン!」
なっ、いきなりか!?まぁいい…流れはこっちに来てるハズだ。見ろ、ツモは⑦(7ピン)だ。しかも、これはドラ…完全に来ている!
とはいえ、いきなり役牌を鳴かれて、立て続けに發は切れない…ここは、⑨(9ピン)を切っておくか。
【藍】
「ポン!」
何っ!?二連続副露だと!
バカな…偶然だ!積み込みのはずがない!第一、今は私の親番なんだ!サイコロを振るのが私である以上、積み込みようもない…流れだって、見ろ!四(4ワン)引きだ。
そもそも、ツモる山は慧音先生の山に移っているんだ。私が何をツモるかは、お前たちに分かるはずもない!逆転をかけた、最後の親番…ここは前進あるのみだ!
【藍】
「ロン。」
【藤堂】
「なっ!?」
西を切り、手を進めた私を待っていたのは…
【藍】
「中、ホンイツ、トイトイ…満貫です。」
【藤堂】
「ば、バカな…」
藍の倒した手牌は、②(2ピン)の暗刻と、西と發の対子…待ちはどちらも、私の手で浮いていた牌だ。
積み込み…?バカな…どうやって……
藍side
どうやって積み込んだ?そういう顔をしていますね、藤堂さん…確かに、親が貴方である以上、こちらで狙って賽の目を操る事は出来ない…私にも幻術の心得はありますし、誤魔化す事は出来るのですが…貴方に看破されないという保障もない。ですがね、藤堂さん…貴方も知ってるはずですよ。二つの賽の目の組み合わせは全部で21通り、その中で最も多い組み合わせは6・7・8が出る組み合わせです。だから、賭けたんです。最も高い確率の3パターンの内の、一つに。私の山から取り始める、8の目になる組み合わせが出る事にね。
後はそれに合わせて、私と紫様で積み込みました。パートナーを励ますのに必死で、気づいてなかったでしょうがね。
normal side
【慧音】
『藤堂先生…どうすれば?』
【藤堂】
『落ち着いて下さい、慧音先生。この一本目の勝負は、これで完全に勝ちの目が消えました。予定通り、二本目からの勝負に賭けます。』
今の私の振り込みで、点差は64400まで広がった。それに対し、私の点数は4700…逆転条件は親である慧音先生が、紫か藍のどちらからか直で、三倍満以上を上がらなければならない。ツモでは、役満でも逆転できない上、私がハコになって終了だ。
【慧音】
『何か方法は無いんですか?このまま負ければ、二本目も取りに行ける流れになるかどうか…』
確かに、この一本目の勝負は、完全に八雲コンビのペースだ。二本目の勝負に移ったとして、その流れを止められる保証はない。
【藤堂】
『まぁ、確かに…まともに打っているだけでは、ね…』
【慧音】
『え?』
二本目からは、私も手を尽くしていくつもりだ。その為に、この半荘はなるべく手の内を見せたくない。
【藤堂】
『とにかく、ここは手なりで進めて…上がれるようなら上がって下さい。私がハコになってもお構いなく。』
【慧音】
『藤堂先生…』
……。
その後、南三局も終盤に差し掛かったところで、
【慧音】
「……」
【紫】
「どうしたのよ?早く切りなさいな。」
【慧音】
「…ツモ…4000オール…」
慧音先生が親満を上がり、八雲コンビとのチーム点差は48400に縮まった。が、私の点数はこれで700。
【慧音】
『藤堂先生…』
上がったハズの慧音先生は、何故か今にも泣きだしそうだ…私がハコになって終われば、二本目も流れは来ないとでも思っているのだろうか?
【藤堂】
『…次で三倍満ツモ上がり出来れば、完全に引き分けに出来ますよ。』
親の三倍満の一本場なら、12100オールで、八雲コンビから合わせて24200奪える。これでちょっきり、点差は0だ。
しかし、当然そんな都合よく事が運ぶわk…
【慧音】
『頑張ります!』
いや、だからアツくならないで下さい…。
…まぁ、当然そんなに上手く事が運んでくれるわけもなく…
【藍】
「あ、紫様。それ、ロンです。」
【紫】
「あらら…テヘ☆」
【藤堂】
「……」
【藍】
「……3900は4200です。」
【紫】
「…はい。」
紫と藍のコンビ打ちで、あっさり慧音先生の親番は流された。
【慧音】
『藤堂しぇんしぇ~…』
だから、泣かないで下さい。
私の親番がたった3ツモで流された時点で、この一本目の勝負は着いていた。圧倒的点差を維持されたまま終盤を迎えれば、八雲コンビが逃げ切り態勢を取ってくるのは目に見えていた。
もはやこの試合の間に見るべき所などあるまい…紫が藍に振って、この一本目は終了となるだろう。ならば私は、この半荘で得た情報を、二本目にどう活かしていくかを考えた方がいいだろう。
そして始まった、オーラス紫の親番…賽の目は10で、ドラは白…私の配牌は、一四八②⑥ⅡⅣⅥⅦⅧ西西北だった。これでは手役を狙っても、自風と索子のホンイツがいい所だろう。
第一打目、紫が切ったのは八(8ワン)だ。紫は親だが、逃げ切るなら上がり役は藍だろう。チーさせて、喰いタンか萬子のイッツーに向かわせる気か?
しかし、藍はこれを鳴かず、すぐにツモって中を切った。
【紫】
「ポン。」
その中を、すかさず紫が鳴いた…。二人揃って、逃げ切りの為に最速で上がりに向かっているな。これはいよいよもって、二本目の作戦について早く練り上げる必要があるな。
……いや、待て!おかしいぞ!何で紫が中を鳴くんだ?
確かに、ドラ表示牌で中は一枚見えている…藍が切ったのはラス1の中だ。しかし、早上がりは藍の役回りのハズである。紫は、翻数を重ねて跳満以上…計算しつくされた数え役満の手を作る事にこだわっているハズだ。だからこそ、あんな手の込んだ積み込み方を……積み込み?
しまった…そうだ…この局、紫が出した賽の目は10…取り出したのは藍の山からだ。
完全に失念していた…というより、一度逆手に取られた積み込みを、しかもこの圧倒的点差があるオーラスで使ってくるなんて、誰が考える?その心理を逆手に取って、堂々と積み込んでいたのか…なら恐らく、紫の手はすでにテンパイ!そして、当たり牌は…私の配牌のうちのどれかだ。私から直で上がれば、中のみでも即終了となるからな。
紫が次に切ってきたのは①(1ピン)だった。出てきたのは手牌の右端から…ダメだ、これでは手牌の並びが分からない…待ちが、全く読めない!
だがそのすぐ後に、藍が一(1ワン)を切ってくれたおかげで、ひとまずこの一巡目は凌げそうだ。そして私が引いたのは、Ⅵ(6ソー)だ。ここは、たった今通ったばかりの一(1ワン)を切ってと…。
【紫】
「……」
次のツモで、紫は西をツモ切りした。よし、これで安全牌が増えた。あと二巡は稼げる…今のうちに、何を待っているのか、それと…二回戦の作戦も考えなけれれば……。
【紫】
「……」
次のツモでも、紫はツモ牌を即座に河へ叩いた…というか、今…ツモ牌を見ていない?切られたのは③(3ピン)だった。盲牌か?
紫のツモ切りに違和感を覚え、ゲンブツで場を凌ぎながら、紫のツモの動作を注視した。無論、幻術で私の視線は手牌に向いているように見せている。
【紫】
「……」
紫は親指と中指で牌を縦に挟み山から持ち上げ、引いてきたように見せかけて、そのまま牌を見ることなく河へ牌を置いた…指先は、牌の表面を一度も撫でていない…盲牌すらしてない!
どういう事だ?まるで、当たり牌を引いて来ない事を分かっているような切り方だ。というより、当たり牌の在り処が分かっている?つまり、私の手牌以外に、その当たり牌は藍と自分で抱えているという事か?
それとも……待て、考えろ!そもそも、本当に中のみ直撃で私をハコにするつもりか?十分は十分だが、本当にそんな上がり方で紫が満足するか?否…やるなら徹底的に、私を打ちのめしたいはずだ。
圧倒的点差で、ほぼ逆転など不可能だ…早上がりに徹する必要なんて、そもそも無い!そんな状況で、いきなり中を鳴いてきたという事は…あの中鳴きに、何か意味があるはずだ。
紫の狙いは、恐らくまた数え役満…中を鳴き、面前を崩した状態で狙える数え役満は…小三元で4、ホンイツで6、トイトイで8…ドラ3がついてもまだ足りない。カンドラか?いや、今までから察するに、そこまでドラに頼りはしないだろう。何より問題なのは、当たり牌の在り処だ…あのツモ切りの仕方は、明らかに不自然だ。もし当たり牌を自分で引いて切ってしまえば、フリテンで私からも上がれなくなるのに…慧音先生や私が積んだ山に、自分の当たり牌が無いと分かっているのか?しかし、だとしたら…考えられるのは私の手牌と、自分と藍の手牌…そして……
【藤堂】
『…そうか!そういう事か!』
【慧音】
『ど、どうしたんですか?』
【藤堂】
『あぁ、すいません…』
慧音先生と感覚を繋いでいるのも忘れて、思わず興奮してしまった…。
【藤堂】
『慧音先生…お願いがあります!』
【慧音】
『?』
紫side
敵ながら流石ね、藤堂?私たちが積み込んでいた事にもう気づいたみたいね。私の手がすでにテンパイしている事も。けど、もう遅いわ。すでにシナリオは完成しているんですもの。
私の手牌は六六六九九九白白發發、中中中…白、發待ち。内、ドラの白二枚は藍の手に抱えられている。發二枚の内の一枚の行先こそ知らないけど、残りの一枚の在り処は…フフフ。
まぁ、精々足掻く事ね。どうせ、私の上がりを防いだ所で、貴方に勝ち目なんて無いのだけれど。だってそうでしょう?仮に私か藍のどちらからか三倍満を上がったところで、逆転には届かないんですもの。ドラ無しで、13翻なんて手役を揃えるのは不可能。裏ドラに期待したところで、藍が仕込んだ裏ドラの表示牌は東…つまり、頑張ってメンチンを作っても、ドラは決して乗る事は無い。
約束された勝利…故に、
タンッ
振り込みなんて気にせず、当たり牌である『最後』の發を引くまで、私は何も恐れる事なくツモ切りを続ける事が出来る。
……。
…………。
巡目は進み、いよいよ終盤…ついに、ツモる山が藍の積山へと移ろうとした時だった。
【藤堂】
「…リーチ!」
っ!?この巡目で、リーチ?何を考えているの、藤堂?だいたい、貴方の持ち点は700、リーチの供託である1000点も無いじゃない。
【慧音】
「これを。」
スッと、パートナーである慧音が点棒を置いた。
【慧音】
「勝敗は個人点ではなくパートナーとの合計点だったな?なら、私が供託の1000点を代替わりしても文句はあるまい?」
【紫】
「フン、まぁいいわ。」
それにしても、この状況でリーチをかけて何になるというの?どう頑張っても届かないのよ?
あぁ、そう…そういう事。
【紫】
「私のテンパイを崩して、勝負から下ろしたいのね?どう足掻いても勝ち目が無いから。」
私を弱腰にさせて、二回戦の流れを掴むために…でも、甘いわ!
【紫】
「無駄な事を!チームの点差は48400!リーチ一発に振り込んだって、どう頑張っても届かない点差よ?何を恐れる必要があるっていうの?」
慧音が切った後、私は構わずツモ切りした。
【紫】
「さぁ、山は残り4枚…カウントダウンスタートよ?」
次に藍が引き、残り牌は3枚…これが0になった時、私の勝利…いえ、それは確定しているんだった。訂正するわ…藤堂、貴方の完全敗北が決まる!
【慧音】
「っ!ポン!」
【藍】
「え?」
藍が切った⑧(8ピン)を、慧音がポンした…って、ポン!?
これには藍も思わず怪訝そうな声を上げた。それはそうだ…パートナーが最後の望みをかけてリーチをかけたこの巡目に、ポン?
【紫】
「パートナーの一発ツモの可能性を消してまで、形式テンパイしたかったのかしら?」
【慧音】
「……」
まったく、何を考えているのかしらねこのド素人は。まぁ、大した腕じゃないと思っていたから、藤堂のパートナーに巻き込んだのだけれど。そういう意味では、狙い通りの仕事をしてくれt…
【藍】
『しかし紫様、今のでツモ順が…』
【紫】
『…なっ!?しまった…今のポンは、その為の…』
まさか、藤堂…この狙いを完全に読んでいたの?私の上がり牌である、『最後』の發の在り処を?
【藍】
『どうします、紫様?すり替えますか?』
【紫】
『…いえ、その必要はないわ。私が二枚の發を抱えている以上、發を待てる形は単騎待ちしかあり得ない。そんな形で、こんな巡目でリーチをかけるなんて、私を下ろしに掛かったとしか思えないわ。それか、もし仮に藤堂のリーチが逆転を狙ったものなら、清一色は外せないでしょう?發が当たり牌である可能性は無い。』
【藍】
『だとすると、藤堂さんは…』
【紫】
『後者であれば、發を切らざるを得ない。どの道、私たちの勝利に変わりはない。』
そう、当初の予定だった海底ツモ三暗刻は付かないけど、小三元・ホンイツ・トイトイ・ドラドラは確定している。河底ロンで三倍満直撃よ!
さぁ、残りは3枚…まずは私。無論、牌を見ずにツモ切り。南か…裏ドラなんだけど、まぁ知ってるのは私の藍だけよね。当然の通し…これで残りは2枚…。
次は藍…②(2ピン)、ゲンブツだし、これも当然通るわね。
残るは1枚…さぁ引きなさい、藤堂!
【藤堂】
「……」
…藤堂が海底牌を引いた…これで残り牌はゼロ。ゲームオーバーよ、藤堂。さぁ、早く切りなs…
【藤堂】
「ツモ。」
……え?
【紫】
「…フフフ…アハハハ!ツモ?良かったわね?最後に一矢報いれて。で?何を上がったの?リーヅモ?イッツー?三色?何にせよ、一本目の勝負は私たちの…」
【藤堂】
「あぁ…八雲 紫、お前の負けだ。」
【紫】
「何ですって!?バカな事を言わないで欲しいわね!リーヅモで上がったところで、どう頑張ってもその手は三倍満にすら届かない!」
【藤堂】
「そうだ。この作戦を成功させるには、お前にそう思い込ませる必要があった。でなければ…」
ダンッ
【藍】
「なっ!?」
【紫】
「そ、その手は…」
ⅡⅡⅡⅣⅣⅣⅥⅥⅥⅧⅧⅧ發發!?
【藤堂】
「海底に眠っている發を、引かせては貰えなかっただろうからな。」
【藍】
「りゅ、緑一色・四暗単騎…と、トリプル役満!?バカな…同じ緑一色のタネであるⅢ(3ソー)を、8巡目に切っておいて…」
それも、迷彩?この男、いつから狙って…
【藤堂】
「異常なツモ切り、中のポン、賽の目10…この三つが結びついて、海底を狙っている事に気づいた。同時に、私の手には緑一色のタネが集まり始めていた。だから賭けるしかなかった…海底に積まれた牌が、發である事…そして、私の狙いが最後まで気づかれない事にな。」
【紫】
「くっ…」
【藤堂】
「点数申告がまだだったな。24000、48000…終わりだな。」
…そんな…私の、負け…?
~最終結果~
藍 3000
藤堂 96700
慧音 1100
紫 -800
【藤堂】
「で?休憩と席替えはどうする?」
【紫】
「…必要ないわ。このまま、二本目突入よ!」
【藤堂】
「そうか…なら、始めようか?」
藤堂…一本目を取ったからって、いい気にならないでよね?もう容赦はしないわ!ここからが、本当の勝負よ!
席順もそのままに、早速二本目の勝負がスタートした。起家は…藤堂からだ。
東一局…7巡目、来たわ。二(2ワン)…二三四五六七③③④⑤⑥⑦ⅤⅥ…④(4ピン)切りで、Ⅳ・Ⅶ(4・7ソー)待ちテンパイ。Ⅶ(7ソー)なら、高目で三色!イケる!ヒラで打ってもこれなら、まだまだ私にも勝ちの目は残っているわ!
【紫】
「リーチ!」
私は④(4ピン)を切って、供託の千点棒を取り出した。
【藤堂】
「ロン。」
【紫】
「なっ!?」
箱から視線を上げると、藤堂が手牌を倒していた…
【藤堂】
「タンヤオのみ、1500だ。」
見ると手牌は三四五八八③⑤ⅡⅢⅣⅥⅦⅧで、④ピンのカンチャン待ちだった。手変わりを待っていたけど、親だし出たから上がるか…そんな感じの上がりね。だけど…
【藤堂】
「……」
今の一局、藤堂にテンパイ気配は無かった…
【紫】
『藍、藤堂のテンパイ、気づいていた?』
【藍】
『…いえ…全く読めませんでした…』
どういう事?藍にもテンパイ気配が読めないなんて…上がり直後に、牌をすり替えた?
【藍】
『いえ、それもありませんでした。』
でしょうね。それなら藍に看破出来ないはずがない…。
まぁ、いいわ。所詮、今の黙テンロン上がりは偶然…偶然は二度も起こりはしな…
【藤堂】
「ロン。ピンフのみ、1500は1800だ。」
【紫】
「……」
ま、また?何なの?さっきから、まるでテンパイ気配が感じられない…それに、この九(9ワン)さえ通れば、一二三四四五五六七八九南南でピンフ・イッツー・ホンイツ・高目イーペーコーのテンパイだったのに!
【藤堂】
「さぁ…続けるとしようか。」
くっ、藤堂っ!
~おまけ1・あややの突撃インタビュー~
【文】
「さぁてと、新聞も完成しましたし、次のインタビューに向かいますか!お、あれは?」
【小傘】
「うらめしや~!」
【文】
「小傘さんではありませんか。通りすがりの里の子供たちを脅かしているみたいですね。って、全然子供たち怖がってくれてませんね…」
【小傘】
「う、うらめしや~…」
【文】
「むしろ、一緒に遊んでとせがまれているような…唐傘お化けとしてはどうなんですかね?」
【小傘】
「…仕方ない、何して遊ぼっか?」
【文】
「あぁ、結局遊んであげるんだ…何がしたいんでしょうね、彼女は?こんにちは~。」
【小傘】
「?うらめしや~!」
【文】
「ひぃっ!その傘こっちに向けないで下さいっ!」
【小傘】
「おぉ…いい反応♪」
【文】
「本能的にダメなんですよ、その傘の模様…それはそうと、何をしてらっしゃるんです?」
【小傘】
「子供たちを脅かそうと思ったんだけど…」
【文】
「むしろ懐かれてるじゃないですか。」
【小傘】
「何でだろう?」
【文】
「いつもこうなんですか?」
【小傘】
「何でか驚かそうとしても、逆に一緒に遊んでーって言われて…仕方ないから、いつも隠れんぼとか鬼ごっことかして…」
【文】
「そりゃあ懐かれますよ。ただの優しいお姉さんとしか見られてないじゃないですか!」
【小傘】
「妖怪なのに!?」
【文】
「小傘さんは妖怪としての威厳が無さすぎなんですよ。まぁ、私ほどになれば里の子供たちも恐れを為して…」
【子供たち】
「新聞屋のお姉ちゃんも遊ぼう♪」
【文】
「……」
【小傘】
「…うらめしや~!」
【文】
「ひぃ~ん!(泣)」
多々良 小傘~愉快な忘れ傘~
能力:人を驚かす程度の能力
身長:155㎝
~おまけ2・ミネルバ先生の相談窓口~
【ミネルバ】
「よぅ、元気かっ!お前ら!今日もミネルバ先生の相談窓口、張り切って行くz…イタタタ…腹が……さ、さぁ、一枚目のお便りだ!ラジオネーム、青天の霹靂さんから。『怒りっぽい性格を直したいと思うのだが、何か方法は無いか?』との事だ。短気は損気なんて言うからな。まぁ、そうだな…俺もどっちかって言うと短気なんだが、俺が実践している方法は…苛ついたら、怒りとは真逆の気持ち、感謝とかそういう気持ちを思い出すようにしてるぜ。さて、次のお便りだ。ラジオネーム、甘味大好きっ子さんから。『説教臭くないもん!あの紅白巫女がダラけてるだけだもん!』との事だが…紅白巫女?霊夢の事か?まぁ確かに、普段は境内の掃除以外に巫女としての仕事も無いしな。でも、家の中の事はあれでちゃんとしてるぜ。飯も美味いし、いい嫁さんにn…んんっ!次だ!ラジオネーム、キラキラ星さんから。『先生、無茶な友人を止めて下さい。サニーが…チルノに勝負を挑もうと聞かないんです。なんか最近、めっきり強くなったらしいチルノに…ケガする前に止めて下さい。』との事だ…実名めっちゃ入ってるんだが、大丈夫なのか?まぁ、あれだ…藤堂先生を通して、チルノには手加減する様に言っといてもらうから、な。でも、まぁ、喧嘩はよくないぞ、うん。というわけで、今日の相談窓口はこれまで。またな~。」




