第三十二話 狂いし夢の中の一日(完結編)
ガシッ
無縁塚に急ごうとしていた私を、何者かが足首を掴んで阻んだ。
八雲 紫か!?
【チルノ】
「待って、パパ…」
しかし、それは気がついた娘だった。どうやら、正気に戻ってくれたらしい。
【チルノ】
「イタタ…頭痛い…」
【藤堂】
「チルノ、目が覚めたんだな。良かった…」
【チルノ】
「うん…ごめんね、パパ…」
【藤堂】
「私はいい。今度、ミネルバ先生にお礼を言っておきなさい。と、いかん!慧音先生が…」
【チルノ】
「私も行く!」
私が行こうとすると、チルノも強い口調でそう言った。無論、連れていくつもりは無かった。が…
【チルノ】
「私にあんな事させたヤツ、絶対に許さないっ!それに、慧音が危ないんでしょ?私だって、慧音のこと助けたいっ!」
操られていた鬱憤を晴らしたいからなのか、いつになく娘は憤慨し、興奮していた。ついて来るなと言っても、これでは無駄だろう。
仕方ない…
【藤堂】
「…分かった…行くぞ、チルノ。」
【チルノ】
「うんっ!」
霊夢side
【霊夢】
「…ぐ……ぅ…」
折れた腕ごと、私の体は石畳の上に投げ出されている…
【神奈子】
「そろそろ、いい返事をよこす気になったか?博霊の巫女?」
神奈子は、勝ち誇ったように笑い、這いつくばる私を見下していた…悔しいが、言い返す気力も出ない。
一晩中、折れた腕を執拗に痛めつけられ、全身の感覚ごと痛覚がマヒしたみたい…辛うじて、頭は回ってるけど…声も、まともに発せない…
【神奈子】
「返答は無しか…しょうがない。どんなに痛めつけても無駄らしいし、貴様を殺して、社を奪うとしよう。」
…容赦ないわね…こっちは、命乞いする気力も残ってないのに……
【神奈子】
「せめてもの慈悲だ…惚れた男に、言い遺す事はあるか?」
…ミネルバ……
【神奈子】
「…無いか。」
…有り過ぎて困ってるのよ…こんな事になるなら、好きって言っておくんだった…そう言えば、ちゃんとデートも出来なかったな……私が死んだら、ミネルバってばごはんどうするのかな?ちゃんと食べなきゃダメよ……
【神奈子】
「なら…死ね!」
ミネルバ…ミネルバ……
【神奈子】
「エクスパンデッド・オンバシラ!」
【霊夢】
「っ!」
飛来する御柱に、私は死を覚悟した…
ガンッ
【霊夢】
「…え?」
う、うそ?な、何で…?
【ミネルバ】
「……」
そこにいたのは、ミネルバだった。それも普段の姿じゃない…私が払ったはずの、闇の力によって変身した…
【ミネルバ】
「うらぁぁっ!」
【神奈子】
「何っ!?」
気合いの一声と共に、ミネルバは片手で受け止めていた御柱を神奈子に向かって殴り返した。
これには神奈子も驚いたのか、慌てて回避したが…
【神奈子】
「この…!?」
視線を戻した神奈子の前に、ミネルバはすでに踏み込んでいた。
【神奈子】
「ちょ、待っ…」
バキャッ
ミネルバの右拳が、神奈子の顔面に叩きつけられ、神奈子はそのまま妖怪の山の方へ吹き飛んでいった。
【諏訪子】
「神奈子!?」
【早苗】
「神奈子様っ!」
【ミネルバ】
「…昨夜神社を襲ってきたのは、霊夢の話じゃ三人組らしいな…」
【諏訪子&早苗】
「「っ!?」」
今度は、二人の背後へ!っていうか、速すぎる!さっきから、ミネルバの移動がまるで見えない!?
【ミネルバ】
「もう二人はてめぇらだな?」
【早苗】
「ひっ!ぐ、グレイソーマタージ!」
【諏訪子】
「厭い川の翡翠!」
ガッ ガシッ
スペカを発動しようとする二人を、ミネルバは頭を強引に掴んでそのまま…塀へ叩きつけた。
ズガンッ
【諏訪子】
「へぶっ!」
【早苗】
「か、はっ…」
後頭部を塀に思い切り叩きつけられ、さらにそのまま地面にまで…諏訪子はまだいいとして、早苗にあれはかなりキツイだろう。現人神とはいえ、彼女は生身の人間なのだから。
【ミネルバ】
「……力取り戻したはいいが、以前の力を何処まで発揮できるか、正直不安だった。だが…杞憂だったな。」
【諏訪子】
「さ、早苗~!しっかりしておくれよ~!」
【早苗】
「ぐ…ぁ…ぁぁ…」
【諏訪子】
「くぅっ!よくも早苗を~!この子はまだ嫁入り前なんだぞ!」
【ミネルバ】
「は?」
【諏訪子】
「じゃなくて!この子は、私たちと違って体そのものは人間の女の子なんだぞ!それを、何て乱暴な…」
【ミネルバ】
「…知るか。」
【諏訪子】
「ひぅっ!?」
ミネルバの剣幕に、諏訪子は蛇に睨まれたカエル状態だった。涙目でグスグスいって…あ、でもあれにはミネルバ弱いはz…
ゴンッ
【諏訪子】
「ぴきゅっ!?」
トドメ刺したぁっ!?
【ミネルバ】
「……」
諏訪子をゲンコツで気絶させた後、ミネルバはしばらく妖怪の山の方を睨んでいた。たぶん、さっき吹っ飛ばした神奈子の動きを警戒しているんだろう…。
【ミネルバ】
「…終わったか…」
反撃に来ない神奈子への警戒を解き、ミネルバはこちらに歩み寄ってきた。
【ミネルバ】
「ったく、このバカが!」
第一声がそれ!?酷くない?
【ミネルバ】
「五分でいい、無茶はするなと言ったハズだ!調子に乗って深追いしたんだろ?」
…はい…イケると思いました…
【ミネルバ】
「…心配かけやがって…」
…ミネルバ?声が震えて…
【ミネルバ】
「…間に合って、本当に良かった……」
…うん。ありがとう、ミネルバ…。
ジャスパーside
【慧音】
「あ、が!ああああっ!」
【ジャスパー】
「あはははっ!」
彼女、えっと…上白沢?先生は、地べたに這いつくばってのたうち回るようにして、踊っている。
【ジャスパー】
「お上手ですよ、先生!」
【慧音】
「ぐああっ!ああああっ!」
【ジャスパー】
「どうですか?脳に直接叩きこまれる痛みは?身を裂き、内臓を焼き、関節を引き千切られるような痛みが、否応なしに頭に流れ込んでくる気分は?最高でしょう?」
【慧音】
「あああああああっ!」
【ジャスパー】
「フフ♪普通の人間なら、痛みが限界を超えると苦痛を快楽に換えるよう脳が働くんですが、どうやら先生は純粋な人間じゃないようですね?ならもっと…楽しめそうだ♪さぁ、もっとキツくしますよ!」
【慧音】
「っ!?うあああああああああああっ!」
【ジャスパー】
「あはははははっ!いい声ですね!その美声、もっと聞かせて下さいよ。どうせなら、彼にも届くくらいに、ね!」
もっと先生に大声で歌って貰う為に、術を最大まで強めた。普通の人間なら、即死してしまうレベルだ。でも、先生なら大丈夫ですよね?
【ジャスパー】
「フフフ…あはははははっ♪」
ズダンッ
【ジャスパー】
「ひぎっ!?が、あ…」
な、何だ!?彼女にかけていた術が…無理やり引き千切られた?
先生にかけていたのは、先生の意識や感覚、神経を狂わせ、コントロールする術だ…その為に、僕の意識を先生の意識に繋ぐ必要がある…その繋いでいた僕の意識と感覚を、切断するなんて…そんな事が出来るのは……
【ジャスパー】
「フ、あはは…やっと来たね?待ってたよ?」
【藤堂】
「……」
彼が…幻術師の頂点……幻魔の王!
【藤堂】
「…チルノ、慧音先生を頼む。」
【チルノ】
「うん。」
正気に戻った娘も一緒か…楽しくなりそうだな♪
【藤堂】
「まず、先に…謝っておく。」
【ジャスパー】
「…なんで?」
急に、彼はおかしな事を言い出した。謝る?何を?
【藤堂】
「幻術師として、君もさぞや酷い目に遭ってきたのだろう事に…そんな君を、若き命を、ここで摘む事に…心から、謝罪しよう。」
【ジャスパー】
「あははははっ♪そんな必要ないよ!だって…ここで死ぬのは、貴方の方なんだからね!幻術師は、神に最も近い人間、神術師が進化を遂げた、まさに至高の存在!その頂点に立つ貴方を殺して、僕が世界の頂点に立つ!」
【藤堂】
「君は…」
【ジャスパー】
「お喋りは終わりだ!幻術師の戦いに、言葉なんて要らないでしょう?見せてあげますよ、幻魔の王!その呼び名の由来となった、貴方にしか生み出せない巨大な幻影兵!その歴史も、伝説も、今日までだぁっ!」
【藤堂】
「……」
【ジャスパー】
「来たれ、幻神!」
…彼が幻術師の頂点として君臨し、皆から幻魔の王と呼ばれるのは、彼にしか扱えない実体を持った幻影の巨人、幻魔の存在があるからだ。僕は、努力に努力を重ね、ついにその術式を身につけ、この幻術を生み出す事に成功した!
【ジャスパー】
「見るがいい!この美しさ!この神々しさ!五年かけて磨きに磨き上げた僕の幻術の、まさに最高傑作!貴方の幻魔を屠るに相応しいでしょう?」
【藤堂】
「……」
【ジャスパー】
「凄すぎて、言葉も出ないと?光栄です!そして、さようなら。貴方の伝説は、今日から僕が継いでいk…」
【藤堂】
「フゥッ。」
ザァッ
【ジャスパー】
「…え?」
え?何が…起きたんだ?
ぼ、僕の幻神が…掻き消された?一瞬で?何をしたんだ?こんな事が…
【藤堂】
「…君は、勘違いをしている…幻術師として、あまりにも致命的な、ね。」
【ジャスパー】
「嘘だ!こんな事、ありえない!幻神!」
再度、幻神を召喚した…が、
パチン バシュンッ
【ジャスパー】
「なっ!?」
今度は、彼が指を弾いただけで、幻神は跡形もなく消し飛ばされた。
そんな…僕の…僕の、五年の月日は…苦労は……
【藤堂】
「まず一つ、幻術師に幻術をもって相対してはならない。どれほど大がかりな幻術でも、解かれてしまえば終わりだからな。二つ目は、」
ズォォォンッ
【ジャスパー】
「ひっ!?」
彼の背後に、巨大な悪魔が……これが、幻魔?
【藤堂】
「君の幻神は、私の幻魔とはまるっきり別のモノだ。試してみろ。同じ術式による幻術なら、容易く解けるはずだ。」
【ジャスパー】
「はぁ、はぁ…き、消えろ!消えろ、消えろっ!」
……そんな…何で、消えない?本当に、術式が違ったのか?
【藤堂】
「…これは、幻術であって幻術ではない。だから、幻術師にも解く事が出来ない幻術なんだ。ただの幻術の実体化ではない。」
【ジャスパー】
「…あ……ぁ……」
【藤堂】
「それと、三つ目は…幻術師は、至高の存在などではない。幻術師の強さは、己自身を恥じ、疎み、偽りたいという思い…すなわち、自己嫌悪と劣等感に比例する。己を誇り、力を自賛するような者に、幻術の真髄に至る事など叶わない。」
【ジャスパー】
「あ、ぁ…っ!ウィング!」
に、逃げなきゃ!勝てるわけがない!幻神が通じないなんて!いや、それよりも…何なんだ!?彼の眼は!?目が合っただけで、心臓を握り潰されるような…覗き込んだだけで、心が押し潰されるような…暗くて重い、闇色の瞳は!?
幻術?違う…だけど、あの奥にあるものこそ…彼を、幻魔の王足らしめる何かだ!それだけは間違いない!だって…こんなに、怖いっ!
【藤堂】
「…串刺し…」
【ジャスパー】
「っ!?」
ドスッ ドスドスドスドスドスッ
【ジャスパー】
「がっ!ぁ…」
【藤堂】
「八つ裂き…」
ズバッ ザシュッ グチャッ
【ジャスパー】
「か…ぁ……ぁ…」
し、死んだ…?
……違うっ!これは…幻術!
【ジャスパー】
「こ、このくらいの幻術なら!僕にも解けr…」
【藤堂】
「串刺し。」
ドスドスドスッ
【ジャスパー】
「がっ!?」
ま、また?
【藤堂】
「八つ裂き」
【ジャスパー】
「ひぎぃっ!」
か、解除!今度こそ、逃げ…
【藤堂】
「串刺し。」
そんなっ!
【藤堂】
「八つ裂き。」
何で!?
こ、今度こそ!
【藤堂】
「串刺し。八つ裂き。」
【ジャスパー】
「ぎゃああああっ!」
……。
…………。
こ、これで、何度目だ?
解いても、解いても…終わらない…抜け出せない……何度やっても、その度に串刺しに、八つ裂きにされ続ける……でも、解かなきゃ…本当に、死んじゃう……
【藤堂】
「串刺し。八つ裂き。」
もう止めてくれ!誰か…助け…て……
normal side
…若き幻術師の彼は、幻魔の手の上で横たわっていた。幻術の中で攻撃される度に、ビクビクと体を痙攣させながら…
【藤堂】
「裏式、悪夢の牢獄…対幻術師用に作った幻術だ。簡単に言えば、ただの無限ループ…だが一度、解くべき術を間違うと、二度と抜け出す事は出来ない。」
【ジャスパー】
「た…す…け……」
【藤堂】
「…私の怒りに触れて、楽に死ねると思うなよ?幻魔の手の上で、狂い死ぬまで踊り続けろ。」
チルノside
…今、パパはどんな表情をしているのだろう…背中から感じられる怒りだけを頼りに推察するなら、修羅という表現が一番しっくりくるんだろうな。
それほどまでに、今のパパからは激しい怒りが溢れていた。それが、私に掛けられた術に対するものなのか、慧音を傷つけた事に対してなのか、はたまた別のものなのかは、バカな私には判断しかねるところだ。
ただ…
【藤堂】
「チルノ。」
振り返り、私を呼んだパパは、いつものパパだった。
【藤堂】
「慧音先生の様子はどうだ?」
【チルノ】
「うん、大丈夫。ケガはしてないみたいだし…」
【藤堂】
「そうだな。しかし、精神…とりわけ感覚と神経のダメージが酷い。」
【チルノ】
「どうすればいいの?」
永遠亭で処方してもらえる薬で、何とかなればいいんだけど…パパの難しそうな表情を見るに、その望みは薄そうだ。
【藤堂】
「薬でどうにか出来るものではないな…かと言って、幻術で記憶をいじるのもリスクが高いし…已むを得まい。」
パパはそう言うと、眠っている慧音の額に手をかざし、もう片方の手を自分の額に当てた。
【藤堂】
「…ぐ、く……完全には消せないが、慧音先生が受けた苦痛の記憶を…八割方、私に移し替える。」
【チルノ】
「え?でも、そんな事したらパパが…」
【藤堂】
「私なら、心配ない……これが、一番ローリスクなんだ…記憶の操作は、他の記憶にも影響を及ぼしかねないし…何より、術が解ければ元も子もない。この方法なら…リスクも少なく…慧音先生のダメージを…緩和、できる……」
パパ…顔が、真っ青だよ…
【藤堂】
「ぐ…はぁ…はぁ……これで…いい…」
処置を終えたパパの額には、激痛を堪えてか脂汗が滲んでいる…
【チルノ】
「パパ?大丈夫?」
【藤堂】
「…あぁ…大丈b」
ドスッ
【藤堂】
「がはっ!?」
【チルノ】
「パパっ!」
【紫】
「しぶといわね、相変わらず。」
【藤堂】
「ぐ、くっ…八雲 紫……」
突然現れた紫は、パパを傘で刺した後、あいつの方に目をやり…
【紫】
「そっちも、ナメた真似をしてくれたわね。そのくせ、役に立ちやしない。」
【ジャスパー】
「た……た、すけ……」
【紫】
「目障りよ!」
ドンッ
次の瞬間、紫は妖力波であいつを消し飛ばしてしまった。跡形も残っていない…。
【紫】
「幻術師には幻術師を、と思ったけど…とんだ見込み違いね。でも…貴方をここまで弱らせることには成功したみたいね。」
紫は、今度はパパに向き直る。
バキャッ
【藤堂】
「がはっ!」
【チルノ】
「パパぁっ!」
紫の傘の一振りで、パパは吹き飛ばされて岩に激突した。
【チルノ】
「こ、このぉっ!」
パパを助けるべく、紫に飛び掛かろうとした私だけど、拳は虚しく空を切った。
【藤堂】
「ぐはっ!」
すでに、紫はパパのところに移動し、パパを蹴り飛ばしていたからだ。
【紫】
「無様ね。苦痛が激しくて、まともに動けないし、幻術も使えないのかしら?」
【藤堂】
「くっ…」
【紫】
「いい気味ね♪何も出来ずに、娘の前で一方的に痛めつけられる父親…どんな気持ちかしら?ねぇ、藤堂?」
【藤堂】
「……くそ…」
パパっ!
【チルノ】
「止めろぉっ!」
考えるより先に、私は再び突っ込んでいた。
【紫】
「邪魔よ!」
ズガンッ
紫の傘が、私の体を叩き割った……砕けていく、私の体……
【藤堂】
「チルノぉっ!!」
だけど…今の私は、この程度じゃ無くならないよ!
【紫】
「何っ!?」
砕けた体を、冷気で再構築し、ついでに変身も済ませて、紫の背後へと回った。
【紫】
「なっ!?」
【チルノ】
「フリーズ!動かないで。」
アイシクルマシンガンを紫の背中に突き付ける。
【チルノ】
「さすがに、この距離でブッ放したくないからさ。」
【紫】
「くっ!憐れな氷精が…せっかくこの男の幻術から、助け出してやったというのに…」
【チルノ】
「頼んだ覚えはないわ。」
【紫】
「…何故だ?この男がどういう男か、まだ分からないの?こいつは、危険なのよ!幻想郷における、排除すべき脅威なの!殺されるべき…いや、そもそも死ぬはずだった存在なのよ。とうの昔に!死んで然るべき者なのよ!それなのに!何故邪魔をするの!?偽りの親子でしかない貴方が、そうまでする理由が、価値が、この男にあるとでも?」
【チルノ】
「……」
早口でまくし立てる紫の言葉は、その半分も私の頭に残らなかった。
【チルノ】
「ごめん、私バカだから…あんたの言ってる事、さっぱり分かんない。」
だけど…
【チルノ】
「だけど、死ぬはずだったパパが、どうして今こうして生きてるのかなら、私にだって分かるよ。」
【紫】
「そんなもの…」
【チルノ】
「あんたには分かんない?あんたに銃口突き付けてる、今の私がその答えだよ。」
もし本当に、死ぬ運命にあった命なら、誰かがその運命に抗ったから…生きて欲しいと、誰かがそう願ってくれたから…私は、パパに会う事が出来た。
【紫】
「……」
【チルノ】
「……」
【紫】
「…フン…親が親なら、娘も娘か…あまりの親子バカ加減に、毒気を抜かれた気分だわ。その男のことを許したわけではないけれど…ひとまずは、終戦とさせてもらうわ。」
紫はそう言うと、スキマの中に消えた。
紫side
【紫】
「……フッ。」
スキマの中で、私は自嘲の笑みを零した。
…まさか、この私が…⑨に諭されるなんてね。
【紫】
「…生きて欲しいという願い、か…なるほど、それは…殺せやしないわけだわ。」
スキマを抜け、私は家へと戻ってきた。
【紫】
「ただいま、藍。幽々子の具合はどう?」
【幽々子】
「あ、おふぁへい~。」
【紫】
「って!起きてるし!食べてるし!」
私との弾幕勝負に敗れたはずの幽々子だが、もう復活して、藍が用意した食事を頬張っていた。
【レミリア】
「正気に戻ったのかしら?八雲 紫?」
【紫】
「えぇ、まぁ…って!何処から持ち込んだのよ!?そのイス!」
何を人の家で玉座まで用意して寛いでるのよ、この吸血鬼!
【クリム】
「お疲れさま、あなた。」
【ジーク】
「お、おい、クリム…弟子の前なんだ、控えてくれ…」
【紫】
「はい!そこ!人ん家でイチャつかないっ!」
【幽々子】
「妖夢~、藍ちゃ~ん、おかわり~♪」
【妖夢】
「は、はいーっ!」
【藍】
「ただ今ーっ!」
【紫】
「ちょっ!幽々子!貴方それ何杯目?ウチの食糧喰い尽す気!?」
【レミリア】
「咲夜、ワインを。」
【咲夜】
「畏まりました。」
【紫】
「貴方達ちょっと自由過ぎでしょ!」
あぁ、ダメ…目まいしてきた…。
もう、金輪際、あの男に絡むのは止めよう…自由奔放過ぎる客人たちを眺めながら、私はそう心に誓った。
~おまけ1・あややの突撃インタビュー~
【文】
「ふぅ~、エラい目に遭いました…しかし、こんな事でめげていてはいけません!次なる目的地へ向かわなくては!」
少女移動中
【文】
「というわけで、今回私がやってきたのは人里の命蓮寺です。お、門の所に誰かいますね。」
【響子】
「はんにゃーはらーみーたーじー…」
【文】
「こんにちは、文々。新聞の射命丸です。」
【響子】
「しきs…こんにちは、文々。新聞の射命丸です。あ、間違えちゃった。」
【文】
「読経中失礼しました。響子さん。」
【響子】
「いいのいいの。で、どうしたの、天狗さん?号外?」
【文】
「いえ。実はかくかくしかじかで、インタビューに回ってるんです。」
【響子】
「インタビュー?皆に?」
【文】
「はい。というわけで、早速よろしいですか、響子さん?」
【響子】
「うん。いいよ。」
【文】
「で、では、今から私の言う事を繰り返して下さい。山彦の響子さんには簡単でしょう?」
【響子】
「うん。いいよ。」
【文】
「はぁ…はぁ…で、ではですね…」
【水密】
「止めろっ!」
スコーンッ
【文】
「アウチッ!」
【水密】
「この変態ガラス!響子に何を吹き込む気だ!」
【響子】
「?」
【文】
「さ、作戦失敗です…撤収っ!ですが、私は諦めませんよぉっ!」
幽谷 響子~読経するヤマビコ~
能力:音を反射させる程度の能力
身長:142㎝
村紗 水密~水難事故の念縛霊~
能力:水難事故を引き起こす程度の能力
身長:151㎝
~おまけ2・ミネルバ先生の相談窓口~
【ミネルバ】
「よっしゃあ!今日も張り切ってやってくぜ!ミネルバ先生の相談窓口!まずは一枚目…ラジオネーム、黒い霊柩車の黒猫さんから。『待ちに待った出番があれだけって酷くない?』との事だが…出番あっただけ良いんじゃねぇか?まぁ、この話題は俺から言える事は何もない。うん。次いくぞ。ラジオネーム、悪魔の従姉さんから。『最近、離れ離れになっていた彼と、運命の再会を果たす事が出来ました。でも、せっかく会えたのに、何だか彼が冷たいんです。もしかして、他に女が出来たとか?考えてみれば、彼の弟子も、最近知り合った好敵手も、みんな女ばかり…どう思いますか?』との事だが…これも答えにくいなぁ……まぁ、あれだ。その男の事が好きなら、最後まで信じてやれ。疑心、暗鬼を生ずっていうしな。はい、次。ラジオネーム、虹色ドールマスターさんから。って、何だこれ!怖っ!え、何?『魔理沙ラブ魔理沙ラブ…私の魔理沙魔理沙魔理沙……』ハガキにびっしりと…いや、怖っ!めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど!もう終了!今日の相談窓口終了っ!」




