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第二話 ピチューン、それは美しき弾幕の調べ

この話の裏、東方妄想録もよろしく!

幻想郷の南端にて、激しい戦闘が繰り広げられていた。


【萃香】

「はぁーっ!」


【ミネルバ】

「うらぁっ!」


時に直接拳を交え…


【紫】

「弾幕結界。」


【ミネルバ】

「ギス・ウェーブ!」


放たれる弾幕を叩き落とし…


【魔理沙】

「マスタースパーク!」


【ミネルバ】

「ギス・レイザス!」


互いの必殺の一撃を正面から撃ち合い、激闘と呼ぶに相応しいものであった。


【魔理沙】

「くっそ~!しぶといヤツだぜ…」


彼女のマスタースパークは、幻想郷でも類を見ない破壊力を持つ魔法だ。それを、正面から相殺してみせたミネルバ…四対一という圧倒的不利な状況に陥ってから、すでに三十分…だが、ミネルバは未だ善戦していた。否、


【萃香】

「ミッシングパワー!」


巨大化した萃香の拳が、ミネルバに向かって振り下ろされる。それを、ミネルバは蹴りで正面から止めた。


【萃香】

「嘘?」


さらに、拳で一撃…萃香の巨大な拳を殴り飛ばしてしまった。

手を弾かれ、正面ががら空きの萃香に、ミネルバは右手を向ける。


【ミネルバ】

「ギス・ランス!」


鋭い氷の槍が萃香の胸を貫かんとする。咄嗟に、萃香は巨大化を解いて元のサイズへ戻った。おかげで槍は当たらなかったが、かなり危なかった。


【萃香】

「ふぅ~…危ない危にゃっ!」


なんて油断していたら、接近してきたミネルバの蹴りを側頭部にもろ喰らってしまった。


【霊夢】

「萃香!」


【萃香】

「あてて…大丈夫。でも、こいつ…強いねぇ。」


善戦どころか、ミネルバの方が押しているように見える。

断っておくが、霊夢も魔理沙も、萃香も…ミネルバとの力の差は大きくない。紫に関しては、彼より上のはずなのだ。そんな相手…自分とほぼ同格の四人を相手に、一体どうやって?


【ミネルバ】

「てめぇらが甘いんだよ!四人なら楽に勝てるとか思ったか?こんな状況、俺にとっては想定の範囲内だ。戦場で敵に囲まれた時、どう切り抜けるかなんて、日々シミュレーションしてきた。ついでに、自分と同格の四人を相手取っての戦闘も、イメージトレーニング済みだ。戦い方の違いはあるが、んなもんは誤差の範囲…絶望的な状況でも何でもねぇよ。」


彼の半生を知れば、その強さも納得がいく。しかし、それを知らない彼女たちにとっては、ミネルバの戦闘力は不可解極まるものだった。

…紫が、再びこちらに鋭い視線を向けてきた。だが、すぐに視線をミネルバに戻し、妖しい笑みを浮かべた。


【紫】

「なら、その誤差の範囲とやらの境界を弄るまでよ。魅力的な四重結界!」


紫は自身の正面に結界を出現させた。結界は四角い板状のバリアで、四枚重ねになっているようだ。22.5度ずつズレながら重なるその結界は、プロペラのように高速で回転しだした…すると、ミネルバの体が強制的に結界へと引き寄せられていくではないか。

…って、こっちもかい!


【ミネルバ】

「何っ!」


【紫】

「これも想定の範囲内?」


紫はしたり顔でミネルバと…こっちに視線を向けた。


【ミネルバ】

「くっ…ギス・レイザス!」


ミネルバは氷結光線で、結界の動きを停止させた。咄嗟の判断だったが、どうやら功を奏したらしく、まさにギリギリのところでミネルバを引き寄せていた引力も収まった。

…本当に危なかった…。


【ミネルバ】

「ふぅー…一瞬焦ったが、こんなもん…」


【萃香】

「ミッシングパープルパワー!」


氷の壁と化した結界の向こうから…先ほどよりさらに巨大化した萃香が突進してきた。


【ミネルバ】

「なっ!ぐぅっ!」


巨大な萃香の拳を正面から受け止めるも、押し切られるミネルバ…


【萃香】

「もう一発!」


右ストレートからの左アッパー…巨大化している今の萃香のパワーなら、ガードしようと一たまりもないだろう。当然、ミネルバも吹き飛ぶ。


【魔理沙】

「やったぜ♪今のは決まっ…」


【萃香】

「いや、手応えがなかった。自ら飛んで受け流した?」


【ミネルバ】

「そういう事だ!おらぁっ!」


空中で体を回転させ、自ら萃香に突っ込んでいくミネルバ…それを迎え打つ萃香。パワーの差は圧倒的だが、正面からぶつけ合った拳は拮抗していた。


【萃香】

「嘘っ!止められた?」


【ミネルバ】

「力比べがお望みなら、受けて立つぜ?」


【萃香】

「くっ、このぉっ!」


両者、両手を握り力比べ…そもそも手の大きさが大人と赤子くらい違うのだが、ミネルバはそれでも負けてない。顔や腕の血管が浮き出るほど力を込め、大鬼萃香と互角の力を見せている。


【ミネルバ】

「はああああああああああっ!」


【萃香】

「こいつ…何て力だ…」


【魔理沙】

「萃香!そのまま押さえてろ!」


魔理沙がいつの間にか、ミネルバの頭上をとっていた。ミネルバは萃香との力比べで両手を塞がれ、しかも動けない…絶体絶命である。


【魔理沙】

「ファイナルスパーク!」


さっきとは比べものにならないほど巨大な光の奔流…それが真上から迫ってくる。


【ミネルバ】

「くっそがぁっ!おらあああああっ!」


【萃香】

「ぅえっ!?」


萃香の体が持ち上げられた…ちょうど、魔砲の軌道上である。


【萃香】

「ちょっ、え?まっ…ぎゃああああああっ!」


【魔理沙】

「萃香ーっ!」


ファイナルスパークの直撃を受け、元のサイズに戻りながら撃墜される萃香…その姿は、完全に光の奔流に飲み込まれてしまった。

その隙にミネルバはこれを回避、魔理沙の攻撃は同士討ちに終わった。しかも、彼女の魔力をほぼ使い果たして…。


【魔理沙】

「あいつ、よくも萃香を盾に…」


悔しがる魔理沙だが、彼女にはもう箒で飛ぶだけの魔力しか残っていない。萃香と共に、戦線離脱を余儀なくされてしまった。

これで、残るは紫と霊夢の二人…数の優位も、こうなっては心許なく感じてしまう。


【霊夢】

「陰陽鬼神玉!」


巨大な陰陽のマークをした霊力弾を放ち、ミネルバを攻撃する霊夢…だが、ミネルバにとってそれは、自身の放つカノンと似たようなもの。威力の大小に関わらず、何の脅威でもない。


【ミネルバ】

「ギス・セイバー!」


氷の剣で、鬼神玉を真っ二つにしてしまった。だが、その向こうに、霊夢の姿は見当たらない。それに気付き、ミネルバの顔が苦々しげに歪む…今のは、目眩ましだった。


【霊夢】

「昇天蹴!」


下から、霊夢のサマーソルトキックが見事に決まった。顎を蹴り上げられ、ミネルバの意識が途切れる…が、それも一瞬の事だった。霊夢が体勢を立て直した時には、すでにミネルバが反撃に転じていた…彼の左手が、霊夢の首を捕らえたのだ!


【霊夢】

「はぐっ!くぅ…」


【紫】

「霊夢!くっ…」


【ミネルバ】

「動くな!勝負あったな…特に恨みはねぇが、こいつには死んでもらう。」


ミネルバは霊夢の首を容赦なく締め上げる。


【霊夢】

「かはっ!ぁ…ぅ……」


【紫】

「止めなさい!その子を殺しても、結界は解けないわ!」


【ミネルバ】

「解けなくても、多少は強度に影響あんだろ?それとも、他にいんのかよ?この結界を維持してる奴が…」


【紫】

「……」


【ミネルバ】

「チッ!」


ミネルバは霊夢を後ろ向きにさせ、その背中に右手を当てた…紫に、苦痛と恐怖に歪む霊夢の表情を見せ付けるためだ。


【ミネルバ】

「こいつを、串刺しにされてぇか?」


【紫】

「っ!」


紫の顔に、動揺と焦りが浮かぶ。幻想郷の管理者である彼女にとって、この博麗大結界を解くなど、絶対に許されない事だ…しかし、霊夢を見殺しにするわけにもいかない…賢者と呼ばれる彼女は、持てる知識をフル活用して、打開策を模索しているようだった。


【紫】

「……私よ。その結界は私が張ったもの…私を殺せば、結界は消えるわ。」


【ミネルバ】

「そうか…なら、纏めて死ねよ!ギス・ランス!」


ミネルバは満足そうに邪悪な笑みを浮かべると、霊夢を紫の方に蹴り飛ばしてから、右手を勢いよく突き出した…鋭い氷の槍が、霊夢と紫めがけ一直線に伸びていく。

…さすがにこれはマズいか?紫は、霊夢を抱き留めるので精一杯のようだし…止むを得ん!手を貸s…


ドスッ


【ミネルバ】

「……」


……。

驚愕の表情を浮かべて固まるミネルバ…。


【ミネルバ】

「…ん、だと…」


ミネルバの氷の槍は、紫に抱き留められている霊夢の背中に届いていなかった。彼女の数センチ手前に開いた、空間の裂け目に飲み込まれているからだ。そして、飲み込まれたその先は…彼の背後から、同じく空間の裂け目を通って飛び出してきていた。

目線を下に移せば、自身の右脇腹から突き出ている氷の槍…背中から、完全に貫通している。


【紫】

「…勝負、あったわね?」


【ミネルバ】

「てめぇ…これを狙って…がはっ!」


吐血するミネルバ…当然だ、内臓を幾つか損傷したはずだ。間違いなく致命傷である。それはミネルバ自身も理解している。だが、彼の目はまだ諦めていないし、殺気も萎えてなどいない。


【ミネルバ】

「がはっ…はぁ…はぁ……久遠に咲け、久遠大刀!」


ミネルバは右手を元に戻し、空手を握った…空手、つまりそこには何もなかったはずだ。だが、そこに何処からともなく現れた剣の柄…そして、徐々に姿を現す巨大な剣。それは片刃の大剣で、だいたい20センチごとの間隔で、刃から棘が飛び出している。数は先端を合わせて六つ…つまり刃渡りは120近い、まさに大剣だ。先端に向け刀身が太くなっていて、一振りだけでも一苦労しそうな武器である。


【ミネルバ】

「ごふっ…ぐ、がっ……」


ブシュッ


傷口から血が噴き出す…しかし、刺さっていたのが氷の槍だったので、傷口の周りの血管が冷えて収縮しているようだ。おかげで出血の方も少ない…まぁ、飽くまで今の段階での話だが。


【紫】

「…あなた、死ぬわよ?」


【ミネルバ】

「…はぁ…はぁ…るせぇよ……俺は、俺はぁっ!あああああっ!」


ミネルバは紫に斬りかかる…その巨大な剣、久遠大刀を片手で振りかぶり、彼女を叩き斬ろうと襲い掛かった…だが、その剣は彼女に届かなかった。


【ミネルバ】

「…ぐっ!」


何かが、右手に巻き付いたからだ…見ると、それは鎖である。その先にいたのは…


【萃香】

「…鬼縛りの術…」


萃香だった。


【ミネルバ】

「なっ!てめぇは、さっき死んだハズ…」


彼女たちとミネルバの、戦いにかける意識の違い…それが、今度は仇になった。ミネルバにとって戦いは、相手を殺すこと…常に死ぬ気で、殺す気で戦う。それ故に、彼女たち四人を相手にこれだけ戦えたわけだ。

そんな彼にしてみれば、渾身の一撃とも言うべき魔理沙のラストスペル、ファイナルスパークを喰らった萃香は、間違いなく死んだハズだという思考が働いた。だが、彼女たちの戦いは弾幕ごっこ…相手を殺す事が目的の闘いじゃない。あれほどの威力を誇るファイナルスパークだが、殺傷力という面で見れば(たぶん)安全安心設定なのだ。


【紫】

「今度こそ、勝負ありね。」


【ミネルバ】

「く、くっそーっ!」


【紫】

「藍!」


紫の横に開いたスキマから、何かが回転しながら飛び出してきた。

回転するそれは、ミネルバのがら空きになっているボディーに直撃した。


【ミネルバ】

「ぐ、あああああああっ!」


ミネルバの体は、萃香に右腕を引っ張られているせいで傾いている…当然、そのタックル攻撃は、ミネルバの体の右側へ逸れていく事になった。自身の攻撃で、大きな風穴の開いた、右脇腹の方へと…。

これには、さすがの彼も絶叫を堪えきれなかった。

武器を取り落とし、そのまま地面に向かって真っ逆さまに落ちていくミネルバ…。

…計画は失敗か…いや、まだだ。まだ可能性はあるハズ…。


【紫】

「…終わったわね。ご苦労さま、藍。」


【藍】

「いえ。それにしても、あの者は何者だったのですか?」


【紫】

「さぁ?」


…紫はこちらの動きを監視するかのように、再度こちらに目を向けてきた。

回転していた物体は、九本の狐の尻尾を持つ女性…紫の式である八雲 藍だった。九尾の狐といえば、日本では玉藻前が有名だが、同一人物なのかは定かではない。


【藍】

「それと…そろそろ霊夢が死んでしまいますよ?」


藍が指さす先で、霊夢が顔面を紫の胸に埋めながらぐったりしていた。理由は…言わずもがな、圧迫による呼吸困難だろう。


【紫】

「あ、あら?霊夢?え、ちょっと…」


慌てて離してやったものの、霊夢は顔を真っ青にしており、その頭は揺すってもガクンとすぐに項垂れてしまう。意識が無いようだ…その上…


【紫】

「こ、呼吸が止まっている!」


【萃香】

「何だって!?おい、霊夢!霊夢ぅっ!」


【魔理沙】

「くそっ!あの野郎、よくも霊夢を…」


霊夢が死んだとでも思ったのか、紫たちは揃ってパニックを起こしおろおろしだした。妖怪賢者と鬼と魔法使いが、揃いも揃ってあたふたしている様は、何とも滑稽である。


【藍】

「あぁ、もう!どう考えても紫様のせいでしょうが…いや、そんな事より、早く永遠亭に連れて行った方が…っ!紫様!」


【紫】

「へ?」


突然、藍が紫を突き飛ばした…三人が何事かきょとんとしていた矢先に、藍の姿が黒い閃光に飲み込まれてしまった。それは、ミネルバが放った裏神技…ギス・レイザスだった。

…これが、最後のチャンスだ!亜空間トンネル…開通先は、湖だ!

ミネルバのギス・レイザスが、亜空間へ飲み込まれた。

…これでいい。作戦は無事成功だ。


【紫】

「ら、藍っ!」


藍の姿は、氷のオブジェになっていた…。


【魔理沙】

「野郎っ!」


【萃香】

「よせ、魔理沙!もう魔力も残ってないんだろ?あいつはほっといても死ぬ…今は霊夢と藍の治療が先だ!」


魔理沙の悔しそうな叫びは、青い空へと吸い込まれていった。




霊夢side


【霊夢】

「……ん…」


気がつくと、私は何処かに寝かされていた。ウチの布団じゃない…ここは、あぁそっか。永遠亭ね。


【霊夢】

「…そっか…私、あいつに負けて……」


と、状況を整理しようとしていたところへ、魔理沙が部屋に入ってきた。


【魔理沙】

「霊夢!目が覚めたんだな。」


【霊夢】

「まぁね…紫にしごかれる事を考えると、もうしばらく寝てたかったけど。」


【魔理沙】

「…その心配は、しばらく無さそうだぜ。」


魔理沙が、珍しく暗い表情をしながらそう告げた。何があったのかしら?


【霊夢】

「どういう事?」


【魔理沙】

「霊夢は、気を失ってたんだよな。実は…あの後、紫と藍のおかげで何とかあいつは倒したんだけど、藍があいつの最後の悪あがきにあって…永琳が言うには、命に別状はないらしいんだが、まだ目を覚まさなくて。紫は橙と一緒に付き添ってるぜ。」


【霊夢】

「そう…藍が…」


【魔理沙】

「まぁ、藍の容態もだが、橙も心配だな…ひどい取り乱し様だったぜ。見てるこっちが辛いくらいにな。」


でしょうね。やっと八雲の姓を貰ったとはいえ、根が甘えん坊だもの。


【魔理沙】

「にゃあにゃあ泣いてるうちはまだいいが、あの様子だと藍が目を覚ますまで不眠と断食を続けそうだぜ。」


【霊夢】

「紫もついてるし、大丈夫でしょう。それより、アイツは?死んだの?」


藍たちのことも心配だけど、彼女たちは妖怪だしそう簡単に死んだりはしない。それより心配なのは、アイツの…ミネルバの生死だ。アイツが生きていたら、間違いなく幻想郷の脅威になる…。


【魔理沙】

「藍がやられて、トドメはさせなかった…けど、どうせ長くは保たないと思うぜ。なんせ、脇腹にデカい風穴が開いてるんだからな。」


【霊夢】

「…そう…」


なら、一安心ね。

…安心、よね?何かしら?何か、胸に引っかかるような…この感覚は…?


【てゐ】

「た、大変ウサっ!」


そう叫び、いきなり部屋に飛び込んで来たてゐ。悪さばっかりする白ウサギなんだけど、今日は様子がおかしい。


【てゐ】

「橙が、橙がいなくなったウサーっ!」




ミネルバside


【ミネルバ】

「…くそっ……この俺が…あんな奴等に……」


屈辱だ…俺は、闇の五大将軍…久遠のミネルバなんだぞ…闇の使徒を、魔物の軍勢を率いて戦場に立ってきたんだ……その俺が!


【ミネルバ】

「…チクショオォォォッ!」


ブシュッ


【ミネルバ】

「ぐあっ!」


血が、傷口から噴き出した。このままだと、出血多量で間違いなく死ぬ…。


【ミネルバ】

「…こんな、所で…死んでたまるかよっ!ギス・レイザス!」


威力を限界まで引き下げたレイザスを、傷口へと浴びせる。


【ミネルバ】

「かはっ!あ、ガアアアアッ!」


見る間に凍てつく傷口…あまりの痛みに、意識が吹っ飛びそうになる。だが、痛みには慣れてる…暫くすると、熱を持っていた傷口が冷やされていく。


【ミネルバ】

「止血、完了だ。これで暫くは大丈夫だな…」


やっとここまで来れたんだ…こんな所で終われるかよ。


【ミネルバ】

「…待ってろ、魅尾……もうすg…」


【??】

「にゃあーっ!」


ドゲシッ


【ミネルバ】

「ぐっ!?」


な、何だ?


【??】

「見つけた!よくも…」


前に突き出されるような衝撃を受けた俺は、すぐに背後を振り向いた。

そこにいたのは…いたのは……


【ミネルバ】

『な、ガキ?』


緑の帽子と、赤い服を着た見知らぬガキだった。ってか、こいつ…何で猫耳に、尻尾二本もつけてんだ?


【??】

「よくも、藍しゃまをーっ!」


【ミネルバ】

「チッ!ナメんなよ、この…うおっと!あぶっ!」


い、いきなり襲い掛かってきやがった…しかもこのガキ、動きが速いっ!


【??】

「にゃああああっ!」


【ミネルバ】

「くそっ!調子に乗んなy…しまっ!」


背後に木が…下がれねぇ!


【ミネルバ】

「ならっ!」


俺は咄嗟に頭を下げて、ガキの攻撃を躱した。

すると、頭の上からズバッていう何か凄い音が聞こえてきた。見ると、背後にあった木が、俺の肩辺りの高さの切り株になってやがった。


【ミネルバ】

「マジか…」


このガキ…ただの猫のコスプレしたイタいガキじゃねぇ…相当ヤバいぞ。

どうする?こっちは深手を負ってて、まともに戦えねぇってのに…隙をついて逃げるにしても、この勢いじゃ逃げられる隙もない。大技を誘って、カウンターを仕掛けてから逃げるしかねぇな…。


【??】

「赤鬼青鬼!」


【ミネルバ】

「なっ!ちょっ、待ちぃな!」


何やこの赤と青のエネルギー弾の数は!逃げ場がまるでないやないか!

あ、アカン…やらr……


…ピチューン


【??】

「…アイム、ウィニャアー!」


ガキは倒れ伏した俺を尻目に、誰が見てるでもないのに勝ち名乗りを上げてやがる…。

いや、まぁ実際…負けたん、だがな………く、屈辱だ。深手を負っていたとはいえ、こんなギャグみたいなノリで、こんなガキに負けるなんて……。


【??】

「…じゃあ、そろそろ…本気で八つ裂きにしてやるにゃ。」


【ミネルバ】

「!」


くっ、このままやり過ごせるかと思ったが…やっぱ無理か。

さっきの攻撃、幸い見た目ほどの威力はなかったからな…まだ、まだ動ける!

気合いで起き上がった俺は、覚悟を決めてガキと向き合った。


【??】

「よくも藍さまを、あんな目に…許さないっ!」


瞬間、ガキはもう目前に迫っていた…さっきまでとは、まるで比べものにならねぇスピードだ。だが…


【ミネルバ】

「ギス・ランス!」


すでに右手に力を集めてある。そのスピードで突っ込んできた所に、正面から打ち込まれたら…さすがに避けらんねぇだろ!


【ミネルバ】

「死ね、ガキが!」


【??】

「にゃっ!?」


ランスが、ガキの顔面めがけ伸びる…認知は出来たようだが、躱せなきゃ意味ねぇよな…終わりだ。

そう確信した瞬間…何かが横から飛び出してきて、俺のランスを粉砕し、同時にガキを連れて過ぎ去っていった。


【ミネルバ】

「なっ!今度は何だ?」


ガキを助けたそいつを目で追うと、そこには…


【??】

「にゃ?あ、あ…」


【藍】

「大丈夫か、橙。」


さっき、俺が放ったレイザスで凍り付けにした女が、襦袢姿でガキを抱いていた。まさか、生きてやがったとは…まぁ、回復はしてないようだがな。これなら、二人纏めて殺せそうだ。

俺は、再び右手に力を集める…これで、終わりd…


【橙】

「ら、藍しゃま!藍しゃま、藍しゃまぁっ!よ、よがっだぁっ!」


【ミネルバ】

「……」


……クソが…。

俺は、黙って踵を返した。


【藍】

「ま、待て!」


【ミネルバ】

「あ?」


【藍】

「殺さないのか?私たちを…お前なら、今の私や橙を殺すくらい可能だろ?」


女はそう聞いてきた。


【ミネルバ】

「別に。何の得もねぇだろ…ま、てめぇは○し甲斐がありそうだが、こんな状態だしな。無駄な力を使いたくねぇ、それだけだ。」


【橙】

「藍しゃま、○し甲斐って…」


【藍】

「橙は知らなくていいんだよ。貴様、よくも橙の教育に良くない事を!」


激昂するとこそこか?


【ミネルバ】

「アイツらにも伝えろ…今度、俺の邪魔をしたら容赦しねぇって。意味は…分かるな?」


こう言っておけば、いくら力に自信がある女でも、自分から挑んでは来ないだろ…。

今度こそ、俺はその場を後にした。




~おまけ1・キャラ設定~


八雲 藍~最強の妖獣~

年齢:??

身長:174㎝

能力:式神を使う程度の能力


八雲 紫に仕える、九尾の狐。紫の式神となっているが、それ以前の事は不明だ。自身の式神である橙を溺愛しており、その様子からは全く実力の程が窺えない。

よく人里に買い物に来ており、魚屋でよく出くわす。



因幡 てゐ~幸せを運ぶ白ウサギ~

年齢:??

身長:107㎝

能力:幸運を呼ぶ程度の能力


かつては人間を幸せにする程度だった能力…だが、それが進化して今の能力になったとの事。珍しいケースらしいが、背景には永遠亭の天才女医(本業は薬師)が関わっているのかもしれない。

悪戯っ子ではあるが、根はいい子なようだ。竹林で迷った人を、里まで案内してくれる。まぁ、有料らしいが…。



八雲 橙~凶兆の黒猫~

年齢:??

身長:115㎝

能力:妖術を扱う程度の能力


八雲 藍の式神。藍曰く、幻想郷の愛すべきマスコット…らしい。当人は恥ずかしいから、この二つ名を認めていない。

最近、八雲の姓を与えられたばかり。しっかりしてきたが、まだまだ甘えん坊との事。




~おまけ2・東方異聞録小劇場~


【魔理沙】

「霊夢!目が覚めたんだな。」


【霊夢】

「まぁね…紫にしごかれる事を考えると、もうしばらく寝てたかったけど。」


【魔理沙】

「…その心配は、しばらく無さそうだぜ。」


【霊夢】

「どういう事?」


【魔理沙】

「霊夢は、気を失ってたんだよな。実は…あの後、紫と藍のおかげで何とかあいつは倒したんだけど、藍があいつの最後の悪あがきにあって…永琳が言うには、命に別状はないらしいんだが、まだ目を覚まさなくて。紫は橙と一緒に付き添ってるぜ。」


【霊夢】

「そう…藍が…」


【魔理沙】

「で、紫のやつ、札幌雪祭りに出展できないかって、札幌市長に掛け合いに行ってる。」


【霊夢】

「いや、解かしてやんなさいよ!」


【てゐ】

「た、大変ウサっ!橙が、『私も藍しゃまと一緒に、氷像デビューする』とか言って、飛び出して行っちゃったウサっ!」


【霊夢】

『…藍が不憫過ぎる…』

次回は第三話。原作設定が絶賛崩壊中ですが、次回は…何番煎じなのか分かりませんが『彼女』最強説です。

『彼女』の能力で一面ボス止まりなワケがない!おっと、喋り過ぎた…来月もお楽しみに♪

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