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第十七話 久遠の氷華、絶望の雨に散る

【ミネルバ】

「お前ら、霊夢と一緒に先に行け。ヤツの相手は、俺がする。」


 ミネルバはそう言うと、美鈴が立ち塞がる門の前に降り立った。


【魔理沙】

「おい、アリス。さっき、何が起きたんだ?門番のヤツ、何でミネルバの攻撃を受けて涼しい顔してんだよ?」


【アリス】

「…喰らってないわ…逸らしたのよ、軌道を。」


 ミネルバのギス・カノンは、確かに美鈴に向かって一直線に飛んでいた。しかし、彼女はそれを避けもせず、ギス・カノンの軌道を巧みに捉え、明後日の方角へ逸らしてしまったのだ。


【霊夢】

「ミネルバ!」


【魔理沙】

「おぉ、霊夢。ミネルバなら、今から始めるところだぜ。」


【アリス】

「先に行けって言ってたけど…どうする?」


【霊夢】

「そう…相手は門番ね。なら、心配いらないわね…ミネルバ、先に行ってるわよ!」


【ミネルバ】

「あぁ、行け!」


 ミネルバの返事を聞いて、霊夢は魔理沙たちと紅魔館の中へ向かった。

 しかし、


【美鈴】

「そう簡単に、お通しするわけにはいきませんね。」


 美鈴が、右手に気を集め始めた。今日の彼女は、いつになく門番としての自覚とやる気に満ちているようだ。これも、クリムというレミリアたちの従姉が持つ能力なのだろうか?


【ミネルバ】

「よそ見してんなよ!」


 美鈴の攻撃を止めに、ミネルバが鋭い蹴りを放った。


【美鈴】

「おっと!」


 咄嗟に、集めていた気を腕全体に回してガードする美鈴。その隙に、霊夢たちは門の上を飛んで行き、紅魔館の中へ侵入した。


【レミリア】

「待ちなさいよ!私を置いていくなぁっ!」


【フラン】

「るー!」


 続いてレミリアたちも…


【ミネルバ】

「さぁて…邪魔者もいなくなったし…始めるか。」


 そう言うと、ミネルバは凶悪な殺気を全開にし、構え直した。凡族なら、その姿を直視しただけで卒倒しそうだ。だが、美鈴は怯むどころか、むしろ不敵な笑みを浮かべている。


【美鈴】

「まさか、こんなに早くお手合わせ出来るなんて…楽しみです。しかし、良かったのですか?紅白たちを先に行かせて?」


 …遠回しに、ミネルバを挑発しだす美鈴…やはり、普段の彼女とは明らかに違う。


【ミネルバ】

「周りでチョロチョロされたくねぇんだ。それに…どうにも最近、調子狂っちまっててな…少し、昔のカンを取り戻してぇんだ。」


【美鈴】

「昔のカン?」


【ミネルバ】

「残虐非道の限りを尽くした、闇の五大将軍時代の俺だ…敵を殺し、略奪を行い、女どもを戦利品と称して慰み者にしていた…あの頃の俺に戻るために。」


【美鈴】

「それは…私を倒して自らの戦利品にする、という事ですか?」


【ミネルバ】

「そういう事だ。悪いが、お前には生贄になってもらうぜ、美鈴。」


 …美鈴の挑発に対し、教職者にあるまじき問題発言をぶちかまし出したミネルバ。当然、これには美鈴も挑発的な態度を改め…るかと思いきや、


【美鈴】

「いいですよ。好きにして下さって…」


 さらに斜め上をいくような爆弾を返してきた。


【美鈴】

「私も武人の端くれ、男性に求める条件はただ一つ…私より強い事。私に勝ったら、この体どうぞお好きにして下さい。私に勝てたらの、話ですけどね。」


【ミネルバ】

「…後悔すんなよ?はぁぁぁっ!」


 ミネルバの姿が氷に包まれ、第二段階へ姿を変えた。その力は、霊夢や魔理沙を凌ぐほどだ。無論、美鈴の力など比較にもならない。


【ミネルバ】

「おらぁっ!」


 その規格外のパワーで、ミネルバは美鈴めがけ拳を突き出した。




 その頃、館の中に入った霊夢たちは、意外な人物とエントランスホールで対峙していた。


【魔理沙】

「まさか、お前が地下から出てきてるなんてな…パチュリー。」


【パチュリー】

「……」


 そこにいたのは、普段は地下の大図書館から滅多に出てくることのないパチュリー・ノーレッジだった。館の主であるレミリアの親友で、幻想郷の魔法使いの中で最も魔法の知識に長けた、大魔法使い。


【レミリア】

「パチェ!正気に戻って!貴方ほどの魔女が、クリム姉様にいいように操られるなんて…」


【パチュリー】

「…プリンセスウンディネ…」


 レミリアの訴えも虚しく、パチュリーは水属性の弾幕で一同を攻撃してきた。


【レミリア】

「くっ!」


【魔理沙】

「マスタースパーク!」


 ドォォンッ


 魔理沙のマスタースパークが、パチュリーの弾幕を飲み込み、蹴散らしていく…。


【魔理沙】

「ここは私が引き受けるぜ☆」


【アリス】

「霊夢たちは先を急いで!」


【霊夢】

「分かった。行くわよ、レミリア!」


【レミリア】

「ありがとう、二人とも…」


 霊夢とレミリアは、二階の奥へ進んでいった。


【魔理沙】

「で、何でお前が残るんだ?」


【アリス】

「愚問ね、魔理沙。傷つき、服が破れた魔理沙を見てハァハァするたm…」


【魔理沙】

「マスタースパーク!」


 ドォォンッ ピチューン


【魔理沙】

「こんの、どスケベマスター…」


【パチュリー】

「…メタルファティーグ…」


【魔理沙】

「何!?」


 アリスの変態発言によそ見をしていた魔理沙に、パチュリーは容赦なく反撃してきた。

 金属の弾幕が、途中で砕けながら飛来してくる…砕ける度に四方八方に飛び散る弾幕は、非常に厄介である。


【魔理沙】

「くっ!」


 すぐさま飛んで、射程範囲外に逃げる魔理沙…と、アリスを担ぎ上げ上昇した上海…小さな体からは想像もつかないパワーである。


【上海】

「十ま~ん♪馬りk…」


【アリス】

「上海。」


【上海】

「シャンハ~イ…」


【魔理沙】

「ふざけてる場合じゃないぜ…パチュリーのヤツ、珍しくやる気だ…」


 パチュリーは依然として無表情のまま、次の詠唱を開始している。


【魔理沙】

「行くぜ、アリス!数じゃこっちの方が有利だ!たたみ掛けるぜ☆」


【アリス】

「えぇ。上海!」


【上海】

「シャンハーイ!」


 二人(と一体?)は、詠唱中のパチュリーめがけ急降下し、スペルカードを取り出した。


【アリス】

「ドールミラs…」


 アリスがスペルカードを発動しようとした、その時…黒い影がアリスめがけ突っ込んで来て、発動を妨害してきた。


【アリス】

「なっ!?」


 その影は、アリスの首を掴み、そのままもの凄い勢いで上昇していく。


【魔理沙】

「アリス!」


【上海】

「はにゃーっ!」


 と、おまけに上海まで、黒くて細いロープのようなもので縛り上げられ、一緒に天井めがけ引っ張り上げられてしまった。


【アリス】

「くっ、アンタ…小悪魔?」


【小悪魔】

「フフ…二対一は卑怯ですよ、アリスさん?パチュリー様きってのご要望ですので、貴方には退場願います。」


 ガシャーンッ


 小悪魔はそのまま天窓を突き破り、紅魔館の屋根の上にアリスと上海を放り投げた。


【アリス】

「ゲホ…ゲホッ!」


 苦しげにせき込むアリスと、目を回している上海…その前に立ち塞がる小悪魔は、いつも図書館で司書として働いている彼女とは、明らかに違った。


【アリス】

「はぁ…はぁ……アンタ、その格好…」


 魔理沙によくどスケベマスターなどと揶揄されるアリスも、思わず顔をしかめた。今の小悪魔の姿は、それほど目のやり場に困るものだった。

 ボンテージ、というのだったか?黒光りする革の被服は、大きく胸元を開けており、その上際どいほどのハイレッグだ。


【小悪魔】

「私にとっては、これが正装ですが?」


【アリス】

「……アンタ…サキュバスだったの…」


【小悪魔】

「えぇ。まさか、本当にただの小悪魔だと?」


 妖艶な笑みを浮かべる小悪魔…それにしても、サキュバスと言えば、ヴァンパイアにも引けを取らない上位の魔族だ。本来なら、ヴァンパイアの屋敷の図書室で、司書なんかしているはずがない。


【小悪魔】

「普段はパチュリー様の一使い魔なので、力を抑えて生活してたんですが…クリム様が皆さんに力を与えてくれたおけげで、私も…パチュリー様に気兼ねなく、本気が出せますよ。」


 そう言うと、小悪魔は右手に魔力を集めた。


【アリス】

「っ!?」


 瞬間、アリスの全身に鳥肌が立ち、脳内で激しく警鐘が鳴らされた。


 ドォォォンッ


 次の瞬間、もの凄い威力の魔力砲が放たれた…




【藤堂】

「…マズい!」


【慧音】

「え?」


 ドォォォンッ


 小悪魔の放った魔力砲が、里にまで届いた。結界を張って無かったら、里は一瞬で荒地になっていただろう。もっとも…


【藤堂】

「ぐっ、く……ぁ…」


【慧音】

「藤堂先生!」


 …結界の維持は、かなり辛かった…あんなものが立て続けに飛んできたら、いつまで結界が保つか…。




 その頃、霊夢とレミリア、それにフランは、紅魔館の奥へ進んでいた。


【レミリア】

「美鈴もパチュリーも、クリム姉様に操られてる上に、力も強化されてるわ。かなり苦戦を強いられるはずよ…」


【霊夢】

「厄介ね…でも、裏を返せば、そのクリムってやつを倒せば、他の連中は元に戻るんでしょ?」


【レミリア】

「だいぶ冴えて来たみたいね、その通りよ。一刻も早く、クリム姉様を何とかしないと…」


 そんな話をしていた矢先に、突然彼女たちの周りに幾本ものナイフが出現した。


【霊夢】

「はっ!」


 飛んでくるナイフを、霊夢は全て御幣で弾き落とした。まるで、ナイフが来るのが分かっていたように。


【霊夢】

「…主人が変わっても、客人に対するマナーは変わらずね…咲夜。」


【咲夜】

「主に害なす訪問者を、客人とは呼びません…それは侵入者、ネズミ、或いは…敵。」


【レミリア】

「咲夜…」


 最も信頼し、傍に置いていた従者からの攻撃に、さすがのレミリアも表情を曇らせる。

【霊夢】

「…紅魔館の主立った連中は、これで全員よね…後は、何とか出来る?」


【レミリア】

「霊夢!」


【霊夢】

「元はアンタの家のゴタゴタなんでしょう?きっちり白黒…赤黒?赤白?何でもいいから、ちゃっちゃとつけて来なさい。」


【レミリア】

「…分かったわ。お願いね、霊夢!」


 レミリアが駆け出す…だが、それを許すメイド長では…


【霊夢】

「見えてるわよ!」


 レミリアを切りつけようとしていた咲夜のナイフを、またしても霊夢が御幣で止めた。


【咲夜】

「一度ならず二度まで…さすがね、霊夢。



【霊夢】

「私だって、毎日縁側でお茶飲んで、ミネルバの帰りを待ってるわけじゃないのよ!修行の成果、見せて上げるわ。」




 霊夢たちのおかげで、いよいよクリムの待つ奥の部屋まで辿り着く事が出来たレミリアとフラン…


【フラン】

「る~…」


 フランが、弱々しく声を発する…恐怖の為か、今にも泣き出しそうである。


【レミリア】

「大丈夫よ、フラン。貴方は、何があっても私が守るわ。だから、お願い…私にもしもの事があったら、紅魔館を…皆のことを、頼むわね。」


【フラン】

「…!?」


 自身の発言の意味をフランが理解するより早く、レミリアは部屋の扉を押し開け、中に入った。


【レミリア】

「……」


 黙って、正面の座イスに鎮座する同族を睨みつけるレミリア…。


【クリム】

「案外、早かったわね?」


 そこに座っているのは、深紅の長い髪に、闇色の二枚の翼、閉じた口の端からでも覗くほど長く鋭い犬歯を持つ、クリムゾン・スカーレットだ。


【レミリア】

「クリム、姉様…」


【クリム】

「お友達は?連れて来なかったの?」


【レミリア】

「咲夜たちの相手をしてくれてるわ。その方が都合がいいし。」


【クリム】

「あらあら…一人で、私に勝てるつもり?」


 立ち上がるクリム…幼い少女のような姿のレミリアと違い、クリムはすでに女性同等の背格好で、対峙するとまるで大人と子供のようである。


【レミリア】

「勝てる気はしないけど…姉様の能力で敵が増えるのは御免被るわ。」


【クリム】

「でしょうね。寝返った使用人一人殺せない、甘えん坊のレミィちゃんでちゅものね?」


【レミリア】

「…そうよ。だから…私の大事な人たちを、返してもらうわ。」


 赤い雷のような魔力が、一本の槍へ姿を変える…レミリアの右手に握られたそれは、彼女自身どころかクリムの背丈をもゆうに超えている。


【レミリア】

「スピア・ザ・グングニル!」


 その巨大な槍を、レミリアは片手で投げ放った。しかも、もの凄いスピードで…一瞬にしてクリムの前に迫った槍は、次の瞬間には彼女の胸を貫いて、後ろの壁まで突き抜けていt…


【クリム】

「遅い。」


 …ってない!信じられないことに、クリムはグングニルを片手で握り締め、自身の胸の一センチ手前で止めていたのだ。

 しかも、そのまま握力を強め、グングニルを…握り潰してしまった。ガラスが砕けるような音を立てて霧散するグングニルを見て、レミリアの顔が明らかに引きつった。


【レミリア】

『…手加減はしていなかった…強いてあげれば、もう少しだけなら威力を溜められた…でも、あれ以上のスピードは出せなかった……私が放てる攻撃の中で、今の一撃は間違いなく最速だった…それなのに!容易く…』


【クリム】

「もう、終わりかしら?」


【レミリア】

「くっ!」


 一度、体勢を立て直し、新たなスペルカードを発動しようとしるレミリア…だが、


【クリム】

「遅いわ。」


【レミリア】

「ぐっ!?」


 突然目の前に現れたクリムに首を掴まれ、そのまま持ち上げられてしまった。しかもその際、カードを手にしていた腕も掴まれてしまい、まだ短く細い彼女の腕は…悲鳴を上げながら、肩関節を境に引きちぎられてしまった。


【レミリア】

「ぐ、ああああああっ!」


 室内に、少女の悲鳴がこだました。




【ミネルバ】

「はぁ…はぁ…このっ!」


 ミネルバのアッパーが美鈴に迫る…が、それを上体を反らして躱し、そのまま鋭い蹴りをミネルバの顎に突き刺してくる美鈴。


【ミネルバ】

「がっ!」


 よろめくミネルバ…だが、この程度の攻撃で参る彼では…


【ミネルバ】

「…がはっ…く、クソが……はぁ……はぁ……」


 否、すでに虫の息だった。全身の至る所に打撲の痕があるミネルバ…しかも、そのどれもが急所であり、普通なら命にも関わるダメージのはずである。


【ミネルバ】

「どうなってんだ?何で、一発も当たらない?何で…この程度の攻撃に、ここまでダメージを……」


【美鈴】

「どうしたんです、ミネルバさん?私に勝って、私のカラダを好きにするんじゃなかったんですか?」


【ミネルバ】

「な、ナメんじゃねぇっ!」


 再び突っ込んでいくミネルバ…だが、突き出した拳は手首を叩かれ軌道を逸らされてしまい、それに連動して体が傾いたところに、美鈴の蹴りが首筋へと叩きこまれる。


【ミネルバ】

「がっ!?」


【美鈴】

「…この程度ですか、ミネルバさん…がっかりです。私、弱い男性には、興味が無いので。」


 予想外に苦戦を強いられるミネルバ…さらには、


【魔理沙】

「はぁ…はぁ…マスタースパーク!マスタースパーク!」


 パチュリーに向かって、マスタースパークを連発する魔理沙…しかし、その攻撃は、まるでパチュリーに届いていなかった。彼女の一メートルも手前で、ことごとく魔力が散って霧散してしまうのだ。


【魔理沙】

「だぁっ!どうなってんだよ、さっきから!こうなったら…こいつで、トドメだ!ファイナルスパーク!」


 ありったけの魔力を込めて放つ魔砲でもって、パチュリーを攻撃する魔理沙…だったが、これもマスタースパーク同様、一瞬で掻き消されてしまった。


【魔理沙】

「…嘘だろ…なんで…」


【パチュリー】

「こんな単純な術式…解読なんてとうに済んでいたわ。魔法を無効化する、逆術式も完成してたし…貴方の魔法なんて、とっくに攻略済みなのよ、魔理沙?」


【魔理沙】

「っ!」


 さらにはアリスも…


【小悪魔】

「どうですか、アリスさん?私のペットのロッパちゃん。可愛いでしょう?」


 小悪魔が出現させていたのは、何とも気色悪い触手生物だ…これの何処が可愛いのだろうか?


【アリス】

「趣味が悪い。」


 アリスも、手足を締め付けてくる触手の感触に、嫌悪感を抱いているようだった。


【小悪魔】

「大丈夫、すぐ好きになりますよ。」


 妖艶な笑みを浮かべ、小悪魔はアリスの体を舐め回すように見つめた。

 さらには、息まいていた霊夢も…


【霊夢】

「くっ!」


 ナイフを躱し、咲夜から距離を取るのだが、次の瞬間…


 ビリッ


 霊夢の左の袖が、音を立ててバラバラに引き裂かれてしまった。すでに右の袖もなく、彼女の細く白い腕が露わになっていた。


【咲夜】

「彼が門番の所で足止めを喰ってて良かったわね、霊夢?次は…その巫女服、斬り刻んであげる。」


【霊夢】

「アンタ、いつからそんな変態趣味に?一思いにやったらどう?」


【咲夜】

「貴方こそ、さっきまでの威勢はどうしたの?そんなんじゃ、また彼のお荷物になっちゃうわよ?」


 お札やスペルカードをしまっている袖を破られ、御幣以外ほぼ丸腰状態の霊夢…全員、追い詰められてしまっていた。




【ミネルバ】

【ミネルバ】

「…ぐっ!く…」


 倒れ込みそうになっていたミネルバは、何とか気合いで踏みとどまった。しかし、そんな彼に今度は反対側からも美鈴の蹴りが叩きこまれた。


 バキッ


 さらに、倒れかかっていたミネルバの背中に肘鉄、腹部に膝蹴りと、容赦なく美鈴の追い打ちがかけられる。


【ミネルバ】

「ぐはっ!が、あぁ……」


 呼吸がままならないミネルバは、その場に蹲って必死に息を整えようとした。


【ミネルバ】

『クソ…い、息が……ヤバい……』


【美鈴】

「何故、自分が負けるのか分かりませんか?簡単な事です。パワーやスピード以前に、その扱い方が未熟なんですよ。貴方がその力を得てから何年過ごしたのかは知りませんが…私はその百倍以上の時間を、歳月をかけて、己の技を磨いて来たんです。」


 美鈴はミネルバの髪を掴み上げ、無理やり立たせた。


【美鈴】

「大鵬拳。」


 ズガンッ


 美鈴の拳を喰らったミネルバは、高々と打ち上げられた。そのミネルバを追って、飛び上がった美鈴は、両手に気を溜め…


【美鈴】

「烈虹真拳。」


 目にも止まらぬ速さで繰り出す連続パンチで、ミネルバをボコボコにした。そして、いいだけボコボコにした後、


【美鈴】

「降華蹴。」


 足を振り下ろすようにして見舞った蹴りで、ミネルバを地面…いや、湖へと叩き落とした。


 ドォンッ ザバァァーーンッ


 湖の水が、衝撃で高々と水柱を上げる…美鈴が飛んでいる高度まで届くほどだ。


【美鈴】

「…久し振りに、楽しかったですよ。ミネルバさん…ん?」


 決着がついたと思った矢先、立ち上っていた湖の水が凍りついて、美鈴の周りは氷の壁に覆われてしまった。


【美鈴】

「これは?」


【ミネルバ】

「ナメんなっつったろうが!逃げ場はねぇぞ!」


 見ると、湖底まで叩きつけられていたミネルバが、右手に魔力を溜めて美鈴を狙っていた。


【ミネルバ】

「ギス・レイザス!」


 ドゴォォォンッ


 放たれた黒い光線が、美鈴の姿を飲み込んだ。

 ……。…………。


【ミネルバ】

「……はぁ、はぁ、はぁ…はぁ…ざまぁ、見やがれ……」


 力なく、ミネルバはその場に大の字になって天を仰いだ。


【ミネルバ】

「咄嗟に思いついた作戦だったが…上手くいったぜ。」


 冷気によって発生した霧が晴れると、そこには氷漬けになった美鈴の姿があった。


【美鈴】

「……」


【ミネルバ】

「…俺の勝ちだな…約束どおり、好きにさせてもらう…と言いてぇが、溶けるまで手ぇ出せねぇな。」


【美鈴】

「…ご心配なく。」


【ミネルバ】

「っ!?」


 氷漬けになった美鈴の姿に、勝利を確信していたミネルバ…ところが、次の瞬間、美鈴は気を放出して自身を覆っていた氷を粉々にしてしまった。


【ミネルバ】

「あ…あ……」


【美鈴】

「この程度の冷気じゃ、風邪も引けませんよ。さてと…万策尽きたといったところですか?」


【ミネルバ】

「……」


【美鈴】

「では…最後に、私の本気、お見せしますね。はぁぁぁぁっ!」


 美鈴の全身から、膨大な妖気が溢れ出した…と、同時に、彼女のこめかみから、黄色い角が生えてきた。犬歯と爪が伸び、手の甲を赤い鱗が覆い、そして…同じく紅い鱗に覆われた、竜の尻尾が生えてきた。


【ミネルバ】

「…ま、マジかよ……」


 ミネルバの顔が青くなったのは、美鈴の姿に怖気づいたからではない…膨れ上がった彼女の力が、第二段階の今の自分を上回っていたからだ。


【美鈴】

「終わりです。真極彩雨。」


 虹色の無数の気弾が、雨あられのごとくミネルバに向かって降りそそいだ。


【ミネルバ】

「くっ!な、しまっ…」


 今さら、ミネルバは気づいた…美鈴がギス・レイザスを躱せないようにと凍らせた氷の壁、しかしそれによって、同時に自分の逃げ道まで塞がれていた事を…。


【ミネルバ】

「う、うわあああぁぁぁっ!」


 降り注ぐ気弾、さらには気弾が当たって砕けた壁から、巨大な氷まで降って来て…湖の底から響くミネルバの悲鳴も、やがて氷によって塞がれ埋め立てられた。




 ~おまけ1・キャラ設定~


 パチュリー・ノーレッジ~動かない大図書館~

 身長:151㎝

 能力:魔法を使う程度の能力


 紅魔館の主であるレミリアの親友で、彼女から紅魔図書館の蔵書の管理を任されている大魔導師。図書館にある膨大な数の魔道書を全て読んでおり、魔法使いとしての知識と技術は、魔理沙やアリスの比ではない。しかし、持病の喘息と体力の無さにより、長い呪文は詠唱が続かないとの事…。



 小悪魔~名も無き使い魔~

 身長:155㎝

 能力:??


 パチュリーに召喚され、契約を交わした使い魔。主に彼女の小間使いとして、図書館で司書のような仕事をしている。だが、実際は高位魔族であるサキュバスで、魔力も高い。おまけに名前まで伏せている事から、本当にパチュリーと契約しているのかも疑問だ。



 クリムゾン・スカーレット~赤より紅い悪魔~

 身長:170㎝

 能力:魂を操る程度の能力


 レミリアたちの従姉にあたる吸血鬼。紅魔館を乗っ取り、幻想郷を赤い霧で覆った張本人。恐らくは紅魔館、スカーレット家当主の座が目当てなのだろうが、魔界を離れ没落貴族となったスカーレット家に、今さらここまでする価値があるのだろうか?



 ~おまけ2・忙しい人の為の氷華録~


【妹紅】

「前回に引き続き、輝夜にズケズケと質問していこうと思う。」


【輝夜】

「何を聞くつもり?」


【妹紅】

「そりゃあ、勿論…あ、結婚おめでとう。」


【輝夜】

「え?あ、ありがとう…まさか、アンタに祝福されるとは思ってなかったわ…」


【妹紅】

「やっぱ、デキちゃった婚?」


【輝夜】

「やっぱり下衆い!違うわよ!」


【妹紅】

「お相手の桃太郎さんの親友二人からも、祝福のメッセージが届いています。」


【輝夜】

「え?」


【金太郎】

「ご結婚おめでとうございます。桃ちゃんの事、よろしくお願いします。」


【浦島太郎】

「桃ちゃん、輝夜さん!結婚、おめでとうっ!幸せになってねー!」


【妹紅】

「との事です。で、二人から聞いたんだけど、プロポーズお前からなんだって?」


【輝夜】

「うぇぇっ!?何でその事まで?」


【妹紅】

「噂は事実と…何でも、家族になりましょうって熱烈に迫ったとか。」


【輝夜】

「きゃあああっ!」


【妹紅】

「それはもう、肉食女子のごとき勢いで強引に押し倒して…」


【輝夜】

「わぁぁぁぁ…って、そこまでしてないわよ!」


【妹紅】

「でも、ベタ惚れじゃん。」


【輝夜】

「うぅ…



【妹紅】

「で、何処にそこまで惹かれたんだ?」


【輝夜】

「そ、そうね…やっぱり、優しいところかしら?家族思いだし…お供だったキジさんが、今すごく子だくさんになって大変だからって、きび団子を一羽一羽に上げてたり…それに…」


【妹紅】

「というわけで、幸せいっぱいな輝夜のインタビューでした。(棒読み)」


【輝夜】

「ちょっ!話最後まで聞きなさいよ!」


 完:a○ by K●DI(笑)

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