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第一話 十八歳独身は行き遅れ?

霊夢side


ようやっと、うだるような暑さも終わり、今年も幻想郷に秋が訪れようとしていた。この季節になると、秋神の姉妹が当社比2.3倍くらい元気になる。正直ウザいが、おいしい秋の味覚ときれいな紅葉の為にも、あまり機嫌を損ねたくない。

何年前だったか、二人の気分で山の紅葉は全てイチョウ…豊作の果物がドリ、アン?だかにされた時は本当に参った。あの年は…ぎんなんとドリアン臭さが冬になっても残っていた気がする…。


【霊夢】

「今年はどんな果物が取れるのかしら?でもま、やっぱり秋と言えば、集めた落ち葉で焼く焼き芋よね。」


広い境内を掃除するのは大変だ。特に秋は…落ち葉の多さにげんなりする。見る分にはきれいなのだが…それとこれとは話が別だ。そんな多忙な日々における、数少ない楽しみが焼き芋なのだ。

だけど、出来れば…願わくば、そろそろ一緒に紅葉を見る相手が欲しかったり…博麗 霊夢、十八歳…恋人いない歴も十八年…そろそろ本気でヤバい事に気づき始めました。

何故なら先日、人里の一組の男女が、めでたくもうちで祝言をあげたわけたです…新婦は、十六歳でした。幻想郷では、決して珍しくない…里の、私より若い子たちが、次々に結婚していくこの現実に、女として危機感を抱かずにいられるほど、私だってまだ干されてないわよ。


【霊夢】

「はぁ~…でも、本当にマズいわよね。魔理沙は自覚がないだけで、霖之助さんに気があるのはバレバレだし、霖之助さんも…この二人がくっつくのは時間の問題だわ。そしたら何、私は未だ恋人もいないまま、魔理沙の式を上げてやるハメになるわけ?」


く、屈辱すぎるわ…。

同い年と言えば、早苗も里の男性たちからモテるのよね~。やっぱ胸かしら?言っとくけど、デカけりゃいいってもんじゃないのよ!

咲夜は二つ上だけど、アイツの存在は救いにならないしね…レミリアに心酔してるし。

というわけで、何処かにイイ男は落ちていないかしら?お金持ちならなお嬉しいんだけど…。


【霊夢】

「そう都合よくいないわよね。さてと…あれ?ちりとり持って来なかったっけ?」


粗方、境内の落ち葉やらゴミは集め終わった…が、ちりとりを用意していなかった事に今さら気づき、仕方なく物置へ取りに行ったんだけど…戻ってきた私は目の前の光景に唖然とした。


【??】

「…?何処だ、ここは?」


そこにいたのは、背中から黒い翼を生やした鎧姿の男…仮面もつけており顔は分からないが、声や口調から察するに、その人となりは粗暴、傲慢と言ったところかしら?

というか、せっかく集めた落ち葉が…きっとこいつの所為ね。


【??】

「…神社?まさかっ!いや…まさか、な…」


何かブツブツ言ってるみたいだけど、そんなのお構いなしに、私は彼の背後から近づいて行って、手に持っていた箒でその頭を叩いてやった。


【??】

「そう都合よ…って!」


【霊夢】

「ちょっとアンタ!」


彼は私の方に向き直ると、仮面の下でさぞや不機嫌そうな目つきをさせているのだろう、随分な殺気を放って睨みつけてきた。

こんな殺気…ついぞ感じた事がない。単純にそれだけで見れば、最初に会った時のレミリアや、本気の幽香にも匹敵するわね。ま、力は大した事ないみたいだけど…でも、妖気とも違うこの禍々しい気は何かしら?


【??】

「んあ?何だ、てめぇ?」


何にせよ、こいつには境内の掃除をし直してもらわないとね。


【霊夢】

「それはこっちのセリフよ!せっかく人が綺麗にした境内を…どうしてくれるのよ!」


【??】

「あぁん?知るか、そんなもん!」


何ですって!人が苦労して綺麗にした境内を…いきなり現れて、こんなに散らかしておきながら…夢想封印かましてやろうかしら?

いやいや、さすがにそれはマズいわ…私の評判が悪くなっちゃうしね。


【霊夢】

「問答無用!ほらっ!」


仕方ないので、私は強引に彼に箒を押し付けた。


【??】

「ふざけんな!何で俺が…」


【霊夢】

「アンタの所為で散らかったんだから、アンタが掃除するのは当たり前でしょっ!」


【??】

「ちぃっ!」


まだ不服そうな様子で舌打ちする彼を残し、私は母屋へ…と、いけないいけない。


【霊夢】

「あと…」


【??】

「?」


大事な事を忘れてたわ。


【霊夢】

「素敵なお賽銭箱はあそこよ。」


【??】

「誰が入れるか!」




そんなわけで、鎧姿の怪しい男に境内の掃除を任せてから半刻…彼はブスッとした顔(雰囲気)で歩いてきた。

対し、私はまったり縁側でお茶なんて飲んでるわけだけど。


【??】

「終わったぜ。」


想像通り、その声はかなり機嫌が悪そう。


【霊夢】

「ご苦労さま。今、お茶いれるわ。」


労働には労いを…どうにもケチだと誤解される私だけど、それくらいの常識はあるわよ。まぁ、出涸らしだけど…ま、まだ色が出るのよ!


【??】

「…武装解除。」


と、目の前で突然、彼の姿が真っ黒い霧に包まれた…私の驚きをよそに、霧はすぐ晴れて中から普通の人間の姿をした彼が現れた。というか…


【霊夢】

「…アンタ、人間だったの?変な格好してるし、人間にしては禍々しい力もってるから、てっきり妖怪か魔物の仲間だと思ったんだけど。」


【??】

「…何者だ、てめぇ?」


彼は、何だか驚いたみたいな顔してそう訊ねてきた。そういえば、自己紹介がまだだったわね。でも、私の事を知らないなんて…もしかして、早苗たちみたく外の世界から来たのかしら?


【霊夢】

「私は、博麗 霊夢。博麗の巫女よ。そういうアンタは?」


【ミネルバ】

「俺はミネルバ…久遠のミネルバだ。」


ミネルバ…名前からすると、西方の出身かしら?でも、顔立ちは私たち寄りだと思うのだけど?

…まぁ、いいか。

私はお茶をいれて、ミネルバに座るよう促した。


【ミネルバ】

「…ふぅーっ。」


ミネルバは、出涸らしのお茶にケチをつけるでもなく、一口飲んで溜め息を吐いた。魔理沙なら、絶対に文句の一つ二つ言ってるわね。

少しだけ…ほんの少しだけ、彼に好感が持てた。




normal side


ミネルバはお茶らしき、色のついたお湯を飲んでやっと一息ついた。

彼にしてみれば、寝ている間に奇妙な状況に陥り、見も知らぬ場所にやって来て、訳も分からないまま境内の掃除をやらされたのだ…その憤りは、とっくに臨界点を超えていた。それを堪えられたのは、


【ミネルバ】

「幾つか、質問に答えろ。」


彼女、霊夢に話を聞くためである。


【霊夢】

「はは~ん。その為に掃除してくれたわけね。」


【ミネルバ】

「てめぇが無理矢理やらせたんだろうが!まぁいい…まず一つは…」


【霊夢】

「先に言っておくけど、内容によっては黙秘するわよ?スリーサイズとか…」


【ミネルバ】

「くだらねぇ事で人のセリフを遮るな。誰得だっつの…」


ミネルバのくだらねぇ発言に、霊夢の女のプライドは大ダメージを受けた…もっとも、全体からすると微々たるものだったが。


【ミネルバ】

「…ここは、何処だ?」


【霊夢】

「博麗神社…私の家でもあるわ。」


【ミネルバ】

「神社の名前を聞いてるんじゃねぇよ。この世界は第何次元の何ていう世界だ?お前らは、何て呼んでる?」


【霊夢】

「…やっぱり、アンタ外から来たのね。ここは幻想郷よ。外の世界とは、結界で完全に隔離された世界…外で幻想となった者たちが流れ着く、全てを受け入れる理想郷。今のは紫の受け売りだけど…。」


【ミネルバ】

「幻想郷?聞いたことねぇな。」


【霊夢】

「でしょうね。人間がここに来るには、普通は神隠しに遭うしかないもの。ま、早苗は別だけど。それに、あれでも一応は現人神だしね。」


霊夢は改めてミネルバを観察した。さっきまで感じていた邪悪な力は、完全に引っ込んでいる。今の状態は、割と力のある人間と言ったところだ。力があるとは言っても、その大きさは今の状態ではせいぜい妖精クラスの上、と言ったところだが。


【霊夢】

「で?アンタはどの辺りの出身なの?やっぱり西方?名前から察するに、早苗たちと違って日本出身じゃないんでしょ?」


その何気ない一言に、ミネルバは跳ね起きるような勢いで立ち上がり、霊夢の両肩に掴みかかった。


【ミネルバ】

「いま何つった?」


【霊夢】

「え?」


思わず、霊夢はドキッとした。

彼女の巫女服は肩部分が開いている、というか無いので…服越しではなく直にその肩を掴まれている。大きくて無骨な、男性特有の手でだ。

彼女の周りには、いつも多くの者たちが集まる…妖精、魔法使い、妖怪、メイド、吸血鬼に亡霊、鬼、果てには神様まで…だが、その誰もが、女性あるいは少女たちばかり。故に、今まで気にした事も無かったが、当人も自覚が無かったのだが…霊夢は、男性に対してあまり免疫が無かったのである。


【ミネルバ】

「日本…ここは、地球の日本なのか?おいっ!答えろっ!」


【霊夢】

「ま、まぁ…そうなる、わね。外の事は詳しくないけど…あ、ちょっ!」


ミネルバは霊夢を放すと駆け出した。


【ミネルバ】

「魔獣変化!ギス・ウィング!」


再び、鎧と仮面姿に変わり、その背中から黒い翼を生やして空へと舞い上がったミネルバ…そのまま真っ直ぐ、南へ向かって飛んでいく。翼を羽ばたかせ、ぐんぐん加速し、あっという間にトップスピードに達した。


【ミネルバ】

「…帰ってきた…帰ってきたぞ!ハハハッ!ハーハッハッハッ!」


嬉しそうに、テンションを上げ高らかに笑いながら飛んで行くミネルバの姿は、幻想の郷においても異様だった。仮面の下では、どんな表情をしているのだろうか。


【ミネルバ】

「ハーハッハ…はぶっ!」


何か見えない壁に、顔面から激突したミネルバ…どんな表情をしていたかは分からなかったが、とりあえず今の表情なら見ずとも想像がつく。ガラスかアクリル板に顔を押し付けた芸人のような、ひどくマヌケな顔をしているだろう。そんな顔を衆目に晒したが最後、主人公から降板という事になりかねないので見せるわけにはいかない…いかないが、指さして「ぷっ」と笑ってもバチは当たるまい。


【ミネルバ】

「何だ、これは?」


驚いた事に、トップスピードで激突しながらも、ミネルバにはダメージが見られなかった。


【ミネルバ】

「…あの女が言ってた結界ってのは、これか。なら話は早い…ギス・セイバー!」


ミネルバの右腕が、巨大な剣に変化した。


【ミネルバ】

「ブッた斬ってやる!オラァッ!」


力一杯に振り下ろした剣は、結界と衝突…そのままガリガリガリっと嫌な音を立てながら、結界の表面を滑っていく。が、結界そのものは傷一つついていない。


【ミネルバ】

「ケッ!頑丈じゃねぇか…なら、これでどうだっ!ギス・ランス!」


今度は右腕から、黒い筋が伸びていく…それは槍の形を成して、結界に真っ向から衝突する。先は鋭く、敵を容易く串刺しに出来そうだ。しかし、これも派手な衝突の割に、結界を破ることは出来なかった。


【ミネルバ】

「ギス・カノン!」


諦めず、槍を激突させた箇所に向けて、右手から黒いエネルギー弾を発射する。エネルギー弾は冷気を帯びていたらしく、着弾と同時に結界を一メートル四方だが凍らせる事に成功した。


【ミネルバ】

「そこだぁっ!」


ズガァンッ


鎧…手甲に覆われた彼の拳が、氷の上から結界を叩いた。氷にはヒビが入り、粉々に砕け散った。当然、凍てついた結界も一緒に砕け…


【ミネルバ】

「なっ、何だと?」


ていなかった。というか、びくともしていない。

彼の想像以上に、この結界は強力だった。


【ミネルバ】

「クソがっ!こうなったら…」


【霊夢】

「無駄よ。」


背後からの声に振り向くと、そこには霊夢の姿があった。彼女は、ミネルバのような羽はおろか、タヌキの尻尾もマントも無しに、宙に浮いていた。

ホバリング…通常なら鳥ですら出来ない種類がいるくらい高度な飛行技術なのだが、彼女は空中で、まるで地面に立っているかのように静止している。ミネルバでさえ、今なお翼を羽ばたかせながら高度を保っているというのに…。


【ミネルバ】

「…何者だ、てめぇ?」


もう一度、ミネルバは霊夢に問いかけた。


【霊夢】

「私は、博麗の巫女…代々、この幻想郷を守る博麗大結界を管理・警護する者。」


【ミネルバ】

『博麗大結界…コレの事か。』


【霊夢】

「結界を破壊しようとする者は、誰であれ容赦しないわ。覚悟なさい!」


さっきまで縁側でまったりお茶(まがいのお湯)を飲んでいた彼女の姿とは結び付かない、凛々しく美しい何故か空飛ぶ巫女の姿がそこにはあった。ビシッと人差し指をミネルバに向けて、ポーズも決まっている。


【霊夢】

『…決まったわ。きっとこれで、私の評判もうなぎ登りね。』


い、今の内心は、覗かなかった事にしておこう。


【ミネルバ】

「…そうか。つまり、この結界を破って外に出るには…てめぇを殺す必要があるんだな?」


【霊夢】

「そんなに出たいなら、出してあげるわよ。一応、それも私の仕事だし。」


【ミネルバ】

「フン、てめぇの助けなんざいらねぇ!俺は俺の力だけで何とかする。生きるのも、この結界についてもなぁっ!」


【霊夢】

「意固地ね…いいわ。やれるものなら、やってみなさい。」


霊夢が挑発した瞬間、というか言い終わる前にミネルバは霊夢に向かって突進していた。距離は僅かだ、すぐに間合いは縮まる。相手は空飛ぶ不思議な巫女さんだが、接近してしまえばか弱き女性…袖の一つでも掴んでしまえば秒殺だ。そう、ミネルバは考えていた。


【ミネルバ】

「死ねっ!」


彼の拳が突き出される…が、不意に彼女の姿が、目の前から消えた。


【ミネルバ】

「っ!?」


【霊夢】

「幻想空想穴。」


突然、霊夢が上空から現れ、ミネルバに鋭い蹴りをみまった。咄嗟に腕でガードしたミネルバだったが、そのガードの上から持っていかれてしまった。


【ミネルバ】

「何っ…がっ!」


蹴り飛ばされた勢いのまま、ミネルバは結界に激突した…鎧のおかげでダメージは少ないが、この状況は追撃の恰好の餌食である。


【ミネルバ】

『マズい、ガードを…』


ところが、その絶好のチャンスに、霊夢は何もしてこなかった。


【霊夢】

「どういうつもりか知らないけど、これ以上その結界に手を出さない事ね。まぁ、私は紫とは違って、優しくて心の広~い素敵な巫女だから、今回だけは見逃してあげ…」


もしかしてまだ評判云々を気にしていらっしゃる?というか、こんなとこで評判あげようとしたって誰も見てないと思うのだが?


【ミネルバ】

「ざけんなっ!ここまで来て…諦めてたまるかよっ!」


【霊夢】

「諦めなさいよ。アンタじゃ逆立ちしたって、私には勝てない。それでもまだやるって言うなら、口先だけじゃなくて、死ぬ気と殺す気でかかってきなさい。」


瞬間、霊夢が霊力を漲らせミネルバを威圧する。その力は、確かに今のミネルバの三倍以上はある。いや、四倍くらいだろうか?とにかく、ミネルバに勝ち目がないというのは、あながち間違いではないようだ。

…飽くまで、今のこの状態のミネルバでは、という話だが。


【ミネルバ】

「…ナメんなよ、このクソアマがぁっ!」


【霊夢】

「っ!」


突然、ミネルバの力が爆発的に増加した。そして、彼の姿が黒い霧…ではなく、氷に包まれる。自らを氷の中に閉じ込めて、何をする気なのか…と、すぐに氷は砕け、鎧が軽装化し、仮面も外されたミネルバが現れた。その目は赤く、ギラギラとした光を放っている。


【霊夢】

「…嘘でしょ?やば…」


霊夢の顔が引きつる…無理もない、今の彼の力はさっきまでの五倍に相当するほど膨れ上がっていた。それは、彼女自身の全力全開の状態に匹敵するほどだ。


【霊夢】

『いや、っていうか、私より上じゃない、これ?うわ、どうしよう?まともにやり合ったら辛いなぁ~。しかもコイツ、外から来たばっかだし、スペルカードルールなんて知らないだろうし、むしろ関係ないよね?』


【ミネルバ】

「死ね。」


【霊夢】

『ま、マズいかしら…そうだわ!こういう時は、女の色気で、敵の戦意を削ぐのよ。』


霊夢は何を思ったのか、軽く握った両手で口元を隠すようにし、さらには片足をあげて変なポーズを取り出した。


【霊夢】

「いやーん、怖ーい☆」


……。…………。


【ミネルバ】

「……」


時間が止まった…ミネルバの戦意を削ぐ事が出来たかは分からないが、一先ず時間が停止したのだけは間違いない。そんな気がする。

どうやらあのポーズはぶりっ子ポーズのつもりらしい。悲しいかな、すでに齢十八を迎えた彼女に扱えるものではなかった。


【ミネルバ】

「どうやら、まだまだ力を隠してるみてぇだな?なら、お言葉に甘えて、殺す気でいくぜ。」


【霊夢】

「ちがっ!待って!今のナシっ!」


霊夢の願いも虚しく、ミネルバの拳が霊夢に襲い掛かった。そのスピードはさっきまでの比ではない。その上、威圧感も…霊夢は必死に避けた、というか逃げた。


【霊夢】

『マジで死ぬ!死んじゃうって!何、コイツ?頭おかしいの?』


自分で言っておいて、である。そしてそれこそが、まさに命取りだった。

ミネルバは左手で霊夢の袖を掴んだ。まさに袖だけのそれは、何の為にあるのかさっぱり分からない。それを引かれ、霊夢がバランスを崩す…


【霊夢】

「しまっ、きゃあっ!」


【ミネルバ】

「終わりだ。」


次の瞬間、ミネルバの拳は霊夢の左頬を捕えていた。本当に、容赦なく、ミネルバは拳を振り抜いて、彼女を地面まで殴り飛ばした。


キューンッ ドォーンッ


林の中に落ちた霊夢…その姿は土煙で見えないが、恐らく即死だろう。しかし、ミネルバは攻撃の手を休めない。


【ミネルバ】

「ギス・カノン!」


彼の手から放たれる、黒い氷塊…それも三連弾である。氷塊が着弾すると共に、辺りは凍りつき、氷柱が幾本も立ち上り、砕けてその破片が次に次に落下していく。


【ミネルバ】

「何が殺す気でかかってこいだ。てめぇがあの縁側で、暢気に茶菓子を食ってる間に、俺は大勢の人間を殺してきた!てめぇは毎日、水や茶を飲むんだろうが、俺は泥と血を啜って生きてきた!そうしなきゃ生きられねぇ世界に、俺はいた。覚悟が足りてねぇのは、てめぇの方だ!」


【霊夢】

「……くっ…」


氷の瓦礫の中から、霊夢が起き上がってきた。袖と袴が所々破れ、体中に細かい傷が幾つもある。だが、致命傷はどうやら無いようだ。霊力を高めて、限界までダメージを軽減したのだろう。


【霊夢】

「言ってくれるじゃない…私だって、妖怪の跋扈するこの幻想郷で、伊達に十年も巫女やってないわよ!封魔陣!」


【ミネルバ】

「あぁ?」


ミネルバの周囲を取り囲むようにして、無数のお札がまるで鎖のように連なりながら、縦横無尽に張り巡らされた。否応なく、動きを制限されるミネルバ…そこへ、


【霊夢】

「博麗奥義…夢想封印!」


霊夢の体から放出された霊力の塊…極彩色の光を放つ、無数の霊力弾が、お札であまり身動きの取れないミネルバを襲う。


【ミネルバ】

「チィッ!クソが、ギス・ウォール!」


ドンドンッドドン…ドーンッ


全弾命中し、ミネルバが爆発した光に包まれる。必殺の一撃が完璧に決まり、霊夢の勝利が確定した。幻想郷の平和は保たれた。


【霊夢】

「はぁ…はぁ…あぁ、もう。服がボロボロじゃない…髪も汚れちゃったし…こんな事ばっかりだから、いつまでもいい男が現れないのかなぁ~?はぁ~…」


自身の姿に、思わずため息をこぼす霊夢…だが、その表情が、突然凍りついた。


【霊夢】

「う、嘘でしょ…何で…」


【ミネルバ】

「……」


煙が晴れた空に、未だミネルバは飛んでいた。多少のダメージはあるようだが、四肢は何処も潰れていない。


【ミネルバ】

「…俺は、てめぇを殺して、俺のいるべき場所へ帰る!邪魔はさせねぇっ!」


【霊夢】

「くっ…なら、私は、アンタを倒して、幻想郷の平和を守ってみせる!」


霊夢の放つ弾幕が、再びミネルバを取り囲む…ばら撒いているだけだが、全方位に散らばるお札はミネルバの動きを制限する。そこへ追尾性能の高いお札を放ち、移動してから同様の攻撃を繰り返した。


【ミネルバ】

「チィッ!しゃらくせぇっ!」


徐々に動ける範囲を狭められたミネルバは、痺れを切らしたのか、お札があたるのも構わず、霊夢に向かって突っ込んでいった。


【霊夢】

「なっ!きゃあっ!」


ミネルバの拳を霊力で強化した両腕でガードした霊夢だが、腕力の下地が違うのではダメージも厳しい。力任せに押し切られ、吹き飛ぶ霊夢…だが、今度は空中でブレーキをかけて地面への落下は免れた。


【霊夢】

「博麗アミュレット!」


追尾性の弾幕を放つ霊夢…外側から大きく弧を描きながら迫るそれらを、ミネルバは忌ま忌ましげに睨むと、右腕に力を集めた。


【ミネルバ】

「ギス・ウェーブ!」


右腕が、黒い氷のムチとなってうねる…硬いはずの氷は流水のごとく形を変えながら、ミネルバが腕を振るのに合わせて振り回され、霊夢の放った霊力弾を叩き落とした。


【霊夢】

「バスウェイジョンニードル!」


【ミネルバ】

「ギス・ウォール!」


高速で放たれた無数の針を、ミネルバは氷の壁を自分の正面に張って防いだ。


【霊夢】

「…夢想封印を防いだのも、それってわけ?」


【ミネルバ】

「そういう事だ。カノン、ウォール、セイバー、ランス、ウェーブ、ウィング…神技っていう戦闘用の技だ。俺のは闇神技だがな。」


いつの間にか、霊夢の方が結界を背にしていた。それが、その立ち位置が、彼女にとっては命取りになってしまった。

ミネルバは右手に、今まで以上に力を集中させる。


【ミネルバ】

「…通常、神技はさっき言った六種類だけなんだが…闇神技にはもう一つ、裏神技があってな…」


【霊夢】

『な、何?あいつの右手…あの力、ヤバいかも!』


【ミネルバ】

「後ろの結界ごと、凍って粉々になれっ!ギス・レイザス!」


ミネルバの右手から放たれたのは、さっきのような氷の塊などではない…マイナス100℃を下回る、氷結光線だ。しかも、霊夢の体格など優に飲み込んでしまうほどの奔流…それが光線というに相応しい速度で照射されたのだ。避ける暇などない。


【霊夢】

『や、やられるっ!』


…これだ。これを待っていた!空間操作術…亜空間トンネr…


【??】

「マスタースパーク!」


ドォーンッ


突然、眩いばかりの光の奔流が飛んできた。その光は真横からミネルバの放ったギス・レイザスに直撃し、その軌道を斜めに逸らしてしまった。

軌道を逸らされたギス・レイザスは博麗大結界に直撃、結界は表面を十メートル四方ほど凍らされた。しかし、破壊にまでは至らず、結界はなおもその強度を保ち続けている。


【霊夢】

「魔理沙!」


唐突に乱入してきたのは、箒に跨がった魔女だった。

ウェーブのかかった金髪に、黒のとんがり帽子…黒い服の上から白のエプロンをしているので、白黒魔女などと呼ばれている。紅白巫女の霊夢と並ぶ、幻想郷の規格外人間…霧雨 魔理沙。その魔法の破壊力は、幻想郷で右に出る者はいないだろう。


【魔理沙】

「弾幕はやっぱパワーだぜ♪」


【ミネルバ】

「…邪魔すんな。殺すぞ、てめぇも。」


…まったくだ、余計な事を…。

ミネルバは殺気を放って魔理沙を牽制した。

しかし、霊夢の援軍は彼女だけではなかった。


【??】

「全く、何てことしてくれるのかしら?」


突然、空間に裂け目が出来たかと思うとそこから、美人なんだがどこか胡散臭い感じのする女性がひょっこりと顔を出した。口元を扇子で隠し、日傘をさしている。


【霊夢】

「ゆ、紫!」


彼女の出現に、霊夢の表情が強張る…。


【紫】

「霊夢。帰ったら特訓ね。」


【霊夢】

「ひぃーんっ!」


スキマ妖怪、八雲 紫。幻想郷の管理者、妖怪の賢者などと呼ばれる。霊夢にとっては、鬼教官と言ったところか?


【紫】

「……」


…紫は目を細め、こっちに一瞬だけ睨みを利かせてきた…。


【??】

「何だか面白そうな事になってるね。私も混ぜてよ。」


声と共に、何処からともなく集まりだした白い霧…やがてそれは、一人の少女の姿を形作った。頭から、大きな二本の角を生やし、手に鎖をつけた奇妙な少女である。


【霊夢】

「萃香、アンタまで…」


【萃香】

「酒と力比べは、鬼の大好物だからね♪」


一見無邪気な笑顔で言ってるようだが、その目は笑っていない。強敵を前に怯みもしないとは、さすがは鬼の四天王が一人、伊吹 萃香だ。

続々と現れた霊夢の救援…おかげで頭数は四対一となり、霊夢側は圧倒的優位に立った。力もほぼ拮抗している為、弱い奴から一人ずつ片付けるなんて作戦も容易ではない。


【ミネルバ】

「……」


未だ殺気を迸らせているミネルバだが、状況は絶望的なまでに不利であった。




~おまけ1・キャラ設定~


霧雨 魔理沙~自称・普通の魔法使い~

年齢:18歳

身長:164㎝

能力:魔法を使う程度の能力


魔法の森に住む魔法使い。格好はお伽話に出てくる魔女そのものだが、彼女は人間でしかもまだ若い。キャリア(年季)を積んだら、どれほど強力な魔女になれるのか…成長が楽しみである。

霊夢の幼なじみであり、ライバルでもある。



八雲 紫~幻想郷の創設者~

年齢:??

身長:170㎝

能力:境界を操る程度の能力


幻想郷の創設者にして管理者である、妖怪の大賢者。

両親(先代の巫女と神主)を亡くした霊夢を、立派な巫女に育てるのが生き甲斐らしく、最近は特にしごきが厳しいとの噂だ。



伊吹 萃香~鬼の宴会部長(?)~

年齢:??

身長:135㎝

能力:疎と密を操る程度の能力


鬼の四天王の一人。まだ鬼としては幼いのか、背がかなり低い…ちなみに上のデータにある身長は、角の先で測ったもので、頭頂部は…


(バキャッ)




~おまけ2・東方異聞録小劇場~


【霊夢】

「封魔陣!」


【ミネルバ】

「あぁ?」


ミネルバの周囲を取り囲むようにして、無数のお札がまるで鎖のように連なりながら、縦横無尽に張り巡らされた。否応なく、動きを制限されるミネルバ…


【ミネルバ】

「チッ!ウザってぇ…こんなも、ん…?」


その瞬間、彼の常人を遥かに凌駕した動体視力が、飛び交うお札の中の一枚に書かれた文字を捕えてしまった。


【ミネルバ】

『…と、徳用?大入り?何が?』


【霊夢】

「博麗奥義!夢想封印!」


【ミネルバ】

「なっ!しまった!ぐあああああっ!」


ピチューン


参考:グリモワールオブマリサ より

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