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第十五話 修業の合間の日常

後書きにて、(大して重要でもない)ご報告がございます。

紅魔館の宴の翌日、博麗神社は朝から厳かな空気に包まれていた。


【霊夢】

「……」


神社の鳥居の前で、霊夢はいつになく険しい表情で精神を集中し、何かを念じていた。その脇で、ほたると魔理沙が固唾を飲んでその様子を見守っている。

風も止み、鳥の囀りさえ聞こえないこの静寂と緊張の中では、指一本動かす事さえも憚られるような、そんな気分になる。

…不意に、その緊張が破られた。別に、霊夢が勝手に音を上げたわけではなく、近くの木に留まっていた鳥が飛び立ったわけでもない。鳥居の中に、突如として出現したゲート…これが、そもそもの目的だったからだ。


【霊夢】

「ふぅ~…久し振りだけど、上手くいったわ。ここを潜れば、幻想郷の外に出られるわよ。」


【ほたる】

「ありがとうございます。…時空間座標、確認…これなら、楽にピサンテーラに帰れます。」


幻想郷を覆う博麗大結界により、ピサンテーラの時空間座標を取り難かったが、霊夢がゲートを開けてくれたおかげで、楽に座標を見つけられたようだ。ここに来る時には、彼女も相当苦労したはずだ…自身と、拓磨を転移させるのがやっとだったのだろう。


【魔理沙】

「礼なんていいんだぜ。」


何故か魔理沙が得意気に言った。


【魔理沙】

「むしろ、こっちが礼を言いたいんだぜ。昨日は本当に危なかったからな…」


【ほたる】

「たまたま、いいタイミングで来れたようで良かったです。」


飽くまで偶然と言うほたる…しかし、それでも霊夢は、彼女の手を両手でぎゅっと握り締め、頭を下げた自身の額に押し当てた。


【霊夢】

「…本当に、ありがとう……ミネルバを、助けてくれて……」


【ほたる】

「霊夢さん…いえ、そのお礼は、マスターにお願いします。」


【魔理沙】

「…なぁ、その拓磨とミネルバはどうしたんだぜ?」


魔理沙の言うとおり、二人の姿は無い。拓磨は、これからほたると共にピサンテーラに帰るはずなんだが。その為にゲートを開けたというのに、肝心の彼がいなくては話が進まない。


【ほたる】

「…少し、お時間を頂いても?」


【霊夢】

「えぇ、平気よ。」


ほたるは霊夢に確認を取ると、神社の裏手へと向かった。魔理沙と霊夢も後に続く…その先には、対峙するミネルバと拓磨の姿があった。

二人の間に走る緊張感は、先程まで鳥居の前で感じていたそれと遜色ない、呼吸さえ忘れてしまいそうなものだった。恐らく帰る前に、白黒つけようみたいな流れになったのだろう。互いに睨み合い、相手の隙を窺い続けているようだ。しかし、このままではいつまで経っても膠着状態…仕方なく、ほたるは手近にあった木の枝を、大きな音を立ててへし折った。


バキッ ドガァッ


その音を合図に、二人は一足で間合いを詰めて互いの拳を打ち合った。

二人とも変身せずに生身のままだったが、それでも人外のパワーを発揮できる二人の拳が正面から打ち合えば、衝撃は風となって駆け抜ける。


【魔理沙】

「うわっと!?」


風は、魔理沙の帽子が飛びそうになるくらいの強さだ。

無論、それで終わるほど二人の打ち合いは緩くない。女性陣が帽子や髪、それにスカートを抑えようと手を伸ばしている間に、拓磨は拳を引いて今度は飛び上がり様にミネルバの顔面に膝蹴りを見舞おうとしていた。

ミネルバはそれを左手で捌き、体を捻る事で躱すと、カウンターで今一度、右拳を拓磨めがけ打ち込んだ。

拓磨は咄嗟に手刀でその拳を弾き落とし、曲げていた足を横にいるミネルバの首めがけ鋭く伸ばした。

迫り来る足刀、これを左腕だけでガードするのは不可能と判断したミネルバは、目一杯後方へと飛び退り、辛うじて難を逃れた。


【魔理沙】

「……霊夢…今の、見えたか?」


【霊夢】

「…ま、まぁね……」


…嘘をついている表情である。


【ミネルバ】

「……そろそろ、時間か?」


近くで覗き見している霊夢たちの存在に気づいたのか、いや既に気づいていたのか、ミネルバの放っていた殺気がスッと消え入った。


【拓磨】

「そうみたいだな…たるちゃん、準備は?」


【ほたる】

「いつでも。」


【拓磨】

「そうか。じゃあ、帰るとするか。」


【ミネルバ】

「連中によろしく言っといてくれ。」


【拓磨】

「あぁ。そうだ、お前の未払い分の給金どうしたらいいかって、百合先生が…」


【ミネルバ】

「いや、貰いようがねぇだろ…連中と何か美味い物でも食いに行けよ。」


ミネルバのその発言に、ほっと胸を撫で下ろしたのは他でもない霊夢だった。彼だって決して裕福に生きてきたわけではないので、お金の有り難みは分かっているはずだ。その彼が、せっかくの給金を貰いようが無いと言うからには、本当にもうピサンテーラに戻る気はないという事だ。


【拓磨】

「いいのか?サンキュー♪」


【ほたる】

「マスター、そろそろ…」


【拓磨】

「あぁ、ごめん…じゃ、ミネルバ…またな。」


拓磨はそう言って微笑むと、静かに右拳を突き出してきた。

それに応えるように、ミネルバも拳を突き出し、先ほどと違い軽く突き合わせた。


【ミネルバ】

「あぁ…また、な。」


…こうして、拓磨とほたるの二人は帰って行った。

魔理沙も自宅へと帰り、今日は午後まで仕事の無いミネルバは、珍しく手持ち無沙汰に縁側でぼぉーっとしていた。

空を眺め、流れる雲を見つめ、そよぐ風の音を聞きながら、ミネルバは胸に去来する得も知れぬ感情に、戸惑いを覚えていた。


【霊夢】

「どうしたの?」


霊夢の問い掛けに、ハッと我に帰るほど、ミネルバは物思いに耽っていたようだ。

そんなミネルバに、霊夢はスッとお茶を差し出した。


【ミネルバ】

「あ、あぁ…ありがとよ…」


【ほたる】

「……寂しい?」


【ミネルバ】

「…寂しい、か…そうかもな。」


ミネルバはやっと、自分の中のその感情を理解した。


【ミネルバ】

「拓磨とは元々敵同士だったし、いい思い出も義理も情もねぇんだけどな…」


【霊夢】

「でも、いい人たちだったわね。」


【ミネルバ】

「あぁ…お前の言う通りだったな。」


【霊夢】

「え?」


【ミネルバ】

「永遠亭で…過去に、俺を助けてくれるヤツは、本当にいなかったのかって。俺が心を開いていれば、案外近くに居たんだな。今さらだが、今になってやっと分かったよ。」


そう言って、ミネルバは霊夢の淹れてくれたお茶を一口啜った。その表情は、彼自身が見たらきっと驚くほど穏やかなものだった。


【霊夢】

「そっか。ねぇ、ミネルバ…お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」


【ミネルバ】

「…?」


霊夢の言う、お願いとは…?

五分後、二人は神社の裏で対峙していた。霊夢はお札とスペカと御幣を手に、ミネルバは第二段階に変身した状態で…。


【ミネルバ】

「どういう風の吹き回しだ?俺に実戦訓練を頼むなんて…」


【霊夢】

「…アンタの言う通り、昨日の私はただの足手纏いだった…スペカルールに安心して、天狗になってた…でも、それじゃダメなんだって分かったから…強くなりたい、足手纏いにはなりたくないの。」


霊夢の瞳には、強い意志が宿っている。

彼女の覚悟を悟ってか、ミネルバは右手を軽く握り、久遠大刀を召喚した。


【ミネルバ】

「久遠に咲け、久遠大刀…来い、霊夢。口先だけの覚悟なら、ブッた斬るぞ?」


そう言うと、ミネルバは殺気を全開にして霊夢を威圧した。生半可な覚悟なら、すぐに心が折れてしまいそうな、年季の入った本物の殺意だ。

しかし、霊夢は怯まずにミネルバに飛び掛かって行った。


【霊夢】

「はぁっ!」


御幣に霊力を込めて、ミネルバめがけ振り抜く…しかし、彼の胴を叩こうとしていた御幣は、寸前で久遠大刀に阻まれる…


ガァンッ


辺りに走る衝撃、そして久遠大刀を突き抜けミネルバの全身へと襲い掛かる衝撃…彼女の決意もまた本物である証だった。

しかし、全身に走った痺れなど物ともせず、ミネルバは左手に力を込め、彼女からは自身の袖の陰になった死角から反撃を繰り出す。


【ミネルバ】

「ギス・カノン。」


【霊夢】

「!」


ミネルバの左手から放たれた冷気の三連弾…超を付けていいほどの至近距離から放たれたそれを、霊夢は目にも止まらぬ速さで垂直上昇し躱した。


【ミネルバ】

「ギス・ウィング。」


ミネルバも氷の翼でその後を追った。

上空でホバリングしていた霊夢な高度を合わせ、ミネルバは久遠大刀を肩に担ぎ上げた。正面がガラ空きで隙だらけに見えるが、それはミネルバの誘い…罠である。

霊夢もそれを察し、敢えて距離を取って札を投げて攻撃してきた。得意の弾幕戦に持ち込むつもりか?否、そんな誘いに乗るミネルバではない…そもそも、攻撃力の低いこんな札を幾ら浴びても、ミネルバには大したダメージではない。事実、ミネルバは避けも防ぎもせずに、全弾喰らってみせた。その間、ダメージを顔に出すことなく、じっと霊夢の動きに睨みを利かせていた。


【ミネルバ】

『…たぶん、次は…』


ミネルバが少し、フラつく…そこで、


【霊夢】

「幻想空想穴!」


霊夢が姿を消し、一瞬でミネルバの背後へ…前のめりに倒れそうになっていたミネルバ、の背中では、待ち構えていたかのように、久遠大刀の刃と棘が霊夢に向けられていた。


【霊夢】

「っ!しまっ…」


霊夢の脳裏に浮かぶ、昨日の異変で敵を葬った、美しいほど残酷で恐ろしいあの光景…瞬間、霊夢は身が竦むのを自覚した。

と、次の瞬間…ミネルバが魔獣変化を第一段階へ戻した。力は一気に低下し、久遠大刀も消失する…しかし、そんな状態でも、振り向きざまに霊夢の眼前へと拳を突き出すのは容易だった。霊夢は、それを躱す事も出来ないほど全身が強張っていたのだ。


【ミネルバ】

「分かったか?戦いにおける死神の鎌は、相手の実力じゃない…自身の中に芽生える恐怖だ。死への恐怖からは逃げられねぇ。戦いの中で、それを乗り越えた者だけが生き残る。」


【霊夢】

「…はぁ……はぁ……憶えておくわ。」


恐怖で動悸と息切れこそしているが、霊夢は満足そうな笑みを見せていた。確かに、何かを掴んだようだ。確かに、最後のミネルバの拳は躱せなかった…が、初撃のギス・カノンはあの至近距離から躱せた…。


【霊夢】

『…あの感覚だ…天空城の異変の時と、同じ感覚だった。これさえ、自分のものに出来れば…』


霊夢は頭の中で、何度もミネルバのギス・カノンを躱した瞬間を反芻するのだった。




その頃、魔理沙は少し遅くなりながらも自宅へと帰ってきた。その背中には、神社を後にした時には無かった大量の荷物が…恐らくは、紅魔館の図書室から失敬してきた魔法書か、或いは、


【魔理沙】

「いいキノコが大量に手に入ったぜ。」


…この魔法の森に生えているキノコ(主に化け物茸)の方らしい。

キノコや薬草などから魔法薬を作り、それを媒体として発動される魔法を研究し、魔法薬のレシピや魔法が発動した際の魔力や魔法元素の流動の仕方から術式を完成させ、新たな魔法を生み出す…どうやら、彼女はそういうタイプの魔法使いらしい。


【魔理沙】

「昨日はまるでいいトコ無しだったからな。もっと強力な魔法を開発しないと…」


そう意気込み、早速彼女は魔法薬を作り始めた…が、その光景は彼女が使う魔法に比べて、あまりに地味なものであり…その作業は普段の彼女からは想像もつかないほど、繊細且つ緻密なものだった。

どのくらいかと言えば、一つ一つの材料をミリ単位で調節し、細かくメモを取り、鍋で煮込んでは掻き混ぜ、また別の材料を…(以下略)…だ。


【魔理沙】

「ふぅ~…いいカンジだぜ。この調子なら、今回こそは上手くいきそうだ。」


鍋を煮込む熱が篭って、家の中は蒸し蒸しして暑い…自然、彼女の額からは大粒の汗が滴る…


【魔理沙】

「そろそろかな?」


彼女が、鍋の中を覗き込む…って、そんな汗だくで覗き込んだら、汗が落ちt…


……ポタッ…ジュッ……ボォンッ




ダミー2カメ君から受信していた映像と音声は、そこで途切れた。


【新太郎】

「藤堂先生?大丈夫ですか?」


【藤堂】

「…あぁ、大丈夫だよ。ありがとう…」


大事な説明をしている最中に、急に黙り込んで目頭を押さえる私に、新太郎君が心配そうに声をかけてきてくれた。


【藤堂】

「え~…はて、何処まで話したかな?」


【大吉】

「引く735の次だよ、先生。」


【藤堂】

「そうか、ありがとう。で、この次だが……こうする事で……」




魔理沙side


【魔理沙】

「ケホッ!ケホッ!…あーっ!クソ…また失敗だぜ……」


いつもいつも…何で調子良くいってるなって思った拍子に……あ~あ、部屋がまた散らかっちまったぜ。


【魔理沙】

「ダメだ~…こんなんじゃ、いつまで経っても新魔法なんて作れないぜ……」


椅子にもたれ掛かり、天井を仰いだ私はため息を吐いた。

…薄々、感じ始めていた…所詮、私にはそこまでの才能は無いんじゃないかって…私が編み出した魔法、スペルカード、そのどれもが誰かのマネに過ぎない。マスパは幽香の、ノンディレクショナルレーザーはパチュリーの…それ以外の魔法も、所詮は過去に誰かが作った魔法を元に、見た目だけデザインしただけのようなモノ…。


【魔理沙】

「こんなんじゃダメなんだ…もっと、凄い魔法を作んないと…」


昨日の異変で痛感した…私は、弱い…弾幕ごっこなら自信はあるが、昨日みたいな殺し合いの勝負じゃ、覚悟すら無い口先だけの弱者だ。弱者には、ルールを選ぶ権利も、無い。


【魔理沙】

「…よし、もう一度だ!」


強くならなきゃ!

私は気持ちを切り替え、もう一度実験を開始した。




normal side


満月の日のあの異変以来、少女たちは各々の方法で特訓に励んだ。無論、ミネルバも…。そんな少年マンガのような忙しく平和な日々は、一週間…二週間と続いた。

本当に平和だった…ともすれば、もう異変なんて起きないんじゃないかと、錯覚してしまいそうな程に…。


【霊夢】

「~♪」


博麗の巫女である霊夢が、思わず鼻歌を歌いながら朝食の準備をする程に…いや、それはいつもの事か。

それにしても、随分とご機嫌な様子だ…これはきっと、お賽銭が入っていたに違いない。


【ミネルバ】

「どうしたんだ、霊夢?朝からやけに機嫌がいいが?」


ミネルバも、ご機嫌な様子でちゃぶ台に朝食を並べる霊夢の様子に、思わず(気味悪がって)訊ねた。


【霊夢】

「ん~、別に?さ、食べましょう。アンタ、今日は午前の授業なんでしょう?」


霊夢に急かされ、ミネルバも卓についた。

質素ながら、味には定評のある博麗神社の食卓…その食事をつつきながら、霊夢はさりげなく切り出した。


【霊夢】

「寺子屋が終わったら、里で待ち合わせしたいんだけど、出来る?」


【ミネルバ】

「…は?何だよ、わざわざ…あぁ、買い出しか何かか?」


【霊夢】

「う~ん、まぁ…そんなところ。」


【ミネルバ】

「いいぞ。場所は?」


【霊夢】

「あんみつ屋さん分かる?里で、最近なんか話題になってるでしょ?」


【ミネルバ】

「…あぁ、そう言えば生徒たちが話してたな。」


二人が言っているのは、人里で唯一と言っていいスイーツ専門店(?)の事だろう。寺子屋からも程近く、女子生徒の中には、帰りにここで寄り道している子もいるようだ。


【霊夢】

「買い物前に、そこに寄りたいんだけど、いい?」


【ミネルバ】

「分かった。授業が終わったら、すぐに行く。」


【霊夢】

「ありがと♪」


そして食事を終え、仕度を済ませたミネルバは神社を後にした。




霊夢side


食器を洗い終え、ミネルバを送り出した私は…ダッシュで部屋に戻った。


【紫】

「は~い、霊夢♪」


スキマから上半身だけ出して部屋の中に漂っている妖怪はとりあえず無視して、私は押し入れを開けた。確か…この奥に……あった!

目当ての木箱を持って、押し入れから出てくると、今度は紫が逆さまになって目の前に出てきた。


【紫】

「…この箱って…」


扇子で口元を隠しながらも、その声はどこか、懐かしそうだった。それはそうだ…この箱にしまってあるのは、母の形見なのだから。

開けると、そこには幾枚かの写真と、手紙、そして布に包まれた十五センチほどの細長い物があった。包みを開けると、それは…一本のかんざしが入っていた。これは…


【紫】

「霊沙の、かんざしね。」


そう、母のかんざし…父が母に送ったものらしい。


【霊夢】

「…これを、つけて行きたいの。今の私に、似合うかな?」


【紫】

「えぇ。きっと、霊沙も喜ぶわ」


さっきは、なるべく意識しないように、意識しないように、って自分に言い聞かせてたけど…かんざしを手にした途端、ものすごく緊張してきちゃった…。


【霊夢】

「ど、どど、どうしよう?何を着てったらいい?あー、いや…服はいつものでいいにしても、私…化粧とかした事…」


【紫】

「落ち着きなさい、霊夢。貴方だってまだまだ若いんだから、紅を注すくらいで十分よ。」


【霊夢】

「でもでも!クマとか出来てない?」


【紫】

「無いから。」


【霊夢】

「背中のホクロのとことか、変な所からムダ毛生えてないかな?」


【紫】

「ない、たぶん。有ったとしても、どうせ見せないでしょ。」


【霊夢】

「……イヤン、何言わせるのよ!」


【紫】

「貴方が言ったのよ!大丈夫、ねぇ?」


…紫に肩を掴まれ、前後に大きく揺すられて、私はやっと正気に戻った。


【霊夢】

「けどさ、正気に戻ってみると…浮かれてるのはきっと私だけなのよね…」


【紫】

「今度はネガティブなスイッチ入っちゃった!?面倒臭い子ね!」


【霊夢】

「じゃあ聞くけど、ミネルバは私とのデートを楽しみにしてくれてると思う?」


【紫】

「私が知るわけないでしょう?でもまぁ、話に聞く限りだと女の子とのデートを楽しみにするほど、ウブっぽいというか純情な男では無さそうね。」


…あぁ…やっぱり、そうなんだ…。

紅魔館で、私に喝を入れようと、ミネルバが言っていた事は、どうやら事実らしい…。


【霊夢】

「つまり…私は、アイツにとって初めてのオンナじゃ無いって事ね…」


考えても仕方ない事だっていうのは分かってるけど、その事がどうしようもなく悔しくて、悲しかった…。


【紫】

「そもそも、まだ彼の女になったわけじゃないでしょう?」


【霊夢】

「紅魔館で…」


【紫】

「……うぇっ!?」


【霊夢】

「…俺の女になれって、言われました…」


まぁ、告白とかそういう意味でじゃないけど…ただ、私がそう言うと同時に、紫は目を丸くして大慌てでスキマの中に消えた……って、何処に行ったの?


【霊夢】

「まぁいいわ…とりあえず、境内の掃除しちゃおうっと。」




紫side


なんて事!?私とした事が…このスキマ妖怪、八雲 紫ともあろうものが…こんなビッグでびっくりな事件を、見逃していたなんて!

あの彼が…ミネルバが、霊夢に告白…いや、プロポーズ!?まさか二人の仲が、そんなに進展していたなんて…。


【藍】

「紫様…先ほどからどうしたんです?」


家に戻ってから、私はずっと居間の中をウロウロ歩き回っていた…いや、意識してたわけじゃないから、藍に声を掛けられるまで、そんな事をしているなんて自分で気づいてなかったんだけど。


【紫】

「ねぇ、藍。橙も遊びに行ってる事だし、ぶっちゃけた話をしたいのだけど…彼、ミネルバと霊夢が結婚したら、相性とかどうなのかしら?」


【藍】

「それはまた随分と気の早い悩みで…」


【紫】

「何よ?その、嫁に対して『孫はまだか?』って、しつこくせっつく姑を見るような目は?違うわよ!霊夢が彼に、俺の女になれって告白されたって言うのよ。」


私の言葉に、藍はさっきの私と同じような表情になった。


【藍】

「それが事実なら、相性どうのという話は置いておいて、祝いの品を送らなければ。何といっても、彼はアイラブシスター同盟の同士ですからね。」


【紫】

「いつの間にそんな変な同盟を彼と結んでたのよ…」


それが事実なら、逆に二人の結婚生活が心配よ…妹属性のある子なんて、狭い幻想郷の中にもゴロゴロ居るんだから。


【藍】

「霊夢はあれで家庭的ですし、彼も子供が好きなようですから、温かい家庭を作っていけるかと。」


【紫】

「あ、あぁ、そう…急にまともなこと言うからびっくりしたわよ…」


だとするなら…二人の結婚、幻想郷の総力を上げて、盛大に祝ってあげないとね。博麗の巫女は、幻想郷で何をおいても一番重要な存在…後継ぎ問題が半分でも解決したようなものなんだから、これほどめでたい話はそうそうない。


【紫】

「まずは、このおめでたい報せを幻想郷中に広めないと…」


【藍】

「いや、気が早いんじゃないんですか?二人とも、今はまだそっとしておいて欲しい時k…」


【紫】

「黙らっしゃい!」


こういうのは勢いが大切なのよ!周囲が一丸となって、二人の結婚ムードを盛り上げていってあげないと…マリッジブルーになる暇なんて与えないわ!


【紫】

「そうと決まれば!」


【藍】

「ちょっ!紫様!」


スキマを抜けて、私はすぐさま妖怪の山の中腹までやってきた。

この辺りは、いわゆる鴉天狗のテリトリー…そして目の前に建つ家は、彼らの中でも特別な存在である、彼女の自宅兼出版社…。


【紫】

「お邪魔するわね。」


返答を待たずに、さっさと中に入っていく。


【文】

「あやや!?これは紫さん、どうされました?」


案の定、彼女は奥の部屋で次号の新聞の記事をあれやこれやと悩んでいたようだ。室内に散らばる原稿用紙の紙屑が、それを物語っている。


【紫】

「いいネタを提供してあげようと思って。」


【文】

「…紫さんがですか?失礼ながら、普段から寝てばかりの紫さんが手に入れている情報を、普段から幻想郷中を忙しく飛び回っている私が見逃しているとは…」


【紫】

「霊夢が…博麗の巫女が近々結婚するわよ。」


【文】

「あやややややっ!?な、ななな…何ですか、それ!?聞いてないですよ!一体、何処から…」


【紫】

「霊夢自身よ。」


彼女は、しばし思考が停止したように硬直していた。そして、戻ってくるなり、私の方に詰め寄り真剣な形相で見つめてきた。


【文】

「…その話、詳しく教えていただけますか?」


【紫】

「勿論よ。私が何の為に、ここに来たと思ってるの?」


彼女に話をすれば、その話は三日どころか最速で一日と経たずに幻想郷中に広まる。これで幻想郷中の人も、妖怪も、神様たちも、全ての存在がこの話を知った事になる。


【文】

「…うおおおおおっ!よっしゃぁっ!最高のネタ、ゲットーっ!感謝しますよ、紫さん!」


【紫】

「いいのよ。私の目的は、この事実を少しでも早く幻想郷中に広める事…頼んだわよ?」


【文】

「幻想郷最速、風神少女の名にかけて。」


頼もしい笑顔で答えた彼女は、早速原稿用紙に筆を走らせ始めた。

さて、次は…ひとまず、私たちだけの前祝いの準備がいるわね。新聞が回る前に、彼女たちには知らせてあげないと。


【紫】

「楽しみだわ…ねぇ、霊沙。」




~おまけ1・キャラ設定~


河城 にとり~超妖怪弾頭~

身長:153㎝

能力:水を操る程度の能力


妖怪の山の中腹付近、玄武の沢に棲む河童という一族の娘。手先が器用な河童たちの中でも、彼女の技術力はトップクラスで、巨大ロボも作った事があるらしい。人見知りなところもあるようだが、人間を盟友と呼んでいる。



東風谷 早苗~祀られる風の人間~

身長:165㎝

能力:奇跡を起こす程度の能力


外来人、つまり幻想郷の外から来た人間らしい。人間…厳密には現人神とのこと。彼女は妖怪の山に建てられた守矢神社の巫女もしており、普段は信仰集めに尽力している。若いのに働き者で、同じ巫女でも博麗の巫女とは大違いである。もっとも、それだけ働かなければならない理由が、守矢神社にはあるのだが…。




~おまけ2・忙しい人の為の異聞録~


【魔理沙】

「よっしゃぁーっ!ついにこの企画がやってきたぜ!クイズ百人の弾幕使いに聞きました、異聞録ver!今回の解答者はこの三人だ!」


【ミネルバ】

「ちょっと待て!俺の漢字授業じゃなかったのか!?」


【ほたる】

「私は観光ロケって聞きましたけど?」


【拓磨】

「俺は、お土産プレゼントゲームって…まぁ、何か企んでるなぁとは思ってたよ。」


【魔理沙】

「場所はいつも通り、紅魔図書館だぜ。」


【パチュリー】

「早く帰って。」


【魔理沙】

「早速第一問!ほたる・Y・スピカと言えば?」


【拓磨】

「たるちゃんと言えば……セーラー服、いいね♪」


【ほたる】

「今の解答、凜先輩に報告しても?」


【拓磨】

「……ごめんなさい…」


【魔理沙】

「セーラー服は正義、そう答えてくれた人は百人中三人だったぜ。拓磨3ポイント。」


【ミネルバ】

「そういう点数か…じゃあ、俺は……セリフが辛辣。」


【ほたる】

「心外です!そもそも、マスターがはしゃぎ過ぎなんです!」


【拓磨】

「俺の所為かよ!?」


【魔理沙】

「あぁ、残念!惜しいところで、拓磨に対するデレ発言が見たいって解答なら、十六人もいたぜ。」


【ミネルバ】

「そっちかぁ…」


【ほたる】

「……カエリタイ…」


【魔理沙】

「ラストはほたる自身に答えてもらうぜ!」


【ほたる】

「…先の解答例からすると、マニアックな答えばかりと見ました…実際は無いんですけど、実はロボ猫耳とか生えそう。」


【魔理沙】

「ブブー、残念!正解は、朝とかめっちゃテンション低そう、寝起きの機嫌が悪そう…八十一人がそう答えてたぜ。」


【ほたる】

「路線が全然違う!?」


【拓磨】

「しかも微妙に当たってる…」


【魔理沙】

「クイズ百人の弾幕使いに聞きました!中編は次回~♪」


つづく…のか?

…東方異聞録…諸事情により、しばらく休止させていただきます。


隔週で書いてる方も、こっちも…もう書き溜め分(パソで書いた下書き)が無いんです。(それをガラケーで打ち直してアップしてるんです。ネットに繋いでないんで。)

なので、前々から書いていたもう一作品を先に仕上げてから、こちらを再開させていただく事にします。予定では、遅くとも来年の春頃には再開できると思いますので、何卒ご容赦下さい。

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