ぱすと。2
傾向/谷川(先輩)視点/ひたすら暗い。
谷川side
「嘘…だろ…」
絶望しか、なかった。
涙が溢れて、拭っても溢れて止まらない。
「葵…葵!!」
弟の葵が、交通事故で死んだ。
警察の話では、友達を助ける為に道路へ飛び出し、代わりに…
友達思いで、優しい葵らしい。
でも、でも…
「馬鹿、野郎!!」
大型のトラックにひかれた葵は、
全身がボロボロで、顔が酷く傷んで、
直視することが、できない程むちゃくちゃになっていた。
近所でも評判な位、俺と葵は仲が良かった
休みの日は、二人でゲームしたり、近所の公園でキャッチボールしたり。
喧嘩はめったにしなかった。
楽しい思い出と、葵の笑顔が次々と浮かんできては、涙が溢れた。
「あぁっ…うぁあああ…」
残酷な、運命を恨んだ。
葵が何をしたんだ。
優しく、友達思いで、気が利いて、
明るく、人懐っこい葵が、
何で、こんな残酷な死に方をしなければ
いけないんだ。
葵は、何も、悪くないのにーー
葬式には、沢山の葵の友達が来ていた。
一際目立つ、傷だらけの男子生徒。
ああ、あいつが。
あいつのせいで、葵は…
怒りと憎しみが溢れ、手に力が入る。
握った手の平に爪が食い込み、薄く血が滲み出てきた。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ…」
涙をぼろぼろ流し、葵の遺影にひたすら謝り続けていた。
確か、ずっと、いじめられていて、両親は
家にほとんどおらず、頼る相手が全くいない世界で、一人。
いじめと戦いながら暮らしてきた、と。
「あいつも、つらいんだ…な」
あんなに、泣いて…
いじめに、ずっと、一人で戦ってきたんだ、もっと、早く、誰かが手を差し伸べていたら、こんな事にはならなかったのに…
あいつは、これから、葵の死を背負って生きていくのだろう。
絶対、忘れては、いけない。
葵が、お前に命を譲ったことを。