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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第1章 滅びゆくエルフたち

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第9話 不浄の大地




今日もまた、エルフの戒律かいりつで定める休息日を迎えた。


いつもであれば、勉強や風魔法の鍛錬、飛竜の騎乗訓練などができないことを嘆くところだが、今日の私にはやるべきことがあった。


「お兄さまー!またルノアお姉ちゃんとピクニックに行こうよー!」


足元に妹が抱きついてくる。

その頭を撫でながら言った。


「すまんな、ユウナ。私は今日、行くべき所があるのだ。」


すると案の定、妹は不満そうに頬を膨らませた。


「えー!やだやだ!じゃあ私も一緒に行くー!」

「悪いがそうもいかない。今日行く場所は、ユウナは連れていけないのだ。」


これは本当だ。

何せ、エルフにとって危険地帯とされている場所だからだ。


「母上、ユウナをお願いします。」


そう言って、駄々をこねるユウナを何とか母上に引き渡し、私は準備を整えて家を出た。






今日、私が向かう場所は、エルフの森の外れにある土地で、エルフの長老たちから“不浄ふじょうの大地”と呼ばれて、恐れられているらしい。


その名前の由来は、黒い水と黒い土が広がっており、異臭が漂う大地という特徴から来ている。

そこは植生も薄く、森を愛するエルフにとっては、何とも気味が悪く見える場所らしい。


私は先日、たまたま我が氏族の長老と世間話をした際にその話を聞き、大きな興味を持った。

もしかすると、思わぬ宝が得られるかもしれないからだ。






他のエルフたちに見つからないよう、慎重に歩みを進めると、お目当ての場所にたどり着いた。


確かに、長老が言っていた通り、黒い水と黒い土が広がっている。

それに、この場所からでも、かすかに鼻をつく臭いがする。


私は近づいて、外套がいとうのポケットから布切れを取り出し、黒い水にそっと浸けた。

すると、たちまち布切れが真っ黒に染まる。


そのまま、黒い水のある場所から十分に離れ、真っ黒に染まった布切れを地面に放り投げた。

そして、外套のポケットから火打石ひうちいし火打金ひうちがねを取り出し、あらかじめ用意しておいた、乾燥させたキノコの火口ほくちに着火する。


そして、やや緊張しながら、火口を真っ黒な布切れに触れさせると――






――ボッ、という音と共に、布切れに火がついた。


「――やはり、天然の原油だ。」


この世界にもあったとは。


私は思わず、飛び上がりそうになった。


もちろん、原油を工業的に活用するためには、精製技術が不可欠だ。

そして、そのような技術はエルフはもちろん、人族もまだ持ち合わせていないだろう。


だが、そもそも存在しないのと、将来的な可能性があるのとでは雲泥の差だ。


私は最近、休息日に森の散策と偽って、密かに資源探索を行って来たが、数か月前に見つけた硫黄いおうに勝るとも劣らない発見である。




私は、原油を発見した土地を手元の調査地図に記入し、背中に背負った小型の壺を地面に下ろす。

そして、原油のサンプルをできるだけ採取し、小型の壺に回収した。


「また、定期的に採取しに来よう。」


そう呟いて、集落への道を引き返すのだった。






私が、日没前のぎりぎりで集落に戻ると、自宅に向かう途中でルノアと出会った。


「あー!リヒト、どこにいたの!?せっかくの休息日だから、リヒトを遊びに誘おうと思ったのに……」


ルノアに残念そうな声で抗議される。


よく見ると、銀髪に隠れた長い耳が、下に垂れていた。

本当に残念に思っているらしい。


「ちょっと森の中へ散策にな。ほら、お土産だ。一緒に食べよう。」


私はそう言って、カモフラージュも兼ねて狩っておいた野鳥を数羽、手渡した。

私は弓は不得意だが、風魔法は得意なのである。


「わー!ありがとう!さすがリヒト!僕の幼馴染おさななじみだね〜!」


ルノアが青い目を輝かせながら、私の手を握ってぶんぶん振り回してくる。

喜んでもらえたようで何よりだ。


「せっかくだ。うちで食べないか?ユウナも喜ぶ。」

「やったー!よーしっ!僕が腕によりをかけて作ってあげるよ!」


ルノアは料理が得意だ。


銀髪をぴょんぴょん跳ねさせながら、ルノアはスキップしながら前を歩く。

すると、第六感か何かでそれを察知したのか、我が妹――ユウナが家から飛び出して来て、ルノアに抱きついた。


2人とも、笑顔を浮かべながら、何の料理にするか話し合っている。


私は、そんな2人の様子を黙って見つめた。






「………………」


私は、我が種族を――エルフを、滅ぼさせはしない。


守ってみせるぞ。どんな手を使ってでも。


例えそれが、この世界の女神の威光いこうに背くとしても。




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