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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第4章 世界樹奪還作戦

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第68話 騎士隊長の決断




「―――!―――!!」


彼の意識が戻り、最初に聞こえたのは、誰かが耳元で叫ぶ声だった。


それと同時に、思いっ切り肩を揺さぶられる。


しかし、彼の意識はまだ完全には覚醒しておらず、まるで頭にもやがかかったかのようだった。




「き―――ちょう―――!」


彼は何とか薄っすらと目を開けると、そこには崩れかけた天井と、その隙間から見える青空があった。


まるで、廃墟の天井のようだった。




「き―――殿!ご無事―――!!」


彼は、自分がなぜ廃墟に横たわり、仰向けになっているのか分からなかった。


自分は確か、この都市――領都レスターを守護する騎士団に所属していたはずだ。


剣の腕はいまいちだったが、生来の真面目さと幸運が味方し、凡庸ぼんような自分には不釣り合いな肩書までもらっていた気がする。


その肩書は、確か――






「―――騎士隊長殿っ!!お気を確かに!!」


耳元で叫ぶ男性の声が頭の中に響き渡り、彼――騎士隊長は慌てて身を起こした。


目の前には、騎士団の制服を着た若い男が地面に膝を付いており、身を起こした騎士隊長の背中に手を当て、心配そうに顔をのぞき込んでいた。


「き、君は⋯⋯確か、第3騎士隊に所属している⋯⋯」

「ベンと申します、第2騎士隊長殿。我らが第3騎士隊長が戦死したため、あなたの指揮下に入るべく参りました。」


そう言って、ベンと名乗った騎士は、未だに混乱の渦中にいる騎士隊長に、水の入った革袋を差し出した。

受け取った騎士隊長は、礼の言葉を述べてから革袋を受け取り、その中身を一気に飲み干した。


今まで気が付かなかったが、ずいぶんと身体が水分を欲していたらしい。


冷たい水が内臓に染み渡り、それに伴って意識も完全に覚醒する。


騎士隊長は自分の身に起きたこと――謎の攻撃により監視塔の部屋が吹き飛ばされ、その余波で廊下を転がり、意識を失ったことを思い出した。


慌てて監視塔の部屋を見るが、そこには瓦礫がれきの山と青空が見えるだけで、そこに部屋があったことなど、言われなければ分からない有り様だった。

当然、中にいた部下たちの安否は絶望的だろう。




「―――っ!!領都レスターの防衛はどうなっている!?」


騎士隊長は、自分が領都レスターの防衛における全軍指揮を担っていたことを思い出した。


慌てて、ベンに対して現在の防衛状況を確認する。


しかし――




「騎士隊長殿⋯⋯。落ち着いて聞いてください。敵は既に北門と南門を破り、領都内の奥深くにまで侵入しています。」

「なっ―――!!」


騎士隊長は、考えうる中で最悪の状況を告げられ、思わず息を飲んだ。


確かに、謎のトカゲと爆発により、防衛体制に深刻なダメージを負っていたが、まさか両方の門が既に突破されているとは信じられなかった。


「侵入した敵の状況は!?街はどうなっている!?」


その先は正直なところ聞きたくも無かったが、騎士隊長は臨時指揮官としての務めを果たすべく、ベンに対して報告を求めた。


「騎士隊長殿。はっきり申し上げて、防衛体制は壊滅状態です……。焼け残った主要施設も敵に占拠され、騎士や兵士たちも捕縛されるか、恐怖で逃げ出す有り様です。現在も抗戦を続けているのは⋯⋯その、ごく一部かと。」

「―――ばか⋯⋯な⋯⋯」


騎士隊長はゆっくりと首を横に振るが、その動作によって城壁の内側――崩れた壁から覗く、領都レスターの光景が視界に入った。


そこで彼は、迂闊うかつなことに、目を覚ましてから自分の目で街の様子を確認していないことに気が付いた。


慌てて、監視塔()()()建物から出て、領都レスターの街を確認する。






「……………………」


その光景を見て、騎士隊長は絶句した。


ベンの報告通り、既に街中は謎の軍服を着た敵が占拠しており、組織的な抵抗を行っている騎士や兵士は全くいない。


気が付けば、あれだけ響き渡っていた爆音も止んでおり、戦闘音のしない街は、まるで突然死を迎えたように静かだった。


まるで、もはや()()()()()()とでも言うかのように。


先ほどのベンの報告と、目の前に広がる光景――それは紛れもなく、領都レスターが事実上、陥落したことを指し示していた。




「―――降伏だ。」

「―――えっ?」


騎士隊長の隣に立つベンが、思わず聞き返した。


冷静をよそおってはいるが、おそらく彼の集中力も限界なのだろう。




「降伏すると言ったんだ!領都レスターは陥落した。これ以上の抵抗は無意味だ!すぐに動ける兵士に伝達し、街の目立つ場所に白旗を掲げさせろっ!!」

「―――は⋯⋯はっ!た、ただちに!!」


騎士隊長の命令を聞いたベンは慌てて返事をし、兵士たちに声をかけ、布やカーテンの残骸から白旗を作るように指示を出した。


指示を受けた兵士たちは、慌てての残骸を掘り起こし、大急ぎで白旗を作り始めた。


皮肉なことに、領都レスターへの攻撃が始まってから、一番素早く、正確な動きであった。




数十分後、領都レスターの目立つ場所に次々と白旗が掲げられ、ローレシア王国における主要都市の1つである領都レスターは、わずか2日して降伏を迎えた。




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