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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第1章 滅びゆくエルフたち

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第6話 氏族長会議




ルノアと妹と一緒に集落に戻った私は、すぐに氏族長である父上ちちうえに冒険者のことを伝えた。


もちろん、私が戒律かいりつを破って冒険者を殺害したことには触れない。

たまたま、休息日なので湖畔にピクニックに行ったら、エルフを探す冒険者をみつけたと報告する。


「まさか、こんな森の奥深くまで冒険者が現れるとは……」


父上は苦虫を噛み潰したような顔でうめいた。


「父上、冒険者たちがこの集落を発見するのも時間の問題です。すぐに氏族長会議を招集し、集落の移転について決議するべきかと。」

「ああ、リヒトの言う通りだ。」


父上はそう言って、氏族長会議を招集するべく、他の氏族長たちに声をかけにいった。


私たちエルフは、氏族ごとに集落を形成して暮らしているが、各集落は完全に独立している訳ではない。

植物が群落を形成するように、一定の範囲内に散在し、深く交流しながら、相互に支え合ってエルフ社会を形成している。


氏族長会議とは、その名の通り、各集落を代表する氏族長が一堂に会し、議論を行うエルフ社会における最高意思決定機関である。






私の報告から2日後、父上の呼びかけにより氏族長会議が開かれた。

議長は招集者である父上だ。


氏族長会議に出席する権利のある者は、氏族長とその後継者だけと決まっている。

もっとも、私のような後継者は陪席ばいせきするのみで、発言権は原則として氏族長にのみ存在する。


エルフの氏族は、世界樹のふもとに祖国があった時代は68氏族あったと聞くが、今は人族ひとぞくの迫害により離散や絶滅を繰り返し、17氏族しか残っていない。


つまり、いまこの場には、父上と私を含めた34人のエルフが揃っている計算になる。


「では、これより氏族長会議を始める。」


父上の宣言により、氏族長会議が始まった。






今回の氏族長会議は特に紛糾する議題でもないので、あっさりと決議に移った。


冒険者の侵入により、集落の移転を余儀なくされるのは、これまでに数え切れないほど繰り返されてきたからだ。

嘆かわしいことに、もう全員が慣れてしまっているのだ。


「では、これより決議を取る。賛成の者は挙手を。」


議長である父上の宣言により、採決が行われる。

出席している17氏族の氏族長全員が挙手をした。


「………………」


私はその様子を黙って見つめる。


「よろしい。では、()()()()をもって、集落の移転を決定する。」


父上が最後にそう締めくくり、氏族長会議は結論を得た。




――私がどうしても許せないのが、この氏族長会議の決議方法だ。


なんと、恐るべきことに、氏族長会議で物事を可決するためには、全会一致を必要とする。

つまり、氏族長のうち、誰か1人でも反対者がいれば廃案となるのだ。


しかも、気が遠くなることに、氏族が68もあった時代から、全会一致で物事を決めていたという。


人族に比べ、種族内で似たような価値観を共有しているとされるエルフであっても、各氏族によって多少は利害が異なる。

少しでも革新的な案を持ち込めば、まず間違いなく否決されるということだ。


私は、エルフがここまで追い詰められてしまったのも、この硬直した決議方法が大きな原因だと考えている。


早く、少しでも早く、この決議方法も変えなくては――


私は思わず歯ぎしりをしながら、全会一致を得たことで安堵の笑顔を浮かべ、会場を後にする氏族長たちをにらみつけるのだった。




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