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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第4章 世界樹奪還作戦

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第55話 オルデイン飛行場




あっという間に1か月が経過した。


作戦開始を翌日に控えた私は、世界樹奪還作戦の出撃拠点となるオルデイン飛行場を訪れていた。

今日はこの飛行場に泊まり、明日の作戦開始日を迎えることになる。


オルデイン飛行場には、既に大量の物資が運び込まれており、明日に向けての準備が、飛行場の至る所で進められている。


クオンが率いる陸軍についても、既にウルスタインを出立しており、作戦開始の予定地点に到着している頃だ。


明日、我が種族の――エルフたちの運命が、大きく変わることになる。


後の歴史は、私たちの選択をどう伝えるのだろうか。






「リヒト」


オルデイン飛行場にある司令室、そのバルコニーで開戦準備の様子を眺めていると、後ろから声がかけられた。


ジンだ。


そのまま隣に並ぶ。

司令室には他のエルフもいるが、バルコニーには私とジンだけが立っている。


「ついに来たな。この時が。」


ジンが、軍服の襟を締め直しながら話しかけてきた。


「そうだな。ジン――いや、ここはあえて()()殿()とお呼びしましょう。ジン殿、あの日から今日まで、私を支えていただき、ありがとうございます。ジン殿がいなければ、今の私は無かったでしょう。もちろん、今のエルフ社会も。いくら感謝しても、感謝し切れません。」


あの日とは、もちろんダートネス氏族の集落襲撃事件のことだ。


全てはあの時、ジン殿を味方に付けて、秘密同盟を締結したことから始まった。


「よせ、これはお前が切り開いた未来だ。確かに、俺はお前に味方したが、それはお前が信じるに値する男だと思ったからだ。そして、それは正しかったと証明された。」


2人して、大勢のエルフが動き回る飛行場を眺める。


「相変わらず、竹を割ったようにいさぎよく、気持ちの良い方ですね、ジン殿は。そんな貴方あなたが率いる空軍があるからこそ、私は安心して明日を迎えることができます。」

「そう言われると、明日は何としても作戦を成功させなくてはな。勝利の美酒を、お前と楽しむためにも。」


ジン殿は、お酒が好きなのだ。

今は亡き私の父上と一緒に、よく酒を酌み交わしていた。


「その時は、ぜひご一緒にさせてください。ご存知の通り、私が酒を飲むのは、祖国を再興させてからと決めていましたから。最初の一杯は、どうかジン殿にいでいただきたい。」

「おうとも!なみなみと注いでやるよ!そして、リヒトが酔い潰れるまで飲み明かそう!飛竜の話をさかなにしてな!」


それは何とも、心躍る未来である。


「リヴィアも呼びましょう。彼女も、私に遠慮してか、お酒を飲みませんから。ジン殿の妹なので、きっと強いでしょう。」

「はは!強いだろうな!俺とリヴィアの両親は、どちらも酒が強かった!」


ジン殿とリヴィアの両親は、祖国を失った際に戦死している。

風魔法も飛竜も使えない中、槍と弓で戦ったのだ。


同じような境遇のエルフは、目の前の飛行場で働くエルフたちの中にも、数え切れないほど存在している。




「――リヴィアの件、煮え切らない態度を取ってしまい、申し訳ございません。彼女には、ずいぶんと不安な思いをさせてしまっています。」


無論、リヴィアが私に向ける、思慕の念のことだ。

もし、私が総裁に就任することなく、普通のエルフとして生きていたならば、今頃はリヴィアと夫婦になっていた可能性も十分にあり得る。


今と比べて、貧しく、つらい生活ではあるが、日常の些細ささいな出来事を笑い合い、エルフという種族が最期を迎えるその瞬間ときまで、共に手を取り合って生きていたかもしれない。


しかし、今の私はエルフ社会における最高責任者――自分の結婚1つ取っても、種族全体の利益と未来を考え、慎重に判断しなくてはならない。


権力には、責任が伴う。


大きな力には、相応の自覚が求められる。


おおやけの幸せを願うなら、わたくしを隅に追いやる必要がある。


自分の感情にふたをしてでも。




「分かっている。今のお前は、自分の人生すらもエルフ社会に捧げている。それが、リヴィアに対する不義理だとは思わない。もちろん、お前が総裁という肩書に胡座あぐらをかき、女を取っ替え引っ替えするようなやつなら、しこたま殴っているだろうがな。」


その時は、私も自分で自分を殴るだろう。


「それに、あいつは警護隊長という形ではあるが、お前と一緒にいられて幸せそうだ。兄として、感謝しこそすれ、責める道理は見当たらないな。」

「―――ありがとうございます。少しだけ、心が晴れました。」







そのまま、自然と会話は途切れた。


私とジン殿の間柄なので、嫌な沈黙ではない。

明日から戦争を始めるというのに、場違いなほど穏やかな空気が、私とジン殿の間を流れていた。




「ジン殿――いや、ジン。」


口調を改める。


「明日はよろしく頼む。活躍を期待しているぞ。」

「ありがとうございます、総裁閣下。私と、私の率いる空軍の翼で、貴方あなたと同胞たちを、必ずや明るい未来へと運び出してみせます。」


私の言葉を受けて、ジンは綺麗な敬礼を捧げた。




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