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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第1章 滅びゆくエルフたち

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第5話 神をもたない民




『――っ!こ、こいつ!?』


先に反応したのはクロスボウで武装した冒険者だった。


『なぜ、戒律かいりつを破れる!?エルフにとって戒律とは、絶対のはずだ!』


普通のエルフにとってはそうだ。

しかし、私は普通ではない。


『私の信じる神は、あいにくと《《この世界には》》おられません。私にとって戒律など、何の意味もないのです。』


この世界には、人族ひとぞく信奉しんぽうする、光の女神がいるだけだ。


『こ、この、“神をもたないたみ”めが――!!』


そう言って、クロスボウをこちらに向ける。

ちなみに、“神をもたない民”とは、人族がエルフを蔑視する際に使う言葉だ。






『ラー・エリス・ル・ラヴァーニア (世界樹の風よ、目の前をおおたまえ)』






私は再び風魔法を発動させる。


圧縮された空気の壁が目の前に現れた。


冒険者が放ったクロスボウの矢は、私の目の前で見えない物体に当たったかのように向きを反らし、回転しながら斜め後ろへと飛んでいった。


『や、矢が……!くそっ……!』


そう言って、慌てて次の矢をクロスボウにセットする冒険者めがけて、再び風の刃を飛ばし、その身体を両断した。




『ひっ……!ば、化け物……!』


残った1人の冒険者は、自らの命の危機を察し、剣を放り捨てて走り出した。


風魔法による風の刃は非常に高速であり、多少距離が離れていたとしても、一瞬で届くので威力の減衰は期待できない。


私は落ち着いた動きで、三度目になる風の刃を飛ばし、最後に残った冒険者も肉片に変えた。






冒険者はいなくなり、その場に静寂が戻る。




『ラー・エリス・ミル・クロースレー (世界樹の風よ、近くの物を切らせたまえ)』




私は、縛られているルノアと妹の元におもむき、四度目となる風の刃で2人の荒縄を断ち切った。


この距離での風魔法の行使は自傷のリスクが高い。

殺傷目的による風魔法の行使を禁じる戒律は、例えその相手が自分自身だとしても適用される。

そのため、ほぼゼロ距離と言って良いこの状況で荒縄を切断することは、よほど風魔法に自信のあるエルフでないと不可能だ。


まあ、妹はともかく、ルノアは風魔法の大家たいかであるエルミス・アドランシェ家の娘なので、風魔法が非常に得意なのだが、さすがに混乱した状態で精密な魔法行使はできなかったのだろう。


「あ、ありがとう、リヒト……」

「ありがとうございます!お兄さま!」


解放されたルノアと妹に礼を言われる。


「礼には及ばん。私にとって、同胞どうほうを助けるのは当然のことだ。」


そう返すが、ルノアは何か言いたげに黙り込んでしまった。


「――私が戒律を破ったことについてか?」


そう問うと、ルノアはびくっと肩を震わせた後、恐る恐る頷いた。


エルフにとって戒律は非常に重い。

今回のケースで言うと、もし氏族長たちに知られたら、どんなに軽くても懲罰房ちょうばつぼう行きだろう。

そして、懲罰房を出た後も破戒者はかいしゃとして、後ろ指をさされながら生きることになる。




「ルノア。私にとって、同胞の命は戒律よりも遥かに重い。」


ルノアは黙って私の言葉に耳を傾けてくれた。


「だから、私は自分のしたことを後悔していない。だが、もしルノアが私の行動に恩を感じてくれているのなら、今回のことは、ここにいる3人だけの秘密にしてくれないか?」


ルノアの青色の目を見すえて、真剣に語りかける。

すると、ルノアは息を飲んだ。


そのまま、10秒ほど沈黙が続いたあと――


「――わかった。リヒトは僕とユウナちゃんの命の恩人だしね!今日起きたことは、僕たち3人の秘密にしよう!」


ルノアは笑顔を取り戻し、そう言ってくれた。

ありがたい。


「お兄さまっ!私も!私も秘密に混ぜてー!誰にも言わないよ!」


妹もそう言って、私に抱きついて来る。

この子の場合は、まだ戒律についてしっかり理解していないだけかもしれないが…。


それにしても、目の前で人族が3人も切り裂かれたにも関わらず、意外なことに2人は落ち着いている。

もっと怯えるかと思ったのだが。


もしかすると、この2人は、戦士の才能があるのかもしれん。




その後、私とルノアは風魔法を行使して地面に穴を掘り、冒険者3人の遺体を埋めた。


そして、俺は最初の冒険者を倒した際に浴びた返り血を落とすため、服を脱いで湖で洗った。


広げた服を風魔法で乾かして再び着込んだ後、ルノアと妹を連れて、私たちの集落へと戻るのであった。




■あとがき


 当作品をお読みいただきありがとうございます!

2026年1月より連載スタートしました。


 毎日更新を目指していきますので、少しでも「続きが気になる」「面白い」と感じた方は、ぜひ評価(★)やブックマークで応援いただけると嬉しいです!(評価やブックマーク数が増えると、作者のモチベーションが上がり、物語がより面白くなる効果があります)


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