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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第1章 滅びゆくエルフたち

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第4話 冒険者




ルノアと妹の声がした方に向かうと、3人の男の姿が見えた。

剣で武装した男が2人、クロスボウで武装した男が1人だ。


3人に見つからないよう、木陰に隠れて様子を探る。


『いやー!まさかこんな所にエルフの女が2匹もいるとはな!俺たち、本当についているぜ!』

『まったくだ。しかも見てみろ!2匹とも美人だ。美形揃いのエルフの中でも、飛び切りだぞ!』

『これで一攫千金だ!!』




――大陸共通語だ。


大陸共通語とは、人族ひとぞくの言語である。


まだエルフと人族の間に交流があった際、氏族長はエルフを代表して、人族の使節団を歓待する必要があった。

そのため、氏族長とその一族は、大陸共通語の習得が必須とされている。


今はもう、人族との交流は絶えて久しいが、当時のならわしは今でも残っていて、次期氏族長である私も大陸共通語を習得している。




「ゔー!ゔゔゔー!ゔーん!」

「――ユウナちゃん!!このっ!さ、触るな!」


妹は既に両腕を縛られた上に、口に布を巻かれており、ルノアの方も男2人に捕まって、今まさに両腕を縛られようとしている。

2人とも服を着ている所を見ると、着替え終わって心の隙ができた所を冒険者に狙われたのだろう。


『いやー、それにしてもエルフは本当に都合の良い種族だよ。働かせて良し、抱いて良し、殺してエリクサーにしても良し。まさに、光の女神さまが俺ら人族に与えてくださった恵みだな。』

『ま、死ぬまでき使って、死んだらエリクサーにするのが一番効率的だけどな!』

『しかも、戒律だか何だか知らないが、お得意の風魔法も殺傷目的では使えないと言う。野生のいのししの方がまだ抵抗するぜ。』


何とも好き勝手言ってくれるが、最後の言葉には同意するな。


まったく、この場にルノアと妹しかいないのは幸いだった。


私は2人を助けるべく、隠れていた木陰から離れ、男たち――冒険者たちの元へとゆっくり歩き出した。






『2人を離してくれませんか。』


大陸共通語で呼びかける。

目的は、冒険者たちをルノアと妹から引き離すためだ。

特に、2人の前にいる、剣で武装した冒険者は、そこに立たれていると《《邪魔だ》》。


『ああ?』


冒険者たちが振り向く。

そして、目を丸くして驚いた。


『まじか!!まさかの3匹目だぜ!今度は男のエルフだ!』

『おいおい!まさか自分から出てくるとはな!さっきエルフを野生の猪と比べたが、あれは猪に失礼だったな!エルフは家畜、まさに家畜だぜ!』

『ぶっ……!お前それ、例えが秀逸しゅういつ過ぎるだろ。』


その場で笑い出す3人の横で、ルノアと妹が信じられない物を見る顔で私を凝視していた。

おおかた、「何で出てきたの!?」と思っているのだろう。




冒険者たちはひとしきり笑ったあと――


『おい、お前。さっさとやれ。』

『分かってますよーっと。』


そんな会話を交わし、ルノアと妹の前にいた、剣で武装した1人が近づいて来る。

当たり前だが、2人を解放する気はないようだ。


男の方が女より力が強いのは、エルフも人族も共通である。

おそらく、男の私については、念のためにある程度痛めつけて、抵抗力を削いでから捕縛しようと考えているのだろう。


下卑げびた笑いを浮かべながら近づいてくる。


『いやー、でも少しだけ同情するよ。エルフは戒律により、殺傷目的で風魔法が使えないんだろ?自ら殺してくれ、捕まえてくれと言っているみたいだぜ。』

『ええ、そのご意見には同意します。』


大陸共通語で返事をする。


目の前の男がピクッと反応した。

まさか返事が返ってくるとは思わなかったのだろう。

私に対する警戒心が高まったのを感じる。


『――お前、なぜ大陸共通語を……!?しかも、その話し方は貴人語きじんご……?やはり、さっきのは聞き間違いでは無かったのか……!』


貴人語きじんご……?

少し気になるが、今はそれどころではないため、無視して続ける。


『同意することは他にもあります。“野生の猪の方がまだ抵抗する”というフレーズです。』

『……………………』


男は無言で腰の剣に手をやり、ジリジリと距離を詰めて来た。


『そっくりそのままお返しします。私にとっても、貴方あなたたちと猪に大差はありません。共に狩りの対象です。』

『―――こいつっ!!』


俺のことが不気味になったのだろう。さっさと終わらせようと、さやの付いたままの剣を振りかぶり、突撃してきた。




エルフの風魔法は、世界樹の力によってもたらされる。

今は、世界樹のふもとにあった祖国を失って久しいが、例え距離が離れていても、エルフと世界樹は根源でつながっている。


エルフが呼びかければ、世界樹は必ず応えてくれる。


使用する言語は古代エルフ語だ。




『骨の1本や2本はいただくぜー!!』


私は、目の前の冒険者に向けて手を伸ばし、口を開いた。






『ラー・エリス・ル・スティングレー (世界樹の風よ、目の前の敵を貫きたまえ)』






圧縮された風の刃が、超高速で駆け抜ける。

それはもはや、衝撃波と言っても良かった。


『―――ふへ?』


風の刃は、目の前の男を肩口から腰にかけて、斜めに両断した。


男の上半身は、空気の漏れたような声を発したままその場に落ち、下半身だけが数歩進んだ後、同じく倒れる。


地面に血だまりが広がった。




私の呼びかけに世界樹が応え、風魔法が発動したのだ。


「―――少しだけ、返り血がついたな。」


私は、服の袖を見ながら静かに呟き、唖然として固まっている、残りの冒険者2人の方を向いた。






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