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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第2章 16氏族の決断

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第36話 囚われのエルフ




部屋に入ると、鉄格子のはめられた区画があり、そこに手枷てかせをはめられ、()()()()()()()女性が座っていた。

すぐ隣には、武装した見張りの男の姿もある。


彼女の耳に目をやる。


その耳は横に長く伸びていて、間違いなく我が同胞――エルフの女性だった。


そして、顔には特徴的な火傷やけどの跡があった。

彼女にとってはこう不幸ふこうか、おそらくこの火傷により、最後まで売られずに残ったのだろう。

まるで、市場に積み上げられた野菜の中から、見栄えの良いものを選んで手に取るかのように。


そして、嫌でも目に入るのが、彼女に付けられた目隠しだ。




――腹立たしいが、敵も中々に頭が回るな。


目隠しをされているのは、おそらく風魔法の行使を制限するためだろう。

一般的なエルフにとって、殺傷目的による風魔法の行使を禁止する戒律は、絶対的なものとして認識されている。


風魔法――特に攻撃に使える風魔法の行使には、目視による対象物の確認とコントロールが重要だ。

そこで、視界を奪うことで、「周りが見えない状況で風魔法を行使すると、意図せず自分や周囲の人間を殺傷してしまうのでは?」という恐怖をエルフに与える効果があるのだろう。


もちろん、人族側がそれをどこまで理解しているかは不明だが、経験則として、目隠しをするとエルフが風魔法を使わなくなる、と認識されている可能性はある。


この世界の人族は、私の前世に比べて文明水準こそ低いが、それは決して馬鹿を意味する訳ではない。

当然のように知恵と工夫はある。舐めてかかって痛い目を見ないよう、自戒じかいしないとな。






いま、この部屋の中には、係員の男と武装した見張りの男の2名がいる。


私は、隣のリヴィアと目を合わせて、無言のまま視線を武装した見張りへと動かした。

すると、リヴィアもまた視線をずらし、係員の男へと向ける。


そして、2人で頷き合ったあと、私とリヴィアはそれぞれ懐から小袋を取り出した。


そして、古代エルフ語で世界樹へと呼びかける。




『『ラー・エリス・ル・メリーレア (世界樹の風よ、目の前にそよ風を吹かせたまえ)』』




同時に風魔法が発動し、小袋の中から《《細かな粒子》》がそよ風に乗って、係員と見張りの男の近くへと舞った。


すると――




『………………』

『………………』


2人とも脱力して床に座り込み、その場で意識を失った。


小袋に入っていた粉は、エルフの森に自生している、とある植物の根を乾燥させて粉末にしたもので、強力な催眠効果を持つ。

エルフ社会では、この粉は麻酔の代わりに用いられており、この量であれば30分は間違いなく起きないはずだ。


今のうちに係員の懐を確認する。

すると、目の前の女性エルフに関する奴隷鑑定書が出てきた。

身長、体型、性別、髪色、瞳の色、人相、推定年齢、鑑定金額、奴隷登録日などの基本情報が書かれている。

その中には、彼女の特徴である、顔の火傷跡についても記載されていた。


これは後々に証拠として使えそうなので、回収しておくことにする。


そして、いよいよ囚われの女性エルフと会話するべく、鉄格子へと近づいた。


まずはエルフ語で話しかける。






「大きな声を出さずに聞いてください。」

「―――っ!!」


突然、同胞の言葉――エルフ語で話しかけられて、目の前の女性エルフは目に見えて狼狽うろたえた。


「その言葉……!エルフ語……!もしかして、エルフの方ですか!?」

「その通りです。それと、もう少しだけ声を抑えてください。」


目の前の女性エルフは、慌てて首を縦に振った。


「はじめまして。私は、アドランシェ氏族長。リヒト=ローネル・アドランシェです。」

「同じく、ダートネス氏族長であるジンの妹。リヴィア=アルビオ・ダートネスよ。」


私とリヴィアは、それぞれ自己紹介をした。

大人のエルフであれば、氏族長である私と、氏族長の妹であるリヴィアの名前を知らないはずがない。

事実、目の前の女性エルフは息を飲み、数秒沈黙してから返事をした。




「……私は、ミレイ=アルル・ハイラインと言います。」


――ハイライン。


テネス殿の氏族名であるハイラインを冠する名前。

分かってはいたが、テネス殿が送った移住者で間違いない。


「ミレイ殿。念のため確認しますが、ハイライン氏族長であるテネス殿が編成した、領都レスターへの移住団の1人で間違いございませんね?」

「……はい、その通りです。お願いです!ここから出して、助けてくださいっ!」


やはり、その通りだ。


「お答えいただきありがとうございます。その前に、どうしても確認しておきたいことがあります。団長であるテネス殿の孫を含めた、他の194人のエルフたちはどうなりましたか?」

「……この街の氏族長――辺境伯?と言うのでしょうか。そのやかたの敷地内に入った瞬間、武装した人族に囲まれて、全員が囚われの身となりました。その後、手枷てかせをされた上で目隠しを付けられ、みんなバラバラに……。私はこの部屋にずっと入れられていて、詳しいことは何も。」


他のエルフたちの安否は不明という訳か……。

だが、マーシャル辺境伯の裏切りを確認できだけで十分だ。

今の話はリヴィアも横で聞いていたため、先ほどの奴隷鑑定書と合わせて、証言者も用意することができた。


「ミレイ殿、情報提供いただきありがとうございました。」


私は、ミレイ殿に感謝を伝えた。

すると、それを見ていたリヴィアが口を開く。


「よしっ!じゃあ、早くミレイさんを助けよう!いま、私が風魔法で鉄格子と手枷を壊すから。」


そう言って、リヴィアは風魔法を発動させようとする。

私は、そんなリヴィアの肩に手を置き、()()()()()()話しかけた。






『リヴィア、待ってください。残念ながら、ミレイ殿を助けることはできません。』




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