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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第2章 16氏族の決断

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第34話 領都レスター




門衛もんえいたちに別れを告げ、南の門をくぐり抜けると、そのまま街を南北に走る目貫めぬき通りが目の前に現れた。


先ほど上空から観察した限りでは、この目貫き通りに沿って商業区が広がっており、東の方に辺境伯の居城と思われる大きな城があった。

大きな建物はその城の周囲に集まっていたため、きっとそこが家臣たちの居住区になっているのだろう。


エルフは、いまや超高級品として扱われているため、移住したエルフに一番接触できる可能性が高いのは、上流階層である辺境伯の居城か、もしくは家臣たちの居住区だろう。

だが、もちろん、その分だけ警備も厳重なはずだ。


私がどうしようか悩んでいると――


「ねえ、リヒト。」


隣を歩くリヴィアが、エルフ語で話しかけてくる。


「どうした、リヴィア?」


周りの人族に聞かれないよう、静かに返す。


「さっきの男たち、エルフが奴隷市場に運び込まれたと言っていたわよね。仮にエルフたちの到着が1か月前くらいだとすると、195人のエルフたちを1か月で……その、売り切るのは不可能じゃない?」


リヴィアは、同胞たちに向けて“売られる”という言葉を使うのが辛いのか、顔をしかめながら言った。


「確かにな……。リヴィアの言う通りだ。」


これが数人程度であれば、完全に売り切ることもできるだろうが、195人となると難しいだろう。

なにせ、先ほどの門衛の会話からすると、エルフ1人の相場は聖王国金貨1,000枚にまで急騰しているらしい。


単純計算で、195人で聖王国金貨195,000枚になる。

それだけの大金をポンと用意するのは、いくら辺境伯や貴族、商人だとしても難しいだろう。

せめて1人か2人くらいは、売られずに残っている可能性はある。


「良い着眼点だな、リヴィア。それでは奴隷市場に行ってみよう。」

「よし!何としても、情報を手に入れよう!」


そう言う訳で、私とリヴィアは奴隷市場に向かうべく、聞き込みを開始した。






『奴隷市場の場所?あー、あんたたち、言葉使いからして庶民じゃないもんね。貴族さまの側近とかかい?それにしては、身なりは質素だけど……』


目貫き通りにある露天で、穀物を煮込んだスープのようなものを購入し、露天の女性店主に奴隷市場の場所を尋ねた。


『いえ、私は王都のとある商人に仕えている者です。最近、大きな商談を成功させましてね。主人から褒美に長期休暇をいただいたのです。そこで、妻と各地を旅しているのですが、そこは私も商人のはしくれ。エルフ産業で名高い領都レスターはぜひ見ておきたいと思い、立ち寄りました。そして、この姿は野盗対策です。』


私は、それらしい嘘を並び立てて誤魔化す。

リヴィアとはあらかじめ相談し、商人関係者の夫婦という設定にしてある。


『なるほどねー。まあ、この辺りにはエルフの強奪を目的とした野盗が多いからね。最近はエルフの仕入れも少ないし、一般の隊商を襲うことも増えたと聞く。用心に越したことはないよ。それで、奴隷市場の場所だったね?あの大きな建物――公衆浴場の裏にあるよ。』


元々そこまで興味は無かったのか、すぐに教えてくれた。


『ありがとうございます。ちなみに、この街の奴隷市場を利用するのは初めてでして。何か特別なルールなどはありますか?』


さり気なく、利用方法についても聞いておこう。


『なに言ってるんだい。奴隷市場の利用方法なんて、ローレシア王国内であればどこも似たようなものだろうよ。受付で保証金を預ければ誰でも入れる。今の公定価格は――確か、聖王国金貨5枚だったはずさ。』

『なるほど、ありがとうございます。かのエルフ産業の聖地レスターなので、何か特別なルールがあるかと思ったのですが、一安心しました。』


聖王国金貨5枚と言えばかなりの大金のはずだが、人族の正確な物価が分からないため、今回の潜入活動では冒険者たちから回収した金銭から多めに持参している。

2人で10枚であれば何とか足りるはずだ。


『そちらの奥さんは、えらく美人なんだから気を付けなよ。奴隷市場には、ガラの悪い連中もいるからさ。』

『――親切なお言葉、ありがとうございます。くれぐれも気を付けます。』


リヴィアが話しかけられるが、問題なく大陸共通語で返事をした。

やはり、大陸共通語を話せるリヴィアを連れてきて正解だった。


私とリヴィアは、露天の店主に別れを告げて、教えてもらった公衆浴場を目指した。


「それにしても、公衆浴場なんてあるんだな。」

「――?リヒトは公衆浴場を知っているの?」


リヴィアが尋ねてくる。

私の場合、前世の知識と、アドランシェ氏族が収蔵している本からの知識だ。


「ああ。小さな池のような場所に湯を貯めて、身を浸して体を温める施設だ。体の汚れを落とす目的でも使われる。」

「へー!さすがリヒト、物知りだね。浴場かー!私もいつか入ってみたいな。」


確かに、私もいつか入ってみたいものだ。


これは私の推測だが、浴場で湯を沸かすには大量のまきが必要になる。

この領都レスターはエルフの森に隣接しているだけあって、森林資源が豊富なはずだ。

それを活かした施設なのだろう。


私たちエルフにとっては不愉快極まりない話だが、野外活動で汗をかいた冒険者たちが湯に入るという需要もあるだろうしな。


そんなことを思いながら、私とリヴィアは公衆浴場に到着し、その裏にある奴隷市場へと足を踏み入れた。




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