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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第2章 16氏族の決断

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第31話 信頼できる相手




1週間が経過し、私は懲罰房から出ることができた。


「お兄さま!心配かけないでよ!私、本当にびっくりしたんだから!」

「そうだよ、リヒト!僕だって、突然リヒトが懲罰房に入れられたと聞いて、気が気じゃなかったんだから!」


我が氏族の――アドランシェ氏族の集落に戻ると、妹のユウナと幼馴染のルノアから、開口一番に怒られた。



「すまない、2人とも。心配をかけた。」


私は丁重に謝り続け、何とか許しを得ることができた。


そのまま母上にも顔を見せた後、私は今すぐにやるべきことを進めるため、ダートネス氏族の集落へと向かった。






アルビオ・ダートネス家のテントに到着し、呼び鈴を鳴らす。


「すまない。リヴィアはいるか?」


テント内に呼びかけると、走る音が聞こえて、すぐにリヴィアが顔を出した。


「リヒト!!心配したんだから!いっつも無茶ばっかりして!」


そう言いながら、私の両肩をつかんできた。


「すまない、リヴィア。どうしても我慢がならなくてな。少し感情的に行動してしまった。」


私は、リヴィアにまで心配をかけてしまったことを反省しつつ、肩に置かれたリヴィアの手に、自分の手を重ねた。


「――全く、リヒトはもう……。でも、懲罰房から出て来られて良かったわ。またこうして会えて、嬉しい。」


リヴィアは、少しだけ頬を赤くしつつ、その場で顔をうつむかせた。


私がリヴィアに会いに来たのは、もちろん無事な姿を見せる目的もあるが、もう1つ、彼女に頼みたいことがあったからだ。


「ありがとう、リヴィア。―――実は、少し相談したいことがあってな、時間をもらえるだろうか?」


私の顔つきが真剣なものに変わったのを見て、リヴィアは無言で頷いた。






ジン殿に依頼し、ダートネス氏族の応接用テントを借りて、そこでリヴィアと向かい合って座る。


「それで?リヒトの相談事って?」


目の前のリヴィアが尋ねてくる。


「単刀直入に言う。私と一緒に、人族の街に潜入してくれないだろうか?」

「―――!!」


リヴィアが驚きで目を丸くする。

無理もない。




私は、テネス殿が言っていたことが、どうしても気になった。


本当に、ロイド・マーシャルとかいう辺境伯は、我々エルフとの共存を探るつもりがあるのか。


私は、十中八九、人族の罠だと考えているが、ことはエルフ全体の未来に関わる。

これまではリスクを考慮し、人族の街への潜入は避けていたが、ここはリスクを取ってでも事実確認を行うべきだろう。

それに、領都レスターに移住したというエルフたちの安否も気にかかる。


そのあたりの事情と目的について、簡潔にリヴィアへ説明した。




「―――ねえ、聞いてもいい?どうして、私に声をかけたの?」


ひと通りの説明を終えた後、リヴィアが尋ねてくる。

当然の疑問だろう。


「私がリヴィアに声をかけた理由は3つだ。1つは、領都レスターまでの往復に飛竜を使うためだ。これは、もし潜入が人族に露見して、即座に街から離脱しなければならなくなった際の脱出手段も兼ねている。」


人族は、飛竜のような飛行手段を持っていない。

例え捕まりそうになったとしても、空にさえ逃げることができれば、無事に帰還できる。


「そして、2つ目の理由は、リヴィアが大陸共通語を話せることだ。」


リヴィアは、ジン殿の妹――つまりダートネス氏族長の家系なので、人族の言語である大陸共通語を習得している。

領都レスターに潜入した際、人族から声をかけられて会話することができなければ、不審者として扱われる可能性が高い。


1つ目の条件だけであれば、同じダートネス氏族のエルフ――例えば、ヴェスタも当てはまるが、ヴェスタは大陸共通語が話せない。

今回の潜入には不向きだろう。


「なるほど、よく分かったわ。それで、最後の3つ目の理由は?」


リヴィアが聞いてくる。


「3つ目の理由、それは―――私がリヴィアのことを信頼しているからだ。」

「―――っ!!」


リヴィアが再び、驚きに目を丸くする。


同行を依頼する立場として、少し卑怯な言い方となってしまったが、これは私の本心だ。


人族の街へは、私も立ち入ったことがない。

そのため、想定外の事態が発生する可能性もある。

そのような時、やはり日頃の信頼関係があるか無いかで、取り得る行動が変わってくるだろう。

もちろん、そう言った意味ではジン殿も候補に挙がるが、さすがに氏族長を巻き込むことはできない。


リヴィアは、私に真正面から信頼していると伝えられて、激しく目を泳がせていたが、しばらくすると落ち着きを取り戻した。




「分かった、リヒト。その領都レスターへの潜入任務、私も手伝わせて!」

「ありがとう、リヴィア。恩に着る。」


私はリヴィアに頭を下げた。


そして、潜入当日までに必要な物を揃えるべく、2人で作戦会議を続けるのであった。




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